海外取引の消費税は課税?免税?対象外?判断ポイントを税理士が解説
こんにちは!代表の安田です。
海外の会社や外国人のお客様と取引をする場合、消費税の取扱いで迷うことがあります。
相手が海外の会社なら消費税はかからないのでは?
外国法人に請求する売上はすべて輸出免税でよい?
海外向けのサービス提供は消費税の対象外になる?
国内で外国人に商品を売った場合はどうなる?
このような相談は、実務でもよくあります。
消費税は、取引ごとに「課税取引」「非課税取引」「免税取引」「不課税取引(対象外)」の判定が必要です。特に海外取引では、相手先が外国法人かどうかだけでは判断できません。
本日は、海外取引に関する消費税の基本的な考え方と、実務で間違いやすいポイントを税理士の視点からわかりやすく解説します。
消費税は「国内取引」に対して課税される
まず押さえておきたいのは、消費税は原則として、国内で行なわれる資産の譲渡、資産の貸付け、役務の提供などに対して課税されるという点です。
つまり、消費税の判定では最初に「その取引が国内取引なのか、国外取引なのか」を確認する必要があります。
たとえば、国内で商品を引き渡す取引や、国内でサービスを提供する取引は、原則として国内取引になります。一方、国外で完結する取引は、そもそも日本の消費税の対象外、いわゆる不課税取引になります。
国税庁も、役務の提供については、一定の例外を除き、原則として「その役務の提供が行われた場所」で国内取引かどうかを判定すると説明しています。
なお、電子書籍・音楽・広告配信などの電気通信利用役務の提供については、提供を受ける者の住所等で判定するという例外があります。
ここで大切なのは、相手先の国籍や所在地だけで消費税を判断しないことです。
外国法人との取引であっても、取引内容が国内で行われるものであれば、消費税の課税対象になることがあります。逆に、日本法人との取引であっても、国外で完結する取引であれば、日本の消費税の対象外となる場合があります。
海外取引でよく出てくる4つの区分
海外取引の消費税を考えるときは、次の4つの区分を整理するとわかりやすくなります。
1つ目は、課税取引です。国内で行われる商品の販売やサービス提供などで、非課税取引や免税取引に該当しないものです。通常どおり消費税がかかります。
2つ目は、非課税取引です。国内取引ではあるものの、政策的な理由などから消費税が課されない取引です。土地の譲渡や貸付け、住宅の貸付け、一定の金融取引などが代表例です。
3つ目は、免税取引です。国内取引ではあるものの、輸出取引などに該当するため、消費税が免除される取引です。免税取引は、消費税が「対象外」なのではなく、課税取引の一種として税率が実質的に0%になるイメージです。
4つ目は、不課税取引、つまり消費税の対象外取引です。国外で行われる取引など、そもそも日本の消費税の課税対象に入らない取引です。
海外取引では、このうち「免税」と「不課税」を混同しやすいです。
輸出免税は、消費税の課税対象となる国内取引のうち、輸出取引等に該当するため消費税が免除されるものです。一方、国外取引は、そもそも日本の消費税の対象外です。
会計処理や消費税申告ではこの区分が重要になります。
商品を海外へ輸出する場合は「輸出免税」
国内から海外へ商品を輸出する場合、一定の要件を満たせば輸出免税の対象になります。
たとえば、日本国内で仕入れた商品を海外の取引先へ輸出する場合、通常は輸出免税取引として消費税が免除されます。
国税庁は、課税事業者が行なう「国内からの輸出として行われる資産の譲渡または貸付け」について、輸出取引等として消費税が免除されると説明しています。これは、消費税が内国消費税であり、外国で消費されるものには課税しないという考え方によるものです。
ここで重要なのは、輸出免税の適用を受けるには、輸出した事実を証明する書類の保存が必要であるという点です。
輸出許可書、税関長の証明書、郵便物の引受けを証する書類、発送伝票の控えなど、取引の内容に応じて必要な書類が異なります。輸出免税の証明書類は、原則として7年間保存する必要があります。
つまり、「海外向けに売ったから免税」と考えるだけでは不十分です。税務調査で輸出の事実を確認できなければ、輸出免税の適用が認められないおそれがあります。
外国法人に国内で商品を引き渡す場合は要注意
海外取引で特に間違いやすいのが、外国法人との取引であっても、商品を国内で引き渡すケースです。
