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海外在住者へのオンライン講演料に源泉徴収は必要?非居住者への支払いを税理士が解説

執筆者の写真: 安田亮
安田亮
12 時間前
読了時間: 14分

こんにちは!代表の安田です。


海外在住の大学教授や専門家へ、オンラインセミナーの講師を依頼するケースが増えています。


このとき、主催者側で問題になるのが、講演料から日本の所得税を源泉徴収すべきかどうかです。


非居住者に講演料を支払う場合、一般に「20.42%の源泉徴収が必要」と説明されることがあります。しかし、海外にいる講師がオンラインで講演した場合まで、一律に20.42%を控除するわけではありません。


重要なのは、オンライン配信の場所や参加者の所在地ではなく、講師本人がどこで人的役務を提供したかです。


本日は、海外在住者にオンライン講演を依頼した場合の源泉徴収について、国内源泉所得の判定、来日講演との違い、租税条約の手続、録画データや著作権の取扱いなどを解説します。


非居住者への支払いがすべて源泉徴収対象になるわけではない

所得税法では、日本の居住者は原則として国内外の所得が課税対象となります。


一方、日本国内に住所を有しないなどの「非居住者」は、原則として日本の国内源泉所得についてのみ、日本で所得税が課されます。


したがって、日本企業が海外在住者へ報酬を支払う場合、最初に確認すべきことは、支払先が外国人かどうかではありません。


次の順番で判定します。

  1. 支払先は日本の居住者か、非居住者か

  2. 支払う報酬は国内源泉所得に該当するか

  3. 国内源泉所得であれば源泉徴収の対象か

  4. 租税条約による軽減・免除がないか


国税庁も、非居住者や外国法人については、日本国内で稼得した国内源泉所得が日本の課税対象になると説明しています。


講演料の判定では「講師がどこで話したか」が重要

非居住者が受け取る講演料は、人的役務の提供に対する報酬として扱われます。

所得税法上、非居住者が受け取る給与や人的役務の提供に対する報酬のうち、国内源泉所得となるのは、原則として日本国内で行った勤務や人的役務の提供に基因するものです。


オンライン講演の場合、次のように考えます。

講演時の講師の所在地

原則的な取扱い

講師が海外からオンライン講演

国内源泉所得に該当せず、源泉徴収不要

講師が日本に来て会場で講演

国内源泉所得に該当し、原則20.42%を源泉徴収

講師が来日し、日本のホテル等からオンライン配信

日本国内での人的役務なので、原則20.42%を源泉徴収

国内と海外の双方で業務を行う

国内で提供した役務に対応する部分を区分して検討

つまり、配信システムのサーバーが日本にあるか、受講者が日本にいるか、主催会社が日本法人かという点だけでは、講演料が国内源泉所得になるとは限りません。


海外から行うオンライン講演は原則として源泉徴収不要

たとえば、日本法人がアメリカ在住の大学教授へオンラインセミナーを依頼し、教授がアメリカの自宅や大学から講演したとします。


この場合、講師の人的役務は国外で提供されています。

したがって、講演料は原則として日本の国内源泉所得に該当せず、日本法人が報酬を支払う際に日本の所得税を源泉徴収する必要はありません。


「日本の会社が支払うから国内源泉所得になる」「日本人向けの講演だから国内源泉所得になる」というわけではない点が重要です。


