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大胆な投資促進税制と固定資産税特例は併用できる?対象設備・申請手続を税理士が解説

執筆者の写真: 安田亮
安田亮
12 分前
読了時間: 11分

おはようございます!代表の安田です。


令和8年度税制改正で創設された「特定生産性向上設備等投資促進税制」、いわゆる大胆な投資促進税制では、一定規模以上の設備投資について、即時償却または一定の税額控除を適用できる制度が設けられています。


設備投資を行なう中小企業にとって気になるのが、「他の設備投資税制と併用できるのか」という点です。


大胆な投資促進税制は、中小企業経営強化税制やカーボンニュートラル投資促進税制など、一定の税制とは原則として併用できません。


一方で、生産性向上や賃上げに取り組む中小企業の設備投資に係る固定資産税の課税標準の特例措置については、大胆な投資促進税制と重複して適用することができます。 


ただし、両制度は対象設備や申請手続が異なるため、同じ設備について両方を利用したい場合には、それぞれの制度要件を満たす必要があります。


本日は、大胆な投資促進税制と固定資産税特例の併用可否、対象設備の違い、申請時の注意点について税理士が解説します。


大胆な投資促進税制とは

大胆な投資促進税制は、改正産業競争力強化法に基づく確認を受けた投資計画に従って、一定規模以上の特定生産性向上設備等を取得し、事業の用に供した場合に利用できる制度です。


一定の要件を満たすことで、

  • 即時償却

  • 一定の税額控除

のいずれかを適用できます。


比較的大規模な設備投資を対象とする税制であり、投資計画について所定の確認を受けることが前提となります。


大胆な投資促進税制は他の税制と併用できる?

