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課税売上高が5億円を超えたら消費税に注意|仕入税額控除と95%ルールを税理士が解説

  • 執筆者の写真: 安田亮
    安田亮
  • 4 時間前
  • 読了時間: 12分

こんにちは!代表の安田です。


会社の売上が順調に伸びることは、とても喜ばしいことです。

しかし、消費税では、売上が一定規模を超えることで、これまでと同じ処理ができなくなることがあります。


その代表例が、課税売上高5億円超の判定です。

「課税売上割合が95%以上だから、仕入や経費にかかった消費税は全額控除できる」


このように処理していた会社でも、その課税期間中の課税売上高が5億円を超えると、仕入税額控除の計算方法を見直す必要があります。


特に、輸出売上が多い会社、不動産賃貸収入がある会社、土地売却などの非課税売上が発生した会社、急成長して売上規模が大きくなった会社では注意が必要です。


本日は、課税売上高が5億円を超えた場合の消費税の取扱いについて、税理士の視点からわかりやすく解説します。


消費税の仕入税額控除とは

消費税の納付税額は、基本的に「売上に係る消費税」から「仕入や経費に係る消費税」を差し引いて計算します。


この、仕入や経費に係る消費税を差し引く仕組みを「仕入税額控除」といいます。


たとえば、売上に係る消費税が1,000万円、仕入や経費に係る消費税が600万円であれば、差額の400万円を納付するイメージです。


ただし、すべての会社が、仕入や経費に係る消費税を無条件に全額控除できるわけではありません。


消費税では、課税売上高や課税売上割合によって、仕入税額控除の計算方法が変わります。


95%ルールとは

消費税の実務でよく出てくるのが、いわゆる95%ルールです。


国税庁は、課税期間中の課税売上高が5億円以下で、かつ、課税売上割合が95%以上の場合には、その課税期間中の課税仕入れ等に係る消費税額の全額を控除すると説明しています。


ここでいう課税売上割合とは、ざっくりいえば、会社の売上全体のうち、消費税の課税対象となる売上がどれくらいあるかを示す割合です。


たとえば、通常の商品販売やサービス提供の売上が大半で、非課税売上がほとんどない会社であれば、課税売上割合は95%以上になることが多いです。


この場合、課税売上高が5億円以下であれば、仕入や経費に係る消費税を原則として全額控除できます。


課税売上高が5億円を超えると全額控除できない

注意したいのは、課税売上割合が95%以上であっても、課税売上高が5億円を超えると、仕入税額控除を全額控除できないという点です。


国税庁の質疑応答事例でも、一般課税により消費税申告を行なう事業者について、課税仕入れ等に係る消費税額の全額を控除できるのは、その課税期間の課税売上割合が95%以上で、かつ、課税売上高が5億円以下の事業者に限られるとされています。


したがって、当期の課税売上高が5億円を超える場合には、課税売上割合が95%以上であっても、個別対応方式または一括比例配分方式により仕入控除税額を計算しなければなりません。


ここで間違いやすいのが、「基準期間の課税売上高が5億円以下だから大丈夫」と考えてしまうことです。


納税義務や簡易課税の判定では、基準期間の課税売上高を見る場面があります。

しかし、95%ルールで全額控除できるかどうかの5億円判定は、その課税期間中の課税売上高で判断します。


今期の売上が急増した会社では、ここを見落としやすいです。


1年未満の課税期間は年換算で判定する

決算期変更や新設法人などで、課税期間が1年に満たない場合には、5億円判定をそのまま実額で行なうわけではありません。


国税庁は、課税期間が1年に満たない場合には、その課税期間の課税売上高を課税期間の月数で割り、これに12を乗じて年換算した金額で判定すると説明しています。


たとえば、6か月決算で課税売上高が3億円だった場合、年換算すると次のようになります。

3億円 ÷ 6か月 × 12か月 = 6億円


実際の課税売上高は3億円でも、年換算では5億円を超えるため、95%ルールによる全額控除は使えません。決算期変更を行なった会社や、設立初年度の会社では、この年換算判定を忘れないようにしましょう。


5億円を超えた場合の計算方法

課税売上高が5億円を超える場合、または課税売上割合が95%未満の場合には、仕入や経費に係る消費税を全額控除するのではなく、課税売上に対応する部分のみを控除します。

このとき使う計算方法は、次の2つです。


  1. 個別対応方式

  2. 一括比例配分方式


国税庁も、課税売上高が5億円超または課税売上割合が95%未満の場合には、個別対応方式または一括比例配分方式のいずれかの方法により仕入控除税額を計算すると説明しています。


