決算期変更の手続きと税務上の注意点|申告期限の延長申請はいつまで?
- 安田 亮
- 19 分前
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おはようございます!代表の安田です。
親会社の変更、グループ会社との決算期統一、繁忙期の回避、資金繰りの平準化などを理由に、会社の決算期を変更することがあります。
決算期の変更は、原則として定款を変更し、税務署などへ異動届出書を提出することで行ないます。法務局での変更登記は通常必要ありません。
ただし、注意したいのが法人税や消費税の申告期限です。
決算期を延ばしたからといって、税務上も一つの事業年度を自由に18か月などへ延長できるわけではありません。また、法人税の申告期限を延長していても、消費税の申告期限まで自動的に同じ期間だけ延びるわけではありません。
本日は、決算期変更の会社法上の手続き、法人税・消費税の申告回数、申告期限延長の提出期限、利子税などの実務上の注意点を税理士が解説します。
決算期とは
決算期とは、会社が一事業年度の損益や財産状況を締め切る時期です。
たとえば、定款に「毎年4月1日から翌年3月31日までを事業年度とする」と定めている会社は、3月決算となります。
会社は決算期ごとに、原則として次のような手続きを行ないます。
決算整理
計算書類の作成
株主総会による決算承認
法人税・消費税・地方税の申告
納税
株主への配当の検討
決算期は会社の定款で定める事項ですが、登記事項ではありません。そのため、一般的な株式会社が決算期だけを変更する場合、法務局への変更登記は通常不要です。
決算期を変更する主な理由
会社が決算期を変更する理由には、次のようなものがあります。
親会社やグループ会社と統一するため
連結決算やグループ経営管理を効率化するため、親会社と子会社の決算期をそろえるケースです。決算期が異なると、連結決算のために仮決算や追加資料の作成が必要になることがあります。グループ会社の決算期を統一することで、月次管理や連結パッケージ作成を進めやすくなります。
会社の繁忙期を避けるため
繁忙期と決算作業が重なると、棚卸し、売掛金・買掛金の確認、決算資料の準備などが大きな負担になります。売上の季節変動が大きい会社では、比較的業務量の少ない時期へ決算期を変更することがあります。
資金繰りを調整するため
法人税や消費税の納税時期は、原則として決算期から一定期間後に到来します。
賞与、仕入代金、借入金返済などの資金支出が集中する時期を避ける目的で、決算期を見直すこともあります。ただし、納税時期を先送りすることだけを目的に、短期間で決算期変更を繰り返すのは適切ではありません。
許認可や事業計画に合わせるため
補助金、許認可、金融機関への事業計画、投資家への業績報告などの都合により、決算期を変更することもあります。
決算期変更の会社法上の手続き
株式会社が決算期を変更する場合、一般的には次の手順で進めます。
1.現在の定款を確認する
まず、定款に事業年度がどのように定められているかを確認します。
一般的には、次のような記載があります。
「当会社の事業年度は、毎年4月1日から翌年3月31日までとする。」
決算期を変更するには、この条文を変更します。
2.株主総会で定款変更を決議する
事業年度は通常、定款に記載されているため、株主総会の特別決議による定款変更が必要です。一人株主の会社でも、株主総会議事録などの書類を作成し、正式な意思決定を記録しておきましょう。定款変更の効力発生日や、新しい事業年度の開始・終了日についても明確にしておく必要があります。
3.定款と株主総会議事録を保存する
定款変更後は、変更後の定款と株主総会議事録を会社で保管します。
決算期は登記事項ではないため、決算期の変更だけであれば、通常は法務局への変更登記は必要ありません。ただし、医療法人、社会福祉法人、公益法人などでは、所轄庁への認可や届出が必要となることがあります。法人形態ごとの根拠法令や定款を確認しましょう。
