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国税庁が電子帳簿保存法Q&Aを改訂|電子取引データの保存範囲と重加算税の新たな除外措置を解説

  • 執筆者の写真: 安田 亮
    安田 亮
  • 8月1日
  • 読了時間: 15分

こんばんは!代表の安田です。


国税庁は2026年7月10日、「電子帳簿保存法一問一答」を改訂しました。

今回の改訂では、2025年度税制改正で創設された、電子取引データに関する重加算税の10%加重措置の除外制度について、新たに10問のQ&Aが追加されています。


そのほかにも、次のような企業の実務に直結する内容が明確化されました。

  • 水道光熱費や旅費交通費に関するデータも保存対象になること

  • スマートフォンを交換する場合のデータ移行方法

  • 課税期間の途中で対応システムを導入した場合の取扱い

  • 個人事業者が法人成りした場合の届出書の取扱い

  • JIIMA認証ソフトを利用するときの設定確認

  • 税務調査時のデータ提出と検索要件の関係


電子帳簿保存法への対応は、請求書や領収書をクラウドへアップロードするだけで完了するものではありません。取引データの収集範囲、保存方法、検索方法、機器の交換時の対応など、社内の運用まで整備する必要があります。


本日は、2026年7月改訂の電子帳簿保存法Q&Aについて、中小企業が特に押さえておきたいポイントを解説します。


国税庁が電子帳簿保存法Q&Aを改訂

電子帳簿保存法とは

電子帳簿保存法は、税務関係の帳簿や書類を電子データで保存するための要件を定めた法律です。


大きく分けると、次の3つの制度があります。

区分

主な対象

電子帳簿・電子書類保存

会計ソフトなどで作成した帳簿や書類

スキャナ保存

紙で受け取った請求書・領収書など

電子取引データ保存

メールやクラウドなどで授受した請求書・領収書など

このうち、所得税法・法人税法上の保存義務者が電子取引を行った場合には、その取引情報を原則として電子データのまま保存しなければなりません。


国税庁も、電子メール、クラウドサービス、ECサイト、スマートフォンアプリなどを通じて取引情報を授受した場合には、電子取引データの保存義務が生じることを案内しています。


2026年7月のQ&A改訂内容

今回改訂されたのは、次の3種類の一問一答です。

  • 電子計算機を使用して作成する帳簿書類関係

  • スキャナ保存関係

  • 電子取引関係

特に大きな改訂となったのが電子取引関係です。


電子取引関係では、重加算税の加重措置から除外されるための新制度について、問65および問74から問85までの実務的な取扱いが示されました。


一方、帳簿書類関係ではJIIMA認証ソフトの利用上の注意点、スキャナ保存関係では税務調査時のデータ提出と検索機能の関係が明確化されています。国税庁の電子帳簿保存法Q&Aページにも、2026年7月版の各一問一答と変更箇所を示した資料が掲載されています。


電子取引データに関する重加算税の加重措置とは

電子取引データに関連して、売上げの除外や架空経費の計上などの隠蔽・仮装があった場合には、通常の重加算税にさらに10%が加重される場合があります。


電子データは紙の書類と比較して複製や改ざんが容易であり、変更の痕跡が残りにくいという性質があります。そのため、不正行為を抑止する観点から、電子取引データに関連する隠蔽・仮装には加重措置が設けられています。


例えば、通常の重加算税の割合が35%となるケースでは、電子取引データに関する一定の不正が認められると、10%加重されて45%となる可能性があります。


ただし、今回の制度改正により、一定の信頼性が確保されたシステムを利用し、所定の方法で電子取引データを送受信・保存している場合には、この10%の加重措置から除外される仕組みが設けられました。


あくまで除外されるのは「10%の加重部分」です。隠蔽・仮装そのものに対する通常の重加算税まで免除される制度ではありません。


重加算税の加重措置から除外される主な要件

新たな除外措置を受けるためには、単に電子帳簿保存法に対応した一般的なクラウドストレージを利用するだけでは足りません。


国税庁長官が定める基準に適合した「特定電子計算機処理システム」を利用し、電子取引データについて所定の要件を満たして送受信・保存する必要があります。


対象となり得るデータには、デジタル庁が管理する標準仕様に基づくPeppolインボイスや、一定の金融機関による振込データなどがあります。


さらに、保存システムと帳簿との連携、データの訂正・削除に関する制限、取引から帳簿記録までの確認可能性など、通常の電子取引データ保存よりも厳格な要件が設けられています。


