外国法人が日本支店を設立した場合の消費税|新設法人の納税義務に注意
- 安田亮
- 51 分前
- 読了時間: 12分
こんにちは!代表の安田です。
外国法人が日本で事業を始める場合、法人税や源泉所得税、移転価格税制などに意識が向きやすいです。
しかし、忘れてはいけないのが消費税です。
特に、日本支店を設立して国内で商品の販売やサービス提供を始める場合には、「設立直後だから消費税は免税でよい」と単純に判断できないことがあります。
外国法人であっても、日本国内で課税資産の譲渡等を行う限り、消費税の納税義務が問題になります。
また、資本金の額が1,000万円以上である場合には、新設法人の納税義務の免除の特例により、基準期間がない課税期間であっても課税事業者になることがあります。
本日は、外国法人が日本支店を設立した場合の消費税の納税義務、新設法人の特例、みなし事業年度、課税事業者選択届出書の注意点について、税理士の視点からわかりやすく解説します。
外国法人でも日本の消費税の納税義務者になる
消費税は、国内において事業者が行う課税資産の譲渡等について課税されます。
ここでいう事業者には、国内法人だけでなく、外国法人も含まれます。
したがって、外国法人が日本国内で商品を販売したり、国内で課税対象となるサービスを提供したりする場合には、消費税の納税義務が生じる可能性があります。
たとえば、外国法人が日本支店を開設し、海外本店で製造した商品を日本へ輸入して国内販売する場合、日本国内で課税売上が発生します。
この場合、日本支店設立後の消費税の納税義務を検討する必要があります。
外国法人だから日本の消費税は関係ない
日本支店は法人格がないから消費税の納税義務はない
という理解は誤りです。
消費税では、日本国内で課税取引を行っているかどうかが重要になります。
新設法人の納税義務の免除の特例とは
消費税では、原則として、基準期間の課税売上高が1,000万円以下であれば、消費税の納税義務が免除されます。
法人の場合、基準期間とは通常、その事業年度の前々事業年度をいいます。
新たに設立された法人の設立1期目・2期目は、前々事業年度がないため、原則として基準期間がありません。
そのため、設立1期目・2期目は免税事業者になりやすいのですが、例外があります。
代表的な例外が、新設法人の納税義務の免除の特例です。
国税庁は、基準期間がない法人のうち、その事業年度開始の日における資本金または出資金の額が1,000万円以上である法人について、その課税期間の納税義務は免除されないと説明しています。
つまり、基準期間がなくても、期首の資本金等が1,000万円以上であれば、その期は消費税の課税事業者になるということです。
このルールは、国内法人だけでなく、外国法人にも関係します。
外国法人にも新設法人の特例は適用される
外国法人についても、新設法人の納税義務の免除の特例が適用される場合があります。
国税庁の質疑応答事例では、外国法人であっても、本国において設立されてから2年間は、日本国内で事業を行う限り、消費税法第12条の2第1項の適用対象になるとされています。
つまり、外国法人が本国で設立されてから1期目・2期目に日本で事業を行う場合、資本金等が1,000万円以上であれば、日本での消費税の納税義務が免除されない可能性があります。
ここで注意したいのは、「日本支店を設立した日」だけを見るのではなく、「外国法人が本国で設立された日」や「外国法人の事業年度」を確認する必要があることです。
たとえば、外国法人が本国で2年前に設立され、今年8月1日に日本支店を開設した場合、日本支店の開設日だけを見て判断すると誤る可能性があります。
外国法人としての設立時期、事業年度、資本金等、国内事業開始時期をセットで確認する必要があります。
外国法人の資本金はどう判定するのか
新設法人の特例では、事業年度開始の日における資本金または出資金の額が1,000万円以上かどうかを確認します。
外国法人の場合、本国通貨で資本金が表示されていることが多いため、日本円への換算が問題になります。
国税庁は、外国法人における「資本金又は出資の金額」について、その事業年度開始の日における日本国内での登記上の資本金または出資金の額により確認することが考えられるとしています。登記で確認できない場合には、前事業年度の貸借対照表などにより確認することが考えられます。また、本国通貨で表示されている場合の円貨換算は、事業年度開始の日における電信売買相場の仲値により換算するとされています。
実務では、次のような資料を確認することになります。
日本支店の登記事項証明書
本国法人の登記資料
本国の財務諸表
