top of page

防衛特別所得税は非居住者・外国法人への支払いにも必要|2027年からの源泉徴収と租税条約を解説

  • 執筆者の写真: 安田 亮
    安田 亮
  • 12 時間前
  • 読了時間: 11分

更新日:5 時間前

おはようございます!代表の安田です。


2026年度税制改正により、新たに「防衛特別所得税」が創設されました。

2027年(令和9年)1月1日以後、源泉徴収義務者は、給与や報酬などから所得税を源泉徴収する際、復興特別所得税に加えて防衛特別所得税も徴収し、国へ納付することになります。


防衛特別所得税は、日本国内の居住者に対する給与や報酬だけに課されるものではありません。


海外に住む個人や外国法人へ、日本の国内源泉所得に該当する配当、使用料、不動産賃料などを支払う場合にも、原則として源泉徴収の対象になります。


一方、復興特別所得税の税率が引き下げられるため、通常の国内法に基づく源泉徴収税率の合計は、基本的に改正前と変わりません。


ただし、租税条約を適用する場合には、防衛特別所得税と復興特別所得税を加算しないケースがあります。単に従来の源泉徴収率をそのままシステムへ設定しておけばよい、という話ではない点に注意が必要です。


本日は、防衛特別所得税の概要と、非居住者・外国法人への支払いに関する源泉徴収、租税条約との関係を解説します。


防衛特別所得税とは

防衛特別所得税は、防衛力強化のための財源を確保する目的で創設された、所得税に対する付加税です。


通常の所得税額に対し、原則として1%の税率で課されます。

ここでいう「1%」は、給与や報酬などの支払金額に直接1%を乗じるという意味ではありません。通常の所得税額を基礎として、その1%相当額を防衛特別所得税として計算します。


例えば、国内法に基づく所得税率が20%であれば、防衛特別所得税の負担は支払金額の0.2%相当です。


防衛特別所得税の創設に合わせて、復興特別所得税の税率は、所得税額の2.1%から1.1%へ引き下げられます。そのため、防衛特別所得税1%と復興特別所得税1.1%を合計した付加税率は2.1%となり、従来と同じ水準です。財務省は、防衛特別所得税を2027年1月から導入するとともに、足元の負担増を避けるため復興特別所得税率を引き下げると説明しています。


2027年以降も源泉徴収の合計税率は原則変わらない

改正前後の税率構成は、次のように変わります。

区分

2026年まで

2027年以後

所得税

本来の所得税率

本来の所得税率

復興特別所得税

所得税額の2.1%

所得税額の1.1%

防衛特別所得税

なし

所得税額の1%

付加税の合計

所得税額の2.1%

所得税額の2.1%


例えば、国内法上の所得税率が20%となる支払いについては、次のようになります。


<2026年まで>

  • 所得税:20%

  • 復興特別所得税:20%×2.1%=0.42%

  • 合計税率:20.42%


<2027年以後>

  • 所得税:20%

  • 復興特別所得税:20%×1.1%=0.22%

  • 防衛特別所得税:20%×1%=0.2%

  • 合計税率:20.42%


したがって、源泉徴収する合計額だけを見れば、原則として改正前後で変化はありません。

ただし、税額の内訳は変わります。給与計算システム、支払調書、納付管理などでは、2027年以後の制度に対応しているかを確認する必要があります。


防衛特別所得税は非居住者・外国法人にも課される

日本に住んでいない個人や、海外に本店を置く外国法人であっても、日本の国内源泉所得を受け取る場合には、日本で所得税が源泉徴収されることがあります。

防衛特別所得税についても、通常の所得税と同様に、非居住者や外国法人に対して国内源泉所得を支払う際に併せて源泉徴収します。


ここでいう「非居住者等」とは、一般に次の者を指します。

  • 日本国内に住所などを有しない非居住者

  • 日本国外に本店または主たる事務所を有する外国法人


防衛特別所得税については、所得税の源泉徴収時に併せて徴収し、所得税と一緒に国へ納付する仕組みです。


非居住者等への支払いで源泉徴収が問題となる所得

非居住者や外国法人に対するすべての支払いから、日本で源泉徴収するわけではありません。


まず、その支払いが所得税法上の「国内源泉所得」に該当するかを確認します。

実務上、特に問題となりやすいものには次のような支払いがあります。

  • 日本法人から外国株主へ支払う配当

  • 日本国内の不動産に係る賃料

  • 国内で使用する著作権、特許権、商標権などの使用料

  • 非居住者へ支払う人的役務の対価

  • 日本国内で行う芸能・スポーツ活動に関する報酬

  • 非居住者へ支払う一定の給与や退職金

  • 日本国内の不動産を譲渡した場合の対価

  • 日本法人が発行する一定の債券に係る利子


源泉徴収の要否や税率は、所得の種類、受取人が個人か法人か、国内に恒久的施設があるかなどによって異なります。


海外への送金であるというだけで一律に判断せず、契約内容や役務提供地、権利の使用場所などを確認することが重要です。


国内法で20.42%となる支払いの計算例

国内法上、20%の所得税率が適用される非居住者等への支払いについては、2027年以後も合計20.42%を源泉徴収します。


例えば、外国法人へ国内で使用する知的財産権の使用料として100万円を支払うケースを考えます。租税条約を適用せず、国内法上20%の税率となる場合の源泉徴収税額は、次のとおりです。