国税庁は、要件を満たすシステムで送受信・保存された電子取引データについて、事前の届出を行った場合には、重加算税の10%加重の対象から除外されると説明しています。


課税期間の途中でシステムを導入した場合

2026年7月改訂のQ&Aでは、課税期間の途中から対象システムを導入した場合の取扱いも明らかにされました。


例えば、3月決算法人が2027年10月から要件を満たすシステムを導入したケースです。

この場合、その事業年度の初日からシステムを利用していなくても、導入後に行った電子取引について所定の要件を満たしていれば、その導入後の電子取引データについて除外措置を受けることができます。


一方、システム導入前に授受した電子取引データまで、遡って除外措置の対象になるわけではありません。


したがって、課税期間の途中で導入した場合には、次のように区分して管理する必要があります。

  • 導入前に授受した電子取引データ

  • 導入後に要件を満たして授受・保存した電子取引データ

  • 導入後も要件を満たさない方法で授受した電子取引データ


除外措置は事業年度全体に一律に適用されるものではなく、要件を満たして保存された電子取引データごとに判定する点が重要です。


Peppolインボイスの利用実績がない場合

除外措置の対象となるシステムを導入していても、その年にPeppolインボイスを一度も受領・発行しないケースがあります。


今回のQ&Aでは、その課税期間にPeppolインボイスの授受がなかった場合でも、直ちに除外措置を受けられなくなるわけではないことが示されました。


例えば、そのシステムを利用して、要件を満たす銀行振込データやその他の対象となる電子取引データを授受・保存していれば、そのデータについて除外措置の対象となる可能性があります。


「システムを導入したか」だけでなく、「どの電子取引データを、どのような経路で授受し、どのように帳簿へ連携・保存したか」を確認する必要があります。


除外措置を受けるには届出書が必要

重加算税の加重措置から除外されるためには、システム要件を満たすだけでなく、税務署への届出も必要です。届出期限は、原則として、除外措置の適用を受けようとする国税の法定申告期限までとされています。