すべての設備投資税制と自由に併用できるわけではありません。

大胆な投資促進税制を適用する場合、原則として次のような一定の税制とは併用できないとされています。

税制

大胆な投資促進税制との併用

中小企業経営強化税制

原則不可

カーボンニュートラル投資促進税制

原則不可

一定のその他の設備投資税制

原則不可となるものあり

中小企業向け固定資産税特例

併用可能

特に重要なのは、固定資産税特例については例外的に重複適用できる点です。


固定資産税特例とは

固定資産税特例は、生産性向上や賃上げに取り組む中小企業者等が一定の設備を取得した場合に、固定資産税の課税標準を一定割合軽減する制度です。


大胆な投資促進税制が法人税に関係する制度であるのに対し、固定資産税特例は地方税である固定資産税の制度です。


この固定資産税特例については、大胆な投資促進税制との重複適用が可能とされています。


<税負担の違い>

制度

主に影響する税金

大胆な投資促進税制

法人税

固定資産税特例

固定資産税

同じ設備投資について、法人税と固定資産税の双方で優遇を受けられる可能性があるという点が大きな特徴です。


併用可能でも「自動的に両方使える」わけではない

ここは実務上特に注意が必要です。


大胆な投資促進税制と固定資産税特例は重複適用できますが、一方の制度の要件を満たせば、もう一方も自動的に適用されるわけではありません。


両制度について、

  • 税務申告までの流れ

  • 対象設備

  • 計画確認等の手続

が異なるため、それぞれの要件を満たす必要があるとされています。


<考え方>

誤った考え方

正しい考え方

大胆な投資促進税制が使えれば固定資産税特例も使える

×

同じ投資計画書だけで両制度を申請できる

必ずしもそうではない

それぞれの制度要件を個別に確認する

同じ設備が両制度の対象なら併用を検討する


両制度では対象設備が異なる

大胆な投資促進税制の対象設備は以下の通りです。

設備

金額基準

機械装置

160万円以上

工具・器具備品

原則120万円以上※

建物

1,000万円以上

建物附属設備・構築物

原則120万円以上※

ソフトウェア

70万円以上

※一定の場合には、1台・1基当たりの取得価額や同一投資計画に係る一事業年度の取得価額合計について別途要件があります。


固定資産税特例の対象設備は以下の通りです。

設備

金額基準

機械装置

160万円以上

工具

30万円以上

器具備品

30万円以上

建物附属設備

60万円以上

建物附属設備については、家屋と一体となって固定資産税が課税されるものを除くとされています。


両制度の対象設備を比較

分かりやすく整理すると、次のとおりです。

設備

大胆な投資促進税制

固定資産税特例

機械装置

160万円以上

160万円以上

工具

一定要件で120万円以上等

30万円以上

器具備品

一定要件で120万円以上等

30万円以上

建物

1,000万円以上

制度の対象外

建物附属設備

120万円以上等

60万円以上

構築物

120万円以上等

制度の対象外

ソフトウェア

70万円以上

制度の対象外

このように、同じ設備投資税制でも対象資産の範囲や金額基準はかなり異なります。

そのため、「大胆な投資促進税制の対象設備だから、固定資産税特例にも当然該当する」

とは限りません。


工具・器具備品の金額基準に注意

大胆な投資促進税制では、工具・器具備品について、単純に120万円以上のものだけが対象というわけではありません。


次のようなものも含むとされています。

  • 1台または1基の取得価額が40万円以上

  • 同一の投資計画に記載されている

  • 一事業年度における取得価額の合計額が120万円以上


これらの条件を満たす設備についても対象となり得ます。

例えば、1台50万円の器具備品を同一の投資計画で3台導入する場合、合計150万円となるため、この金額基準を検討することになります。


建物附属設備にも同様の考え方がある

大胆な投資促進税制の建物附属設備についても、資料では一定の特例的な金額基準が示されています。


具体的には、

  • 一つの取得価額が60万円以上

  • 同一の投資計画に記載されている

  • 一事業年度の取得価額合計が120万円以上

というものも含まれます。


設備単体の価格だけで判断するのではなく、同一投資計画全体で確認する必要があります。


固定資産税特例は市区町村ごとの確認が重要

固定資産税特例を利用する際には、設備の所在地にも注意が必要です。

市区町村ごとに対象設備等が異なる場合があります。


そのため、新たに導入する設備が所在する市区町村について、「導入促進基本計画」を確認することが重要です。


例えば同じ機械装置を導入するとしても、

  • A市では特例対象

  • B市では対象外

となる可能性があるため、所在地ごとの確認が必要ということです。


特に複数拠点へ設備投資する企業では、各市区町村の取扱いを個別に確認した方がよいでしょう。


申請手続もそれぞれ異なる

大胆な投資促進税制では、投資計画について所定の確認を受けた後、設備を取得し、確認書等を添付して税務申告を行う流れです。


一方、固定資産税特例では、先端設備等導入計画等について支援機関や市区町村を通じた確認・認定手続を行い、その後、必要書類を添えて固定資産税の申告を行う流れとなっています。


つまり、両制度を併用する場合には、法人税側の手続と固定資産税側の手続を並行して管理する必要があります。


設備投資前から両制度を検討する

設備を購入した後、決算時になってから、「この設備は何か税制優遇を使えないか」と調べるのでは遅い場合があります。


両制度とも計画の確認等が関係するため、設備投資を検討する段階で制度適用を確認することが重要です。


<推奨する流れ>

  1. 設備投資の内容を決定する

  2. 大胆な投資促進税制の対象か確認する

  3. 固定資産税特例の対象か確認する

  4. 設備所在地の市区町村の導入促進基本計画を確認する

  5. それぞれの計画書・申請手続を準備する

  6. 設備を取得する

  7. 法人税・固定資産税それぞれの申告を行う


固定資産税特例の適用期限

固定資産税特例は令和7年度税制改正で延長され、現在の適用期限は、2027年3月31日(令和9年3月31日)とされています。


ただし、経済産業省では令和9年度税制改正に向けて、同制度を見直したうえで延長することを検討しています。現時点で延長が確定したわけではありません。


固定資産税特例は赤字企業にもメリットがある

法人税の税額控除は、法人税額が発生していなければその効果が限定されることがあります。


これに対して固定資産税は、企業の所得とは直接関係なく、その年の1月1日時点で保有している設備等に対して課されます。この特徴から固定資産税特例について、赤字企業でも活用可能であることが制度の意義の一つと言えます。


