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テレワーク時の交通費は社会保険料の対象?出社時の電車代と標準報酬月額の考え方を税理士が解説

  • 執筆者の写真: 安田亮
    安田亮
  • 22 時間前
  • 読了時間: 15分

更新日:4 時間前

こんにちは!代表の安田です。


テレワークや在宅勤務を導入する企業が増えたことで、従業員の交通費の扱いも以前より複雑になっています。


従来のように毎日会社へ出社する勤務形態であれば、会社が支給する通勤手当は、原則として社会保険料の算定基礎となる「報酬」に含まれます。


一方で、原則テレワークの従業員が、月に数回だけ会社へ出社する場合、その出社時の電車代や交通費を社会保険料の対象に含めるべきかどうか、迷う企業も多いでしょう。


この点は、単に「テレワークだから交通費は報酬に含めない」「出社したから通勤手当として報酬に含める」と機械的に判断するものではありません。


重要なのは、出社した日の「労働契約上の労務の提供地」がどこになっているかです。

労働契約上の労務提供地が事業所であれば、自宅から会社へ出社するための交通費は、原則として通勤手当として報酬に含まれます。


一方、労働契約上の労務提供地が自宅であり、会社の業務命令により一時的に事業所へ出社し、その移動にかかる実費を会社が負担する場合には、出張旅費と同じように実費弁償として扱われ、社会保険料の算定基礎となる報酬には含まれません。


本日は、テレワーク時の交通費が社会保険料の対象になるかどうか、標準報酬月額の基本、通勤手当と出張旅費の違い、労働契約上の労務提供地の重要性、在宅勤務手当の取扱い、実務上の社内規程整備について解説します。


社会保険料は標準報酬月額をもとに計算する

健康保険料や厚生年金保険料などの社会保険料は、原則として、従業員ごとの標準報酬月額をもとに計算します。


標準報酬月額とは、従業員が受ける報酬を一定の等級に当てはめたものです。

毎年の定時決定では、通常、4月・5月・6月に支給された報酬の平均額をもとに、その年の9月から翌年8月までの標準報酬月額を決定します。


また、昇給や手当の変更などにより報酬が大きく変動した場合には、随時改定、いわゆる月額変更の対象になることもあります。


ここで問題になるのが、会社が従業員に支給する交通費や在宅勤務手当が、標準報酬月額の算定基礎となる「報酬」に含まれるかどうかです。

報酬に含まれる場合、社会保険料の負担が増える可能性があります。

報酬に含まれない場合、標準報酬月額の算定には反映されません。


社会保険でいう「報酬」とは

健康保険・厚生年金保険でいう報酬とは、名称を問わず、労働者が労働の対償として受けるすべてのものをいいます。


給与、基本給、役職手当、家族手当、住宅手当、通勤手当、残業手当などは、一般的に報酬に含まれます。


日本年金機構の事例集でも、報酬等は、労働者が労働の対償として受けるすべてのものとされ、労働の対償として経常的かつ実質的に受けるものは報酬等に含まれると整理されています。


そのため、会社が従業員に交通費という名称で支給していても、それが労働の対償として支給される通勤手当であれば、社会保険料の算定基礎に含まれます。


一方で、従業員が業務遂行のために立て替えた費用を会社が精算するような実費弁償は、労働の対償ではありません。たとえば、出張旅費、業務上必要な備品購入費の実費精算、会社負担とすべき通信費の実費精算などは、報酬に含まれないものとして扱われることがあります。


つまり、社会保険上は、支給名目よりも、その支給が労働の対価なのか、実費弁償なのかが重要です。


通勤手当は原則として報酬に含まれる

会社へ出社するために従業員へ支給する通勤手当は、原則として社会保険料の算定基礎となる報酬に含まれます。


所得税では、一定限度額まで通勤手当が非課税になることがあります。

しかし、所得税で非課税だからといって、社会保険でも報酬から除外されるわけではありません。


社会保険では、通勤手当は労働の対償として経常的・実質的に支給されるものと考えられるため、報酬に含めて標準報酬月額を計算します。たとえば、次のような支給は、通常、報酬に含まれます。