例えば、3月決算法人が2028年3月期の法人税について適用を受ける場合には、その法人税の法定申告期限までに届出書を提出する必要があります。


もっとも、期限ぎりぎりに届出を行うと、届出内容と実際のシステム運用が一致しているかを確認する時間がありません。


制度の利用を予定している場合には、次の事項を早めに整理しておくべきでしょう。

  • 利用するシステムの名称

  • システムの機能・仕様

  • 対象となる電子取引の種類

  • システム導入日

  • 帳簿との連携方法

  • データの訂正・削除に関する機能

  • 届出書の提出期限

  • システム変更時の届出要否


新制度に関するQ&Aでは、届出期限、組織変更、法人成り、制度の取りやめ、システム変更などについて個別の取扱いが整理されています。


個人事業者が法人成りした場合は届出をやり直す

個人事業者が除外措置に関する届出書を提出した後、事業を法人化することもあります。

この場合、個人事業者と新設法人は法的に別の納税義務者です。そのため、個人事業者が提出していた届出書の効力は、新設法人には引き継がれません。


法人でも除外措置を受ける場合には、法人名義で改めて届出書を提出する必要があります。

法人成りの際には、電子帳簿保存法関係だけでなく、次のような手続にも漏れがないか確認しましょう。

  • 青色申告の承認申請

  • 消費税関係の届出

  • 給与支払事務所等の開設届出

  • 源泉所得税の納期の特例

  • インボイス登録

  • 電子帳簿保存法関係の届出


特に、個人事業で利用していたクラウドサービスを法人でもそのまま利用する場合、システム上は継続していても、税務上の届出は自動的に承継されないことがあります。


水道光熱費や旅費交通費のデータも保存対象

今回の改訂では、電子取引データとして保存すべき範囲についても説明が追加されました。

電子取引データの保存対象は、売上げや商品の仕入れに関する請求書・領収書だけではありません

例えば、次のような事業上の費用に関するデータも対象になります。

  • 電気料金

  • ガス料金

  • 水道料金

  • インターネット料金

  • 携帯電話料金

  • 電車・航空券の利用明細

  • タクシー配車アプリの領収書

  • ホテル予約サイトの領収書

  • 高速道路料金の利用証明書

  • クラウドサービスの請求書

  • インターネット通販の領収書


紙の書類であれば保存しなければならないものについて、電子データで受領したから保存対象外になるということはありません。


例えば、電力会社のマイページからダウンロードした請求書や、出張予約サイトからメールで受領した領収書も、電子取引データとして適切に保存する必要があります。


「クレジットカード明細だけ保存」では不十分なこともある

会社がクレジットカードを利用して経費を支払っている場合、カード会社の利用明細だけを保存しているケースがあります。


しかし、カード会社の利用明細は、カード会社と利用者との間の決済内容を示す資料です。実際の商品やサービスの購入先から交付された請求書・領収書とは役割が異なります。

そのため、ECサイトやサービス提供事業者から電子領収書・請求書が発行されている場合には、原則としてそのデータも保存する必要があります。


経理担当者は、カード明細を会計ソフトへ取り込むだけでなく、各従業員が受領した次のようなデータを回収する仕組みを整えることが重要です。

  • メールに添付されたPDF

  • ECサイトからダウンロードした領収書

  • アプリ内の利用明細

  • 予約サイトの請求書

  • クラウドサービスの月額請求書


立替経費についても、従業員が電子データで領収書を受領した場合には、会社の電子取引に該当することがあります。


スマートフォンだけで取引している場合の注意点

個人事業者や小規模企業では、パソコンを使用せず、スマートフォンだけで請求書や領収書を受領しているケースもあります。


スマートフォンだけで取引している場合でも、電子取引データの保存義務がなくなるわけではありません。


今回のQ&A改訂では、スマートフォンを交換するときの対応として、主に次の方法が示されています。

  • 新しいスマートフォンなどへデータを移行する

交換後のスマートフォン、パソコン、クラウドストレージなどへデータを移行し、保存期間中に閲覧・出力できるようにします。

ただし、移行の際にもデータの改ざん防止措置を維持しなければなりません。

単純に画像をコピーした結果、受領日やファイル作成日などの情報が失われたり、自由に編集できる状態になったりしないよう注意が必要です。


  • 旧スマートフォンを保存期間中使用可能な状態で保管する

データを移行しない場合には、保存期間中、交換前のスマートフォンを正常に動作する状態にしておく方法も考えられます。

ただし、端末の故障、バッテリーの劣化、アプリのサービス終了、ログイン情報の失念などのリスクがあります。

実務上は、端末本体だけに保存するのではなく、要件を満たすクラウドサービスや社内の保存環境へ定期的に移行する方が安全でしょう。


JIIMA認証ソフトでも設定確認が必要

JIIMA認証とは、公益社団法人日本文書情報マネジメント協会が、ソフトウェアの機能仕様について電子帳簿保存法の要件への適合性を確認する制度です。


JIIMA認証を受けたソフトであれば、電子帳簿保存法への対応を進めやすくなります。

しかし、JIIMA認証ソフトを導入しただけで、必ずすべての要件を満たすわけではありません。


今回のQ&Aでは、次の点が明確にされています。

  • 初期設定が要件を満たす設定になっていない場合がある

  • 利用者が設定を変更した結果、要件を満たさなくなる場合がある

  • システム関係書類の備付けなど、ソフトの機能以外の要件もある

  • 認証対象となった帳簿と、自社が保存する帳簿が一致しているか確認が必要


したがって、JIIMA認証のロゴがあるというだけで判断せず、マニュアルやベンダーの案内を確認し、必要な機能を有効にしておくことが重要です。


スキャナ保存では検索要件がすべて免除されるわけではない

スキャナ保存を行なっている場合、税務職員による「ダウンロードの求め」に応じられるようにすることで、一定の検索要件が緩和されます。


しかし、データを提出できるようにしているからといって、すべての検索機能が不要になるわけではありません。


今回のQ&Aでは、少なくとも次の3項目を検索条件として設定できることが必要とされました。

  • 取引年月日その他の日付

  • 取引金額

  • 取引先


ダウンロードに応じる場合に省略できるのは、日付や金額の範囲指定、複数項目を組み合わせた検索などの一部の機能です。


税務調査時にデータを丸ごと提出できるというだけで、基本的な検索機能まで不要になるわけではない点に注意しましょう。


税務調査時に提出するデータの形式

税務調査で電子データのダウンロードを求められた場合、提出するファイル形式や並び順について一律の指定があるわけではありません。


ただし、税務職員が通常の方法で確認できるファイル形式で提出する必要があります。

例えば、通常であればCSVやPDFで出力できるにもかかわらず、検索や確認が著しく困難な特殊形式で提出した場合には、ダウンロードの求めに適切に応じたとは認められない可能性があります。


