top of page

法人カードで支払った出張旅費はインボイスが必要?出張旅費特例・公共交通機関特例・回収入場券特例を税理士が解説

執筆者の写真: 安田亮
安田亮
6 分前
読了時間: 23分

おはようございます!代表の安田です。


インボイス制度が始まってから、経理実務で悩みやすいものの一つが「出張旅費」です。

従業員が出張した場合、新幹線代、飛行機代、ホテル代、タクシー代、日当など、さまざまな支出が発生します。


従来は、旅費精算書や領収書をもとに処理していた会社でも、インボイス制度後は「この支出についてインボイスの保存が必要なのか」「帳簿だけで仕入税額控除できるのか」を確認する必要があります。


特に注意したいのが、法人クレジットカード、いわゆる法人カードを使って出張費を支払うケースです。


会社によっては、従業員に法人カードを持たせ、出張時の新幹線代や宿泊費を法人カードで決済していることがあります。


この場合、従業員が立替払いをして会社から精算を受ける場合と同じように、出張旅費特例を使えるのでしょうか。


結論からいうと、従業員が法人カードで出張費を支払った場合、原則として出張旅費特例は使えません。法人カード決済では、会社と従業員との間で出張旅費の支給が行われるわけではなく、会社の銀行口座から決済先に支払われるためです。


ただし、法人カード払いであっても、別の特例により帳簿のみで仕入税額控除できるケースがあります。


具体的には、3万円未満の公共交通機関による旅客の運送に該当する場合の「公共交通機関特例」や、使用時に回収される乗車券等に関する「回収入場券特例」です。


本日は、法人カードで支払った出張費について、出張旅費特例が使えない理由、インボイス保存が必要になるケース、公共交通機関特例・回収入場券特例の使い方、経理実務でのチェックポイントを解説します。


インボイス制度と仕入税額控除の基本

インボイス制度では、買手が消費税の仕入税額控除を受けるために、原則として帳簿と適格請求書、いわゆるインボイスの保存が必要です。


たとえば、会社がホテル代を支払った場合、ホテルから交付された適格請求書や適格簡易請求書を保存することで、その宿泊費に含まれる消費税について仕入税額控除を受けることができます。


ただし、すべての取引でインボイスの保存が必要になるわけではありません。

インボイス制度では、請求書等の交付を受けることが困難な一定の取引について、一定事項を記載した帳簿のみで仕入税額控除できる特例が設けられています。


出張費関係で特に重要なのが、次の3つです。

  • 出張旅費特例

  • 公共交通機関特例

  • 回収入場券特例


出張費の支払方法が従業員の立替払いなのか、会社からの旅費支給なのか、法人カード決済なのかによって、使える特例が変わる点に注意が必要です。


出張旅費特例とは

出張旅費特例とは、会社が従業員等に支給する出張旅費、宿泊費、日当などのうち、その旅行に通常必要と認められる部分について、一定事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除を認める制度です。


通常、出張では従業員が移動や宿泊を行い、その費用を会社が負担します。

従業員が旅費を立て替え、後日会社が精算するケースもあれば、会社が旅費規程に基づいて概算払いするケースもあります。


出張旅費特例では、従業員等に支給する通常必要な出張旅費等について、個々の交通機関や宿泊先からインボイスを受け取って保存しなくても、帳簿のみで仕入税額控除が可能とされています。


