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路線価と地価公示価格の違いとは?「一物五価」と相続税・土地売却の注意点を税理士が解説

執筆者の写真: 安田亮
安田亮
11 時間前
読了時間: 11分

おはようございます!代表の安田です。


土地の価格を調べていると、「路線価」「地価公示価格」「固定資産税評価額」など、複数の価格が出てきます。


同じ土地であるにもかかわらず、資料によって表示される価格が異なるため、「結局、この土地はいくらなのか」と疑問に感じる方も多いでしょう。


土地には、利用目的や評価主体が異なる複数の価格があることから、一般に「一物五価」といわれます。


その中でも、相続税・贈与税の土地評価で重要になるのが「路線価」、一般的な土地取引の指標として利用されるのが「地価公示価格」です。


本記事では、路線価と地価公示価格の違い、両者の関係、東京都中央区における価格上昇の事例、土地を売却する際に確認したい税制について、税理士が分かりやすく解説します。


土地の価格はなぜ一つではないのか

土地は、株式のように全国共通の市場で常時売買されているものではありません。

同じ地域であっても、次のような条件によって取引価格が変わります。

  • 所在地

  • 土地の形状

  • 面積

  • 道路への接し方

  • 周辺環境

  • 用途地域

  • 建築できる建物の種類

  • 売主・買主の事情

  • 取引時期


さらに、土地価格は、実際の売買、相続税・贈与税、固定資産税、公共用地の取得など、それぞれ異なる目的で評価されます。そのため、一つの土地に複数の価格が存在します。


土地の「一物五価」とは

一般に、土地には次の5つの価格があるとされています。

土地価格の種類

主な位置付け

実勢価格

実際の不動産取引で成立する価格

地価公示価格

一般の土地取引の指標などとして利用される価格

基準地価

都道府県が公表する土地価格の指標

路線価

相続税・贈与税における土地評価の基礎となる価格

固定資産税評価額

固定資産税の計算などに用いられる評価額

これらは、同じ土地について必ず同額になるものではありません。

それぞれ評価目的や算定方法が異なるため、土地の価格を確認するときは、「何のために使う価格なのか」を意識することが重要です。



例えば、相続税申告で使用する路線価を見て、その金額で土地を売却できるとは限りません。反対に、実勢価格が高い土地であっても、相続税評価額が同じ金額になるわけではありません。