税目

計算

税額

所得税

100万円×20%

20万円

復興特別所得税

20万円×1.1%

2,200円

防衛特別所得税

20万円×1%

2,000円

合計

100万円×20.42%

20万4,200円

外国法人への支払額は、原則として79万5,800円となります。

合計源泉徴収率は従来と同じ20.42%ですが、2027年以後は、復興特別所得税と防衛特別所得税の両方が含まれます。


上場株式等の配当は引き続き15.315%

非居住者や外国法人に対する一定の上場株式等の配当について、国内法上15%の所得税率が適用される場合、2027年以後の合計税率も15.315%です。


例えば、配当金1,000万円を支払う場合は、次のように計算します。

税目

計算

税額

所得税

1,000万円×15%

150万円

復興特別所得税

150万円×1.1%

1万6,500円

防衛特別所得税

150万円×1%

1万5,000円

合計

1,000万円×15.315%

153万1,500円


ただし、実際には租税条約によって税率が軽減される場合があります。


租税条約が適用される場合の防衛特別所得税

日本は多くの国・地域と租税条約を締結しています。

租税条約では、配当、利子、使用料などについて、日本の国内法よりも低い「限度税率」を定めたり、日本での課税を免除したりする場合があります。


防衛特別所得税と復興特別所得税の取扱いは、国内法と租税条約のどちらの税率を適用するかによって異なります。


<租税条約の限度税率を適用する場合>

租税条約により、国内法の税率以下の限度税率が適用される場合には、原則として防衛特別所得税と復興特別所得税は加算しません。


例えば、国内法上の税率が20.42%となる使用料について、租税条約上の限度税率が10%であれば、原則として源泉徴収税率は10%です。


100万円の使用料であれば、源泉徴収額は10万円となり、10%に防衛特別所得税1%や復興特別所得税1.1%を追加するわけではありません。


国税庁のQ&Aでも、租税条約による限度税率または免税が適用される場合には、防衛特別所得税と復興特別所得税は課されないことが明示されています。


<租税条約によって所得税が免除される場合>

租税条約の規定により、日本の所得税そのものが免除される場合には、防衛特別所得税と復興特別所得税も課されません。


防衛特別所得税は所得税額を基礎に計算するため、本体となる所得税がゼロであれば、防衛特別所得税もゼロになります。


<国内法の税率の方が低い場合>

租税条約に限度税率が定められていても、国内法上の税率の方が低い場合には、国内法の税率を適用します。


この場合は、租税条約上の限度税率を適用しているのではなく、国内法によって源泉徴収するため、防衛特別所得税と復興特別所得税を併せて徴収します。


例えば、租税条約上の限度税率が15%で、国内法上の所得税率が10%である場合には、原則として国内法を基礎に10.21%を源泉徴収することになります。

  • 所得税:10%

  • 復興特別所得税:0.11%

  • 防衛特別所得税:0.1%

  • 合計:10.21%


「条約の税率より低いから10%だけ」と判断しないよう注意が必要です。国税庁も、国内法の税率が租税条約上の限度税率より低く、国内法を適用する場合には、両特別所得税を併せて徴収すると説明しています。