この特例は、出張のたびに従業員から大量の領収書やインボイスを回収する実務負担を軽減するために重要です。


ただし、対象はあくまで「従業員等に支給する」出張旅費等です。

ここが法人カード利用時の大きなポイントになります。


出張旅費特例は「従業員等に支給する」旅費が対象

出張旅費特例の対象になるのは、従業員等に支給する出張旅費等です。

つまり、会社が従業員に対して旅費を支給していることが前提です。


たとえば、次のようなケースは出張旅費特例の対象になり得ます。

  • 従業員が出張交通費を立て替え、後日会社が実費精算する

  • 会社が出張前に概算旅費を従業員へ支給する

  • 旅費規程に基づき、出張日当を従業員に支給する

  • 従業員が宿泊費を支払い、会社が通常必要な範囲で精算する


これらは、会社から従業員に出張旅費等を支給する取引です。


一方、法人カードで支払う場合、従業員がカードを利用していても、カード利用代金は最終的に会社の銀行口座から引き落とされます。


会社と従業員との間で、出張旅費の支給や精算が行われるわけではありません。

そのため、出張旅費特例の対象にはならないと考えられます。


法人カード払いでは出張旅費特例を使えない

従業員が法人カードで新幹線代や宿泊費を支払った場合、実務上は「従業員が出張で使った費用」と見えます。


しかし、インボイス制度上の出張旅費特例では、支払方法が重要です。

法人カード決済では、従業員が一時的に会社のカードを使っているだけで、実際の支払者は会社です。カード利用代金は会社の銀行口座から引き落とされます。


したがって、会社が従業員に対して出張旅費を支給したとはいえません。

その結果、法人カードで支払った出張費については、出張旅費特例ではなく、原則どおり決済先から交付されるインボイスを保存する必要があります。


たとえば、法人カードでホテル代を支払った場合には、ホテルから交付される適格請求書または適格簡易請求書を保存する必要があります。


法人カードの利用明細だけでは、原則としてインボイスにはなりません。


法人カードの利用明細だけでは不十分

法人カードで支払った経費について、カード会社から利用明細が発行されます。


利用明細には、利用日、利用先、金額などが記載されています。

しかし、カード会社の利用明細は、通常、消費税の適格請求書ではありません。

なぜなら、カード会社は決済サービスを提供しているだけで、実際に宿泊サービスや交通サービスを提供した事業者ではないためです。


仕入税額控除のためには、原則として、実際の取引相手であるホテル、航空会社、鉄道会社、旅行会社などから交付されるインボイスを保存する必要があります。


法人カードの利用明細は、経費精算や支払確認の資料としては有用です。

しかし、インボイス制度上の保存書類としては不十分なことが多い点に注意しましょう。


公共交通機関特例とは

法人カード払いであっても、公共交通機関特例に該当する場合には、インボイスの保存が不要になり、一定事項を記載した帳簿のみで仕入税額控除できます。


公共交通機関特例とは、税込3万円未満の公共交通機関による旅客の運送について、帳簿のみの保存で仕入税額控除を認める制度です。


対象となる公共交通機関には、一般に次のようなものがあります。

  • 鉄道

  • バス

  • 船舶

  • 一定の公共交通機関による旅客運送


たとえば、出張で新幹線を利用し、税込運賃が3万円未満であれば、公共交通機関特例の対象となり、帳簿のみで仕入税額控除できる可能性があります。


この特例は、支払方法が現金、従業員立替、法人カードであるかにかかわらず、取引自体が要件を満たすかどうかで判断します。


したがって、法人カードで支払った新幹線代であっても、税込3万円未満の公共交通機関による旅客の運送であれば、公共交通機関特例により帳簿のみで対応できる場合があります。


3万円未満の判定は「1回の取引」で行う

公共交通機関特例で特に注意したいのが、税込3万円未満の判定単位です。


この判定は、切符1枚ごと、1人分ごと、月合計ごとではなく、「1回の取引」の税込価額で判定します。


たとえば、東京・大阪間の新幹線代が1人13,000円だったとします。

1人分だけ購入する場合、1回の取引は13,000円です。

この場合、税込3万円未満ですので、公共交通機関特例の対象になります。


一方、同じ13,000円の新幹線代を4人分まとめて購入した場合、1回の取引は52,000円です。この場合、1人当たりは3万円未満であっても、1回の取引としては3万円以上です。

したがって、公共交通機関特例の対象にはなりません。


法人カードで複数人分の切符をまとめて購入する場合には、この判定を誤りやすいため注意が必要です。


まとめ買いはインボイス保存が必要になることがある

出張の手配をまとめて行う会社では、総務部や秘書部門が複数人分の新幹線チケットを一括購入することがあります。


この場合、1人当たりの運賃は3万円未満でも、1回の取引額が3万円以上になることがあります。公共交通機関特例は、1回の取引の税込価額が3万円未満かどうかで判定するため、まとめ買いにより3万円以上となる場合には特例の対象外です。


この場合、原則としてインボイスの保存が必要になります。

たとえば、鉄道会社や旅行会社から適格簡易請求書の交付を受け、保存する必要があります。


ただし、後述する回収入場券特例に該当する場合には、3万円以上であっても帳簿のみで仕入税額控除できる可能性があります。


回収入場券特例とは

回収入場券特例とは、適格簡易請求書の記載事項のうち取引年月日を除く事項が記載されている入場券等が、使用時に回収される取引について、一定事項を記載した帳簿のみで仕入税額控除を認める制度です。