オンライン講演がどこで視聴されたかではなく、講師が実際にどこで講演という役務を行ったかによって判断します。


<具体例>

次の条件を想定します。

  • 主催者:日本法人

  • 講師:アメリカ在住の大学教授

  • 講演場所:アメリカ国内

  • 配信方法:Zoomによるライブ配信

  • 参加者:日本国内の企業関係者

  • 講演料:50万円


この場合、講師はアメリカで人的役務を提供しているため、通常は国内源泉所得に該当せず、50万円をそのまま支払います。

支払報酬料 500,000円/普通預金 500,000円

国内法上の源泉徴収対象となる所得がそもそも発生していないのであれば、租税条約による免税手続をしなければ源泉徴収を省略できない、という関係でもありません。


「国内で配信したか」ではなく「国内で役務を行ったか」

オンライン取引では、「国内」という言葉の意味を取り違えやすいため注意が必要です。

次のような事情があっても、それだけで国内で人的役務を提供したことにはなりません。

  • 日本法人がセミナーを企画した

  • 日本国内の参加者が受講した

  • 日本語で講演した

  • 日本時間に合わせて講演した

  • 日本の配信サービスを利用した

  • 講演料を日本の銀行口座から送金した

  • 日本国内で録画映像を保存・配信した


人的役務の提供場所については、講師が実際に講演を行った場所を確認するのが基本です。

したがって、契約書や講師への確認メールなどに、講演時の所在地を残しておくことをおすすめします。


講師が来日して講演する場合は原則20.42%

海外在住の講師が日本へ来て、会場や日本国内のスタジオ、ホテルなどから講演した場合、その報酬は国内で行った人的役務の提供に対する対価です。


この場合、国内法上は原則として、支払金額の20.42%を源泉徴収します。20.42%は、所得税20%に復興特別所得税を加えた税率です。


たとえば、講演料が50万円の場合、源泉徴収税額は次のようになります。


500,000円×20.42%=102,100円


講師への支払額は39万7,900円です。

支払報酬料 500,000円/普通預金 397,900円
            /預り金  102,100円

源泉徴収した所得税等は、原則として支払った月の翌月10日までに納付します。


海外口座へ送金しても源泉徴収を回避できない

講師が日本国内で講演した場合、報酬の送金先を海外口座にしても、源泉徴収が不要になるわけではありません。


国内源泉所得を国外で支払う場合でも、支払者が日本国内に住所、居所、事務所または事業所等を有するときは、国内で支払ったものとみなして源泉徴収が必要です。


したがって、次の組合せでも原則として源泉徴収対象です。

  • 非居住者が日本で講演する

  • 講演後に海外へ帰国する

  • 日本法人が講演料を海外口座へ送金する


支払場所より先に、講演という人的役務が国内で行われたかを確認しましょう。


来日講演でも租税条約により免税となることがある

国内法上は20.42%の源泉徴収対象となる来日講演でも、日本と講師の居住国との間に租税条約がある場合、日本での課税が免除または軽減される可能性があります。


たとえば、国税庁は、アメリカの大学教授が個人の資格で来日して講演する事例について、日本に恒久的施設を有しないなどの前提のもと、日米租税条約上は日本で免税となり、所定の届出を行えば源泉徴収は不要としています。