租税条約に関する届出書の提出が必要

租税条約による軽減税率や免税の適用を受けるためには、原則として「租税条約に関する届出書」を提出する必要があります。


非居住者等は、原則として最初の支払日の前日までに、支払者を経由して、支払者の納税地を所轄する税務署長へ届出書を提出します。


支払日までに必要な届出書が提出されていない場合、支払者は原則として国内法の税率で源泉徴収しなければなりません。


その後に届出書と還付請求書を提出することで、条約適用後の税額との差額について還付を求める手続は可能ですが、受取人にとって資金回収までの負担が生じます。


海外への支払いが予定されている場合は、送金直前ではなく、契約締結の段階で次の事項を確認しておくことが大切です。

  • 受取人の居住地国

  • 日本との租税条約の有無

  • 所得の種類

  • 条約上の限度税率

  • 特典条項の適用要件

  • 居住者証明書の要否

  • 届出書の提出期限


条約適用分と国内法適用分は納付書を分ける場合がある

2027年以後、同じ月に非居住者等への複数の支払いがあり、次の税額をまとめて納付するケースが考えられます。

  • 租税条約の限度税率を適用し、防衛特別所得税等を含まない税額

  • 国内法を適用し、防衛特別所得税等を含む税額


国税庁のQ&Aでは、このような場合には、それぞれ別の所得税徴収高計算書、いわゆる納付書を使用して納付することとされています。


合計金額だけを一枚の納付書にまとめると、防衛特別所得税と復興特別所得税を含む税額と、含まない税額の区分ができなくなるためです。


非居住者等への支払いが多い会社では、支払いごとに次の区分を記録できる管理表を準備しておくとよいでしょう。

管理項目

確認内容

受取人

非居住者または外国法人の名称

居住地国

租税条約の相手国

所得区分

配当、利子、使用料、賃料など

適用根拠

国内法または租税条約

基本税率

15%、20%、条約税率など

特別所得税

加算あり・なし

届出状況

届出日、居住者証明書など

納付書区分

国内法分または条約適用分


既存の源泉所得税の納付書は使用できる

2027年1月以後も、現在使用している「所得税及び復興特別所得税」の納付書は、そのまま使用できると国税庁は案内しています。


納付書の印字に「防衛特別所得税」と記載されていなくても、自分で文言を訂正する必要はありません。


また、源泉徴収票や支払調書の「源泉徴収税額」欄には、所得税、防衛特別所得税および復興特別所得税の合計額を記載することとされています。


ただし、社内の会計処理や税額管理では、税率の内訳を把握できるようにしておく必要があります。


2027年に向けて企業が確認すべき事項

  • 海外への支払いを洗い出す

まず、外国送金のうち、源泉徴収の可能性がある取引を抽出します。


特に注意したいのは、次のような支払いです。

  • 海外親会社・子会社へのロイヤルティー

  • 海外の個人や法人への業務委託料

  • 外国人株主への配当

  • 海外在住者が所有する国内不動産の賃料

  • 海外アーティストや講師への報酬

  • 外国法人から購入するソフトウェアやコンテンツの対価


契約書上「業務委託料」と記載されていても、実質的には著作権使用料などに該当することがあります。


  • 税率マスターだけでなく内訳も更新する

合計税率が20.42%や15.315%のままであっても、2027年以後は税額の構成が変わります。システム上、復興特別所得税2.1%だけで処理する古い設定が残らないよう、ベンダーや給与・会計担当者へ確認しましょう。


  • 租税条約の適用状況を再確認する

過去から継続している取引でも、受取人の住所、法人形態、株式保有割合などが変われば、租税条約の適用関係が変わる可能性があります。

居住者証明書の有効期間や、届出書の記載内容に変更がないかも確認します。


  • 契約上のグロスアップ条項を確認する

外国法人との契約では、「受取人の手取額を一定額とし、日本の源泉税は支払者が負担する」というグロスアップ条項が設けられていることがあります。

合計税率が変わらなくても、条約の適用誤りなどがあれば、会社側の負担額が大きくなる可能性があります。


  • 納付書の区分ルールを決める

条約税率を適用する支払いと、国内法を適用する支払いが同じ月にある場合に備え、納付書を分ける運用を経理マニュアルへ反映しておきましょう。


まとめ

防衛特別所得税は、2027年1月1日以後、所得税の源泉徴収時に併せて徴収・納付する新たな付加税です。


主なポイントは次のとおりです。

  • 防衛特別所得税は、源泉徴収する所得税額の1%相当額

  • 復興特別所得税率は2.1%から1.1%へ引き下げ

  • 両税を合わせた付加税率は2.1%で変わらない

  • 国内法に基づく合計源泉徴収率は原則として改正前と同じ

  • 非居住者や外国法人への国内源泉所得にも適用される

  • 租税条約の限度税率や免税を適用する場合、両特別所得税は原則として課されない

  • 国内法の税率の方が低い場合は、両特別所得税を加算する

  • 条約適用には原則として支払日前日までの届出が必要

  • 条約適用分と国内法適用分は、納付書を分ける場合がある


合計税率が変わらない取引が多いため、実務対応を後回しにしがちですが、租税条約が関係する非居住者等への支払いでは、特別所得税を加算するかどうかの判定が必要です。


海外への配当、ロイヤルティー、賃料、業務委託料などがある企業は、2027年を迎える前に、支払先、国内源泉所得の区分、租税条約、届出状況および会計システムの設定を確認しておきましょう。


神戸での起業や開業に関するご相談、顧問税理士をお探しの方は安田亮公認会計士・税理士事務所までお問い合わせください!


【この記事の執筆者】

安田 亮(公認会計士・税理士)

安田亮公認会計士・税理士事務所 代表

京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。

現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。

事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。

神戸の税理士事務所ロゴ

コメント


bottom of page