鉄道や施設の入場券などでは、利用時にチケットが回収され、手元に残らないことがあります。


本来であれば、仕入税額控除のためにインボイスを保存したくても、使用時に回収されてしまうため保存が困難です。


そこで、一定の記載事項がある入場券等が回収される場合には、帳簿のみの保存で仕入税額控除を認める特例が設けられています。


出張時の新幹線等でも、乗車券や特急券が使用時に回収される場合には、この回収入場券特例の対象になることがあります。


法人カードで支払った場合でも、要件を満たせば、帳簿のみで仕入税額控除が可能です。


3万円以上でも回収入場券特例に該当する場合がある

公共交通機関特例は、1回の取引が税込3万円未満であることが要件です。


一方、回収入場券特例は、3万円未満という金額要件ではなく、一定事項が記載された入場券等が使用時に回収されることがポイントです。


そのため、複数人分の新幹線チケットをまとめて購入し、1回の取引額が3万円以上となる場合でも、乗車券等が使用時に回収されるのであれば、回収入場券特例により帳簿のみで仕入税額控除できる可能性があります。


たとえば、1人13,000円の新幹線代を4人分まとめて法人カードで支払い、合計52,000円となった場合、公共交通機関特例の対象にはなりません。


しかし、乗車時にチケットが回収されるのであれば、回収入場券特例の対象となる可能性があります。


このように、法人カードで支払った交通費については、出張旅費特例ではなく、公共交通機関特例または回収入場券特例に該当するかを確認することが重要です。


宿泊費は原則としてインボイス保存が必要

法人カードで支払った宿泊費については、原則として宿泊先から交付されるインボイスの保存が必要です。


出張旅費特例は使えません。

また、宿泊費は公共交通機関による旅客の運送ではないため、公共交通機関特例の対象にもなりません。


ホテルや旅館が適格請求書発行事業者であれば、領収書、宿泊明細書、請求書などに登録番号、適用税率、税率ごとの消費税額等などの記載があるか確認する必要があります。


なお、ホテル等は不特定多数の者に対してサービスを提供する事業者であるため、適格簡易請求書を交付できる場合があります。


宿泊費を法人カードで支払う場合には、カード利用明細だけで済ませず、ホテルからインボイス対応の領収書や明細書を受け取る運用にしておきましょう。


タクシー代も原則としてインボイス保存が必要

出張中にタクシーを利用し、法人カードで支払うケースもあります。


タクシー代についても、法人カード払いの場合は出張旅費特例の対象になりません。

また、タクシーは公共交通機関特例の対象となる「公共交通機関による旅客の運送」に含まれないと考えられるため、税込3万円未満であっても公共交通機関特例は使えません。

したがって、原則としてタクシー会社等から交付されるインボイス、または適格簡易請求書の保存が必要です。


タクシーの領収書には、登録番号や税率、消費税額等が記載されているか確認しましょう。

経費精算システムを使っている会社では、タクシー領収書の画像保存や電子帳簿保存法への対応もあわせて確認する必要があります。


航空券は購入方法により確認が必要

出張で航空券を法人カードで購入する場合も、原則としてインボイスの保存が必要です。

航空券については、購入先が航空会社なのか、旅行代理店なのか、オンライン予約サイトなのかによって、受け取る書類が異なります。


航空会社から直接購入する場合には、航空会社が交付するインボイス対応書類を保存します。


旅行代理店を通じて購入する場合には、代理店の取扱いが媒介なのか、代理店自身の取引なのかによって、インボイスの発行主体や書類の内容を確認する必要があります。


オンライン予約サイトを利用する場合には、予約確認メールやカード利用明細だけではインボイスにならないことがあります。


航空券は高額になりやすく、公共交通機関特例とは別の判断が必要になるため、会社として保存すべき書類を明確にしておきましょう。


出張日当は法人カードとは別に整理する

出張日当は、交通費や宿泊費とは異なり、会社が旅費規程に基づいて従業員に支給するものです。


出張日当については、通常必要と認められる範囲であれば、所得税上は給与課税されず、消費税上も出張旅費特例の対象になり得ます。


