食料品の消費税1%で農家の負担はどうなる?税理士費用の支援や給付金を政府が検討
- 安田亮
- 15 時間前
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こんにちは!代表の安田です。
政府は、2027年4月1日から2年間、現在8%となっている飲食料品の消費税率を1%へ引き下げる方針を決定しています。
消費者にとっては負担軽減となる一方で、農家などの事業者については、むしろ負担が増える可能性が指摘されています。
こうした問題への対応として、政府は小規模な農家などについて、本則課税へ移行する際の税理士費用を支援することや、売上高などに応じた給付を行うことを検討していると報じられました。
今回は、
なぜ消費税を減税すると農家の負担が増えるのか
免税事業者や簡易課税事業者にはどのような影響があるのか
本則課税へ変更するとどうなるのか
税理士費用への支援はどのようなものなのか
について、税理士の立場から分かりやすく解説します。
食料品の消費税率は2027年4月から1%へ
政府は2026年8月5日、「給付付き税額控除」の制度導入に関する基本方針を閣議決定しました。
その中で、給付付き税額控除が本格導入されるまでの経過措置として、2027年4月1日から2年間、現在の軽減税率の対象となっている飲食料品の消費税率を1%とする方針が示されています。
さらに、所得に応じた給付を組み合わせることで、消費者側では飲食料品に係る消費税負担を全体として「実質ゼロ」とすることが想定されています。
ただし、2026年9月3日時点では税率変更を定める法律が成立したわけではありません。
政府・与党は制度の詳細を詰めたうえで、法案の成立を目指しています。
なぜ食料品を減税すると農家の負担が増えるのか
一見すると、「消費税が8%から1%になるのであれば、農家にとっても良い話なのでは?」と思われるかもしれません。
ところが、農家には特有の問題があります。
農産物の販売については消費税率が1%になる一方、
肥料
農薬
農業用資材
機械
車両
燃料
などについては、基本的に従来どおり10%の消費税がかかるものが多くあります。
つまり、売上時に受け取る消費税は大幅に減るのに、仕入れ時に支払う消費税はあまり減らないという状況が生じます。
国会でも、売上側の税率が下がる一方で肥料や資材などの仕入れには10%の消費税が残ることから、特に小規模な農家への影響が問題として指摘されています。
特に影響が大きいのが「免税事業者」と「簡易課税事業者」
農家への影響を考える際には、
免税事業者
簡易課税事業者
本則課税事業者
の違いが重要です。
<免税事業者の場合>
消費税では、原則として基準期間の課税売上高が1,000万円以下など一定の要件を満たす事業者について、消費税の納税義務が免除される場合があります。
これが「免税事業者」です。
免税事業者は消費税の申告・納税を行なわないため、農業用資材などの購入時に支払った消費税についても、消費税の還付を受けることができません。
そのため、農産物の売上にかかる消費税率だけが1%へ下がると、仕入時に負担する消費税とのバランスが大きく変わります。
<簡易課税事業者の場合>
基準期間の課税売上高が5,000万円以下など一定の条件を満たす課税事業者は、「簡易課税制度」を選択できます。
飲食料品の譲渡に係る農業では、現在のみなし仕入率は80%です。
簡易課税では、実際に支払った消費税を計算するのではなく、売上にかかる消費税 × みなし仕入率によって仕入税額控除を計算します。
ここで食料品の税率が1%になると問題が生じます。
例えば、税抜売上高が1,000万円なら、単純化すると売上にかかる消費税は10万円です。
簡易課税では、その80%である8万円を仕入税額控除とみなすため、納税額は約2万円となります。
しかし実際には、農家が肥料や機械などについて数十万円の消費税を負担している可能性があります。
実際に50万円の消費税を支払っていても、簡易課税ではその50万円をそのまま控除することはできません。
この点が今回の減税で大きな問題となっています。
本則課税へ変更すれば消費税の還付を受けられる可能性
そこで検討されているのが、免税事業者や簡易課税事業者から本則課税へ移行する方法です。
本則課税では原則として、「売上にかかる消費税-仕入れにかかる消費税」によって納付税額を計算します。
例えば、単純化して、
売上にかかる消費税:10万円
仕入れにかかる消費税:50万円
だったとします。
この場合、
10万円-50万円=▲40万円
となり、一定の要件を満たせば40万円の消費税還付を受けられることになります。
