インボイスに記載誤りがあったらどうする?買手が修正できるケースと仕入明細書での対応を税理士が解説
- 安田 亮
- 5 時間前
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こんにちは!代表の安田です。
令和5年10月1日からインボイス制度が始まり、消費税の仕入税額控除を受けるためには、原則として、一定の事項が記載された適格請求書、いわゆるインボイスの保存が必要になりました。
実務では、取引先から受け取ったインボイスについて、登録番号、税率、消費税額、軽減税率対象品目の記載などに誤りが見つかることがあります。
この場合、
金額は合っているからそのまま保存してよい
買手側で手書き修正すればよい
と考えてしまうと、仕入税額控除が認められない可能性があります。
インボイス制度では、記載事項に誤りがあるインボイスを保存しているだけでは、原則として仕入税額控除の要件を満たしません。
そのため、インボイスに誤りがあった場合には、原則として、売手である適格請求書発行事業者に修正したインボイスを交付してもらう必要があります。
ただし、必ず売手が新しいインボイスを発行し直さなければならないわけではありません。
買手側で正しい内容を記載した仕入明細書等を作成し、売手の確認を受けることで、その仕入明細書等を仕入税額控除のための請求書等として保存する方法も認められています。
また、現行の国税庁Q&Aでは、受領したインボイスに買手が修正を加えた場合でも、その修正事項について売手の確認を受けることで、その書類を修正事項を明示した仕入明細書等として保存し、仕入税額控除を受けることも差し支えないとされています。
本日は、インボイスに記載誤りがあった場合の基本対応、売手による修正インボイスの交付、買手が仕入明細書等で対応できるケース、やってはいけない修正方法、実務上のチェックポイントを解説します。
インボイスの記載誤りは仕入税額控除に影響する
インボイス制度では、買手が消費税の仕入税額控除を受けるために、原則として、帳簿と適格請求書等の保存が必要です。
適格請求書には、登録番号、取引年月日、取引内容、税率ごとに区分した対価の額、適用税率、税率ごとに区分した消費税額等、書類の交付を受ける事業者の氏名または名称など、一定の記載事項が求められます。
そのため、記載事項に不備や誤りがあるインボイスを保存しているだけでは、原則として仕入税額控除を受けられません。
たとえば、次のような誤りがある場合は注意が必要です。
登録番号が誤っている
適用税率の記載がない
税率ごとの消費税額等が誤っている
軽減税率対象品目である旨の記載が漏れている
取引内容や取引年月日が誤っている
取引先名が誤っている
10%対象と8%対象の区分が誤っている
特に、軽減税率対象取引が混在する請求書や、複数税率の取引がある請求書では、税率ごとの区分や消費税額の記載ミスが起こりやすくなります。
原則は売手に修正インボイスを交付してもらう
インボイスに記載誤りがある場合、原則的な対応は、売手に修正したインボイスを交付してもらう方法です。
売手である適格請求書発行事業者は、交付したインボイスの記載事項に不備や誤りがあったとき、買手である課税事業者に対して、修正したインボイスを交付する義務があります。
国税庁のQ&Aでも、買手が交付を受けた適格請求書等の記載事項に誤りがあった場合、売手に対して修正した適格請求書等の交付を求め、その交付を受けて保存する必要があるとされています。
したがって、まずは次の流れで対応するのが基本です。
買手がインボイスの記載誤りを発見する
売手へ誤りの内容を連絡する
売手が修正インボイスを交付する
買手は修正インボイスを保存する
売手は修正インボイスの写しを保存する
経理実務では、誤りを発見したら放置せず、取引先に早めに連絡することが大切です。
買手が勝手に追記・修正することはできない
インボイスに誤りがある場合、買手が自社の判断だけで、受け取ったインボイスに手書きで追記したり、会計ソフト上で修正したりすればよいのでしょうか。
原則として、それはできません。
国税庁は、買手が交付を受けた適格請求書等に記載事項の誤りがあった場合、原則として、買手自らが追記や修正を行うことはできないとしています。
たとえば、次のような対応は避けるべきです。
登録番号が違っているので、買手が正しい番号を手書きする
軽減税率対象品目の印がないため、買手が勝手に印を付ける
税率ごとの消費税額が違うため、買手が金額を書き換える
取引年月日が誤っているため、買手が正しい日付に修正する
売手に確認せず、社内用PDFだけを編集して保存する
インボイスは売手が交付する書類です。
買手が一方的に修正して保存しても、適格請求書等の保存要件を満たしたことにはなりません。
修正インボイスの交付方法
売手が修正インボイスを交付する場合、必ず当初のインボイスを丸ごと再発行しなければならないわけではありません。
