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消費税の「特定期間」とは?設立2期目から課税事業者になる落とし穴を税理士が解説

執筆者の写真: 安田亮
安田亮
8月7日
読了時間: 12分

更新日:8月30日

こんにちは!代表の安田です。


会社を設立したばかりの経営者から、よく次のような相談を受けます。

  • 会社設立後2年間は消費税が免税になると聞きました

  • 資本金を1,000万円未満にしているので、しばらく消費税は関係ないですよね

  • 設立1期目の売上が大きくなりそうですが、2期目も免税事業者でいられますか


たしかに、新設法人は設立1期目・2期目に基準期間がないため、原則として消費税の納税義務が免除されます。


しかし、必ず2年間免税になるわけではありません。

特に注意したいのが「特定期間」による判定です。

設立1期目の前半で売上や給与の支払いが大きくなる会社では、設立2期目から消費税の課税事業者になることがあります。


本日は、消費税の特定期間とは何か、設立2期目から課税事業者になるケース、創業時に確認しておくべきポイントについて、税理士の視点からわかりやすく解説します。


新設法人は原則として設立1期目・2期目が免税になりやすい

消費税では、原則として「基準期間」の課税売上高が1,000万円以下であれば、その課税期間の消費税の納税義務は免除されます。


個人事業者の場合の基準期間は前々年、事業年度が1年である法人の場合の基準期間は前々事業年度です。つまり、法人では通常、2期前の課税売上高を見て、その期の消費税の納税義務を判定します。


新しく設立した法人の場合、設立1期目や2期目には、まだ2期前の事業年度がありません。

そのため、原則だけで考えると、設立1期目・2期目は免税事業者になりやすいといえます。


ただし、ここにいくつかの例外があります。

代表的なものが、次のようなケースです。

  • 設立時または事業年度開始時の資本金が1,000万円以上である場合

  • 特定新規設立法人に該当する場合

  • 課税事業者選択届出書を提出している場合

  • インボイス登録をしている場合

  • そして今回のテーマである「特定期間」の判定に該当する場合です。


つまり、「設立から2年間は必ず免税」という理解は危険です。


特定期間とは何か

特定期間とは、簡単にいうと、消費税の納税義務を判定するために使われる「前期前半の6か月間」のことです。


国税庁は、基準期間の課税売上高が1,000万円以下であっても、特定期間の課税売上高が1,000万円を超える場合には課税事業者になると説明しています。法人の場合の特定期間は、原則として、その事業年度の前事業年度開始の日以後6か月の期間です。


たとえば、12月決算の法人であれば、通常は前期の1月1日から6月30日までが特定期間になります。


この期間の課税売上高が1,000万円を超えると、2期前の売上がなくても、翌期は課税事業者になる可能性があります。


ただし、この判定には重要な救済があります。

国内事業者の場合、特定期間の1,000万円判定については、課税売上高に代えて、特定期間中に支払った給与等の金額で判定することができます。


つまり、特定期間の課税売上高が1,000万円を超えていても、給与等支払額が1,000万円以下であれば、給与等支払額による判定を使うことで免税事業者となる余地があります。