税務署へ異動届出書を提出する
決算期を変更した場合には、税務署へ「異動届出書」を提出します。
国税庁は、事業年度等の変更を異動届出書の対象としており、提出時期を「異動等後速やかに」としています。定款変更後、後回しにせず提出しましょう。
異動届出書では、主に次の事項を記載します。
変更前の事業年度
変更後の事業年度
変更年月日
変更理由
法人税・消費税に関する異動
国税庁の案内上、添付書類は一律には求められていませんが、内容確認のため変更後の定款や株主総会議事録の写しを求められることがあります。
また、都道府県税事務所や市区町村にも、法人事業税・法人住民税に関する異動届を提出します。提出書類や期限は自治体によって異なるため、各提出先へ確認が必要です。
決算期を延ばしても法人税の事業年度は最大1年
決算期変更で特に注意したいのが、会社法上の会計期間と法人税法上の事業年度の違いです。
たとえば、9月決算の会社が3月決算へ変更し、定款上は現在の期を翌年3月まで延ばすと、会計上の期間が18か月になることがあります。
しかし、法人税法上、一つの事業年度は原則として1年を超えることができません。
そのため、税務上は1年を超える期間が分割され、複数回の法人税申告が必要になります。
<9月決算から3月決算へ変更する例>
次の会社を想定します。
変更前:毎年10月1日から翌年9月30日
変更後:毎年4月1日から翌年3月31日
決算期変更後の会計期間:10月1日から翌々年3月31日までの18か月
この場合、法人税上は次の二つの事業年度に分かれます。
10月1日から翌年9月30日までの12か月
翌年10月1日から翌々年3月31日までの6か月
したがって、会社法上は18か月分をまとめて決算承認する設計であっても、法人税の申告は12か月分と6か月分の2回必要になる可能性があります。
決算期変更の際は、定款だけでなく、法人税の申告単位とスケジュールを必ず確認しましょう。
消費税も法人の事業年度が課税期間になる
法人の消費税の課税期間は、原則としてその法人の事業年度です。課税事業者は、原則として課税期間終了日の翌日から2か月以内に申告・納付します。
法人税上の事業年度が決算期変更によって複数に分かれる場合、消費税についても申告回数が増えることがあります。
また、決算期変更により、基準期間や特定期間の判定にも影響が生じる可能性があります。
国税庁も、決算期変更をした法人について、設立日や変更時期によって消費税の特定期間が異なる場合があると案内しています。
特に次のような会社は注意が必要です。
設立後間もない法人
短い事業年度が生じる法人
免税事業者または課税事業者の判定時期にある法人
簡易課税制度を適用している法人
課税期間の短縮特例を選択している法人
法人税の申告期限は原則として決算後2か月以内
法人税の確定申告期限は、原則として各事業年度終了の日の翌日から2か月以内です。
たとえば、3月31日決算であれば、原則として5月31日が法人税の申告・納付期限となります。
申告期限が土曜日、日曜日、祝日などに当たる場合は、原則としてその翌開庁日が期限となります。決算期を変更した場合には、変更後の各事業年度終了日から申告期限を計算し直す必要があります。
法人税の申告期限は原則1か月延長できる
定款の定めにより、決算日から2か月以内に定時株主総会を開催できない常況にある法人は、申請により法人税の申告期限を原則1か月延長できます。
一般的には、定款に次のような趣旨の規定がある場合です。
「定時株主総会は、毎事業年度終了後3か月以内に招集する。」
この場合、決算確定が株主総会後となるため、決算日から2か月以内に確定申告書を提出できない常況があるとして、延長申請を行ないます。
申請が認められれば、3月31日決算の会社の法人税申告期限は、原則として5月31日から6月30日へ1か月延長されます。
法人税の延長申請はいつまでに提出する?