法人カードで交通費や宿泊費を支払っている場合でも、出張日当を別途従業員に支給しているのであれば、その日当部分については出張旅費特例の対象になる可能性があります。


つまり、同じ出張でも、支出項目ごとに取扱いが分かれることがあります。

  • 法人カードで支払った新幹線代

  • 法人カードで支払ったホテル代

  • 従業員に支給した出張日当

  • 従業員が立て替えたタクシー代

  • 会社が事前に支給した概算旅費


これらを一括して「出張旅費」として処理するのではなく、支払方法と支出内容ごとにインボイス要否を確認することが大切です。


従業員立替払いとの違い

従業員が個人のクレジットカードや現金で出張費を立て替え、後日会社が精算する場合には、会社が従業員に対して出張旅費等を支給していると考えられます。

この場合、通常必要と認められる範囲であれば、出張旅費特例の対象になる可能性があります。


一方、法人カード払いでは、会社が従業員に支給するのではなく、会社が直接決済先に支払う形になります。


この違いにより、出張旅費特例の適用可否が変わります。


経理実務では、次のように整理すると分かりやすいです。

  • 従業員立替払いの場合は、出張旅費特例を検討

  • 法人カード払いの場合は、出張旅費特例ではなく、決済先インボイスの保存、公共交通機関特例、回収入場券特例を検討


この区分を社内ルールとして明確にしておくことが重要です。


帳簿のみで仕入税額控除する場合の記載事項

公共交通機関特例や回収入場券特例、出張旅費特例を使う場合には、インボイスの保存が不要になる代わりに、一定事項を記載した帳簿の保存が必要です。


帳簿には、通常の記載事項に加えて、帳簿のみの保存で仕入税額控除できる特例の対象である旨を記載します。


実務上は、摘要欄や経費精算システムの項目に、次のような記載をしておくとよいでしょう。

  • 公共交通機関特例

  • 3万円未満公共交通機関

  • 回収入場券特例

  • 出張旅費特例

  • 通常必要な出張旅費

  • 新幹線代、公共交通機関特例対象

  • 乗車券回収、回収入場券特例対象


単に「交通費」「出張費」とだけ記載していると、税務調査時にどの特例を使ったのか説明しにくくなります。


帳簿の摘要や補助科目で、特例の根拠が分かるようにしておきましょう。


法人カード利用時の経理フロー

法人カードで出張費を支払う場合、次のようなフローを整えると実務が安定します。


まず、従業員が法人カードを利用したら、利用内容を経費精算システムや申請書に入力します。


次に、支出内容を分類します。

新幹線代、宿泊費、タクシー代、航空券、駐車場代、会議費などに分けます。


そのうえで、支出ごとにインボイス要否を判定します。

新幹線代などで1回の取引が税込3万円未満なら公共交通機関特例を検討します。

チケットが回収される場合は回収入場券特例を検討します。

ホテル代やタクシー代は、原則としてインボイス保存が必要です。


最後に、法人カード利用明細、領収書、インボイス、帳簿記載を照合し、保存します。

このフローを決めておけば、法人カード利用時のインボイス収集漏れを防ぎやすくなります。


法人カード利用明細とインボイスを突合する

法人カードを使うと、カード利用明細で支出内容を一覧管理できます。


しかし、インボイス制度では、利用明細とインボイスを突合する作業が重要になります。

たとえば、カード明細に「ホテルA 15,000円」と表示されていても、ホテルAからインボイス対応の領収書を受け取っていなければ、原則として仕入税額控除に必要な請求書等の保存が不足します。


一方、公共交通機関特例や回収入場券特例に該当する場合には、インボイスがなくても帳簿のみで対応できるため、カード明細と帳簿の記載内容を確認します。


法人カードの利用明細は、支払確認資料です。

インボイスの代替資料になるとは限りません。

経理担当者は、カード明細をもとに、各支出についてインボイス保存があるか、帳簿のみ特例の対象かを確認しましょう。


電子帳簿保存法への対応も必要

法人カード利用に伴う領収書や請求書を電子データで受け取る場合には、電子帳簿保存法への対応も必要です。


たとえば、ホテルのWebサイトからPDF領収書をダウンロードした場合、航空会社から電子領収書を受け取った場合、オンライン予約サイトから請求書データを受け取った場合などです。


