相続税の連帯納付義務とは?他の相続人が納めない場合に注意すべきポイント
- 安田亮
- 11 分前
- 読了時間: 11分
こんにちは!代表の安田です。
相続税は、相続人ごとに自分が納める税額を計算し、それぞれが納付する税金です。
そのため、通常は「自分の相続税を期限までに納めれば終わり」と考えがちです。
しかし、相続税には少し怖い制度があります。
それが、相続税の連帯納付義務です。
相続税の連帯納付義務とは、簡単にいうと、同じ被相続人から財産を取得した他の相続人が相続税を納めない場合に、一定の範囲で、他の相続人がその未納分について納付責任を負う制度です。
つまり、自分の相続税をきちんと納めていても、兄弟姉妹など他の相続人が相続税を滞納すると、税務署から「他の相続人の未納分について納付してください」と連絡が来る可能性があるということです。
本日は、相続税の連帯納付義務の基本、延滞税との関係、実務で注意すべきポイントを整理します。
相続税の申告・納付期限
まず、相続税の基本から確認しておきましょう。
相続税の申告と納税は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に行なう必要があります。通常は、被相続人の死亡日の翌日から10か月以内です。
たとえば、1月6日に亡くなった場合には、原則としてその年の11月6日が相続税の申告・納付期限になります。期限が土日祝日に当たる場合には、その翌日が期限とされます。
相続税は、申告期限までに申告するだけでは足りません。
納税も同じ期限までに行なう必要があります。申告期限までに申告していても、税金を期限までに納めなかった場合には、利息に相当する延滞税がかかる場合があります。
相続税は金銭で一括納付するのが原則ですが、一定の要件を満たす場合には、延納や物納といった特別な納税方法もあります。ただし、延納や物納を希望する場合も、申告期限までに申請書等を提出し、税務署の許可を受ける必要があります。
相続税の連帯納付義務とは
相続税の連帯納付義務とは、相続または遺贈により財産を取得した人が、同じ被相続人から財産を取得した他の人の相続税について、一定の範囲で連帯して納付する義務を負う制度です。
国税庁の通達でも、相続税法34条の規定により連帯納付責任がある者に対しては、連帯納付責任がある旨の通知を行うものとされています。
この制度のポイントは、自分が取得した財産の範囲内で責任を負うという点です。
無制限に他の相続人の税金を肩代わりしなければならないわけではありません。
ただし、相続で大きな財産を取得している場合には、その取得財産の範囲内で、他の相続人の未納相続税について納付を求められる可能性があります。
たとえば、父の相続で、長男Aさん、長女Bさん、次男Cさんがそれぞれ財産を取得したとします。AさんとBさんは相続税を期限内に納付しましたが、Cさんが相続税を納めずに滞納した場合、AさんやBさんに対して、Cさんの未納相続税について連帯納付義務の通知が届く可能性があります。
「自分はきちんと納めたから関係ない」とは言い切れない点が、この制度の怖いところです。
なぜ連帯納付義務があるのか
相続税は、亡くなった方の財産を相続人が取得したことに対して課される税金です。
同じ被相続人から財産を取得した相続人同士は、相続税の計算上、全体の遺産や相続人の構成を前提に税額が計算されます。
そのため、税法上は、同じ相続により財産を取得した相続人について、一定の連帯納付責任を負わせる仕組みが設けられています。
実務的には、特定の相続人が多額の財産を取得したにもかかわらず納税しない場合や、取得した財産をすぐに費消してしまった場合などに問題となることがあります。
特に、遺産分割で財産を分ける際に「誰がどの税金をいつ納めるのか」まで確認していないと、後から他の相続人に連帯納付義務の問題が波及することがあります。
連帯納付義務の限度額
連帯納付義務は、他の相続人の相続税を無制限に負担する制度ではありません。
原則として、相続または遺贈により受けた利益の価額を限度として、他の相続人と連帯して納付責任を負うことになります。
国税庁の連帯納付責任の通知例でも、「相続によって受けた利益の価額を限度として、他の相続人と連帯して納付する責任があります」とされています。
たとえば、相続により3,000万円相当の財産を取得した人がいる場合、その人の連帯納付義務の限度は、基本的にはその取得利益の価額を基準に考えることになります。
ただし、実際の限度額の計算では、取得財産の価額、債務控除、納付済みの相続税、各相続人の取得状況などを確認する必要があります。
「相続した財産の範囲内だから大丈夫」と思っていても、財産の大半が不動産で現金が少ない場合には、納付資金の準備が問題になることもあります。
延滞税はどうなるのか
他の相続人が相続税を滞納している場合、気になるのが延滞税です。
相続税を期限までに納めなかった場合には、原則として延滞税が発生します。相続税の納税は申告期限までに行う必要があり、期限までに納めなかったときは利息にあたる延滞税がかかる場合があります。
一方で、国税通則法基本通達では、延滞税に関して、国税通則法60条1項の「納税者」には相続税法34条の連帯納付義務者は含まれないとされています。
このため、相続税の連帯納付義務者については、通常の滞納者本人とまったく同じように延滞税が課されるわけではありません。
もっとも、他の相続人が滞納したまま放置してよいという意味ではありません。
連帯納付義務の通知が届いた場合には、通知内容、対象税額、納付期限、滞納している相続人の状況を確認し、早めに対応することが重要です。
連帯納付義務の通知が来たらどうするか
税務署から連帯納付義務に関する通知が届いた場合には、まず落ち着いて内容を確認しましょう。
確認すべきポイントは、主に次のような点です。
誰の相続税についての通知なのか
どの相続人が滞納しているのか
対象となっている税額はいくらか
自分の連帯納付義務の限度額はいくらか
すでに滞納者本人から納付がされていないか
延納や担保の状況はどうなっているか
通知が届いたからといって、すぐに全額を無条件で支払うべきとは限りません。
一方で、放置すると滞納処分などの問題につながる可能性もあります。