  • 毎月定額で支給する通勤定期代

  • 出社日数に応じて支給する通勤交通費

  • 自宅から会社までの電車代、バス代

  • マイカー通勤手当


テレワークを導入していても、労働契約上の労務提供地が事業所である場合には、会社へ出社するための交通費は通勤手当として扱われます。

したがって、原則として報酬に含める必要があります。


出張旅費は原則として報酬に含まれない

一方、出張旅費は、原則として社会保険料の算定基礎となる報酬には含まれません。


出張旅費は、従業員が会社の業務命令により通常の勤務地以外へ移動し、その業務遂行のために支出した費用を会社が負担するものです。


これは労働そのものの対価ではなく、業務遂行上必要な費用の実費弁償と考えられます。

たとえば、次のようなものです

  • 出張先までの新幹線代

  • 出張先での宿泊費

  • 出張中の交通費

  • 旅費規程に基づく通常必要な日当


もちろん、実費弁償といえるためには、会社の業務上必要な支出であること、支給額が合理的であること、旅費規程や精算書などにより内容を確認できることが大切です。


名目だけを「出張旅費」としていても、実態として給与の上乗せであれば、報酬と判断される可能性があります。


テレワーク時の交通費は「労務の提供地」で判断する

原則テレワークの従業員が一時的に会社へ出社する場合、その交通費が報酬に含まれるかどうかは、出社した日における労働契約上の労務提供地で判断します。

ポイントは次の2つです。

  • 労働契約上の労務提供地が事業所である場合

  • 労働契約上の労務提供地が自宅である場合


同じ「自宅から会社へ行く電車代」であっても、労務提供地が事業所なのか、自宅なのかによって、社会保険上の取扱いが変わります。


これはテレワーク導入企業にとって非常に重要です。

会社としてはテレワーク中心の働き方に変えたつもりでも、雇用契約書や就業規則上の勤務場所が従来どおり事業所のままになっている場合があります。


この場合、出社時の交通費を「一時的な出社だから実費弁償」と考えて報酬から除外すると、社会保険料の算定を誤る可能性があります。


労務提供地が事業所の場合は通勤手当として報酬に含まれる

労働契約上の労務提供地が事業所である場合、たとえ勤務実態としてテレワークが多くても、従業員が事業所へ出社するためにかかった交通費を会社が負担する場合、その交通費は原則として通勤手当として扱われます。

通勤手当は、労働の対償として社会保険上の報酬に含まれます。たとえば、次のようなケースです。

  • 雇用契約書の勤務地が本社となっている

  • 就業規則上、勤務場所は会社の事業所とされている

  • 会社はテレワークを認めているが、正式な労務提供地は事業所のまま

  • 従業員が出社した日の電車代を会社が支給している


この場合、会社が「原則テレワークだから出社交通費は実費精算」と考えていても、労働契約上の労務提供地が事業所である以上、社会保険上は通勤手当として報酬に含める取扱いになります。


したがって、定時決定や随時改定の際には、出社交通費を報酬に含めて標準報酬月額を確認する必要があります。


労務提供地が自宅の場合は実費弁償として報酬に含まれないことがある

一方、労働契約上の労務提供地が自宅である場合には、取扱いが変わります。


労働契約上、その日の労務提供地が自宅とされており、会社の業務命令により一時的に事業所へ出社し、その移動にかかる実費を会社が負担する場合、その交通費は出張旅費と同じように実費弁償と認められます。


この場合、労働の対償ではないため、社会保険料の算定基礎となる報酬には含まれません。

たとえば、次のようなケースです。

  • 雇用契約書や労働条件通知書で勤務場所が自宅とされている

  • テレワーク勤務規程で通常の労務提供地が自宅と定められている

  • 会社の業務命令により、会議や研修のため一時的に本社へ出社した

  • 出社にかかった電車代を実費精算した


この場合、出社は通常の通勤ではなく、自宅を通常の労務提供地とする従業員が、業務命令により一時的に別の場所へ移動したものと考えられます。


したがって、出張旅費と同様に、報酬に含めない取扱いが可能です。


「原則テレワーク」だけでは不十分

実務で注意したいのは、会社が「原則テレワーク」と言っているだけでは、出社交通費を報酬から除外できるとは限らない点です。

社会保険上の判断では、出社した日の労働契約上の労務提供地がどこかが問題になります。

たとえば、次のような状況では注意が必要です。

  • 就業規則には勤務場所が会社所在地と書かれたまま

  • 雇用契約書に自宅勤務の定めがない

  • テレワークは一時的・任意的な制度として運用している

  • 出社日と在宅勤務日を会社が都度指定しているだけ

  • 交通費精算ルールだけを変更し、労働条件は変更していない


このような場合、従業員の労務提供地は依然として事業所と判断される可能性があります。

その場合、出社時の交通費は通勤手当として報酬に含める必要があります。


テレワーク導入企業が社会保険料の算定で出社交通費を報酬に含めない取扱いをしたい場合には、単なる運用変更ではなく、労働契約上の勤務場所やテレワーク規程を見直すことが重要です。


