特定求職者雇用開発助成金とは?対象者・4つのコース・申請時の注意点を公認会計士・税理士が解説
- 安田亮
- 23 時間前
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こんにちは!代表の安田です。
人手不足が続く中で、採用活動に苦労している中小企業は少なくありません。
一方で、高年齢者、障害者、発達障害や難病のある方、生活保護受給者、就職氷河期世代を含む中高年層など、就職に困難を抱える方の雇用を進めることは、企業にとって人材確保の選択肢を広げるだけでなく、社会的意義のある取組でもあります。
そのような雇用を支援する制度が「特定求職者雇用開発助成金」です。
特定求職者雇用開発助成金は、就職が特に困難な方を、ハローワーク等の紹介により継続して雇用する労働者として雇い入れた事業主に対して支給される助成金です。
本日は、特定求職者雇用開発助成金について、対象となる事業主、4つのコース、助成額、申請の流れ、注意点、税務上の取扱いを、公認会計士・税理士の視点からわかりやすく解説します。
特定求職者雇用開発助成金とは
特定求職者雇用開発助成金とは、高年齢者、障害者、母子家庭の母、発達障害者、難病患者、生活保護受給者など、就職が特に困難な方を雇い入れる事業主を支援する助成金です。
この助成金の大きな目的は、就職に困難を抱える方の雇用機会を広げ、職場定着を促進することにあります。
単に「人を採用したらもらえる助成金」ではありません。
ハローワーク、特定地方公共団体、有料・無料職業紹介事業者等の職業紹介により、対象労働者を継続して雇用する労働者として雇い入れることが必要です。
そのため、企業が自社ホームページや求人サイトで直接募集し、対象者を採用した場合は、原則としてこの助成金の対象にはなりません。
また、雇い入れた後に「実は助成金の対象者だった」と判明した場合でも、ハローワーク等が本助成金の対象労働者として職業紹介し、事業主もそのことを承知して雇い入れている必要があります。
採用前の段階で、ハローワーク等を通じた紹介であることを確認しておくことが非常に重要です。
対象となる事業主
特定求職者雇用開発助成金の対象となるのは、一定の要件を満たす雇用保険の適用事業主です。
中小企業だけでなく、大企業も対象になります。ただし、企業規模によって助成額が異なる場合があります。主な要件としては、次のようなものがあります。
雇用保険の適用事業主であること
ハローワーク等の紹介により対象労働者を雇い入れること
対象労働者を雇用保険の一般被保険者として雇い入れること
継続して雇用することが確実であると認められること
対象労働者の雇用状況や賃金支払状況を確認できること
助成金の支給対象期間中に適切な雇用管理を行うこと
また、雇用関係助成金に共通する要件として、労働保険料の滞納がないこと、過去に不正受給をしていないこと、一定の解雇等がないことなども確認されます。
助成金を検討する際は、対象労働者の要件だけでなく、事業主側の要件も確認しておきましょう。
4つのコース
特定求職者雇用開発助成金には、主に次の4つのコースがあります。
特定就職困難者コース
発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース
中高年層安定雇用支援コース
生活保護受給者等雇用開発コース
それぞれ対象となる労働者や助成額、支給対象期間が異なります。
以下、それぞれの概要を見ていきます。
特定就職困難者コース
特定就職困難者コースは、高年齢者、障害者、母子家庭の母等、ウクライナ避難民、補完的保護対象者など、特定の就職困難者を雇い入れる事業主を支援するコースです。
主な対象者としては、次のような方が想定されています。
高年齢者・母子家庭の母等
身体障害者
知的障害者
重度障害者
45歳以上の障害者
精神障害者
ウクライナ
避難民
補完的保護対象者
助成額は、対象労働者の区分や企業規模によって異なります。
たとえば、中小企業が母子家庭の母等や高年齢者などを短時間労働者以外として雇い入れた場合、支給総額は60万円とされ、30万円ずつ2期に分けて支給される場合があります。
身体・知的障害者を短時間労働者以外として雇い入れた場合は、中小企業で120万円、重度障害者、45歳以上の障害者、精神障害者の場合は中小企業で240万円となる場合があります。