これらは電子取引データに該当するため、電子データのまま保存する必要があります。

紙に印刷して保存するだけでは不十分です。


法人カード利用時には、紙の領収書と電子領収書が混在しやすくなります。

そのため、次の点を確認しましょう。

  • 電子領収書を電子データのまま保存しているか

  • 取引年月日、取引先、金額で検索できるか

  • 改ざん防止措置を講じているか

  • カード利用明細と領収書データを紐づけているか・経費精算システムで保存要件を満たしているか


インボイス制度と電子帳簿保存法は別の制度ですが、法人カードによる出張費精算では両方の対応が必要になります。


経理担当者が迷いやすい具体例

法人カードで支払った出張費について、具体例で確認してみましょう。


<例1:新幹線代13,000円を1人分だけ法人カードで支払った場合>

1回の取引が税込13,000円であれば、3万円未満の公共交通機関による旅客の運送に該当します。

この場合、公共交通機関特例により、一定事項を記載した帳簿のみで仕入税額控除できる可能性があります。

出張旅費特例ではありません。

法人カード払いなので、出張旅費特例ではなく公共交通機関特例として処理します。


<例2:新幹線代13,000円を4人分まとめて法人カードで支払った場合>

1人当たりは13,000円ですが、4人分をまとめて購入しているため、1回の取引は52,000円です。

この場合、公共交通機関特例の3万円未満要件は満たしません。

原則としてインボイス保存が必要になります。

ただし、乗車券等が使用時に回収される場合には、回収入場券特例の対象になる可能性があります。


<例3:ホテル代を法人カードで支払った場合>

ホテル代は、公共交通機関による旅客の運送ではありません。

また、法人カード払いでは出張旅費特例も使えません。

そのため、原則としてホテルから交付されるインボイスまたは適格簡易請求書の保存が必要です。

カード利用明細だけで済ませないよう注意が必要です。


<例4:タクシー代を法人カードで支払った場合>

タクシー代についても、法人カード払いの場合は出張旅費特例の対象になりません。

また、公共交通機関特例の対象にもなりません。

したがって、原則としてタクシー会社等が交付するインボイスまたは適格簡易請求書の保存が必要です。


<例5:出張日当を旅費規程に基づき従業員へ支給した場合>

出張日当は、会社が従業員に支給するものです。

通常必要と認められる範囲であれば、出張旅費特例の対象になり得ます。

法人カードで支払った交通費や宿泊費とは別に、日当部分について出張旅費特例を検討します。


社内規程で明確にしておきたいこと

法人カードを使った出張費精算では、社内規程や経費精算ルールを整備しておくことが重要です。


特に、次の点を明確にしましょう。

  • 法人カードで支払える出張費の範囲

  • 法人カード利用時に領収書やインボイスを取得する義務

  • 公共交通機関特例を使う場合の帳簿記載方法・3万円未満の判定単位

  • 複数人分をまとめて購入した場合の取扱い

  • 回収入場券特例を使う場合の記録方法

  • 宿泊費やタクシー代のインボイス保存ルール

  • 電子領収書の保存方法

  • 法人カード利用明細と証憑の突合方法

  • 従業員立替払いと法人カード払いの処理区分


出張費は件数が多く、現場の従業員が関与するため、ルールが曖昧だと証憑不足が発生しやすいです。


法人カードを配布している会社では、経理部門だけでなく、カード利用者にもルールを周知しておきましょう。


法人カード利用者に周知したいポイント

法人カードを持つ従業員には、次の点を周知しておくとよいでしょう。


まず、法人カードで支払った場合でも、領収書やインボイスの取得が必要になることがあります。カード明細があるから領収書は不要、というわけではありません。


次に、新幹線代など3万円未満の公共交通機関については帳簿のみで対応できる場合がありますが、複数人分をまとめて購入すると3万円以上になることがあります。


また、ホテル代やタクシー代は原則としてインボイス対応の領収書が必要です。

電子領収書を受け取った場合は、会社の指定する方法で電子データを提出・保存する必要があります。


現場の従業員がインボイスの要否を完全に判断するのは難しいため、「迷ったら領収書を受け取る」「電子領収書は削除しない」「経費精算時に必ず添付する」という運用にしておくと安全です。