労働契約・就業規則・テレワーク規程を整備する

テレワーク時の交通費を正しく処理するには、社内規程の整備が欠かせません。

特に、労務提供地を自宅とする従業員については、その根拠を明確にしておく必要があります。実務上は、次のような書類を確認・整備しましょう。

  • 雇用契約書

  • 労働条件通知書

  • 就業規則

  • テレワーク勤務規程

  • 交通費精算規程

  • 出張旅費規程

  • 在宅勤務手当規程


これらの書類で、テレワーク対象者の勤務場所、出社命令の取扱い、出社時交通費の精算方法、在宅勤務手当の支給方法を明確にしておくことが大切です。

たとえば、次のようなルールを設けます。

  • 原則として自宅を労務提供地とする従業員の範囲

  • 会社が必要と認めた場合に事業所への一時出社を命じること

  • 一時出社に伴う交通費は実費精算とすること

  • 通常出社勤務者の通勤手当とは区分して管理すること

  • 交通費精算には利用日、目的、経路、金額を記録すること


このように、実態と規程をそろえることで、社会保険料の算定における説明がしやすくなります。


在宅勤務手当の社会保険料の取扱い

テレワークでは、交通費だけでなく在宅勤務手当の扱いも問題になります。

在宅勤務手当が社会保険料の算定基礎に含まれるかどうかも、実費弁償か、労働の対償かで判断します。


たとえば、毎月一律5,000円を在宅勤務手当として支給し、実際に使わなかった場合でも返還不要とするような渡し切りの手当は、労働の対償として報酬に含まれる可能性があります。


一方、業務に使用する通信費、備品購入費、電気代などについて、業務利用分を合理的に計算し、実費精算する場合には、実費弁償として報酬に含まれないことがあります。

在宅勤務手当については、次の点を確認しましょう。

  • 毎月定額支給か、実費精算か

  • 未使用分の返還が必要か

  • 業務に必要な費用に対応しているか

  • 計算方法に合理性があるか

  • 領収書や利用明細などの証拠資料があるか

  • 給与規程やテレワーク規程に明記されているか


同じ「在宅勤務手当」という名称でも、支給方法によって社会保険上の取扱いが変わります。


所得税の非課税交通費との違い

交通費を処理するときは、所得税と社会保険を混同しないことが重要です。

所得税では、一定の通勤手当について、月15万円まで非課税とされる取扱いがあります。

しかし、社会保険では、所得税で非課税となる通勤手当であっても、原則として報酬に含めます。つまり、次のように整理できます。

  • 所得税:一定の通勤手当は非課税限度額の範囲内で非課税

  • 社会保険:通勤手当は原則として報酬に含める


そのため、給与計算ソフト上で所得税非課税交通費として処理しているからといって、社会保険の標準報酬月額から除外してよいわけではありません。


テレワーク時の出社交通費についても、所得税上の非課税処理と、社会保険上の報酬該当性を分けて確認する必要があります。


定時決定・随時改定への影響

交通費を報酬に含めるかどうかは、定時決定や随時改定に影響します。

たとえば、原則テレワークへ移行したことで、定期代の支給をやめ、出社日ごとの実費精算に変更した会社があります。


この場合、労働契約上の労務提供地が事業所のままであれば、出社日ごとの交通費も通勤手当として報酬に含める必要があります。


一方、労務提供地が自宅とされ、一時出社に伴う交通費が実費弁償と認められる場合には、報酬に含めません。


この違いにより、4月から6月の報酬平均額や、固定的賃金の変動の有無に影響することがあります。特に次のようなケースでは、社会保険料の見直しが必要になる可能性があります。

