後継者がいない中小企業はどうする?廃業・承継・M&Aを考える前に整理すべきこと
- 安田 亮
- 7 時間前
- 読了時間: 12分
こんばんは!代表の安田です。
中小企業の経営者にとって、後継者問題は避けて通れない大きなテーマです。
子どもに継がせるつもりがない
親族に後継者候補がいない
従業員に任せたいが、本人にその気があるかわからない
会社は続けたいが、自分がいつまで経営できるかわからない
廃業するしかないのか、M&Aという選択肢もあるのか知りたい
このような悩みを抱えている中小企業の経営者は少なくありません。
会社を長年続けてきた経営者ほど、「まだ元気だから大丈夫」「そのうち考えればよい」と先送りしがちです。しかし、後継者問題は、いざ必要になってから考え始めても間に合わないことがあります。
事業承継、M&A、廃業のいずれを選ぶ場合でも、準備には時間がかかります。また、会社の状態を整理しておかなければ、選べる選択肢が限られてしまうこともあります。
本日は、後継者がいない中小企業が、廃業・承継・M&Aを考える前に整理しておきたいポイントについて解説します。
後継者がいない会社に起こりやすい問題
後継者がいない状態を放置すると、会社にはさまざまな問題が生じます。
まず、経営者が高齢になったときに、会社の将来方針を決めにくくなります。急な病気や体調不良が起きた場合、誰が取引先や金融機関に対応するのか、誰が従業員に指示を出すのか、誰が資金繰りを管理するのかが問題になります。
また、後継者が決まっていない会社では、従業員も将来に不安を感じやすくなります。
この会社は今後も続くのか
社長に何かあったらどうなるのか
自分たちの雇用は守られるのか
このような不安があると、優秀な社員ほど早めに転職を考える可能性があります。
さらに、取引先や金融機関から見ても、後継者不在はリスクになります。会社の事業内容が良くても、経営者個人に依存している会社の場合、社長が引退した後に事業が継続できるか不透明だからです。
後継者問題は、単に「誰が会社を継ぐか」という話ではありません。従業員、取引先、金融機関、顧客、家族にも影響する重要な経営課題です。
後継者がいない場合の主な選択肢
後継者がいない場合、主な選択肢は大きく分けて3つあります。
1. 親族内承継
親族内承継とは、子どもや親族に会社を引き継ぐ方法です。
中小企業では、かつては親族内承継が一般的でした。会社の歴史や経営者の思いを引き継ぎやすく、従業員や取引先にも受け入れられやすいというメリットがあります。
一方で、親族に後継者候補がいても、本人に継ぐ意思がない場合もあります。また、経営能力や業界経験、従業員からの信頼なども考える必要があります。
「子どもだから継がせる」というだけでは、本人にとっても会社にとっても負担になることがあります。
2. 従業員承継
従業員承継とは、役員や従業員に会社を引き継ぐ方法です。
長年会社で働いている従業員であれば、事業内容、顧客、社内の人間関係を理解しているため、比較的スムーズに引き継げる可能性があります。
特に、現場をよく知る幹部社員がいる会社では、有力な選択肢になります。
ただし、従業員承継には課題もあります。後継者候補に経営者としての覚悟があるか、株式を買い取る資金があるか、金融機関の借入や個人保証をどうするか、といった問題です。
従業員として優秀な人が、必ずしも経営者に向いているとは限りません。早い段階から本人の意思を確認し、経営に関わる経験を積んでもらうことが大切です。
3. 第三者承継・M&A
親族や従業員に後継者がいない場合、第三者承継やM&Aも選択肢になります。
M&Aというと、大企業同士の買収をイメージするかもしれません。しかし、近年では中小企業でも、事業承継を目的としたM&Aが行われることがあります。
第三者に会社や事業を引き継ぐことで、従業員の雇用を守り、取引先との関係を継続し、経営者自身も一定の対価を得られる可能性があります。
一方で、M&Aはすぐに成立するものではありません。買い手が見つかるか、希望する条件で譲渡できるか、従業員や取引先に受け入れられるかなど、検討すべき点が多くあります。
また、会社の財務状況、収益力、取引先との契約関係、社長への依存度などによって、M&Aの実現可能性は大きく変わります。
4. 廃業
後継者が見つからず、M&Aも難しい場合には、廃業を選択することもあります。
廃業というとネガティブな印象を持たれがちですが、早めに準備をすれば、従業員や取引先への影響を抑えながら会社を整理できる場合があります。
問題なのは、準備不足のまま急に事業を止めることです。
