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飲食料品の消費税率引下げで総額表示はどうなる?価格表示の特例案を税理士が解説

執筆者の写真: 安田亮
安田亮
12 時間前
読了時間: 9分

おはようございます!代表の安田です。


飲食料品について2年間の消費税率引下げが検討される中、店舗や小売事業者にとって大きな実務課題となるのが「価格表示」です。


消費税率が変更されれば、店頭の値札、メニュー、カタログ、商品パッケージなどに表示している税込価格も原則として変更しなければなりません。


しかし、多数の商品を扱うスーパーや小売店などでは、税率変更日の直前・直後にすべての値札を貼り替えることは容易ではありません。


そこで、自民党税制調査会では、税率引下げに伴う事業者の実務負担を軽減するため、税率変更前後の一定期間について、変更前または変更後の税込価格を表示できる総額表示義務の特例を設ける案が示されました。


本日は、現在の総額表示義務の基本ルール、今回示された特例案の内容、店舗や飲食店が注意すべきポイントについて、公認会計士・税理士の立場から解説します。


飲食料品の消費税率引下げに伴い総額表示の特例を検討

2026年9月2日に開催された自民党税制調査会の小委員会では、飲食料品に係る2年間の消費税率引下げに関連して、総額表示義務の特例などの具体案が示されました。


最終的な調整は今後行なわれる予定であり、現時点では制度はまだ確定していません。今回検討されている主な論点は次のとおりです。

論点

検討されている内容

飲食料品の税率

2年間の引下げを検討

総額表示

税率変更時の特例を設ける案

中間申告

特例を検討

予約販売

経過的な税率の取扱いを検討

通信販売

経過措置を検討

本記事では、このうち店舗や消費者への影響が特に大きい「総額表示」に焦点を当てます。


そもそも総額表示義務とは

総額表示義務とは、不特定多数の消費者に商品やサービスを販売する際に、消費税を含めた実際の支払総額が分かるよう価格を表示する制度です。

消費者が商品を購入する際、結局いくら支払えばよいのかを一目で把握できるようにすることが目的です。


総額表示として認められる表示例

例えば、税抜価格1,000円、税込価格1,080円の場合には、次のような表示が総額表示義務を満たします。

表示例

総額表示義務

1,080円

1,080円(税込)

1,080円(税抜1,000円)

1,000円(税込1,080円)

1,000円(税抜)

×

1,000円+税

×

ポイントは、最終的に消費者が支払う税込金額が表示されていることです。

税抜価格だけを大きく表示することは、原則として総額表示義務を満たしません。


なぜ今回、総額表示の特例が必要なのか

消費税率が変更されれば、本来は変更日に合わせて表示価格も変更する必要があります。

しかし、実務上は簡単ではありません。


例えば次のような問題が想定されています。

  • 大量の値札を一晩で貼り替えられない

  • カタログをすぐに刷り直せない

  • 商品パッケージ自体に価格が印刷されている

  • 店舗数が多く価格変更作業に時間がかかる


特に全国に多数の店舗を展開する企業では、税率変更日の営業終了後から翌朝までに、すべての店頭表示を変更することは大きな負担となります。


税率変更前後2か月は旧価格・新価格を表示できる案

今回示された案では、総額表示義務に直ちに対応することが難しい事情がある場合、税率変更前後の2か月について特例を設けることが検討されています。


税率引下げの開始時だけでなく、2年間の引下げ期間終了後に元の税率へ戻す場面についても、前後の一定期間に価格表示を柔軟に扱うイメージが示されています。


考え方を整理すると次のとおりです。

時期

表示できる価格のイメージ

税率引下げ直前

一定条件のもと、引下げ後の税込価格を先行表示

税率引下げ直後

一定条件のもと、変更前の税込価格を一時的に表示

税率を元に戻す直前

一定条件のもと、変更後の税込価格を先行表示

税率を元に戻した直後

一定条件のもと、変更前の税込価格を一時的に表示

つまり、税率変更日の午前0時を境にすべての価格表示を一斉に変更しなければならないという実務負担を緩和する方向です。


ただし「実際の支払金額」と誤認させてはいけない

特例を利用する場合でも、何を表示してもよいわけではありません。

重要な条件が、表示されている税込価格が、現在実際に支払う金額ではないことを消費者が誤認しないよう措置を講じることです。


例えば、旧税率に基づく税込価格を値札に残したまま、新税率でレジ精算するのであれば、

この商品は旧税率に基づく税込価格を表示しています。レジで新税率により精算します。

などの案内が必要になることが想定されます。


レシートでの表示も重要

実際に制度が導入された場合には、

  • 店頭の値札

  • 店内掲示

  • POSレジ

  • レシート

  • ECサイト

  • メニュー

  • カタログ

を一体として整備する必要が出てくる可能性があります。

単に値札を変更しないだけではなく、消費者が実際の支払金額を正しく理解できる仕組みを用意することが重要です。


税抜価格だけの表示が復活するわけではない

今回の特例案について誤解しやすい点があります。

総額表示義務の特例が設けられたとしても、「1,000円(税抜)」や「1,000円+税」といった表示だけでよくなるわけではありません。

税抜価格だけ、または「税抜価格+税」だけを表示する方法は認めないとされています。


したがって、今回の案は、総額表示義務そのものを一時停止する制度ではなく、旧税率・新税率のどちらの「税込価格」を表示できるかについて柔軟性を持たせる制度と理解するのが適切です。