どちらを選ぶかによって、控除できる消費税額が変わることがあります。

そのため、5億円を超えそうな会社は、決算時に慌てて対応するのではなく、期中から経費や仕入れの用途区分を整理しておくことが重要です。


個別対応方式とは

個別対応方式とは、課税仕入れ等に係る消費税額を、次の3つに区分して計算する方法です。

  • 課税売上にのみ対応するもの

  • 非課税売上にのみ対応するもの

  • 課税売上と非課税売上に共通して対応するもの


国税庁は、個別対応方式では、課税仕入れ等に係る消費税額を「課税売上げにのみ要するもの」「非課税売上げにのみ要するもの」「課税売上げと非課税売上げに共通して要するもの」に区分し、課税売上にのみ対応するものと、共通対応分に課税売上割合を乗じた金額を仕入控除税額とすると説明しています。


計算イメージは次のとおりです。


仕入控除税額 = 課税売上対応分 + 共通対応分 × 課税売上割合


この方式では、非課税売上にのみ対応する仕入税額は控除できません。


一方、課税売上にのみ対応する仕入税額は全額控除できます。

そのため、課税売上に直接対応する仕入や経費が多い会社では、個別対応方式の方が有利になることがあります。


個別対応方式は「区分管理」が命

個別対応方式を採用するには、仕入や経費を3区分に分けて管理している必要があります。

たとえば、次のような区分です。

  • 商品の仕入や販売手数料など、課税売上に直接対応する費用

  • 非課税の土地売却や住宅賃貸収入に直接対応する費用

  • 本社家賃、通信費、顧問料、会計ソフト利用料など、課税売上と非課税売上の両方に共通する費用


国税庁も、個別対応方式は、課税仕入れ等に係る消費税額が上記3区分に区分されている場合に限り採用できると説明しています。


つまり、決算時にまとめて「たぶんこれは課税対応」と感覚で分けるのでは不十分です。

期中から、会計ソフトの補助科目や税区分、部門、摘要などを使って、課税売上対応・非課税売上対応・共通対応を整理しておく必要があります。


5億円を超えた後に慌てて区分しようとすると、請求書や契約書の確認に相当な時間がかかります。


一括比例配分方式とは

一括比例配分方式とは、課税仕入れ等に係る消費税額の全体に課税売上割合を掛けて、仕入控除税額を計算する方法です。


国税庁は、一括比例配分方式について、個別対応方式のような区分がされていない場合、または区分されていてもこの方式を選択する場合に適用し、仕入控除税額は「課税仕入れ等に係る消費税額 × 課税売上割合」で計算すると説明しています。


計算自体はシンプルです。

ただし、すべての仕入税額に課税売上割合を掛けるため、課税売上にだけ対応する仕入税額も一部控除できなくなります。


たとえば、課税売上割合が98%であれば、仕入税額全体の98%を控除するイメージです。

課税売上割合が高ければ影響は小さく見えますが、仕入税額の金額が大きい会社では、2%の控除不能でも大きな税負担になります。


一括比例配分方式は2年継続に注意

一括比例配分方式は、計算が簡単な反面、重要な注意点があります。


一度、一括比例配分方式を選択した場合には、2年以上継続して適用した後でなければ、個別対応方式に変更できません。


つまり、今期だけ楽だから一括比例配分方式にする、という判断は危険です。

翌期に非課税売上が減り、個別対応方式なら有利になるとしても、すぐに変更できない可能性があります。


特に、不動産売却、土地売却、住宅賃貸収入など、非課税売上が一時的に発生した会社では、一括比例配分方式を選ぶ前に翌期以降の見通しも確認すべきです。


課税売上割合に準ずる割合を使える場合もある

個別対応方式では、共通対応分について、原則として課税売上割合を使って控除額を計算します。


ただし、事業内容によっては、課税売上割合だけでは実態に合わない場合があります。

このような場合には、所轄税務署長の承認を受けたうえで、課税売上割合に準ずる割合を使えることがあります。


たとえば、部門別売上割合、床面積割合、従業員数割合など、課税売上と非課税売上の実態をより合理的に反映できる割合を使うケースです。


ただし、課税売上割合に準ずる割合は、事前の承認が必要です。

決算時に突然「この割合の方が実態に合うから使いたい」と考えても、原則として間に合いません。課税売上高5億円超や非課税売上の発生が見込まれる場合には、早めに検討しておく必要があります。


輸出売上が多い会社も5億円判定に注意

輸出売上が多い会社では、消費税の納税額が少なかったり、還付になることがあります。


輸出取引は消費税が免税とされるため、課税売上割合は高くなりやすいです。


しかし、輸出免税売上も、課税売上高の判定では原則として課税売上高に含まれます。

そのため、輸出売上の増加により課税売上高が5億円を超えることがあります。


この場合、課税売上割合が95%以上でも、95%ルールによる全額控除は使えず、個別対応方式または一括比例配分方式で仕入控除税額を計算する必要があります。


輸出企業では、「いつも還付だから大丈夫」と考えがちですが、売上規模が大きくなると仕入税額控除の計算方法が変わることを忘れないようにしましょう。


非課税売上が少しだけでも影響する

課税売上高が5億円以下で、課税売上割合が95%以上であれば、通常は仕入税額控除を全額控除できます。


しかし、課税売上高が5億円を超えると、たとえ非課税売上が少額で課税売上割合が99%であっても、全額控除はできません。たとえば、次のような非課税売上がある会社は注意が必要です。