国税庁のQ&Aでは、修正した適格請求書の交付方法として、主に次のような方法が認められています。
誤りがあった事項を修正し、改めて記載事項のすべてを記載したものを交付する方法
当初交付したインボイスとの関連性を明らかにし、修正した事項を明示したものを交付する方法
たとえば、登録番号だけを誤っていた場合、当初請求書番号や取引日を明示したうえで、「請求書番号〇〇の登録番号をT123…に訂正します」と記載した書類を交付する方法も考えられます。
実務上は、修正後の正しいインボイスを再発行してもらうのが最も分かりやすいですが、誤りの内容やシステム対応によっては、修正事項のみを明示する書類で対応することも可能です。
買手が仕入明細書等を作成して対応することもできる
インボイスに誤りがある場合、対応方法は売手による修正インボイスの交付だけではありません。
買手側で、正しい内容を記載した仕入明細書等を作成し、売手の確認を受けることで、その仕入明細書等を仕入税額控除のための請求書等として保存することもできます。
国税庁のQ&Aでも、買手が適格請求書の記載事項の誤りを修正した仕入明細書等を作成し、売手である適格請求書発行事業者の確認を受けたうえで、その仕入明細書等を保存することができるとされています。この場合、売手は改めて修正したインボイスを交付する必要はありません。
つまり、次のような流れです。
売手が交付したインボイスに記載誤りがある
買手が正しい内容を記載した仕入明細書等を作成する
買手が売手へ内容確認を依頼する
売手が内容を確認する
買手は確認済みの仕入明細書等を保存する
取引先が多く、修正インボイスの再発行に時間がかかる場合や、買手側で支払明細を管理している取引では、この方法が実務上有効です。
仕入明細書による対応
売手が交付したインボイスに記載誤りがあり、買手が新たに仕入明細書等を作成して対応するケースを考えてみましょう。
まず売手である適格請求書発行事業者が、記載誤りのある請求書を買手に交付します。
その後、買手がインボイスの記載誤りを発見し、正しい内容が記載された仕入明細書等を作成して売手へ交付し、売手の確認を受けます。
このように、売手が修正インボイスを再交付するのではなく、買手が作成した仕入明細書等を売手が確認することで、正しいインボイス、つまり修正インボイスとして扱うことができます。
ポイントとしては、「修正対応は売手だけが行なうものではない」という点です。
売手と買手の双方で正しい記載内容を確認できるのであれば、買手が作成した仕入明細書等を活用する対応も認められます。
受け取ったインボイスを買手が修正し、売手の確認を受ける方法もある
現行の国税庁Q&Aでは、より柔軟な対応も示されています。
受領したインボイスの記載事項について、買手が自ら修正するのみでは認められません。
しかし、買手が修正した事項について売手の確認を受けることで、その書類は適格請求書であると同時に、修正した事項を明示した仕入明細書等にも該当します。
そのため、その書類を保存することで、仕入税額控除の適用を受けることとして差し支えないとされています。
たとえば、軽減税率対象品目である旨の記載が漏れていた場合に、買手が該当品目に印を付けたうえで、売手に修正内容を確認してもらい、「修正事項につき〇月〇日先方確認済み」などの記録を残す方法が考えられます。
この対応は、単なる買手の勝手な修正ではありません。
売手の確認を受けることによって、修正事項を明示した仕入明細書等として機能させるものです。そのため、売手に確認した日、確認方法、確認者、修正内容を記録しておくことが重要です。
電話で確認して両者がそれぞれ修正するだけでは不十分
一方で、やってはいけない対応もあります。
買手自らがインボイスに追記や修正をすることが認められていない以上、誤りを見つけた者が相手方に電話で連絡し、修正箇所の確認が取れたことを受けて、売手と買手がそれぞれ手元のインボイスを修正するような対応は認められません。
ここで問題なのは、単に「電話で確認したから、各自が手元の請求書を書き換えた」というだけでは、修正インボイスの交付や、売手確認済みの仕入明細書等としての要件が明確ではない点です。
特に、次のような対応は避けましょう。
電話で金額を確認し、買手が自分の請求書だけ修正する
売手も手元の控えを修正したと聞いたが、修正内容の証跡がない
メールや確認記録を残さず、口頭確認だけで済ませる
誰がいつ何を確認したか分からない
インボイスの修正では、後から税務調査で確認できるように、修正内容と売手確認の証跡を残すことが大切です。
売手側の保存義務にも注意
インボイスの修正対応は、買手だけの問題ではありません。
売手である適格請求書発行事業者にも、交付したインボイスの写しを保存する義務があります。
国税庁Q&Aでは、買手が仕入明細書等による対応を行った場合でも、売手は当初交付した適格請求書の写しを保存しなければならないとされています。