飲食店ではメニュー表示への影響も大きい

小売店だけでなく、飲食店にも大きな影響があります。


例えば紙のメニューに税込価格を印刷している飲食店では、税率が変更されるたびに、

  • メニューの作り直し

  • 店頭看板の変更

  • 卓上メニューの変更

  • デジタルサイネージの修正

  • モバイルオーダーの設定変更

などが必要になります。


特例が設けられれば、一定期間について旧価格表示を利用しながら、レジ等で新税率を反映する対応が可能になる可能性があります。


ただし、消費者が「メニューに表示された金額がそのまま支払額」と誤認しない工夫が必要です。


スーパー・コンビニ等ではPOSシステム対応が重要

多数の商品を扱う小売業では、値札だけでなくPOSシステムも重要です。

実際の支払額はレジ側で計算されるため、

対応項目

確認内容

商品マスター

対象商品の税率設定

POS

新税率への切替日時

値札

表示価格との整合

レシート

税率・税額表示

店内掲示

特例利用時の説明

ECサイト

表示価格・決済金額

会計システム

売上税区分の設定

などを事前に確認する必要があります。


特に、税率引下げ終了時には再び税率を戻す必要があるため、開始時と終了時の2回、大規模なシステム対応が必要になる可能性があります。


EC・通販事業者にも影響

前回までの議論として通信販売に関する経過的な税率の取扱いについても検討されています。


ECサイトでは、

  • 商品ページの税込価格

  • カート画面

  • 注文確認画面

  • 決済画面

  • 注文確認メール

など、複数の場所に税込金額が表示されます。


税率変更前後に注文・発送・決済がまたがるケースもあるため、店舗以上にシステム上の整理が重要になる可能性があります。


企業が事前に準備しておきたいこと

現時点では制度案ですが、飲食料品を扱う企業では、税制改正が確定した場合にすぐ対応できるよう準備を始めることも考えられます。


1.飲食料品の対象商品を把握する

まず、自社商品について税率変更対象となるものを整理します。


2.価格表示媒体を洗い出す

どこに税込価格が表示されているかを一覧化します。

媒体

確認

店頭値札

商品棚

パッケージ

メニュー

カタログ

ECサイト

広告

デジタルサイネージ

3.変更に必要な期間を見積もる

値札であれば短期間で変更できても、商品パッケージや紙のカタログは数カ月前から準備する必要があります。


4.POS・会計システムを確認する

税率変更日に自動的に税区分を切り替えられるか、ベンダーへ確認しておくことが重要です。


5.消費者への案内方法を検討する

特例を利用する場合には、店頭掲示などによって実際の支払金額と誤認させない措置が必要になる案です。


税率引下げ終了時の対応も忘れない

今回の案では、飲食料品の税率引下げは2年間とされています。

つまり、企業は、税率を引き下げるときだけではなく、2年後に税率を戻すときにも同様の価格変更対応が必要になります。


企業としては、導入時だけを見るのではなく、

税率引下げ → 2年間運用 → 元の税率へ戻す

という一連のスケジュールを想定してシステム改修や価格表示を設計することが重要です。


総額表示特例のポイントを整理

項目

今回示された案

対象

飲食料品の税率変更に伴う価格表示

背景

値札等を一斉に変更する事業者負担

特例期間

税率変更前後の2か月

可能となる表示

変更前または変更後の税込価格

条件

実際の支払額と誤認されない措置

税抜価格のみ

認めない

「本体価格+税」のみ

認めない

税率を元に戻す際

同様の特例を設ける方向

まとめ

飲食料品について2年間の消費税率引下げが検討される中、事業者の価格表示負担を軽減するため、総額表示義務の特例案が示されました。


今回のポイントは次のとおりです。

  • 飲食料品について2年間の消費税率引下げを検討

  • 税率変更に伴って税込価格の変更が必要

  • 値札、カタログ、パッケージ等の変更が間に合わない可能性がある

  • 税率変更前後の2か月について総額表示の特例を設ける案

  • 一定条件のもとで変更前・変更後の税込価格を表示可能

  • 実際の支払金額と誤認されない措置が必要

  • 税抜価格だけの表示は引き続き認めない

  • 2年間の引下げ終了時にも同様の対応が必要になる可能性


今回の特例は、総額表示義務をなくすものではありません。

税込価格表示を維持しながら、税率変更日前後の価格表示作業について一定の猶予を認める制度と考えると分かりやすいでしょう。


小売店、スーパー、飲食店、EC事業者などでは、税率変更が決定してから対応を始めるのではなく、値札、メニュー、POS、レシート、ECシステムなど、影響範囲を事前に洗い出しておくことが重要です。



神戸での起業や開業に関するご相談、確定申告にお困りの方、顧問税理士をお探しの方は安田亮公認会計士・税理士事務所までお問い合わせください


【この記事の執筆者】

安田 亮(公認会計士・税理士)

安田亮公認会計士・税理士事務所 代表

京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。

現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。

事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。


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