国税庁の通達では、連帯納付責任のある者に対する滞納処分は、連帯納付責任に係る督促を行った上で、緊急を要する場合を除き、事前に納付しょうようを行った後に行うものとされています。
そのため、通知が来た段階で、税務署に内容を確認し、必要に応じて専門家に相談することが大切です。
遺産分割時に確認しておくべきこと
相続税の連帯納付義務をめぐるトラブルを避けるためには、相続税の申告時だけでなく、遺産分割の段階から確認しておくことが重要です。
特に、次のようなケースでは注意が必要です。
相続人の一部が多額の財産を取得する場合
相続人の一部が現金ではなく不動産を中心に取得する場合
相続人間で関係が良くない場合
相続人の一部に納税資金が不足している場合
相続人の一部が遠方に住んでいて連絡が取りにくい場合
遺産分割協議では、財産の分け方だけでなく、相続税の納付資金をどのように確保するかもセットで確認しておく必要があります。
たとえば、不動産を取得する相続人に現金が少ない場合には、その人が相続税を納められるのかを確認しておくべきです。
また、相続税の納付期限は、原則として相続開始を知った日の翌日から10か月以内です。
遺産分割協議が長引くと、納付資金の準備も遅れやすくなります。
「相続税は各自で納める」というだけでは不十分で、実際に納付が完了したかどうかまで確認しておくと安心です。
相続人間で納税状況を共有しておく
相続税の申告では、複数の相続人が共同で申告書を作成することが多くあります。
しかし、申告書を提出した後の納税は、相続人ごとに行われます。
ここで注意したいのが、「申告書を出した=全員が納税した」ではないという点です。
税理士が申告書を提出していても、各相続人が実際に納税を済ませたかどうかまでは別問題です。
そのため、相続人間で次のような確認をしておくとよいでしょう。
各相続人の納付税額
各相続人の納付予定日
納付方法
納付資金の準備状況
納付完了後の確認方法
特に、相続税の納付書は相続人ごとに作成されることが多いため、納付書を受け取っただけで安心せず、実際に納付したかどうかまで確認することが大切です。
相続税の延納・物納も検討する
相続税は、原則として金銭一括納付です。
しかし、相続財産の大半が不動産で、現金や預金が少ない場合には、期限までに一括納付することが難しいケースもあります。
このような場合には、延納や物納の制度を検討することになります。
延納は、相続税を何年かに分けて金銭で納める制度です。
物納は、相続などで取得した財産そのもので納める制度です。
ただし、延納や物納は自由に選べるものではなく、要件を満たした上で、申告期限までに申請書等を提出し、税務署の許可を受ける必要があります。
相続人の一部に納税資金がない場合には、他の相続人に連帯納付義務の問題が波及する前に、延納・物納・不動産売却・代償分割などを検討しておくことが重要です。
実務でありがちなトラブル
相続税の連帯納付義務では、次のようなトラブルが起こりがちです。
兄弟の一人が不動産を取得したが、納税資金を準備できなかった
相続人の一人が相続税を納めたと思っていたが、実際には未納だった
相続人同士の関係が悪く、納税状況を確認できなかった
遺産分割協議書では税金の負担について明確にしていなかった
相続後に財産を使ってしまい、納税資金が不足した
他の相続人の未納分について税務署から通知が来て、初めて問題に気づいた
こうしたトラブルは、申告書の作成だけでなく、納税資金と納付状況を確認しておけば防げることがあります。
相続税は「申告して終わり」ではなく、「全員が期限内に納付して終わり」と考えるべきです。
確認しておきたいポイント
相続税申告を行なう際は、財産評価や税額計算だけでなく、納税実務にも注意が必要です。
特に、相続人が複数いる場合には、次の点を確認しておくとよいでしょう。
各相続人の納付税額を明確に伝える
納付書の交付状況を確認する
納付期限を相続人ごとに説明する
納付資金に不安がある相続人がいないか確認する
延納・物納の必要性を検討する
連帯納付義務があることを説明する
相続人間で納付状況を確認してもらう
また、申告書提出後も、必要に応じて「納付はお済みですか」と一言確認するだけで、トラブルを防げることがあります。
相続税の申告では、税額計算の正確性だけでなく、納付まで見届ける姿勢が大切です。
まとめ
相続税には、他の相続人が納めない場合に、一定の範囲で他の相続人が納付責任を負う「連帯納付義務」があります。
自分の相続税をきちんと納めていても、他の相続人が相続税を滞納した場合には、税務署から連帯納付義務に関する通知が届く可能性があります。
相続税の申告・納付期限は、原則として被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内です。申告期限までに申告しなかった場合や、少なく申告した場合には加算税や延滞税がかかる場合があり、納税が遅れた場合にも延滞税がかかる場合があります。
相続税の連帯納付義務で注意すべきポイントは、次の3つです。
1つ目は、自分の納税だけでなく、他の相続人の納付状況も確認しておくことです。
2つ目は、遺産分割の段階で、各相続人が納税資金を確保できるかを確認しておくことです。
3つ目は、税務署から連帯納付義務の通知が届いた場合には、放置せず、対象税額や限度額を確認して早めに対応することです。
相続税は、申告書を提出すれば終わりではありません。
相続人全員が期限内に納付を済ませて、はじめて安心できます。
遺産分割や相続税申告を進める際には、財産の分け方だけでなく、納付資金と納付状況まで確認しておきましょう。
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【この記事の執筆者】
安田 亮(公認会計士・税理士)
安田亮公認会計士・税理士事務所 代表
京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。
現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。
事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。






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