top of page

新設法人の消費税はいつから課税事業者?資本金1,000万円・特定期間・届出の注意点を税理士が解説

  • 執筆者の写真: 安田 亮
    安田 亮
  • 7 分前
  • 読了時間: 13分

こんにちは!代表の安田です。


会社を新しく設立するとき、多くの方が気にするのは、法人税、社会保険、役員報酬、創業融資、許認可などです。


一方で、意外と見落とされやすいのが「消費税」です。


「新設法人は最初の2期は消費税が免税になる」


このように聞いたことがある方も多いと思います。


しかし、この理解は半分正しく、半分危険です。

新設法人であっても、資本金の額、特定期間の売上や給与、親会社との関係、インボイス登録、課税事業者選択届出書の提出、高額な設備投資の有無などによって、設立1期目や2期目から消費税の課税事業者になることがあります。


本日は、新設法人の消費税について、設立時に確認すべきポイントを税理士の視点からわかりやすく解説します。


新設法人は原則として1期目・2期目に基準期間がない

消費税では、原則として「基準期間」の課税売上高が1,000万円を超えるかどうかで、課税事業者になるか免税事業者になるかを判定します。


法人の場合、基準期間とは通常、その事業年度の前々事業年度をいいます。

新しく設立された法人の1期目・2期目には、通常、前々事業年度がありません。


そのため、新設法人は原則として、設立1期目・2期目は免税事業者になりやすい仕組みになっています。


ただし、これはあくまで原則です。

国税庁も、新たに設立された法人の1期目・2期目は原則として納税義務が免除されるものの、「新設法人に対する納税義務の免除の特例」や「特定新規設立法人の納税義務の免除の特例」に該当する場合には、課税事業者として消費税の申告が必要になると説明しています。


つまり、「新設法人だから2年間は必ず免税」とは言えません。


資本金1,000万円以上で設立すると1期目から課税事業者

新設法人の消費税で最初に確認すべきなのが、資本金または出資金の額です。


基準期間がない法人であっても、その事業年度開始の日における資本金または出資金の額が1,000万円以上である法人は、消費税の納税義務が免除されません。国税庁も、設立1期目または2期目のそれぞれの期首における資本金等が1,000万円以上である場合、その期は課税事業者になると説明しています。


たとえば、資本金1,000万円で会社を設立した場合、設立1期目から消費税の課税事業者になります。


一方、資本金900万円で設立した場合には、資本金1,000万円以上の新設法人には該当しません。


設立時に「資本金を1,000万円以上にするか、1,000万円未満にするか」で、消費税の取扱いが大きく変わることがあります。


資本準備金を使えばよい、とは単純に言えない

実務では、設立時に1,000万円を出資したいものの、消費税の観点から資本金を1,000万円未満にしたいという相談があります。


たとえば、出資総額1,000万円のうち、資本金900万円、資本準備金100万円とするような設計です。


消費税の新設法人判定では、資本金または出資金の額が1,000万円以上かどうかを見ます。

そのため、資本金を1,000万円未満にしておくことにより、新設法人の資本金1,000万円判定を回避できる場合があります。


ただし、形式だけで判断してよいわけではありません。

資本金の額は、信用力、融資、許認可、建設業許可、取引先審査、補助金、決算書の見え方などにも影響します。


消費税だけを見て資本金を決めるのではなく、事業計画全体を踏まえて判断する必要があります。


設立1期目の途中で増資した場合はどうなるか

設立時の資本金が1,000万円未満であれば、設立1期目は新設法人の資本金1,000万円判定には該当しません。


では、設立1期目の途中で増資して資本金が1,000万円以上になった場合はどうなるのでしょうか。


この場合、設立1期目の期首時点では資本金1,000万円未満であるため、原則として設立1期目は資本金1,000万円以上の新設法人には該当しません。


しかし、設立2期目の期首時点で資本金が1,000万円以上になっていれば、設立2期目は課税事業者になります。


国税庁も、資本金1,000万円未満で設立した後、設立1期目の途中で増資して資本金1,000万円以上となった場合には、設立2期目は課税事業者になると説明しています。


したがって、設立後すぐに増資する予定がある場合には、2期目の消費税も含めて検討しておく必要があります。


2期目は「特定期間」にも注意

資本金1,000万円未満で設立した場合でも、2期目から課税事業者になることがあります。

その代表例が「特定期間」による判定です。


基準期間の課税売上高が1,000万円以下であっても、特定期間の課税売上高が1,000万円を超えた場合には、課税事業者になります。法人の場合、特定期間は原則として、その事業年度の前事業年度開始の日以後6か月の期間とされています。


つまり、設立1期目の前半6か月で売上が1,000万円を超えると、設立2期目から課税事業者になる可能性があります。


また、国外事業者以外の事業者については、特定期間の課税売上高に代えて、その特定期間中に支払った給与等の金額で判定することもできます。


この点は非常に重要です。

たとえば、設立1期目の前半6か月の売上は1,200万円だったものの、給与等の支払額が800万円だった場合、給与等支払額で判定することにより、2期目も免税事業者となる余地があります。