<税制の特徴>

会社の状況

法人税の優遇

固定資産税特例

黒字

効果が生じ得る

効果が生じ得る

赤字

税額控除等の効果が限定される場合あり

利用価値がある

設備を大量保有

法人税と合わせて検討

固定資産税軽減効果が大きくなる可能性

設備投資額が大きい企業ほど、法人税だけでなく固定資産税まで含めて投資後の税負担を試算することが重要です。


固定資産税特例は今後見直し・強化の可能性

経済産業省は、固定資産税特例について、令和9年度税制改正で見直し・延長を要望する方向を示しています。


中小企業の付加価値労働生産性の成長率について、

  • 3年間で9%向上

  • 5年間で15%向上

を目標とし、5年間を重点期間として、赤字企業も含めた中小企業の生産性向上を促す観点から制度の見直し・強化を検討するとされています。


ただし、これは2026年8月時点での検討方向であり、制度延長や具体的な改正内容が決定したものではありません。


両制度を併用するときのチェックリスト

チェック項目

確認内容

法人区分

各制度の対象法人に該当するか

投資額

大胆な投資促進税制の投資要件を満たすか

設備種類

両制度それぞれの対象設備か

取得価額

各設備の金額基準を満たすか

投資計画

大胆な投資促進税制の計画確認を受けるか

市区町村

導入促進基本計画を確認したか

固定資産税計画

必要な認定等を受けるか

取得時期

各制度の適用期限を確認したか

法人税申告

必要書類を添付するか

固定資産税申告

必要な申告手続を行なうか


よくある疑問

Q. 大胆な投資促進税制と固定資産税特例は同じ設備に使えますか?

A. 両制度それぞれの要件を満たす場合には、重複適用が可能です。

ただし、対象設備や手続が異なるため、個別に要件確認が必要です。


Q. 中小企業経営強化税制とも併用できますか?

A. 大胆な投資促進税制を適用する場合、中小企業経営強化税制やカーボンニュートラル投資促進税制など一定の税制とは原則として併用できないとされています。


Q. 固定資産税特例は全国一律ですか?

A. 市区町村によって対象設備等が異なる場合があります。

設備所在地の市区町村における「導入促進基本計画」を確認する必要があります。


Q. 赤字でも固定資産税特例に意味はありますか?

A. 固定資産税は所得に関係なく一定の設備等に課税されるため、資料では赤字企業でも利用できる点が制度の特徴として示されています。


まとめ

令和8年度税制改正で創設された大胆な投資促進税制では、一定の設備投資について即時償却または税額控除を利用できます。


この制度は、中小企業経営強化税制やカーボンニュートラル投資促進税制など一定の制度とは原則として併用できません。


一方で、中小企業向けの固定資産税の課税標準の特例については重複適用が可能です。


ただし、

  • 対象設備

  • 金額基準

  • 計画の確認・認定

  • 税務申告の流れ

は両制度で異なります。


そのため、同じ設備について両制度を利用したい場合は、それぞれの要件を個別に確認する必要があります。


また、固定資産税特例は市区町村によって対象設備等が異なる場合があるため、設備所在地の「導入促進基本計画」の確認も重要です。


大型の設備投資を予定している中小企業では、法人税だけでなく固定資産税まで含めて適用できる優遇税制を確認し、設備取得前から申請スケジュールを組んでおくとよいでしょう。



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【この記事の執筆者】

安田 亮(公認会計士・税理士)

安田亮公認会計士・税理士事務所 代表

京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。

現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。

事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。


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