資金繰りが悪化してから廃業を考えると、取引先への支払い、従業員への対応、借入金の返済、在庫や設備の処分などで大きな負担が生じます。
廃業も一つの経営判断です。選択肢として検討するのであれば、早めに資産・負債・契約関係を整理しておくことが重要です。
まず整理すべきこと1:会社の強みは何か
後継者問題を考えるとき、最初に整理したいのは会社の強みです。
会社を誰かに引き継ぐにしても、M&Aを検討するにしても、廃業を判断するにしても、「この会社にはどのような価値があるのか」を把握する必要があります。
たとえば、次のような強みが考えられます。
安定した取引先がある
長年の信用やブランドがある
専門的な技術やノウハウがある
経験豊富な社員がいる
地域での知名度がある
独自の商品やサービスがある
利益率の高い事業がある
許認可や資格がある
設備や不動産などの資産がある
経営者自身にとっては当たり前に感じていることでも、外部から見ると価値がある場合があります。
一方で、「社長個人の営業力」「社長個人の人脈」「社長しかできない技術」に依存している場合は注意が必要です。その価値を次の経営者や第三者に引き継げる形にしておかなければ、会社としての価値が下がってしまう可能性があります。
まず整理すべきこと2:会社の弱み・課題は何か
会社の強みだけでなく、弱みや課題も整理する必要があります。
たとえば、次のような課題です。
売上が特定の取引先に依存している
社長がいないと営業や現場が回らない
利益率が低い仕事が多い
借入金が多い
不採算事業を抱えている
従業員の高齢化が進んでいる
業務が属人化している
契約書や社内規程が整備されていない
経理や労務管理が整理されていない
これらの課題を放置したままでは、承継やM&Aが進みにくくなります。
後継者候補がいたとしても、課題が多すぎる会社を引き継ぐことには不安を感じるでしょう。M&Aを検討する場合も、買い手から見てリスクが高い会社は、条件が厳しくなったり、そもそも話が進まなかったりする可能性があります。
事業承継を考えるうえでは、会社の課題を隠すのではなく、早めに把握し、改善できるものから手をつけることが大切です。
まず整理すべきこと3:社長に依存している業務は何か
後継者がいない会社では、社長に業務が集中していることが少なくありません。
営業、見積、価格交渉、資金繰り、採用、クレーム対応、重要な技術判断などを、社長が一人で担っているケースです。
この状態では、親族承継や従業員承継はもちろん、M&Aも進みにくくなります。なぜなら、社長がいなくなった後に会社が回るかどうかが不透明だからです。
まずは、社長が行っている業務を書き出してみましょう。
そのうえで、次のように分類します。
社長しかできない業務
幹部社員に引き継げる業務
外注できる業務
システム化できる業務
やめてもよい業務
社長への依存度を下げることは、会社の価値を高めることにもつながります。
事業承継やM&Aを考える前に、社長がいなくても一定程度回る仕組みをつくることが重要です。
まず整理すべきこと4:財務状況を把握する
事業承継、M&A、廃業のどれを選ぶ場合でも、財務状況の把握は欠かせません。
具体的には、次のような点を確認します。
毎年どれくらい利益が出ているか
資金繰りに問題はないか
借入金はいくらあるか
金融機関への返済条件はどうなっているか
役員借入金や役員貸付金はないか
回収が難しい売掛金はないか
在庫や固定資産の実態はどうなっているか
不要な資産や使っていない設備はないか
財務状況が整理されていないと、後継者や買い手候補も判断ができません。
また、廃業を検討する場合も、資産を売却して借入金を返済できるのか、従業員への支払いを行えるのか、取引先への支払いをどうするのかを確認する必要があります。
「会社をどうするか」を考える前に、まずは会社の現状を数字で把握することが大切です。
まず整理すべきこと5:株式・権利関係を確認する
中小企業の事業承継では、株式の問題も重要です。
会社の経営権は、基本的には株式を誰が持っているかによって決まります。社長がすべての株式を持っている場合もあれば、親族や過去の役員、取引先などが株式を保有している場合もあります。
株主が分散していると、承継やM&Aの際に手続きが複雑になることがあります。
また、会社の不動産や設備が社長個人名義になっている場合、会社の事業と個人資産の関係も整理する必要があります。
確認すべきポイントは、次のとおりです。
株主は誰か
株式の保有割合はどうなっているか
名義株や所在不明株主はないか
会社の不動産は誰の名義か
社長個人と会社の貸し借りはないか
重要な契約の名義は誰になっているか