たとえば、海外の会社から注文を受け、日本国内の倉庫で商品を引き渡す場合を考えてみます。相手先は外国法人ですが、商品の引渡しが国内で行われているため、原則として国内取引になります。その後、外国法人が自ら商品を海外へ持ち出すとしても、売主側が輸出免税の証明書類を保存できなければ、輸出免税の適用は難しくなります。
この場合、売主が行っているのは「国内での商品の販売」と判断され、通常の課税売上になる可能性があります。
実務では、次のようなケースで注意が必要です。
外国法人の担当者が来日し、日本国内で商品を受け取る
国内の倉庫や工場で外国法人に商品を引き渡す
外国法人が指定した国内の物流業者へ引き渡す
国内の関連会社や代理店へ商品を納品する
このような場合には、契約書、請求書、納品書、インコタームズ、輸出者、輸出許可書の名義、貨物の引渡し場所を確認する必要があります。
「請求先が海外だから輸出免税」と処理してしまうと、税務調査で否認されるリスクがあります。
外国人旅行者への販売は「輸出物品販売場」の制度を確認する
外国人に商品を販売する場合でも、国内の店舗で通常販売するだけでは、原則として消費税の課税対象になります。
ただし、外国人旅行者等の免税購入対象者が、国外へ持ち帰る目的で、輸出物品販売場において一定の方法により免税対象物品を購入した場合には、消費税が免除されます。
いわゆる「免税店」の制度です。
この制度を利用するには、事業者があらかじめ税務署に輸出物品販売場許可申請書を提出し、輸出物品販売場の許可を受ける必要があります。また、購入記録情報の提供方法等に関する届出も必要です。
したがって、外国人のお客様に販売したからといって、常に消費税が免税になるわけではありません。
免税販売を行うには、制度上の要件を満たし、必要な手続きを行う必要があります。
海外の会社へサービスを提供する場合
次に、海外の会社へサービスを提供する場合を見てみましょう。
役務提供の消費税判定では、原則として、その役務の提供が行われた場所で国内取引か国外取引かを判断します。
ただし、非居住者に対する役務提供については、輸出免税の対象となる場合があります。
国税庁は、非居住者に対する役務の提供について、原則として輸出取引等として消費税が免除されるとしています。ただし、国内に所在する資産に係る運送や保管、国内での飲食・宿泊、その他国内で直接便益を受けるものについては、輸出免税にはならず消費税が課されると説明しています。
たとえば、海外企業に対してオンラインで経営コンサルティングを行う場合や、海外企業向けに日本国外で利用される資料作成サービスを提供する場合には、輸出免税の対象となる可能性があります。
一方で、海外企業から依頼を受けていても、日本国内にある不動産の調査、日本国内で開催されるイベントの運営、日本国内での宿泊・飲食の提供などは、国内で直接便益を受ける取引として課税対象になることがあります。
ここでも、取引先が海外かどうかではなく、「どこで、誰が、どのような便益を受けるのか」を確認することが重要です。
電子書籍・広告配信・クラウドサービスなどは例外に注意
近年増えているのが、インターネットを通じたサービス提供です。
電子書籍、音楽配信、動画配信、オンライン広告、クラウドサービス、アプリ利用料などは、通常の役務提供とは異なる判定が必要になることがあります。
国税庁は、電子書籍・音楽・広告配信など、インターネット等を介して行われる電気通信利用役務の提供については、提供を受ける者の住所等で国内取引かどうかを判定すると説明しています。
つまり、サービス提供者が海外にいても、利用者が日本国内の事業者や消費者であれば、日本の消費税の対象になる場合があります。
逆に、日本の事業者が海外の利用者に対して電気通信利用役務を提供する場合には、国外取引として日本の消費税の対象外になることがあります。
ただし、BtoB取引かBtoC取引か、リバースチャージ方式の対象か、登録国外事業者との関係など、細かい論点があります。
オンラインサービスやデジタル取引を行う事業者は、一般的な輸出入の感覚だけで判断しないようにしましょう。
輸出免税でも仕入税額控除は受けられる
輸出免税は、売上に消費税をかけない取引です。
そのため、「売上に消費税がかからないなら、仕入れに係る消費税も控除できないのでは」と思われることがあります。
しかし、輸出免税取引は、消費税の課税対象外ではありません。課税取引のうち、輸出であるため消費税が免除される取引です。