法人税の「定款の定め等による申告期限の延長の特例の申請書」は、原則として、最初に延長の適用を受けようとする事業年度終了の日までに提出します。
たとえば、2027年3月31日終了事業年度から延長を受けたい場合、原則として2027年3月31日までに申請書を提出する必要があります。
国税庁によると、申請後、最初に適用を受ける事業年度終了日の翌日から15日以内に延長または却下の処分がなければ、通常は1か月間延長されたものとみなされます。
決算期変更と延長申請を同時に行なう場合
決算期変更によって短い事業年度や複数の事業年度が生じる場合は、どの事業年度から延長を受けたいのかを明確にする必要があります。
たとえば、9月決算から3月決算へ変更し、税務上次の二つの事業年度が生じるとします。
1期目:10月1日から翌年9月30日
2期目:翌年10月1日から翌々年3月31日
翌々年3月期から延長したいからといって、翌年9月期の申告期限まで自動的に延長されるとは限りません。
延長の対象となる最初の事業年度と、その事業年度終了日を正確に確認しましょう。
申告期限の延長は「申告期限」を延ばす制度
申告期限の延長を受けても、税負担がなくなるわけではありません。
特に法人税では、法定申告期限から延長後の納付日までの期間について、利子税が生じることがあります。そのため、実務では決算日から2か月以内に概算税額を計算し、見込納付を行なうことがあります。
申告書は延長後の期限までに完成させつつ、納税資金を準備し、利子税の発生を抑えるためです。
「申告期限を延長したので、何もせず延長後の期限まで待てばよい」と考えないよう注意しましょう。
災害などによる期限延長とは別の制度
定款等を理由とする恒常的な申告期限の延長と、災害その他やむを得ない理由による個別の期限延長は、別の制度です。
災害などによって決算が確定せず申告できない場合の延長申請は、原則として対象事業年度終了日の翌日から45日以内に行ないます。
通常の株主総会スケジュールを理由とする延長では「定款の定め等による申告期限の延長の特例の申請書」を使用します。
申請書の種類を取り違えないようにしましょう。
消費税の申告期限は法人税と同時には延びない
法人税の申告期限延長が認められていても、それだけで消費税の申告期限が自動的に延長されるわけではありません。
消費税の申告期限を延長するには、法人税の申告期限延長の特例を受けている法人が、別途「消費税申告期限延長届出書」を提出する必要があります。
消費税の延長期間は1か月です。
法人税について会計監査などを理由に2か月以上の延長を受けている法人であっても、消費税の延長は原則として1か月に限られます。
消費税の届出期限
消費税申告期限延長届出書は、原則として、適用を受けようとする事業年度終了の日の属する課税期間の末日までに提出します。
3月31日終了事業年度から適用したい場合は、原則として3月31日までです。
提出が決算日の翌日以後になると、その終了済みの課税期間には適用できず、次の事業年度からの適用となる可能性があります。
消費税にも利子税がかかる
消費税の申告期限を延長した場合も、延長期間に対応する消費税・地方消費税について利子税が生じます。
そのため、法人税と同様に、法定期限までの見込納付を検討します。
また、申告期限を延長しても、中間申告の期限がすべて同様に延長されるわけではありません。
地方税の申告期限延長も確認する
法人税の申告期限延長を行なう会社は、法人事業税・法人住民税の申告期限についても確認が必要です。
地方税では、国税の延長承認を前提として地方自治体へ申請・届出を行なう運用がありますが、提出書類や手続きは自治体によって異なります。
本店所在地だけでなく、支店や事業所がある都道府県・市区町村への対応も確認しましょう。法人税の申請を提出しただけで、すべての地方自治体の申告期限が当然に処理されるわけではありません。
決算期変更で失敗しやすいケース
1.定款だけ変更して税務署へ届け出ていない
株主総会で定款変更を行っても、税務署や地方自治体への届出が必要です。
変更後は速やかに異動届出書を提出しましょう。
2.18か月分を一度だけ申告すればよいと考える
会社法上の会計期間を18か月とした場合でも、法人税上は原則として1年を超える事業年度をそのまま一期間として申告できません。
税務上は12か月と残期間に分け、2回申告する可能性があります。
3.決算期を変更すれば申告期限も自動的に延びると思う
決算期の変更と申告期限の延長は別の手続きです。
延長を希望する場合は、適用開始事業年度の末日までに延長申請を行う必要があります。