反対に、売上が1,000万円以下でも、給与等支払額が1,000万円を超えている場合には、どちらの判定を使うか慎重に確認する必要があります。


設立1期目を7か月以下にする設計

新設法人の消費税対策として、設立1期目の事業年度を7か月以下にする方法が検討されることがあります。


国税庁の質疑応答事例では、法人の設立1期目が7か月以下の場合、前事業年度は特定期間に該当せず、前事業年度の課税売上高による判定は不要とされています。


つまり、資本金1,000万円未満で設立し、設立1期目を7か月以下に設定すれば、設立2期目について特定期間による課税事業者判定を避けられる場合があります。


たとえば、6月に設立した会社が12月決算にする場合、設立1期目は7か月以下になります。

この場合、設立1期目の前半6か月の売上や給与が大きくても、特定期間による2期目課税の判定が不要になることがあります。


ただし、決算期は消費税だけで決めるものではありません。

繁忙期、資金繰り、親会社との決算統一、業種の季節性、会計事務所との申告スケジュールなども考慮する必要があります。


特定新規設立法人にも注意

資本金が1,000万円未満であっても、親会社や支配者との関係により課税事業者になることがあります。


これが「特定新規設立法人」の納税義務の免除の特例です。

国税庁は、基準期間がない資本金1,000万円未満の法人であっても、一定の支配関係があり、判定対象者の基準期間相当期間における課税売上高が5億円を超える場合などには、特定新規設立法人として納税義務が免除されないと説明しています。


さらに、令和6年10月1日以後に開始する課税期間からは、判定対象者の課税売上高が5億円を超える場合に加え、売上金額、収入金額その他の収益の額の合計額が50億円を超える場合も、特定新規設立法人に該当し得るとされています。


たとえば、大きな売上がある親会社が子会社を新設する場合、資本金を1,000万円未満にしても、特定新規設立法人として1期目から課税事業者になることがあります。


グループ会社を設立する場合には、資本金だけでなく、親会社や関係会社の売上規模、支配関係も確認しましょう。


会社分割・合併で設立された法人は別ルールに注意

新設法人といっても、通常の新規設立だけではありません。


会社分割、合併、事業譲渡、法人成りなどにより法人を設立するケースもあります。

このような場合には、単純な新設法人の免税判定だけでなく、合併・分割があった場合の納税義務の免除の特例、元の事業者の課税売上高、事業承継の状況などを確認する必要があります。


国税庁も、資本金1,000万円未満であっても、合併・分割があった場合の納税義務の免除の特例に該当する場合などには、免税事業者にならないことがあると説明しています。


特に、既存事業を新会社に移す場合には、形式上は新設法人でも、消費税では元の事業の実績を引き継ぐような判定が必要になることがあります。


「新会社だから免税」と決めつけないようにしましょう。


インボイス登録をすると免税事業者ではなくなる

設立1期目や2期目で免税事業者になれる場合でも、インボイス登録をすると課税事業者になります。


国税庁は、適格請求書発行事業者、いわゆるインボイス登録事業者について、基準期間の課税売上高や基準期間がない法人の納税義務の免除の特例にかかわらず、納税義務は免除されないと説明しています。


これは、BtoB取引が多い新設法人では大きな論点です。

取引先からインボイス登録を求められる場合、免税事業者のままでは取引上不利になることがあります。


一方、インボイス登録をすれば、設立1期目から消費税の申告・納税が必要になります。

したがって、設立時には、

  • 免税事業者としてスタートするか

  • インボイス登録をして課税事業者になるか

  • 取引先が仕入税額控除を重視するか

  • 価格交渉に影響するか

を検討する必要があります。


設備投資が大きい場合は課税事業者選択も検討する

新設法人では、設立当初に内装工事、機械装置、車両、システム、広告宣伝、専門家費用など、大きな支出が発生することがあります。


免税事業者のままでいると、これらの支出に含まれる消費税について、仕入税額控除や還付を受けることができません。


一方、課税事業者を選択すれば、設備投資などに係る消費税の還付を受けられる可能性があります。


国税庁は、新規開業または法人を新規設立した場合で、その年またはその事業年度から課税事業者になるには、その課税期間中に「消費税課税事業者選択届出書」を提出する必要があると説明しています。


つまり、設立1期目から課税事業者を選択したい場合には、その課税期間中に届出を提出する必要があります。


ただし、課税事業者を選択すると、原則として一定期間は免税事業者に戻れません。

また、後述するように、高額な資産を取得した場合には、免税への復帰や簡易課税の選択が制限されることがあります。


調整対象固定資産を取得した場合の制限

新設法人や特定新規設立法人が、基準期間がない課税期間中に調整対象固定資産を取得し、その課税期間の確定申告を一般課税で行う場合には注意が必要です。


国税庁は、この場合、その調整対象固定資産の仕入れ等の日の属する課税期間から、その課税期間の初日以後3年を経過する日の属する課税期間まで、免税事業者となることはできず、また一定期間は簡易課税制度選択届出書を提出することもできないと説明しています。