ただし、租税条約の内容は国ごとに異なります。

次のような点を確認しなければなりません。

  • 講師の税務上の居住地国

  • 日本とその国との間に租税条約があるか

  • 講演者が大学教授、研究者、芸能人などのどれに当たるか

  • 独立した事業所得として扱われるか

  • 日本国内に恒久的施設があるか

  • 日本での滞在日数

  • 報酬額

  • 報酬の実質的な受益者

  • 条約の特典を受ける資格があるか


単に「大学教授だから免税」「アメリカ人だから免税」と判断してはいけません。


租税条約の届出は原則として支払日の前日まで

租税条約による免税や軽減を源泉徴収の段階で受ける場合、原則として、最初に報酬の支払いを受ける日の前日までに「租税条約に関する届出書」などを提出します。


届出書は講師から支払者へ提出してもらい、支払者を経由して所轄税務署へ提出します。

期限までに届出書が提出されていない場合、支払者は原則として国内法の税率で源泉徴収しなければなりません。


後から租税条約の適用を受けられることが判明した場合は、講師側が支払者を経由して還付請求を行うことができます。


届出を失念した場合

たとえば、来日講演料50万円について、本来は租税条約で免税となるものの、支払前に届出が間に合わなかったとします。


この場合、日本法人は原則として10万2,100円を源泉徴収して支払い、その後、租税条約に関する届出書と還付請求書を提出する方法を検討します。


支払者が独自の判断で源泉徴収を省略するのは避けましょう。


非居住者かどうかは国籍では決まらない

所得税法上の居住者・非居住者の区分は、国籍だけでは決まりません。


日本国籍を持つ人でも、生活の本拠が海外にあり、日本国内に住所を有しないなどの事情によって非居住者となることがあります。


反対に、外国籍の人でも日本国内に生活の本拠があれば、日本の居住者に該当する可能性があります。


海外の大学に所属している日本人教授へ依頼する場合も、「日本人だから居住者」と決めつけず、次の資料や事実関係を確認しましょう。

  • 現在の住所

  • 海外での滞在期間

  • 家族の居住地

  • 勤務先

  • 住居の状況

  • 日本への帰国予定

  • 相手国の居住者証明書


講演料を支払う段階で居住者・非居住者の判断資料を保存しておくことが大切です。


録画データを利用する場合は著作権使用料に注意

海外から行うライブ講演について源泉徴収が不要であっても、契約に録画映像や講演資料の継続利用が含まれている場合は注意が必要です。


たとえば、契約内容が次のようになっているケースです。

  • 講演映像を録画して繰り返し配信できる

  • 講演資料を社内教材として複製できる

  • 講師の著作物をWebサイト上で公開できる

  • 映像や音声を編集して販売用コンテンツに利用できる

  • 講師の著作権やノウハウの使用許諾を受ける


このような場合、支払額の全部または一部が、単なる講演料ではなく、著作権等の使用料に該当する可能性があります。


日本国内の業務に係る著作権等の使用料は、非居住者の国内源泉所得となり、原則20.42%の源泉徴収対象です。


したがって、講師が海外からオンライン講演した=契約金額の全額が必ず源泉徴収不要とは限りません。


講演料と使用許諾料を区分する

録画映像等を継続利用する場合には、契約書で次の事項を明確にしましょう。

  • ライブ講演の報酬

  • 録画の可否

  • 録画データの使用期間

  • 配信対象者

  • 複製や編集の可否

  • 資料の二次利用の範囲

  • 著作権の帰属

  • 使用許諾に対する対価

  • 講演料と使用料の金額区分


講演料と著作権使用料が明確に区分されていなければ、支払額全体の税務処理について争いが生じる可能性があります。


講師ではなく海外の大学へ支払う場合

講師個人ではなく、海外の大学や外国法人へ講演料を支払う場合もあります。

この場合は、講師個人への報酬と同じ処理になるとは限りません。


確認すべき点は次のとおりです。

  • 契約相手は教授個人か、大学か

  • 講演料を受け取る権利を有するのは誰か

  • 大学が講師を派遣する契約なのか

  • 大学が日本国内に恒久的施設を有するか

  • 講演のほか著作権や教材の使用許諾があるか

  • 租税条約上、大学や法人が特典を受けられるか


教授個人が講演を行っていても、請求書の発行者や契約当事者が大学であれば、外国法人への事業所得または人的役務提供事業の対価として別途検討が必要になることがあります。