4.法人税の延長だけで消費税も延びたと思う
消費税を延長するには、法人税の延長とは別に届出書が必要です。
5.延長後の期限まで納税をしない
延長期間には利子税が生じることがあります。
法定期限までに概算額を見込納付するか、利子税を含めた資金計画を立てましょう。
6.地方税の手続きを忘れる
税務署への届出だけでなく、都道府県税事務所や市区町村への届出・延長手続きも必要です。
7.会計監査や株主総会のスケジュールを考慮していない
親会社から株主総会の時期を指定されても、監査、計算書類作成、取締役会、招集通知などに必要な期間を確保できなければ、現実的な日程になりません。
決算期を変更する前に、監査法人、親会社、税理士、社内経理部門でスケジュールを共有しましょう。
9月決算から3月決算へ変更する場合のスケジュール例
9月決算の会社が、親会社に合わせて3月決算へ変更する例を考えます。
<変更前>
事業年度:10月1日から翌年9月30日
法人税申告期限:原則11月30日
<定款変更後>
定款上の会計期間を、10月1日から翌々年3月31日までの18か月とした場合、税務上は次のように分かれることがあります。
税務上の事業年度 | 期間 | 原則申告期限 |
第1事業年度 | 10月1日~翌年9月30日 | 翌年11月30日 |
第2事業年度 | 翌年10月1日~翌々年3月31日 | 翌々年5月31日 |
第2事業年度について法人税の1か月延長を受ければ、申告期限は原則として翌々年6月30日となります。
ただし、第1事業年度について延長申請をしていなければ、従来どおり11月末までに法人税・消費税の申告と納税が必要です。
決算期を変更したことで、短期間に2回の決算・申告作業が発生する点に注意しましょう。
決算期変更前のチェックリスト
決算期を変更する場合には、少なくとも次の項目を確認しましょう。
<会社法・社内手続き>
現在の定款の事業年度
変更後の事業年度
株主総会の特別決議
株主総会議事録の作成
変更後定款の作成
許認可法人における所轄庁の承認・届出
監査法人や親会社との日程調整
<税務手続き>
税務署への異動届出書
都道府県・市区町村への異動届
法人税上の事業年度の区切り
法人税の申告回数
消費税の課税期間
基準期間・特定期間への影響
簡易課税制度への影響
法人税の申告期限延長申請
消費税の申告期限延長届出
地方税の申告期限延長
<実務スケジュール>
棚卸日
売掛金・買掛金の締め
減価償却費の月数計算
役員給与の定期同額給与の判定
事前確定届出給与の届出期限
中間申告・予定納税
会計監査
株主総会
見込納付
納税資金の確保
まとめ
決算期の変更は、単に決算月を変更するだけの手続きではありません。
定款変更、株主総会、税務署・地方自治体への届出に加え、法人税・消費税の申告回数や申告期限にも影響します。
特に押さえておきたいポイントは次のとおりです。
決算期の変更には原則として定款変更が必要
一般的な株式会社では決算期は登記事項ではない
税務署へ異動届出書を速やかに提出する
会社法上の会計期間が18か月でも、法人税上は一つの事業年度を原則1年以内に区切る
決算期変更により法人税・消費税の申告が複数回必要になることがある
法人税の申告期限延長申請は、原則として適用開始事業年度の末日まで
消費税の期限延長には別途届出が必要
消費税の延長期間は原則1か月
申告期限を延長しても利子税が生じる場合がある
地方税の届出・延長手続きも確認する
決算期変更は、実施時期によって決算作業を短期間に2回行うことになったり、申告期限の延長を予定どおり受けられなかったりすることがあります。
親会社の都合だけで日程を決めるのではなく、定款変更を決議する前に、税務申告、会計監査、株主総会、納税資金まで含めたスケジュールを作成することが重要です。
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【この記事の執筆者】
安田 亮(公認会計士・税理士)
安田亮公認会計士・税理士事務所 代表
京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。
現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。
事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。





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