  • 定期代支給を廃止した

  • 出社日数に応じた交通費精算に変更した

  • 労務提供地を事業所から自宅へ変更した

  • 在宅勤務手当を新設した

  • 在宅勤務手当を定額から実費精算へ変更した


人事労務担当者と経理担当者が連携し、給与計算・社会保険届出・会計処理の整合性を確認しましょう。


実費弁償として扱うための証拠資料

出社交通費を実費弁償として報酬に含めない場合には、実費弁償であることを説明できる資料を残しておくことが重要です。たとえば、次のような資料です。

  • 雇用契約書や労働条件通知書

  • テレワーク勤務規程

  • 出社命令や出社依頼の記録

  • 交通費精算書

  • 利用日、利用目的、経路、金額の記録

  • 領収書やICカード利用明細

  • 会議や研修の開催記録

  • 給与明細上の通勤手当との区分


特に、毎月一定額を支給している場合は、実費弁償ではなく報酬と見られやすくなります。

実費弁償として扱うには、実際に支出した金額に基づいて精算すること、出社目的が業務命令に基づく一時的なものであること、通常の通勤手当と区分していることが大切です。


税務・労務で見落としやすい実務ポイント

テレワーク時の交通費は、社会保険だけでなく、所得税、労働保険、就業規則、会計処理にも関係します。実務では、次の点を確認しましょう。


1. 労務提供地を確認する

雇用契約書やテレワーク規程上、労務提供地が事業所なのか自宅なのかを確認します。


2. 出社の性質を確認する

通常の通勤なのか、業務命令による一時的な出社なのかを確認します。


3. 交通費の支給方法を確認する

定額支給なのか、実費精算なのかを確認します。


4. 給与明細で区分する

通勤手当と実費弁償交通費を区分して表示・管理します。


5. 社会保険の報酬に含めるか確認する

通勤手当なら報酬に含め、実費弁償なら含めない処理をします。


6. 在宅勤務手当の性質を確認する

定額支給か実費精算かにより、報酬該当性が変わります。


7. 規程と実態を一致させる

規程上は自宅勤務でも、実態として頻繁に出社している場合などは、実態に応じた見直しが必要です。


よくある誤解

  • テレワークなら出社時の交通費は必ず報酬に含まれない

誤りです。労働契約上の労務提供地が事業所であれば、原則テレワークであっても出社交通費は通勤手当として報酬に含まれます。


  • 出社頻度が少なければ社会保険の報酬に含めなくてよい

出社頻度だけでは判断できません。出社した日の労務提供地が事業所なのか自宅なのか、業務命令による一時的出社なのかが重要です。


  • 所得税で非課税交通費なら社会保険でも対象外

所得税で非課税となる通勤手当でも、社会保険では原則として報酬に含まれます。


  • 交通費を実費精算にすれば必ず報酬に含まれない

実費精算であっても、労務提供地が事業所であり、会社へ通勤するための費用であれば、通勤手当として報酬に含まれる可能性があります。


  • 在宅勤務手当はすべて報酬に含まれる

必ずしもそうではありません。業務に必要な費用の実費弁償と認められる場合には、報酬に含まれないことがあります。一方、毎月定額で渡し切りの手当は報酬に含まれる可能性があります。


まとめ

テレワークを導入している従業員の出社時交通費が社会保険料の算定基礎となる報酬に含まれるかどうかは、出社した日における労働契約上の労務提供地によって判断します。


労務提供地が事業所である場合、原則テレワークであっても、自宅から会社へ出社するための電車代等は通勤手当として扱われ、社会保険料の算定基礎となる報酬に含まれます。

一方、労務提供地が自宅であり、会社の業務命令により一時的に事業所へ出社し、その交通費を会社が実費負担する場合には、出張旅費と同様に実費弁償として扱われ、報酬には含まれません。


したがって、テレワーク時の交通費を社会保険料の報酬に含めない取扱いをするには、単に「原則テレワーク」とするだけでなく、雇用契約書、労働条件通知書、就業規則、テレワーク勤務規程などで、労務提供地を明確にしておくことが重要です。


また、交通費の支給方法についても、通常の通勤手当と、一時出社に伴う実費弁償交通費を区分して管理する必要があります。


在宅勤務手当についても、毎月定額で渡し切りの手当であれば報酬に含まれる可能性がありますが、業務に必要な通信費や備品購入費などの実費精算であれば、報酬に含まれないことがあります。


テレワーク導入企業では、交通費・在宅勤務手当・通勤手当のルールを社内規程に明記し、給与計算、社会保険届出、経費精算の処理が一致するように整備しておきましょう。


神戸での起業や開業に関するご相談、確定申告にお困りの方、顧問税理士をお探しの方は安田亮公認会計士・税理士事務所までお問い合わせください



【この記事の執筆者】

安田 亮(公認会計士・税理士)

安田亮公認会計士・税理士事務所 代表

京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。

現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。

事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。

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