設立2期目から課税事業者になる典型例

たとえば、次のような会社を考えてみます。

  • 資本金500万円で株式会社を設立し、12月決算とする

  • 設立日は1月6日

  • 1期目の前半から営業が順調で、1月から6月までの課税売上高が毎月500万円、合計3,000万円になった

  • 役員報酬や従業員給与を毎月200万円支払っており、1月から6月までの給与等支払額は合計1,200万円だった


この場合、設立1期目には基準期間がないため、資本金1,000万円未満など他の例外に該当しなければ、原則として免税事業者です。


しかし、設立2期目については、1期目の特定期間を確認します。

この会社では、特定期間の課税売上高が3,000万円、給与等支払額も1,200万円です。


課税売上高も給与等支払額も1,000万円を超えているため、設立2期目は課税事業者になる可能性が高いです。


ここで大切なのは、「1期目は免税でも、2期目は免税とは限らない」という点です。

設立直後から売上が大きく伸びる会社、広告費をかけて一気に集客する会社、役員報酬や人件費を高く設定する会社では、特定期間の判定を必ず確認する必要があります。


給与等支払額で判定できる点が重要

特定期間の判定では、課税売上高だけを見るわけではありません。


国内事業者の場合、特定期間の課税売上高が1,000万円を超えていても、給与等支払額が1,000万円以下であれば、給与等支払額による判定を選ぶことができます。


これは創業初期の会社にとって非常に重要です。

たとえば、設立1期目の前半6か月で課税売上高が1,500万円あったとしても、給与等支払額が800万円であれば、給与等支払額による判定では1,000万円以下です。


この場合、他の例外に該当しなければ、設立2期目も免税事業者となる余地があります。


一方、売上も給与も大きい会社では、課税事業者になる可能性が高くなります。

特定期間の給与等支払額には、所得税の課税対象となる給与、賞与などが含まれます。一方、所得税が非課税とされる通勤手当や旅費等は含まれず、未払額も含まれません。


したがって、単に「人件費」や「役員報酬の発生額」を見るのではなく、特定期間中に実際に支払った給与等の金額を確認する必要があります。


設立日や決算期によって特定期間が変わる

特定期間は、常に「前期の1月から6月」と決まっているわけではありません。

12月決算で事業年度が1年の法人であれば、通常は1月1日から6月30日が特定期間になります。


しかし、新設法人の場合、1期目が1年未満になることが多く、設立日や決算期によって特定期間の取り方が変わることがあります。


国税庁は、新たに設立した法人で前事業年度が1年でない場合について、設立1期目が8か月以上の場合や、設立1期目が8か月未満の場合などに分けて、特定期間の考え方を示しています。