地価公示価格とは

地価公示価格とは、地価公示法に基づいて公表される土地価格です。


一般の土地取引における指標や、公共事業のために土地を取得するときの価格算定基準などに利用されます。


法律上は、土地について自由な取引が行われるとした場合に、その取引において通常成立すると認められる価格とされています。


<地価公示価格の主な役割>

  • 一般の土地取引における価格の目安

  • 公共事業用地の取得価格を算定する際の基準

  • 不動産鑑定評価における参考情報

  • 地域の地価動向を確認するための指標

  • 路線価を算定する際の参考価格


ただし、地価公示価格が、そのまま個別の土地の売買価格になるわけではありません。

実際の売買価格は、土地の個別事情や売買時点の市場環境、当事者間の交渉などによって変動します。


路線価とは

路線価とは、道路に面する標準的な宅地の1平方メートル当たりの価額です。


国税庁が毎年7月に公表し、その年の1月1日時点における評価額が示されます。

相続税や贈与税を計算するときには、原則として、相続や贈与により取得した土地を評価する必要があります。


路線価が設定されている地域では、一般に、その路線価を基礎として土地の相続税評価額を計算します。


路線価の算定で参考とされる価格

資料では、路線価は次のような価格を基に算定されると説明されています。

  • 地価公示価格

  • 実際の売買事例に基づく価格

  • 不動産鑑定士等による鑑定評価額

  • 土地価格に精通した者の意見価格


一つの価格だけを機械的に使用するのではなく、複数の情報を参考として設定されます。


路線価は地価公示価格の80%程度が目安

路線価は、相続税や贈与税の課税価格を計算するための目安として、一般に地価公示価格水準の80%程度を目途に設定されています。



ただし、すべての土地について、路線価が地価公示価格のちょうど80%になるわけではありません。


路線価は、地価公示価格だけでなく、売買事例、鑑定評価、専門家の意見なども踏まえて設定されるためです。


また、実際に相続税評価額を計算するときには、路線価に土地の面積を掛けるだけでなく、土地の形状や道路への接し方などに応じた各種補正が必要になる場合があります。


路線価と地価公示価格の違い

両者の違いを整理すると、次のようになります。

項目

路線価

地価公示価格

主な目的

相続税・贈与税の土地評価

一般の土地取引の指標等

公表主体

国税庁

評価時点

毎年1月1日

毎年1月1日

公表時期

毎年7月

原則として毎年3月

表示方法

道路ごとに1㎡当たりの価格を表示

標準地ごとに1㎡当たりの価格を表示

価格水準

地価公示価格の80%程度が目安

通常の取引で成立すると認められる価格

主な税務上の用途

相続税・贈与税

路線価算定の参考等

相続税や贈与税の試算を行う場合は路線価を確認し、土地の一般的な価格動向を確認する場合には地価公示価格が参考になります。

地価公示価格が上がると路線価も上がる?

路線価は、地価公示価格や実際の売買価格などを参考に算定されます。

そのため、地域の地価公示価格や実勢価格が上昇すると、路線価も上昇する可能性があります。

路線価が上がれば、同じ土地を保有していても、相続税・贈与税の評価額が前年より高くなることがあります。



特に、都市部や再開発地域などでは、土地価格の上昇によって相続税評価額が大きく変動することがあります。


東京都中央区では地価公示価格が2倍以上に

東京都中央区の住宅地について、リーマン・ショックの影響を受けた平成21年・平成22年と、令和8年の地価公示価格を比較してみましょう。


<住宅地の上位価格の比較>

1㎡当たりの上位価格

令和8年との比較

平成21年

120万円

令和8年は約2.4倍

平成22年

105万円

令和8年は約2.7倍

令和8年

285万円

令和8年の上位価格は、平成21年・平成22年と比べて2倍を超える水準となっています。

土地を長期間所有している場合、購入当時の感覚と現在の地価との間に、大きな差が生じている可能性があります。


全国最高路線価「鳩居堂前」も大幅に上昇

東京都中央区銀座にある、いわゆる「鳩居堂前」は、全国で最も高い路線価が設定される地点として知られています。各年の路線価を比較すると、次のようになります。


<鳩居堂前の路線価>

年分

1㎡当たりの路線価

令和8年との比較

平成21年分

3,120万円

令和8年は約1.7倍

平成22年分

2,320万円

令和8年は約2.3倍

令和8年分

5,336万円

地価公示価格だけでなく、路線価も大幅に上昇していることが分かります。


相続財産に地価上昇地域の土地が含まれている場合、過去に試算した相続税額が現在もそのまま当てはまるとは限りません。


定期的に最新の路線価で試算し直すことが重要です。


路線価だけで実際の売却価格は判断できない

路線価は、相続税・贈与税の土地評価に使用する価格です。

そのため、次のような使い方には注意が必要です。

  • 路線価だけで土地の売却価格を決める

  • 路線価に面積を掛けた金額を時価と考える

  • 路線価がない土地は価値がないと考える

  • 路線価が前年と同じなら実勢価格も同じと考える

  • 路線価の80%を戻せば必ず時価になると考える

土地を実際に売却する場合は、近隣の成約事例、不動産会社の査定、不動産鑑定なども含めて検討する必要があります。


相続税評価では土地の個別事情も重要

路線価が同じ道路に設定されていても、すべての土地の相続税評価額が同じになるわけではありません。


実際の土地評価では、例えば次のような事情が影響することがあります。

  • 土地が奥行きの長い形状になっている

  • 間口が狭い

  • 不整形地である

  • 二つ以上の道路に面している

  • 私道を含んでいる

  • 借地権や貸家建付地に該当する

  • 利用に一定の制約がある


したがって、路線価図に記載された金額は、あくまで土地評価の出発点です。

特に土地の形状が複雑な場合や、賃貸物件の敷地となっている場合には、専門的な評価が必要になることがあります。


平成21年・平成22年に取得した土地には特例がある

平成21年度税制改正で設けられた土地譲渡に関する特例があります。

個人が平成21年または平成22年に取得した土地等を売却した場合、一定の要件を満たせば、その土地等に係る譲渡所得の金額から、最大1,000万円を控除できる可能性があります。