短時間労働者として雇い入れる場合は、助成額が異なります。
2026年5月1日以降の高年齢者要件の見直し
特定就職困難者コースでは、2026年5月1日以降の紹介分から、高年齢者の要件が見直されています。
従来は、雇入れ時の年齢が60歳以上であることが中心的な要件でした。
しかし、2026年5月1日以降は、60歳以上であることに加えて、紹介日においてハローワーク等で就労に向けた個別支援を受けていることが求められるようになっています。
つまり、60歳以上の方を採用すれば必ず助成対象になるわけではありません。
ハローワーク等が、特定求職者雇用開発助成金の対象労働者であることを明示して職業紹介しているかを確認することが重要です。
高年齢者の採用を検討している企業では、この変更点を押さえておく必要があります。
発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース
発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コースは、障害者手帳を持たない発達障害者や難病のある方を雇い入れる事業主を支援するコースです。
発達障害や難病のある方の雇用と職場定着を促進することを目的としています。
対象となる労働者は、雇入れ日時点で満年齢が65歳未満であることが必要です。
助成額は、企業規模と労働時間によって異なります。
たとえば、中小企業が短時間労働者以外の労働者として雇い入れた場合、支給総額は120万円、助成対象期間は2年間とされています。
短時間労働者として雇い入れた場合は、中小企業で80万円、助成対象期間は2年間とされています。
なお、このコースでは、雇入れ後にハローワーク職員等による職場訪問が行われる場合があります。企業側としては、採用して終わりではなく、職場定着に向けた配慮や雇用管理を継続して行うことが大切です。
中高年層安定雇用支援コース
中高年層安定雇用支援コースは、2025年4月から新設されたコースです。
いわゆる就職氷河期世代を含む中高年層のうち、就職の機会を逃したことなどにより十分なキャリア形成がなされず、正規雇用労働者として就職することが困難な方の安定雇用を支援する制度です。
対象となるのは、35歳以上60歳未満の方で、不安定な仕事に就いていたり、正規雇用を目指していたりする労働者です。
助成額は、中小企業の場合は60万円、大企業の場合は50万円とされています。
支払いは、中小企業では30万円ずつ2期、大企業では25万円ずつ2期に分けて行なわれる場合があります。
このコースは、採用難に悩む企業にとって、中高年層の人材を正規雇用として迎えるきっかけになり得ます。
一方で、対象者の要件や紹介経路が重要になるため、求人を出す段階からハローワーク等に確認しておくことが望ましいでしょう。
生活保護受給者等雇用開発コース
生活保護受給者等雇用開発コースは、生活保護受給者や生活困窮者を雇い入れる事業主を支援するコースです。
対象となるのは、ハローワークまたは地方公共団体において、通算して一定期間を超えて支援を受けている生活保護受給者や生活困窮者などです。
助成額は、短時間労働者以外の場合、中小企業で60万円、大企業で50万円とされています。
短時間労働者の場合は、中小企業で40万円、大企業で30万円とされています。
このコースでは、雇い入れた労働者に対する配慮事項等についての報告が求められます。
また、ハローワーク職員が職場を訪問し、職場定着に向けた相談や支援を行うことがあります。
生活保護受給者や生活困窮者の雇用では、業務内容や勤務時間、職場環境への配慮が定着の鍵になります。
申請にはハローワーク等からの紹介が必須
特定求職者雇用開発助成金で最も重要なポイントは、ハローワーク等からの紹介が必須であることです。
助成金の対象となる紹介機関には、主に次のようなものがあります。
ハローワーク
地方運輸局
特定地方公共団体
有料職業紹介事業者
無料職業紹介事業者
無料船員職業紹介事業者
ただし、民間の職業紹介事業者であれば何でもよいわけではありません。
本助成金の取扱いについて、所定の同意を行っている職業紹介事業者等である必要があります。
求人サイト、SNS、自社採用ページ、知人紹介などを通じて採用した場合は、原則として助成対象外です。