資本金の払込資料
為替レート
事業年度開始日の情報
「本国通貨では少額に見えるが、日本円換算すると1,000万円以上になる」というケースもあり得ます。
外国法人の日本進出時には、資本金等の円換算を必ず確認しましょう。
みなし事業年度に注意
外国法人が日本支店を開設する場合、消費税の納税義務を考えるうえで「みなし事業年度」も重要です。
外国法人が国内に支店を開設すると、その支店開設日を境に、消費税上の事業年度が区分されることがあります。
外国法人がN国でX1年1月1日に設立され、12月決算であり、X2年8月1日に日本支店を開設したケースの場合、外国法人の事業年度は次のように区分されます。
第1期:X1年1月1日からX1年12月31日
第2期:X2年1月1日からX2年7月31日
第3期:X2年8月1日からX2年12月31日
日本支店設立後の第3期は、基準期間のある課税期間となるため、納税義務の判定は第1期の課税売上高によって行なわれます。
ただし、日本支店設立前は日本での課税売上高がないため、第3期については免税事業者に該当する可能性があります。
このように、外国法人の場合には、単純に本国の決算期だけを見るのではなく、日本支店の開設日によって課税期間が分かれる点に注意が必要です。
設立3期目以降に日本で事業を始める場合の改正にも注意
令和6年10月1日以後に開始する課税期間から、外国法人が設立3期目以降に日本国内で課税資産の譲渡等に係る事業を開始した場合の取扱いにも注意が必要です。
国税庁は、基準期間がある外国法人が、その基準期間の末日の翌日以後に国内で課税資産の譲渡等に係る事業を開始した場合、その事業年度は基準期間がないものとみなされると説明しています。そして、その国内事業開始年度および事業開始2年目について、各事業年度開始の日における資本金等が1,000万円以上である場合には、消費税法第12条の2第1項が適用され、納税義務は免除されません。
これは、外国法人の日本進出実務にかなり影響する改正です。
たとえば、外国法人が本国では何年も前から事業を行っていたとしても、日本で新たに課税売上が発生する事業を始める場合、日本進出1年目・2年目について新設法人の特例のような判定が必要になることがあります。
「外国法人としては設立から3期目以降だから、新設法人の特例は関係ない」とは言い切れません。令和6年10月1日以後に開始する課税期間では、この点を必ず確認しましょう。
日本支店設立前に課税売上がない場合
外国法人が日本支店を設立する前に、日本国内で課税売上を行なっていなかった場合、支店開設後の最初の課税期間は、免税事業者となる可能性があります。
ただし、ここで油断してはいけません。
次のような場合には、免税にならない可能性があります。
資本金等が1,000万円以上で、新設法人の特例に該当する場合
特定新規設立法人に該当する場合
課税事業者選択届出書を提出した場合
インボイス登録をした場合
基準期間や特定期間に国内課税売上がある場合
日本支店開設前であっても、国内で商品の販売、サービス提供、電子商取引、輸入後の国内販売などを行っていた場合には、国内課税売上の有無を確認する必要があります。
設備投資が大きい場合は課税事業者選択も検討する
外国法人が日本支店を設立する際には、設備投資、事務所開設費用、システム導入費用、広告費、専門家費用など、支出が先行することがあります。
このような場合、免税事業者のままでいると、国内で支払った消費税について仕入税額控除や還付を受けることができません。
一方、課税事業者を選択すれば、一定の要件のもと、課税仕入れに含まれる消費税を控除し、還付を受けられる可能性があります。
国税庁は、新規開業または法人を新規設立した場合で、その年またはその事業年度から課税事業者になるには、その課税期間中に消費税課税事業者選択届出書を提出する必要があると説明しています。
外国法人の日本支店設立時も、支店開設期が国内で事業を開始した課税期間に該当する場合には、その課税期間中に課税事業者選択届出書を提出することで、課税事業者になることを検討できます。
ただし、課税事業者を選択すると、原則として一定期間は免税事業者に戻れません。
さらに、調整対象固定資産や高額特定資産を取得した場合には、免税への復帰や簡易課税の選択に制限がかかることがあります。
消費税還付だけを見て選択するのではなく、将来の売上見込みや設備投資計画も含めて判断する必要があります。
インボイス登録との関係
外国法人が日本国内でB to B取引を行なう場合、取引先からインボイス登録を求められることがあります。