<主なポイント>

項目

内容

対象者

個人

取得時期

平成21年または平成22年

対象資産

一定の土地等

所有期間

譲渡年の1月1日時点で5年を超えることなど

控除額

譲渡所得の金額から最大1,000万円

根拠

租税特別措置法第35条の2

リーマン・ショック後の経済対策として設けられた制度ですが、平成21年・平成22年に購入した土地を現在売却する場合にも、要件を満たせば検討対象となります。


1,000万円特別控除は他の特例と併用できない場合がある

平成21年・平成22年に取得した土地等の1,000万円特別控除は、すべての土地売却に無条件で適用できるものではありません。


また、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除」などとは、重複して適用できないとされています。



複数の特例を利用できる可能性がある場合には、それぞれの適用要件と節税効果を比較する必要があります。


単純に控除額の大きい制度を選べばよいとは限らず、土地の取得時期、利用状況、所有期間、他の譲渡損益などを含めて判断します。


土地を相続・贈与・売却するときの確認事項

土地に関する税務では、目的によって確認する価格や制度が異なります。

手続き

主に確認する事項

土地を相続した

相続開始年の路線価、土地の形状、利用状況

土地の贈与を受けた

贈与年の路線価、贈与税の特例の有無

土地を売却する

実際の売却額、取得費、譲渡費用、所有期間

土地を購入する

実勢価格、地価公示価格、将来の利用計画

相続税対策を検討する

最新の路線価、将来の地価動向、納税資金

平成21年・平成22年取得土地を売却する

1,000万円特別控除の適用可否

同じ土地でも、「相続税評価を知りたいのか」「売却価格を知りたいのか」によって見るべき金額が変わります。


相続税対策では定期的な評価の見直しを

路線価は毎年見直されます。

土地価格が上昇している地域では、数年前に行った相続税の試算が、現在の実態と合わなくなっている可能性があります。


特に次のような場合は、最新の路線価を使って再試算するとよいでしょう。

  • 都市部に土地を所有している

  • 駅前や再開発地域に不動産がある

  • 相続人が複数いる

  • 土地の割合が相続財産の多くを占める

  • 納税資金の確保に不安がある

  • 過去の相続税試算から数年が経過している

  • 生前贈与や不動産の売却を検討している


地価が上がると資産価値が増える一方、相続税負担も増える可能性があります。

土地の評価額だけでなく、金融資産とのバランスや納税資金まで含めて検討することが大切です。


まとめ

土地には、実勢価格、地価公示価格、基準地価、路線価、固定資産税評価額という複数の価格があり、一般に「一物五価」といわれます。


地価公示価格は、一般の土地取引の指標などとして利用される価格です。

一方、路線価は相続税・贈与税の土地評価に使用され、地価公示価格水準の80%程度を目途に設定されています。


ただし、路線価がそのまま土地の売却価格になるわけではなく、個別の土地評価でも形状や利用状況などを考慮する必要があります。


東京都中央区の事例では、令和8年の地価公示価格や路線価が、リーマン・ショックの影響を受けた平成21年・平成22年と比較して大幅に上昇しています。


地価が上昇している地域に土地を所有している場合は、相続税評価額も以前より高くなっている可能性があります。


また、平成21年または平成22年に土地等を取得した個人が売却する場合、一定の要件を満たせば、譲渡所得から最大1,000万円を控除できる特例もあります。


土地の相続、贈与、売却を検討するときは、目的に合った土地価格を確認し、利用できる税制も含めて早めに検討しましょう。



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【この記事の執筆者】

安田 亮(公認会計士・税理士)

安田亮公認会計士・税理士事務所 代表

京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。

現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。

事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。


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