支払先の銀行口座名義だけではなく、契約上の報酬受領者を確認しましょう。


仲介会社を通じて講師へ依頼する場合

海外の講師紹介会社やエージェントを通して契約する場合も注意が必要です。


仲介会社への支払いが、単なる講師紹介手数料なのか、講師による人的役務の提供を含む一括契約なのかによって取扱いが変わります。


契約書では、少なくとも次の金額を確認します。

  • 講師本人への講演料

  • 仲介会社の紹介手数料

  • 配信システム利用料

  • 通訳料

  • 録画・編集費

  • 著作権等の使用料


一つの請求書に「オンラインセミナー費用一式」としか書かれていない場合、税務上の判定が難しくなります。


旅費や宿泊費も源泉徴収対象になることがある

非居住者を日本へ招へいし、来日講演を依頼する場合には、講演料だけでなく旅費や宿泊費にも注意が必要です。


国税庁の通達では、非居住者が国内で人的役務を提供するための往復旅費や国内滞在費を支払者が負担する場合、原則としてその費用も人的役務の対価に含まれます。


ただし、支払者が航空会社やホテルなどへ直接支払い、通常必要と認められる範囲の費用であれば、対価に含めない取扱いがあります。


たとえば、講師本人へ次の金額をまとめて送金する場合には、源泉徴収対象額に含まれる可能性があります。

  • 講演料50万円

  • 航空券代20万円

  • 宿泊費5万円


一方、日本法人が航空会社やホテルへ直接支払えば、通常必要な範囲の費用については、講演料と区分できる可能性があります。


外貨で支払う場合の換算方法

非居住者への源泉徴収対象報酬を米ドルやユーロで支払う場合は、円換算したうえで源泉徴収税額を計算します。


国税庁は、原則として支払期日の電信買相場を用い、支払いが著しく遅れていない場合には、実際の支払日の電信買相場によることも認めています。


使用した為替レートについては、金融機関のレート表や計算資料を保存しておきましょう。


実務で保存しておきたい資料

海外在住者へオンライン講演料を支払う場合には、源泉徴収不要と判断した根拠を残しておくことが重要です。


少なくとも、次の資料を保存することをおすすめします。

  • 講演契約書

  • 請求書

  • 講師の住所を確認できる資料

  • 講演時の所在地を確認したメール

  • オンライン配信の開催案内

  • 講演日時とタイムゾーン

  • 講演資料

  • 録画・二次利用に関する契約条項

  • 海外送金の記録

  • 租税条約に関する届出書

  • 居住者証明書

  • 支払先が大学等の場合は法人情報

  • 源泉徴収の判定メモ


特に「講師が講演時に海外にいた」という事実は、後から確認しにくいことがあります。

申込時や契約締結時に確認する運用を設けると安心です。


海外講師への支払いで起こりやすいミス

1.非居住者への支払いはすべて20.42%控除する

非居住者への支払いでも、国内源泉所得に該当しなければ日本の源泉徴収は不要です。

海外から行われるオンライン講演は、原則として国内で行う人的役務には該当しません。


2.オンライン配信先が日本なので国内源泉所得と判断する

講演の視聴場所ではなく、講師が実際に役務を提供した場所を確認します。


3.海外口座への送金なら源泉徴収不要と考える

国内で行われた講演の報酬は、海外口座へ送金しても源泉徴収対象となる可能性があります。


4.来日講演なのに源泉徴収をしていない

非居住者が日本国内で講演した場合は、原則として20.42%の源泉徴収が必要です。


5.租税条約があるので自動的に免税と考える

条約の適用要件を満たしていても、源泉徴収段階で免税を受けるには原則として期限までに届出書等を提出する必要があります。


6.講演料と著作権使用料を区分していない

録画映像や資料の二次利用が含まれる場合、使用料として別の源泉徴収判定が必要になることがあります。


7.日本人講師なので居住者として処理する

国籍ではなく、住所や生活の本拠などから居住者・非居住者を判断します。


海外講師への支払いチェックリスト

支払前に、次の事項を確認しましょう。

  • 講師は居住者か非居住者か

  • 講師の税務上の居住国はどこか

  • 契約相手は個人か大学・法人か

  • 講師は講演時にどの国にいるか

  • 講演の一部を日本国内で行っていないか

  • 講演料と著作権使用料が区分されているか

  • 録画、複製、編集、再配信を予定しているか

  • 日本と居住地国との間に租税条約があるか

  • 租税条約の免税・軽減要件を満たすか

  • 届出書等を支払日の前日までに提出できるか

  • 旅費や宿泊費を誰へ支払うか

  • 外貨換算レートの資料を保存しているか

  • 源泉所得税の納付期限を確認したか


まとめ

海外在住者へオンライン講演料を支払う場合、講師が国外から講演を行っているのであれば、その報酬は原則として日本の国内源泉所得に該当せず、源泉徴収は不要です。


ただし、オンライン講演だから常に源泉徴収不要というわけではありません。

重要なポイントは次のとおりです。

  • 非居住者は日本の国内源泉所得について課税される

  • 講演料は講師が人的役務を提供した場所で判定する

  • 海外からのオンライン講演は原則として源泉徴収不要

  • 来日し、日本国内から配信した場合は原則20.42%

  • 海外口座への送金でも、国内講演なら源泉徴収対象になり得る

  • 租税条約により来日講演でも免税になることがある

  • 条約適用には原則として支払日前の届出が必要

  • 録画や資料の二次利用には著作権使用料の論点がある

  • 講師個人ではなく海外大学へ支払う場合は別途検討する

  • 契約書と講演時の所在地を確認できる資料を保存する


非居住者への支払いは、一度源泉徴収を誤ると、支払者側が不足税額や加算税を負担する可能性があります。


海外の講師や専門家へ依頼する場合には、報酬を支払う直前ではなく、契約内容を決める段階で源泉徴収と租税条約の適用関係を確認することが大切です。



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【この記事の執筆者】

安田 亮(公認会計士・税理士)

安田亮公認会計士・税理士事務所 代表

京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。

現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。

事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。

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