  • 土地の売却収入

  • 住宅家賃収入

  • 有価証券の譲渡収入

  • 受取利息。


保険金や補助金そのものは課税売上割合の計算に直接入らないケースもありますが、内容によって確認が必要です。


非課税売上が少額であっても、5億円超の会社では、その影響を無視できません。


会計ソフトの税区分を見直す

課税売上高が5億円を超える可能性がある会社では、会計ソフトの税区分設定を見直しましょう。


特に個別対応方式を採用する可能性がある場合、通常の課税仕入れをすべて同じ税区分で入力していると、あとから区分するのが大変です。


次のような税区分を設定しておくと、決算時の集計がしやすくなります。

  • 課税売上対応課税仕入

  • 非課税売上対応課税仕入

  • 共通対応課税仕入

  • 対象外・不課税

  • 非課税仕入

  • インボイスなし控除制限対象


部門別に売上や費用を管理している会社では、部門コードを活用するのも有効です。

特に、不動産部門、管理部門、輸出部門、国内販売部門などがある場合には、部門別管理が仕入税額控除の計算にも役立ちます。


決算前に確認すべきチェックリスト

課税売上高が5億円に近づいている会社では、決算前に次の点を確認しましょう。

  • 当期の課税売上高が5億円を超えるか

  • 課税期間が1年未満の場合、年換算で5億円を超えるか

  • 課税売上割合が95%以上か

  • 非課税売上の内容と金額は何か

  • 土地売却や住宅賃貸収入がないか

  • 輸出免税売上を含めて課税売上高を集計しているか

  • 仕入や経費を3区分で管理できているか

  • 個別対応方式と一括比例配分方式のどちらが有利か

  • 一括比例配分方式の2年継続を理解しているか

  • 課税売上割合に準ずる割合の承認申請が必要ないか

  • インボイスの保存状況に問題がないか

  • 控除対象外消費税等の法人税処理を確認しているか

  • このチェックを期末直前に行うのでは遅いことがあります


売上が5億円を超えそうな会社では、少なくとも期中から経理処理を見直しておきたいところです。


税務調査で見られやすいポイント

課税売上高5億円超の会社では、税務調査でも仕入税額控除の計算が確認されやすくなります。特に次の点は注意が必要です。

  • 課税売上高5億円超なのに全額控除していないか

  • 課税売上割合の計算に誤りがないか

  • 非課税売上を漏らしていないか

  • 個別対応方式の3区分が合理的か

  • 共通対応分を恣意的に課税対応へ寄せていないか

  • 一括比例配分方式を2年継続しているか

  • インボイスの保存要件を満たしているか

  • 控除対象外消費税等の処理が適切か


特に、個別対応方式を採用する場合は、区分の根拠が重要です。

契約書、請求書、稟議書、部門別資料などから、どの売上に対応する費用なのかを説明できるようにしておきましょう。


まとめ:売上5億円超は消費税の処理が変わるサイン

課税売上高が5億円を超えると、消費税の仕入税額控除の計算が大きく変わります。


課税売上割合が95%以上であっても、課税期間中の課税売上高が5億円を超える場合には、仕入税額控除を全額控除することはできません。


この場合、個別対応方式または一括比例配分方式により、課税売上に対応する部分だけを控除します。


個別対応方式を使うには、課税仕入れ等を、課税売上対応、非課税売上対応、共通対応に区分して管理しておく必要があります。


一括比例配分方式は計算が簡単ですが、2年以上継続適用しなければ個別対応方式に変更できない点に注意が必要です。


また、課税期間が1年未満の場合には、課税売上高を年換算して5億円超かどうかを判定します。


売上が伸びている会社、輸出売上が多い会社、土地売却や住宅賃貸収入がある会社、不動産事業を行う会社では、5億円超の判定を早めに行いましょう。


消費税は、期末にまとめて処理しようとすると、区分管理が追いつかないことがあります。

課税売上高が5億円に近づいてきた段階で、会計ソフトの税区分、部門管理、インボイス保存、個別対応方式と一括比例配分方式の有利不利を確認しておくことが大切です。


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【この記事の執筆者】

安田 亮(公認会計士・税理士)

安田亮公認会計士・税理士事務所 代表

京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。

現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。

事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。

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