特に重要なのは、設立1期目が7か月以下の場合です。

国税庁の質疑応答事例では、前事業年度が7か月以下の場合には、特定期間に該当しない例が示されています。


そのため、設立時に決算期をどう設定するか、途中で決算期変更を行うかによって、2期目の消費税判定に影響することがあります。


ただし、これは単なる形式だけで判断すべきものではありません。

決算期は、消費税だけでなく、法人税、資金繰り、繁忙期、金融機関対応、株主対応、管理体制などにも関係します。


「消費税だけを見て決算期を決める」のではなく、事業全体の運営を踏まえて判断することが大切です。


資本金1,000万円未満でも安心できない

創業時には、資本金を1,000万円未満にする会社が多いです。


これは、設立時の資本金が1,000万円以上である新設法人は、原則として設立1期目から消費税の課税事業者になるためです。


一方で、資本金を1,000万円未満にしていれば、それだけで必ず2期目まで免税になるわけではありません。


設立1期目の特定期間における課税売上高や給与等支払額が1,000万円を超えると、2期目から課税事業者になることがあります。


つまり、創業時の消費税判定では、次の順番で確認する必要があります。

  • まず、資本金が1,000万円以上かどうか。

  • 次に、インボイス登録をしているかどうか。

  • そのうえで、設立2期目については、特定期間の課税売上高と給与等支払額が1,000万円を超えていないか

を確認します。


「資本金を999万円にしたから大丈夫」と安心していると、2期目の消費税申告を失念するおそれがあります。


インボイス登録をしている場合は免税にならない

現在の実務では、インボイス制度との関係も非常に重要です。


基準期間の課税売上高が1,000万円以下であっても、適格請求書発行事業者、いわゆるインボイス登録事業者になっている場合には、消費税の納税義務は免除されません。


そのため、特定期間の課税売上高や給与等支払額が1,000万円以下であっても、インボイス登録をしていれば課税事業者になります。


B to B取引が中心の会社では、取引先からインボイス登録を求められることがあります。

この場合、免税事業者でいられる可能性と、取引先との関係を比較して判断しなければなりません。

特に、設立直後の会社では、

  • 資本金1,000万円未満

  • 特定期間の給与等支払額1,000万円以下

  • インボイス登録あり

というケースもあり得ます。


この場合、資本金や特定期間の判定だけを見れば免税でも、インボイス登録により課税事業者になります。


特定期間の判定を見落とすとどうなるか

特定期間の判定を見落としてしまうと、消費税の申告漏れにつながります。


設立2期目は免税だと思い込んでいたところ、実は特定期間の課税売上高と給与等支払額が1,000万円を超えており、課税事業者だったというケースです。


この場合、本来は2期目の消費税申告・納税が必要です。

申告期限後に気づいた場合、消費税本税だけでなく、延滞税や無申告加算税などの負担が生じる可能性があります。


また、消費税は法人税や所得税と違い、「預かった消費税から支払った消費税を差し引く」という性格があります。


資金繰り上、消費税の納税資金を確保していないと、決算後に大きな納税負担が発生することがあります。


特に、利益が出ているかどうかに関係なく、課税売上があれば消費税の納税が発生する可能性があります。


赤字でも消費税の納税が必要になることがある点には注意が必要です。


創業時に検討したい実務上のポイント

特定期間による課税事業者化を避けたい、または事前に把握しておきたい場合には、創業時からいくつかのポイントを確認しておく必要があります。


まず、決算期をどうするかです。

設立日と決算期の組み合わせによって、設立1期目の長さや特定期間の有無が変わることがあります。


次に、役員報酬や給与の支払時期です。

特定期間の給与等支払額は、未払額ではなく、実際に支払った金額で判定します。そのため、役員報酬や給与の支払い開始時期、賞与の支給時期によって、特定期間の判定に影響が出ることがあります。

ただし、給与の支払時期を不自然に操作することは、労務管理や役員報酬の税務上の問題を招く可能性があります。


また、課税売上高の見込みも確認が必要です。

設立1期目の前半で大きな売上が見込まれる場合には、2期目から課税事業者になる前提で、請求書の消費税表示や納税資金の準備をしておくべきです。


さらに、インボイス登録をするかどうかも重要です。

B to B取引が中心の場合には、インボイス登録をしないことで営業上の不利益が生じる可能性があります。一方、BtoC取引が中心であれば、免税事業者としてスタートするメリットが大きい場合もあります。


人件費月150万円超は一つの目安になる

特定期間の給与等支払額は、6か月合計で1,000万円を超えるかどうかで判定します。

単純に月平均で考えると、1,000万円 ÷ 6か月で、月約166万円です。


ただし、役員報酬、従業員給与、賞与などがある場合には、月によって支払額が変動します。


そのため、創業初期に毎月150万円を超えるような人件費を予定している場合には、特定期間の判定を意識しておくべきです。


特に、役員報酬を高めに設定する会社、創業直後から従業員を複数名雇用する会社、営業担当者やエンジニアを採用して一気に事業を拡大する会社では、給与等支払額が1,000万円を超える可能性があります。


「売上はまだ不安定だから大丈夫」と考えていても、給与等支払額が大きい場合には、特定期間の判定に影響します。


もっとも、給与等支払額だけで課税事業者になるわけではありません。

特定期間の課税売上高が1,000万円を超えており、かつ給与等支払額による判定でも1,000万円を超える場合に注意が必要です。


売上と給与の両方をセットで確認することが重要です。


免税にこだわりすぎない判断も必要

消費税の免税期間は、創業初期の資金繰りにとって大きなメリットです。


しかし、必ずしも免税事業者でいることが最善とは限りません。

たとえば、創業初期に大きな設備投資を行う場合、課税事業者になることで消費税の還付を受けられる可能性があります。


また、BtoB取引が中心で取引先がインボイスを求める場合には、免税事業者であることが営業上のハードルになることもあります。


さらに、急成長を目指す会社では、2期目から課税事業者になることを前提に、最初から価格設計や請求書発行、納税資金の管理を整えておく方がよい場合もあります。


消費税の免税判定は、単なる節税テクニックではなく、事業計画や資金繰りと一体で考えるべきテーマです。


まとめ:設立2期目の消費税は「特定期間」を必ず確認する

会社設立後2年間は消費税が免税になると思われがちですが、実際には必ずしもそうではありません。


資本金が1,000万円未満であっても、設立1期目の特定期間における課税売上高と給与等支払額が1,000万円を超える場合、設立2期目から課税事業者になることがあります。


特定期間は、法人の場合、原則として前事業年度開始の日以後6か月の期間です。

ただし、新設法人では設立日や決算期によって判定期間が変わることがあり、前事業年度が7か月以下の場合には特定期間に該当しないケースもあります。


また、インボイス登録をしている場合には、特定期間や基準期間の判定にかかわらず、課税事業者になります。


創業時には、次の点を早めに確認しておきましょう。

  • 資本金はいくらにするのか

  • 決算期をいつにするのか

  • 設立1期目の課税売上高はどれくらい見込まれるのか

  • 役員報酬や給与等支払額はいくらになるのか

  • インボイス登録をする必要があるのか


消費税の判定を後回しにすると、設立2期目に思わぬ納税負担が発生することがあります。

会社設立時には、法人税や社会保険だけでなく、消費税の特定期間の判定まで含めてシミュレーションしておくことをおすすめします。


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【この記事の執筆者】

安田 亮(公認会計士・税理士)

安田亮公認会計士・税理士事務所 代表

京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。

現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。

事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。

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