これらは、後から問題になることが多い部分です。早めに確認し、必要に応じて専門家に相談することをおすすめします。
まず整理すべきこと6:従業員や取引先への影響
後継者問題を考えるときには、従業員や取引先への影響も無視できません。
会社を誰かに引き継ぐ場合、従業員の雇用をどうするのか、勤務条件は変わるのか、取引先との契約は継続できるのかといった点が問題になります。
M&Aを検討する場合も、買い手が従業員を引き継ぐのか、取引先との関係を維持するのかは重要なポイントです。
廃業する場合には、従業員への説明、退職手続き、取引先への通知、契約終了の段取りなどが必要になります。
経営者自身にとっては、会社の出口を考えることかもしれません。しかし、従業員や取引先にとっては生活や事業に関わる重要な問題です。
できるだけ早い段階で準備を進め、関係者への影響を最小限に抑えることが大切です。
後継者候補がいない場合でも、会社を磨くことが大切
「後継者がいないから、もう廃業しかない」と考えるのは早いかもしれません。
会社の状態を整理し、社長への依存度を下げ、利益率を改善し、業務を標準化することで、従業員承継やM&Aの可能性が広がることがあります。
たとえば、次のような取り組みです。
利益率の低い仕事を見直す
社長しかできない業務を減らす
幹部社員を育成する
業務マニュアルを整備する
取引先との契約関係を整理する
財務状況を見える化する
不要な資産や負債を整理する
社内の管理体制を整える
これらの取り組みは、承継やM&Aのためだけでなく、現在の経営改善にもつながります。
後継者がいない会社ほど、早めに会社を磨いておくことが重要です。
廃業・承継・M&Aは早めに比較する
後継者問題を考えるときには、最初から一つの選択肢に決めつけないことも大切です。
親族に継がせるしかない
M&Aは大きな会社だけの話
後継者がいないから廃業するしかない
このように考えてしまうと、選択肢が狭くなります。
実際には、会社の状況によって最適な選択肢は異なります。
親族に候補者がいる場合は、親族内承継を検討できます。社内に信頼できる幹部がいる場合は、従業員承継の可能性があります。外部に引き継ぐ価値がある会社であれば、M&Aが選択肢になります。事業の継続が難しい場合でも、早めに準備すれば円滑な廃業を目指せます。
大切なのは、複数の選択肢を早い段階で比較することです。
選択肢を比較することで、今から何を準備すべきかが見えてきます。
まとめ
後継者がいない中小企業にとって、事業承継、M&A、廃業は避けて通れないテーマです。
しかし、いきなり「誰に継がせるか」「売却できるか」「廃業するか」を決める必要はありません。まずは、会社の現状を整理することが大切です。
具体的には、次のような点を確認しましょう。
会社の強みは何か
会社の弱みや課題は何か
社長に依存している業務は何か
財務状況はどうなっているか
株式や権利関係は整理されているか
従業員や取引先への影響はどうか
これらを整理することで、親族内承継、従業員承継、M&A、廃業のどの選択肢が現実的なのかを考えやすくなります。
後継者問題は、先送りするほど選択肢が狭くなる可能性があります。一方で、早めに準備すれば、会社を続ける道、誰かに引き継ぐ道、円滑に整理する道を検討しやすくなります。
後継者がいないと感じたときこそ、まずは会社の現状を見える化することから始めましょう。
会社の強みを整理し、課題を改善し、社長への依存度を下げることは、将来の承継やM&Aだけでなく、現在の経営改善にもつながります。
中小企業の出口戦略は、突然考えるものではありません。会社と従業員、取引先、家族の将来を守るためにも、早めに準備を進めることが大切です。
神戸での起業や開業に関するご相談、顧問税理士をお探しの方は安田亮公認会計士・税理士事務所までお問い合わせください!
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【この記事の執筆者】
安田 亮(公認会計士・税理士)
安田亮公認会計士・税理士事務所 代表
京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。
現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。
事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。







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