また、採用後に対象者であることが分かっても、ハローワーク等による対象労働者としての職業紹介がなければ助成対象になりません。
この点は、実務上かなり重要です。
助成金を活用したい場合は、採用活動を始める前に、ハローワーク等に相談しておくことをおすすめします。
申請の流れ
申請の流れはコースによって異なりますが、代表例として特定就職困難者コースでは、おおむね次の流れになります。
ハローワーク等から対象者の紹介を受ける
対象者を雇い入れる
第1期の支給申請を行う
支給申請書の内容について調査・確認が行われる
支給または不支給が決定される
助成金が支給される
助成金は、対象労働者を雇い入れた時点ですぐに全額支給されるわけではありません。
多くの場合、助成対象期間を6か月ごとに区分した支給対象期ごとに、支給申請を行います。
たとえば、第1期、第2期、第3期、第4期などに分けて申請し、それぞれの期ごとに労働局またはハローワークが審査を行います。
支給対象期ごとに申請手続きが必要になるため、1回申請すれば終わりではありません。
支給申請期限に注意
特定求職者雇用開発助成金では、支給申請期限にも注意が必要です。
支給申請は、原則として、各支給対象期の末日の翌日から起算して2か月以内に行う必要があります。
この期限を過ぎると、要件を満たしていても助成金を受給できない可能性があります。
特に、複数期にわたって支給申請を行うコースでは、第1期の申請を終えた後も、第2期以降の申請期限を管理する必要があります。
給与計算、勤怠管理、社会保険手続きとあわせて、助成金の申請期限を社内で管理しておくことが重要です。
2026年4月以降は賃金台帳の提出が必須
2026年4月1日以降の申請分から、特定求職者雇用開発助成金では、賃金台帳の提出が必須となっています。
賃金台帳の提出が確認できない場合は、不支給となる可能性があります。
賃金台帳は、労働基準法上も作成が求められる重要な書類です。
助成金申請では、対象労働者に対して実際に賃金が支払われているか、支給対象期における労働実態があるか、所定労働時間や短時間労働者の区分が正しいかなどを確認する資料になります。
申請にあたっては、賃金台帳、出勤簿、雇用契約書、労働条件通知書、支払証憑などを整備しておきましょう。
雇用契約書の記載にも注意
特定求職者雇用開発助成金では、対象労働者を継続して雇用することが確実であると認められる必要があります。
有期雇用労働者として雇用する場合、契約更新の取扱いが重要です。
たとえば、有期契約であっても、本人が希望する限り更新できる自動更新の契約であることが求められるケースがあります。
雇用契約書に更新条件が不明確だったり、会社側が自由に更新を拒否できるような内容になっていたりすると、助成対象外となる可能性があります。
助成金を前提に採用する場合は、雇用契約書や労働条件通知書の内容を事前に確認しておきましょう。
助成金を受けるために整備すべき書類
特定求職者雇用開発助成金では、次のような書類が重要になります。
支給申請書
対象労働者の雇用契約書または労働条件通知書
出勤簿、タイムカード等
賃金台帳
対象労働者であることを証明する書類
支給要件確認申立書
対象労働者雇用状況等申立書
必要に応じた配慮事項等の報告書
ハローワーク等からの紹介に関する資料
助成金の審査では、実際に雇い入れているか、賃金を支払っているか、所定労働時間どおりに勤務しているか、支給対象期間中に雇用が継続しているかが確認されます。
書類に不備がある場合や、添付書類が不足している場合は、申請が受理されなかったり、不支給となったりする可能性があります。
日頃から労務書類を整備しておくことが大切です。
受給にあたって注意すべきポイント
特定求職者雇用開発助成金を活用する際は、次の点に注意しましょう。
1. 採用前にハローワーク等へ相談する
この助成金では、ハローワーク等からの紹介が必須です。
助成金を活用したい場合は、採用後ではなく、採用前にハローワーク等へ相談しましょう。
2. 対象労働者であることを明示した紹介か確認する
対象者を採用する場合、ハローワーク等から、特定求職者雇用開発助成金の対象労働者であることを明示した職業紹介を受けているかを確認する必要があります。
特に高年齢者については、2026年5月1日以降の要件変更に注意が必要です。