ここでいう調整対象固定資産とは、棚卸資産以外の資産で、建物、構築物、機械装置、車両、工具器具備品などのうち、一の取引単位の税抜価額が100万円以上のものをいいます。


たとえば、設立1期目に内装工事や設備投資を行い、消費税還付を受けるために一般課税で申告した場合、その後すぐに免税事業者へ戻ったり、簡易課税へ切り替えたりできない可能性があります。


目先の還付だけで判断すると、2期目・3期目以降の消費税負担が想定外に大きくなることがあります。


「免税か課税か」はフローチャートで管理する

新設法人の消費税判定は、思った以上に複雑です。

少なくとも次の順番で確認すると整理しやすくなります。


  • 基準期間がないかを確認する

  • 期首資本金または出資金が1,000万円以上かを確認する

  • 資本金1,000万円未満であれば、特定新規設立法人に該当しないかを確認する

  • 2期目以降は、特定期間の課税売上高または給与等支払額が1,000万円を超えないかを確認する

  • インボイス登録をするかどうかを確認します。

  • 課税事業者選択届出書を提出するかどうかを確認する

  • 高額な設備投資がある場合には、一般課税・簡易課税・免税復帰の制限を確認する


この流れを設立時に整理しておくと、後から「免税のつもりだったのに課税事業者だった」というミスを防ぎやすくなります。


新設法人でよくある失敗例

新設法人の消費税では、次のような失敗がよくあります。


  • 資本金1,000万円で設立してしまい、1期目から課税事業者になった

  • 設立1期目の売上が大きく、2期目から課税事業者になることを見落とした

  • 特定期間の給与等支払額による判定を使えば免税にできたのに検討していなかった。

  • 親会社の売上規模が大きく、特定新規設立法人に該当していた

  • インボイス登録により、免税事業者ではなくなっていた

  • 課税事業者選択届出書を出し忘れて、設備投資の消費税還付を受けられなかった

  • 逆に、還付目的で課税事業者を選択した結果、その後の免税復帰や簡易課税選択が制限された

  • 会社分割で設立された法人なのに、通常の新設法人と同じように免税判定をしていた


このように、新設法人の消費税は「設立時の一度きりの判断」ではありません。

1期目、2期目、3期目以降で判定ポイントが変わるため、継続的な管理が必要です。


設立時に確認すべきチェックリスト

新設法人を設立する際には、次の点を確認しましょう。

  • 資本金または出資金の額はいくらか

  • 資本準備金を設定するか

  • 設立1期目の事業年度は何か月か

  • 設立1期目を7か月以下にする必要があるか

  • 設立1期目の売上見込みはいくらか

  • 設立1期目の給与等支払額はいくらか

  • 2期目の特定期間判定が必要か

  • 親会社や支配者の売上規模はどの程度か

  • 特定新規設立法人に該当しないか

  • インボイス登録をするか

  • 課税事業者選択届出書を提出するか

  • 設立初期に設備投資や高額資産の取得があるか

  • 一般課税・簡易課税のどちらが有利か

  • 調整対象固定資産や高額特定資産による制限がないか

  • 法人成り、合併、分割、事業譲渡に該当しないか


特に、設立時に設備投資が大きい会社、BtoB取引が中心の会社、親会社がある会社、設立初年度から売上が大きい会社は、消費税の検討を後回しにしない方がよいでしょう。


まとめ:新設法人の消費税は「2年間免税」と決めつけない

新設法人は、原則として設立1期目・2期目に基準期間がないため、免税事業者になりやすい仕組みになっています。


しかし、実際には例外が多くあります。

期首資本金または出資金が1,000万円以上であれば、設立1期目や2期目から課税事業者になります。


資本金1,000万円未満であっても、特定期間の課税売上高または給与等支払額が1,000万円を超えると、2期目から課税事業者になることがあります。


さらに、親会社や支配者の売上規模によっては、特定新規設立法人として課税事業者になることがあります。インボイス登録をした場合も、免税事業者ではいられません。


一方で、設立初期に大きな設備投資がある場合には、あえて課税事業者を選択することで消費税還付を受けられる可能性があります。


ただし、調整対象固定資産などを取得すると、免税復帰や簡易課税選択に制限がかかることがあります。新設法人の消費税は、

  • 資本金

  • 事業年度の長さ

  • 特定期間

  • 親会社との関係

  • インボイス登録

  • 課税事業者選択

  • 設備投資


これらをセットで確認する必要があります。

「新設法人だから2年間は免税」と思い込まず、設立前の段階で消費税の判定と届出スケジュールを整理しておきましょう。


神戸での起業や開業に関するご相談、確定申告にお困りの方、顧問税理士をお探しの方は安田亮公認会計士・税理士事務所までお問い合わせください!

神戸の税理士事務所ロゴ


【この記事の執筆者】

安田 亮(公認会計士・税理士)

安田亮公認会計士・税理士事務所 代表

京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。

現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。

事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。

コメント


bottom of page