そのため、輸出売上に対応する仕入れや経費に係る消費税は、原則として仕入税額控除の対象になります。
国税庁も、輸出取引に対応する課税仕入れには消費税等が含まれており、その課税仕入れの金額には商品の購入代金のほか、輸出取引を行うために必要な事務用品、交際費、広告宣伝費などの経費も含まれるため、申告の際に仕入税額控除ができると説明しています。
輸出売上が多い会社では、売上に消費税がかからない一方で、国内仕入れや経費に含まれる消費税を控除できるため、消費税の還付が発生することがあります。
ただし、還付申告は税務署で内容確認が行われやすい分野です。輸出許可書、契約書、請求書、入金記録、発送資料などを整理しておくことが重要です。
インボイス制度との関係
海外取引でも、インボイス制度の影響を確認する必要があります。
輸出免税売上については、売上先が海外であるため、通常は日本の適格請求書を求められる場面は多くありません。
一方で、輸出に対応する国内仕入れについて仕入税額控除を受けるには、原則として適格請求書等の保存が必要です。国税庁も、適格請求書等保存方式の下では、仕入税額控除の適用を受けるために、原則として一定事項が記載された帳簿および請求書等の保存が必要であると説明しています。
つまり、輸出免税売上が中心の会社であっても、国内仕入れや国内経費については、インボイス対応が必要です。
また、海外事業者との取引であっても、国内で役務提供を受ける場合や、国内取引に該当する場合には、日本の消費税やインボイスの取扱いを確認する必要があります。
海外取引の消費税で確認すべきチェックポイント
海外取引の消費税を判断する際には、少なくとも次の点を確認しておくと安心です。
取引内容が商品の販売なのか、サービス提供なのか
商品であれば、引渡し場所が国内か国外か、輸出者は誰か、輸出許可書などの証明書類を保存できるか
サービスであれば、役務の提供場所、相手先が非居住者かどうか、国内で直接便益を受ける内容ではないか
デジタルサービスであれば、電気通信利用役務の提供に該当するか、提供を受ける者の住所等がどこか
外国人旅行者向けの免税販売であれば、輸出物品販売場の許可を受けているか、制度上の手続きを満たしているか
そして、輸出免税を適用する場合には、証明書類の保存が欠かせません。
海外取引は、契約書、請求書、納品書、輸出許可書、配送記録、入金記録など、複数の資料を組み合わせて実態を確認することが重要です。
まとめ:海外取引は「相手が海外か」ではなく「取引の中身」で判断する
海外取引の消費税では、取引先が外国法人かどうか、請求書の宛先が海外かどうかだけで判断してはいけません。
重要なのは、その取引が国内取引なのか国外取引なのか、輸出免税の要件を満たすのか、必要な証明書類を保存できるのかという点です。
国内で商品を引き渡す場合には、相手が外国法人であっても課税取引になる可能性があります。一方、国内から海外へ商品を輸出する場合には、輸出許可書などの証明書類を保存することで輸出免税の対象になります。
また、海外企業へのサービス提供についても、非居住者向けだから常に免税というわけではありません。国内で直接便益を受ける取引や、国内資産に関係するサービスについては、消費税が課される場合があります。
海外取引が増えてくると、消費税の判定は一気に複雑になります。
誤って免税処理をしてしまうと、税務調査で消費税の追徴を受けるリスクがあります。一方、本来は輸出免税や国外取引として処理できるものを課税売上としてしまうと、余計な税負担が生じる可能性もあります。
海外取引を始める際には、契約段階で消費税の取扱いを確認し、請求書や証明書類の整備まで含めて準備しておくことをおすすめします。
神戸での起業や開業に関するご相談、確定申告にお困りの方、顧問税理士をお探しの方は安田亮公認会計士・税理士事務所までお問い合わせください!
<あわせて読みたい>
【この記事の執筆者】
安田 亮(公認会計士・税理士)
安田亮公認会計士・税理士事務所 代表
京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。
現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。
事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。






コメント