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非居住者への国内不動産仲介は消費税10%に|2026年10月1日から輸出免税の対象外

執筆者の写真: 安田亮
安田亮
9 分前
読了時間: 10分

こんばんは!代表の安田です。


令和8年度税制改正により、非居住者に対する不動産仲介サービスの消費税の取扱いが見直されました。


2026年10月1日以後に行なう、国内に所在する不動産の売買・交換・貸借の代理または媒介については、相手方が非居住者であっても輸出免税の対象外となり、原則として消費税10%の課税対象となります。


これまで非居住者向けの仲介手数料を「輸出免税売上」として処理していた不動産会社では、

  • 会計システムの税区分

  • 請求書・インボイス

  • 見積書

  • 営業担当者への周知

  • 非居住者への説明

などを変更する必要があります。


対応が漏れて消費税を上乗せせずに請求してしまうと、後から顧客へ追加請求できず、不動産会社側が消費税相当額を実質的に負担する可能性もあります。


本記事では、今回の改正内容、経過措置、実務上の注意点について、公認会計士・税理士が解説します。


非居住者への役務提供は原則「輸出免税」

消費税では、非居住者に対して行なう一定の役務提供は、原則として輸出免税の対象となります。


そのため、これまで海外に居住するオーナーや投資家などに対して不動産仲介サービスを提供する場合、一定の要件のもとで仲介手数料を輸出免税として処理するケースがありました。