税務調査で確認されやすいポイント

法人カードで支払った出張費は、税務調査でも確認されることがあります。


特に、インボイス制度後は、次の点が確認されやすくなります。

  • 法人カード利用明細だけで仕入税額控除していないか

  • ホテル代やタクシー代についてインボイスを保存しているか

  • 公共交通機関特例の3万円未満判定を誤っていないか

  • 複数人分まとめ買いを1人当たりで判定していないか

  • 回収入場券特例を使う場合の帳簿記載があるか

  • 出張旅費特例と公共交通機関特例を混同していないか

  • 電子領収書を電子データのまま保存しているか

  • 旅費規程や経費精算ルールが整備されているか


法人カードは利用履歴が明確に残るため、調査でも確認しやすい項目です。

カード明細とインボイス、帳簿、経費精算書が整合しているかを日常的に確認しておきましょう。


よくある誤解

法人カードで支払った出張費とインボイスについて、実務上よくある誤解を整理します。


  • 出張費ならすべて出張旅費特例が使える

出張旅費特例は、会社が従業員等に支給する通常必要な出張旅費等が対象です。

法人カード払いでは、会社と従業員の間で旅費の支給がないため、原則として出張旅費特例は使えません。


  • 法人カードの利用明細があればインボイスは不要

カード利用明細は支払確認資料であり、通常、取引先が交付するインボイスではありません。ホテル代やタクシー代などでは、原則として取引先のインボイス保存が必要です。


  • 新幹線代は常に帳簿だけでよい

公共交通機関特例は1回の取引が税込3万円未満の場合に限られます。

複数人分をまとめて購入して3万円以上になる場合には、公共交通機関特例の対象外です。


  • 1人当たり3万円未満なら公共交通機関特例が使える

判定は1人当たりではなく、1回の取引の税込価額で行います。


実務上のチェックポイント

法人カードで出張費を支払う場合は、次の点を確認しましょう。

  • 法人カード払いか、従業員立替払いか

  • 出張旅費特例を使える支出か

  • 法人カード払いの場合、決済先のインボイスを保存しているか

  • 新幹線代等が税込3万円未満の公共交通機関特例に該当するか

  • 3万円未満の判定を1回の取引単位で行っているか

  • 複数人分をまとめて購入していないか

  • 乗車券等が使用時に回収される場合、回収入場券特例の対象か

  • ホテル代やタクシー代のインボイスを保存しているか

  • カード利用明細と証憑を突合しているか

  • 電子領収書を電子データのまま保存しているか

  • 帳簿に特例の対象である旨を記載しているか


出張費は、支出内容と支払方法によってインボイス要否が変わります。

法人カードを使っている会社では、カード利用者と経理担当者の双方がルールを理解しておくことが重要です。


まとめ

インボイス制度では、会社が従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費、宿泊費、日当などについて、一定事項を記載した帳簿のみで仕入税額控除できる出張旅費特例があります。


しかし、従業員が法人クレジットカード、いわゆる法人カードで出張費を支払った場合、この出張旅費特例は原則として使えません。


出張旅費特例は、あくまで会社が従業員等に支給する出張旅費等が対象です。

法人カード払いでは、会社と従業員との間で金銭の授受はなく、カード利用代金は会社の銀行口座から引き落とされます。


そのため、会社が従業員に出張旅費を支給したものとはいえず、出張旅費特例の対象になりません。


法人カードで支払った宿泊費、タクシー代、航空券代などについては、原則として決済先から交付されるインボイスまたは適格簡易請求書の保存が必要です。


法人カードの利用明細だけでは、通常、インボイス制度上の保存書類としては不十分です。

一方で、法人カード払いであっても、1回の取引が税込3万円未満の公共交通機関による旅客の運送であれば、公共交通機関特例により帳簿のみで仕入税額控除できる可能性があります。


ただし、3万円未満の判定は、1人当たりではなく1回の取引の税込価額で行います。

たとえば、1人13,000円の新幹線代を4人分まとめて法人カードで支払った場合、1回の取引は52,000円となるため、公共交通機関特例の対象にはなりません。


この場合でも、乗車券等が使用時に回収される場合には、回収入場券特例により帳簿のみで仕入税額控除できる可能性があります。


法人カードで出張費を支払う会社は、出張旅費特例、公共交通機関特例、回収入場券特例を混同しないように注意しましょう。


支払方法、支出内容、取引金額、チケットの回収有無に応じて、インボイス保存が必要か、帳簿のみでよいかを判定する必要があります。


法人カードの利用明細、領収書、インボイス、経費精算書、帳簿記載を整合させ、出張費のインボイス対応ルールを社内で明確にしておきましょう。


法人カード利用時のインボイス対応や出張旅費精算の運用で迷う場合は、税理士へ相談することをおすすめします。


神戸での起業や開業に関するご相談、確定申告にお困りの方、顧問税理士をお探しの方は安田亮公認会計士・税理士事務所までお問い合わせください



<あわせて読みたい>


【この記事の執筆者】

安田 亮(公認会計士・税理士)

安田亮公認会計士・税理士事務所 代表

京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。

現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。

事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。

神戸の税理士事務所ロゴ

コメント


bottom of page