また、データを保存している記憶媒体そのものについては、ダウンロードの求めの対象に当然に含まれるわけではありませんが、税務調査における質問検査権に基づいて確認される場合があります。


中小企業が見直したい電子取引データ保存の実務

今回のQ&A改訂を踏まえ、中小企業では次のような対応を進めることが重要です。


<電子取引の発生場所を洗い出す>

経理部だけでなく、営業、総務、人事、各店舗、各従業員が受領するデータも含めて確認します。

特に漏れやすいのは、次のような取引です。

  • 従業員の立替経費

  • ECサイトでの備品購入

  • スマートフォンアプリによる決済

  • 出張予約

  • 月額制クラウドサービス

  • 電気・通信料金

  • インターネットバンキング


<保存先を統一する>

メールボックス、個人のスマートフォン、ECサイト、各種アプリにデータが分散していると、保存期間中の管理や税務調査への対応が困難になります。

電子取引データは、できる限り会社が管理する一つのシステムへ集約しましょう。


<ファイル名や検索項目のルールを定める>

専用システムを利用しない場合には、例えば次のようなファイル名で保存する方法があります。

20260710_110000_株式会社○○_消耗品.pdf

日付、金額、取引先を一定の順序で記録することで、検索しやすくなります。


<端末交換時の手順を決める>

スマートフォンやパソコンの交換時に、保存データが消失しないよう、データ移行、バックアップ、旧端末の処分方法を社内規程に定めます。


<システムの設定を定期的に確認する>

ソフトウェアのアップデートや担当者の変更によって、設定が変わることがあります。

JIIMA認証の有無だけに頼らず、訂正削除履歴、検索機能、出力機能などが有効になっているかを定期的に確認しましょう。


電子取引データ保存のチェックリスト

電子帳簿保存法への対応状況について、次の事項を確認してみましょう。

  • 電子メールで受領した請求書をデータで保存しているか

  • ECサイトの領収書をダウンロードしているか

  • 電気・ガス・通信費の電子請求書を保存しているか

  • 従業員の立替経費に関する電子領収書を回収しているか

  • 日付・金額・取引先で検索できるか

  • データの訂正・削除を防止する措置を講じているか

  • 税務調査時に速やかに表示・出力できるか

  • スマートフォン交換時のデータ移行手順があるか

  • JIIMA認証ソフトの必要な設定を有効にしているか

  • 保存期間中のバックアップを確保しているか

  • 法人成り後に必要な届出を再提出しているか

  • システム変更時に届出の変更が必要か確認しているか


まとめ

2026年7月の電子帳簿保存法Q&A改訂では、電子取引データ保存に関する実務上の取扱いがより具体的に示されました。


今回の主なポイントは、次のとおりです。

  • 一定のシステムを利用した電子取引データは、重加算税の10%加重から除外される可能性がある

  • 課税期間の途中でシステムを導入した場合は、導入後の対象データについて適用できる

  • 除外措置を受けるには届出書の提出が必要

  • 個人事業者が法人成りした場合、届出書の効力は法人へ引き継がれない

  • 水道光熱費や旅費交通費の電子データも保存対象になる

  • スマートフォン交換時にも保存要件を維持する必要がある

  • JIIMA認証ソフトでも設定内容の確認が必要

  • スキャナ保存でデータ提出に応じる場合も、日付・金額・取引先による検索が必要


電子帳簿保存法への対応では、ソフトを導入することよりも、そのソフトをどのように設定し、誰がどのデータを保存するかという運用が重要です。


請求書や領収書が各従業員のメールやスマートフォンに残ったままになっていないか、税務調査時に必要なデータをすぐに検索・出力できるかを、改めて確認しておきましょう。


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【この記事の執筆者】

安田 亮(公認会計士・税理士)

安田亮公認会計士・税理士事務所 代表

京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。

現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。

事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。


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