ただし、非居住者に対する役務提供であれば、すべて輸出免税になるわけではありません。

国内で直接便益を受ける一定のサービスなどについては、従来から輸出免税の対象外とされています。


今回の税制改正により、この「輸出免税の対象外」となる取引の範囲に、国内不動産の仲介等が明確に追加されました。


2026年10月1日から国内不動産の仲介は輸出免税対象外

今回の改正で対象となるのは、国内に所在する不動産(不動産の上に存する権利を含む)の売買、交換または貸借の代理・媒介です。


分かりやすく整理すると、次のようになります。

役務提供

相手方

2026年10月1日以後

国内不動産の売買仲介

非居住者

原則10%課税

国内不動産の賃貸仲介

非居住者

原則10%課税

国内不動産の交換の代理・媒介

非居住者

原則10%課税

その他の非居住者向け役務

非居住者

個別に輸出免税要件を判定

重要なのは、「顧客が海外に住んでいるから免税」ではなく、「どのようなサービスを提供しているか」で判断するという点です。


改正前と改正後を比較

例えば、日本国内のマンションを所有する海外居住者から売却の仲介を依頼されたケースを考えてみます。仲介手数料が100万円だった場合です。


<改正前のイメージ>

一定の要件のもとで輸出免税に該当するのであれば、

項目

金額

仲介手数料

1,000,000円

消費税

0円

請求額

1,000,000円

という処理が考えられました。


<改正後>

2026年10月1日以後の対象取引では、

項目

金額

仲介手数料

1,000,000円

消費税10%

100,000円

請求額

1,100,000円

となります。


100万円の仲介手数料であれば、請求額に10万円の差が生じます。

金額が大きい不動産取引ほど、請求漏れによる影響も大きくなります。


なぜ税制が改正されたのか

今回の改正の背景として、国内居住者との課税上の不均衡があったことが挙げられています。


例えば、同じ日本国内の不動産について同じ仲介サービスを提供しているにもかかわらず、

  • 顧客が国内居住者 → 消費税10%

  • 顧客が非居住者 → 輸出免税

となれば、顧客の居住地によって仲介サービスの税負担に差が生じます。


今回の改正では、国内不動産という日本国内との結び付きが強いサービスについて、非居住者向けであっても消費税を免除しない仕組みに変更されました。


輸出免税の対象外となる役務を整理

非居住者に対する役務提供のうち、輸出免税の対象外となるものについて次のように整理されています。


<輸出免税の対象外となる主な役務>

  • 国内に所在する資産の運送・保管

  • 国内不動産の売買・交換・貸借の代理または媒介

  • 国内での飲食・宿泊

  • 上記に準ずる、国内で直接便益を享受するもの


今回追加された不動産仲介については、「日本国内に所在する不動産」であることがポイントとなります。


2026年10月1日以後の役務提供から適用

改正は、2026年10月1日以後に行われる役務の提供から適用されています。

したがって、不動産会社では2026年10月を境に、同じ非居住者向け仲介でも消費税区分が変わるケースがあります。


経理担当者としては、契約日だけを見るのか仲介業務を行った日はいつなのか経過措置の対象となる契約なのかを確認する必要があります。


重要な経過措置|2026年3月31日までの契約は旧制度

今回の改正には経過措置があります。

2026年3月31日までに締結した契約に基づいて行なわれる役務提供については、2026年10月1日以後であっても改正前と同様に輸出免税の対象となります。


したがって、実務では次のような判定が必要です。

契約等

基本的な取扱い

2026年3月31日までに契約

経過措置の対象となり得る

2026年4月1日以後に契約

原則として新制度を確認

2026年10月1日以後の対象役務

原則、輸出免税対象外

3月31日以前の契約に基づく対象役務

経過措置により旧制度

つまり、「10月1日以後だから全部10%」と機械的に判断するのも適切ではありません。

過去に締結した契約については契約日を確認する必要があります。


不動産会社は税区分を「輸出免税→課税10%」へ変更

今回の改正で最も直接的に影響するのが、会計システム上の消費税区分です。


これまで、「輸出免税売上(課税売上・税率0%)」としていたものを、「国内課税売上(税率10%)」へ変更するなどの対応が必要とされています。


会計ソフトや基幹システムでは、例えば次の項目を確認しておく必要があります。

確認項目

主な対応

得意先マスター

「海外顧客=輸出免税」と自動設定されていないか

売上税区分

国内課税10%へ変更

請求システム

消費税を加算できるか

インボイス

消費税額等を適切に表示

仕訳テンプレート

過去の輸出免税設定を見直す

売上集計

課税売上として集計されているか

特に「顧客所在地」を基準として税区分を自動判定しているシステムでは注意が必要です。


請求書・インボイスの変更も必要

会計処理だけ変更しても、顧客への請求書が旧設定のままでは請求漏れが発生します。

改正後は対象となる仲介手数料について、国内課税取引として適切な消費税額を計算し、請求書等へ反映する必要があります。


したがって、経理部門だけでなく、

  • 営業

  • 物件管理

  • 契約担当

  • 請求担当

なども今回の改正を理解しておく必要があります。


最も注意したい「消費税の請求漏れ」

今回の税制改正で実務上最も怖いのが、顧客への消費税の請求漏れです。


例えば、本来、「仲介手数料100万円+消費税10万円」と請求すべきところ、従来と同じ感覚で100万円だけ請求してしまったケースです。


この場合、税務上は課税取引であるため、会社側には消費税の納税が生じます。

しかし顧客から10万円を追加で回収できなければ、実質的には会社がその消費税を負担することになりかねません。


消費税を請求し忘れた場合のインパクト

例えば、仲介手数料が税抜1,000万円だったケースを考えます。


本来の請求額は、

  • 仲介手数料:1,000万円

  • 消費税:100万円

  • 合計:1,100万円

です。


ところが誤って1,000万円しか請求しなかった場合、契約条件等によっては後から100万円を追加請求することが難しくなる可能性があります。1件あたりの仲介報酬が大きい不動産会社では、数件のミスでも無視できない損失になり得ます。


営業担当への周知が非常に重要

今回の改正は「経理の消費税設定変更」だけではありません。

顧客との商談段階で、仲介手数料は100万円ですとだけ説明してしまうと、顧客が「税込100万円」と理解する可能性があります。


そのため、「仲介手数料は100万円+消費税10%です」など、価格提示の段階から新しい取扱いに合わせて説明することが重要です。


非居住者だから「免税」と自動判断しない

今回の改正後に特に避けたい判断が、「海外顧客=輸出免税」という機械的な処理です。

例えば、同じ海外法人から受ける報酬でも、

サービス内容

消費税の判定

国内不動産の売買仲介

今回の改正対象

国内不動産の賃貸仲介

今回の改正対象

その他のサービス

取引内容に応じて個別判定

となります。


相手方の所在地だけではなく、何について、どこで、どのような役務を提供したのかを確認する必要があります。


不動産会社が行いたい改正対応チェックリスト

2026年10月以後の取引については、少なくとも次の点を確認しておくとよいでしょう。

確認事項

チェック

非居住者との不動産仲介案件を抽出した

□

対象不動産が国内所在であることを確認した

□

契約締結日を確認した

□

2026年3月31日以前の契約か確認した

□

経過措置の対象となるか確認した

□

消費税区分を10%へ変更した

□

請求書テンプレートを変更した

□

インボイスの表示を確認した

□

顧客マスターの自動税区分を確認した

□

営業担当者へ改正内容を周知した

□

非居住者へ消費税課税を説明できる体制を整えた

□

請求前に消費税額をチェックする体制を設けた

□

<改正前後を一表で整理>

項目

改正前

2026年10月1日以後

対象

非居住者への国内不動産仲介

同左

輸出免税

一定の場合に対象

原則対象外

消費税率

輸出免税なら0%

原則10%

経理区分

輸出免税売上

国内課税売上

請求

消費税を請求しないケース

消費税10%を加算

経過措置

―

2026年3月31日までの契約に一定の経過措置

まとめ

令和8年度税制改正により、2026年10月1日以後、非居住者に対する国内不動産の売買・交換・貸借の代理または媒介は、輸出免税の対象外となりました。


今回のポイントは次のとおりです。

  • 非居住者への役務提供は原則として輸出免税

  • ただし国内不動産の仲介等は2026年10月1日から対象外

  • 国内不動産の売買仲介だけでなく貸借の仲介等も対象

  • 原則として国内課税売上10%へ変更

  • 経理システムの消費税区分を変更する必要がある

  • 請求書・インボイスも見直しが必要

  • 営業部門等への周知も必要

  • 2026年3月31日までに締結した契約には経過措置がある

  • 消費税を請求し忘れると会社側で負担する可能性がある


不動産会社の実務上、最も注意したいのは、過去の税区分や請求方法をそのまま継続してしまうことです。


特に会計システム上、「非居住者 → 自動的に輸出免税」という設定を行なっている場合は、今回の改正対象となる不動産仲介について正しく課税10%へ切り替えられるかを確認する必要があります。


また、経過措置によって2026年3月31日以前の契約とそれ以後の契約で取扱いが分かれるため、契約日を含めた案件別の管理も重要です。


請求漏れが発生してから税務処理を修正するのではなく、営業・契約・請求・経理まで含めた業務フロー全体を見直しておくことが望まれます。



神戸での起業や開業に関するご相談、確定申告にお困りの方、顧問税理士をお探しの方は安田亮公認会計士・税理士事務所までお問い合わせください!


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【この記事の執筆者】

安田 亮(公認会計士・税理士)

安田亮公認会計士・税理士事務所 代表

京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。

現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。

事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。


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