3. 支給申請期限を管理する
助成金は、支給対象期ごとに申請が必要です。
各支給対象期の末日の翌日から2か月以内という期限を過ぎないよう、スケジュール管理を行いましょう。
4. 賃金台帳・出勤簿を整備する
2026年4月以降は、賃金台帳の提出が必須となっています。
賃金台帳、出勤簿、雇用契約書、支払証憑が整合しているか確認しておきましょう。
5. 職場定着に向けた配慮を行う
この助成金は、単に採用することだけを目的とした制度ではありません。
就職困難者の雇用機会の拡大と職場定着が目的です。
対象労働者の状況に応じて、業務内容、勤務時間、相談体制、教育体制、職場内の理解促進などに配慮することが重要です。
税務上の取扱い
特定求職者雇用開発助成金を受け取った場合、法人であれば原則として収益に計上され、法人税の課税対象となります。
個人事業主の場合も、原則として事業所得の収入金額に含まれます。
助成金は「税金がかからない収入」と誤解されることがありますが、通常は課税対象です。
また、この助成金は、対象労働者の雇用に対して支給される助成金であり、設備投資補助金ではありません。
そのため、固定資産取得に係る圧縮記帳のような処理は通常想定しにくいと考えられます。
会計処理では、助成金の支給決定時期、入金時期、対象となる人件費の発生時期がずれることがあります。
決算期をまたぐ場合は、収益計上時期について顧問税理士に確認しておくと安心です。
特定求職者雇用開発助成金が向いている事業主
特定求職者雇用開発助成金は、次のような事業主に向いています。
高年齢者の採用を検討している
障害者雇用を進めたい
発達障害や難病のある方の雇用に取り組みたい
就職氷河期世代を含む中高年層を正規雇用したい
生活保護受給者や生活困窮者の雇用に取り組みたい
ハローワーク等を通じて採用活動を行なっている
採用後の職場定着に向けた支援体制を整えたい
一方で、求人サイトや自社採用ページから直接採用する場合には、原則としてこの助成金の対象外となります。
助成金の活用を考える場合は、採用ルートから設計することが必要です。
まとめ
特定求職者雇用開発助成金は、高年齢者、障害者、発達障害者、難病患者、生活保護受給者、中高年層など、就職が特に困難な方を継続して雇用する事業主を支援する助成金です。
主なコースには、特定就職困難者コース、発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース、中高年層安定雇用支援コース、生活保護受給者等雇用開発コースがあります。
この助成金で最も重要なのは、ハローワーク等からの紹介により雇い入れる必要がある点です。
自社で直接募集した場合や、求人サイトから採用した場合は、対象者に該当する方であっても、原則として助成対象外となります。
また、2026年5月1日以降は、特定就職困難者コースにおける高年齢者について、ハローワーク等で就労に向けた個別支援を受けていることが必要になっています。さらに、2026年4月以降の申請分からは賃金台帳の提出が必須となっています。
特定求職者雇用開発助成金を活用する場合は、採用前のハローワーク等への相談、対象労働者の要件確認、雇用契約書の整備、賃金台帳・出勤簿の管理、支給申請期限の管理を徹底しましょう。
助成金は採用コストを補うだけでなく、就職に困難を抱える方の雇用機会を広げ、企業の人材確保にもつながる制度です。
制度の趣旨を理解したうえで、無理のない雇用管理と職場定着支援を行なうことが大切です。
神戸での起業や開業に関するご相談、確定申告にお困りの方、顧問税理士をお探しの方は安田亮公認会計士・税理士事務所までお問い合わせください!

【この記事の執筆者】
安田 亮(公認会計士・税理士)
安田亮公認会計士・税理士事務所 代表
京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。
現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。
事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。





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