食料品の税率が1%になると、このように「納税」ではなく「還付」となる農家が増える可能性があります。
簡易課税から本則課税への変更には現在制約がある
ただし、簡易課税から自由に本則課税へ変更できるわけではありません。
現行制度では、簡易課税を選択すると原則として2年間継続して適用する必要があります。
また、本則課税へ変更する場合には届出期限の問題もあります。
そこで自民党税制調査会では、
本則課税へ移行する際の届出に関する特例
簡易課税を2年間継続しなければならないルールの特例
などを設ける方向で具体的な制度設計が進められています。
今回の食料品の消費税減税に合わせて、農家が本則課税へ移行しやすくすることが狙いです。
本則課税になると経理・消費税申告が複雑になる
一方で、本則課税へ移行すればそれで問題が解決するわけではありません。
本則課税では、実際に支払った消費税を集計する必要があるため、
取引ごとの税率判定
インボイスの確認
課税仕入れの集計
帳簿や請求書の保存
消費税申告書の作成
などが必要となります。
これまで免税事業者や簡易課税事業者だった小規模農家にとって、事務負担が大幅に増える可能性があります。
そこで今回、政府は税理士への相談費用や申告費用を支援する方針を示したと報じられています。
「還付を受けるために本則課税へ移行したいものの、税理士費用がかかる」という問題への対応と考えられます。
売上高に応じた給付金も検討
税理士費用への支援だけではありません。
政府は中小・零細農家について、売上高などに応じて一定額を給付する制度も検討しています。
これまでの報道では、飲食料品の税率引下げによって生じる減収を補うため、事業規模に応じた給付を行なう方向が示されています。
もっとも、
対象となる農家
売上高の基準
給付額
税理士費用の補助率
補助上限額
申請方法
申請時期
などについては、現時点では詳細が公表されていません。
したがって、「税理士費用が全額補助される」といったところまで決まったわけではない点には注意が必要です。
農家は「簡易課税か本則課税か」のシミュレーションが重要に
今回の改正が実施された場合、農家にとって非常に重要になるのが、「簡易課税を続けるのか、本則課税へ変更するのか」という判断です。
単純に「還付が受けられるから本則課税の方が得」とは限りません。
農家によって、
農産物の売上高
肥料・農薬などの仕入高
設備投資額
車両・農業機械の購入予定
免税事業者かどうか
簡易課税を選択しているか
インボイス登録の有無
などが異なるためです。
特にトラクターや農業機械など多額の設備投資を予定している年は、本則課税にした場合の消費税還付額が大きくなる可能性があります。
制度の詳細が確定した段階で、少なくとも2027年・2028年の2年間について消費税額をシミュレーションしたうえで課税方式を決めることが重要になるでしょう。
まとめ
政府は2027年4月から2年間、飲食料品の消費税率を現在の8%から1%へ引き下げる方針です。
消費者から見れば減税ですが、農家にとっては、売上にかかる消費税は1%になる一方、肥料・農業資材・機械などには10%の消費税が残るという問題があります。
特に免税事業者や簡易課税事業者への影響が大きいため、政府は、
本則課税へ移行しやすくする特例
税理士費用の支援
売上高などに応じた給付
といった対応を検討しています。
今後は農家だけでなく、食品製造業、食品小売業、飲食店などについても、課税方式や価格設定への影響が大きな論点になると考えられます。
なお、2026年9月3日時点では具体的な支援額や申請要件などは確定していません。
今後公表される税制改正大綱、法令、農林水産省・国税庁などの情報を確認する必要があります。
神戸・兵庫で消費税の課税方式の見直しや、本則課税・簡易課税のシミュレーションについてお困りの方は、安田亮公認会計士・税理士事務所までご相談ください。
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【この記事の執筆者】
安田 亮(公認会計士・税理士)
安田亮公認会計士・税理士事務所 代表
京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。
現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。
事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。






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