適格請求書発行事業者、いわゆるインボイス登録事業者になると、基準期間の課税売上高や基準期間がない法人の特例にかかわらず、消費税の納税義務は免除されません。国税庁も、適格請求書発行事業者は、基準期間における課税売上高や基準期間がない法人の納税義務の免除の特例の適用有無にかかわらず、納税義務は免除されないと説明しています。
つまり、日本支店開設直後で免税事業者になれる可能性がある場合でも、インボイス登録をすれば課税事業者になります。
B to B取引では、インボイス登録をしていないことで取引先の仕入税額控除に影響が出るため、営業上の理由から登録が必要になることがあります。
一方で、B to C取引が中心であれば、免税事業者としてスタートするメリットが大きい場合もあります。外国法人の日本進出時には、取引先の属性や価格設定も含めて、インボイス登録の要否を検討しましょう。
輸入消費税との違いにも注意
外国法人が海外本店で製造した商品を日本支店で輸入して国内販売する場合、輸入時には輸入消費税がかかります。
この輸入消費税と、日本国内販売に係る消費税は別の論点です。
免税事業者であっても、外国貨物を保税地域から引き取る場合には、輸入消費税を納付する必要があります。
一方、課税事業者であれば、輸入許可通知書などを保存することで、輸入時に支払った消費税を仕入税額控除の対象にできる場合があります。
したがって、外国法人が日本支店を通じて輸入販売を行なう場合には、
輸入時の消費税
国内販売時の消費税
課税事業者か免税事業者か
インボイス登録の有無
輸入許可通知書の保存
をセットで確認する必要があります。
外国法人の日本支店設立時に確認すべきポイント
外国法人が日本支店を開設する場合には、少なくとも次の点を確認しましょう。
本国での設立日
本国での事業年度
日本支店の開設日
日本支店開設前に日本国内で課税売上があったか
資本金または出資金の額
日本円への換算方法
新設法人の納税義務の免除の特例に該当するか
設立3期目以降の外国法人に関する基準期間なしのみなし規定に該当するか
特定新規設立法人に該当しないか
課税事業者選択届出書を提出するか
インボイス登録をするか
輸入消費税の仕入税額控除を受けられるか
調整対象固定資産や高額特定資産の取得予定があるか
これらを確認せずに日本支店を開設すると、消費税の申告漏れや、逆に受けられるはずの還付を受けられないといった問題が起こる可能性があります。
まとめ:外国法人の日本支店設立では、消費税の納税義務を早めに確認する
外国法人であっても、日本国内で課税資産の譲渡等を行う場合には、消費税の納税義務が問題になります。
特に、日本支店を設立して国内販売を始める場合には、国内法人と同じ感覚では判断できません。
外国法人にも、新設法人の納税義務の免除の特例が適用されることがあります。
本国での設立1期目・2期目に日本で事業を行う場合、資本金等が1,000万円以上であれば、消費税の納税義務が免除されない可能性があります。
また、令和6年10月1日以後に開始する課税期間では、設立3期目以降の外国法人が日本で新たに課税資産の譲渡等に係る事業を開始した場合にも、一定期間について基準期間がないものとみなされ、資本金等による判定が必要になることがあります。
一方、日本支店開設前に国内課税売上がない場合には、支店開設後の最初の課税期間が免税事業者となる可能性もあります。
ただし、設備投資が大きい場合には課税事業者選択による消費税還付を検討する必要がありますし、BtoB取引ではインボイス登録が求められることもあります。
外国法人の日本進出では、
本国での設立時期
日本支店の開設日
資本金等の円換算
国内課税売上の有無
課税事業者選択
インボイス登録
輸入消費税
を早い段階で整理しておくことが重要です。
日本支店を設立してから慌てるのではなく、設立準備の段階で消費税の納税義務と届出の要否を確認しておくことをおすすめします。
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【この記事の執筆者】
安田 亮(公認会計士・税理士)
安田亮公認会計士・税理士事務所 代表
京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。
現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。
事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。






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