また、売手が売上税額の積上げ計算を行う場合には、買手が作成し売手が確認した仕入明細書等を、適格請求書等の写しと同様の期間・方法で保存する必要があります。
つまり、買手側で仕入明細書を作成して対応した場合でも、売手側は「買手が作ってくれたから保存不要」とはなりません。
売手側でも、当初交付したインボイス、修正内容、確認した仕入明細書等を適切に保存する必要があります。
仕入明細書等で対応する場合の記載事項
買手が仕入明細書等を作成して対応する場合、その書類は仕入税額控除のための請求書等として保存されるものです。
そのため、必要な記載事項を満たしている必要があります。
主な記載事項は次のとおりです。
仕入明細書等の作成者の氏名または名称
課税仕入れの相手方の氏名または名称
相手方の登録番号
課税仕入れを行った年月日
課税仕入れの内容
軽減税率対象である場合、その旨
税率ごとに区分した支払対価の額
適用税率
税率ごとに区分した消費税額等
相手方の確認を受けたことが分かる記録
特に重要なのは、売手の確認です。
仕入明細書等は、買手が作成しただけでは足りず、売手の確認を受けたものである必要があります。
確認方法は、メール返信、電子承認、確認ボタン、書面への署名、基本契約での異議申立期間など、取引実態に合わせて整備しましょう。
売手の確認方法
仕入明細書等について売手の確認を受ける方法は、必ず紙の押印に限られるわけではありません。
実務上は、次のような方法が考えられます。
仕入明細書をメールで送付し、売手から確認済みの返信を受ける
クラウドシステム上で売手に確認ボタンを押してもらう
電子署名や電子承認を受ける
紙の仕入明細書に署名または押印を受ける
基本契約で一定期間内に異議がなければ確認済みとする
ただし、税務調査で説明できるように、確認を受けた事実が分かる記録を保存しておく必要があります。
特に、メール確認の場合は、メール本文だけでなく、添付した仕入明細書の内容、送信日、返信日、相手方のメールアドレスなども保存しておくと安心です。
記載誤りを防ぐためのチェックポイント
インボイスの修正対応は手間がかかります。
そのため、できるだけ発行時・受領時にチェックして、誤りを早期に発見する体制を整えることが重要です。
買手側では、受け取ったインボイスについて次の点を確認しましょう。
登録番号が記載されているか
登録番号が正しいか
税率ごとの区分があるか
消費税額等が税率ごとに記載されているか
軽減税率対象品目である旨が記載されているか
自社名が正しく記載されているか
取引年月日、取引内容に誤りがないか
請求額と発注・納品・検収データが一致しているか
売手側では、インボイス発行システムや請求書テンプレートに次の事項が正しく反映されているか確認しましょう。
自社の登録番号
取引先名
税率ごとの対価の額
適用税率
税率ごとの消費税額等
軽減税率対象品目の表示
返還インボイスや値引き処理の表示
毎回手作業で修正するより、発行時点でミスを防ぐ仕組みを作る方が、経理負担を減らせます。
実務フロー:買手側で記載誤りを発見した場合
買手側でインボイスの記載誤りを発見した場合は、次のようなフローで対応すると整理しやすいです。
1. 誤りの内容を確認する
登録番号、税率、消費税額、取引内容など、どの記載事項に誤りがあるかを確認します。
2. 仕入税額控除に影響する誤りか判断する
軽微な表記ゆれなのか、適格請求書の記載事項に関する誤りなのかを確認します。
3. 売手へ連絡する
原則として、売手に修正インボイスの交付を求めます。
4. 修正方法を決める
売手が修正インボイスを交付するのか、買手が仕入明細書等を作成して売手確認を受けるのかを決めます。
5. 証跡を保存する
修正後のインボイス、仕入明細書、売手確認メール、確認日などを保存します。
6. 会計処理と消費税区分を確認する
修正内容が会計処理や消費税申告に反映されているか確認します。
実務フロー:売手側で記載誤りに気づいた場合
売手側で交付済みインボイスの誤りに気づいた場合も、速やかに対応が必要です。
1. 誤りの内容と対象取引を特定する
請求書番号、取引先、取引日、誤りの内容を確認します。
2. 買手へ連絡する
誤りがあったことを買手へ連絡し、修正方法を案内します。
3. 修正インボイスを交付する
正しい内容を記載した修正インボイスを交付します。
4. 当初インボイスとの関連性を明示する
請求書番号や発行日などにより、どのインボイスを修正したものか分かるようにします。
5. 写しを保存する
当初インボイスの写し、修正インボイスの写し、買手とのやり取りを保存します。
税務調査で確認されやすい資料
インボイスの修正対応については、税務調査で次の資料が確認される可能性があります。
当初交付されたインボイス
修正インボイス
買手作成の仕入明細書等
売手確認済みであることが分かるメールや承認記録
請求書番号や取引番号の関連付け資料
会計処理の修正履歴
消費税区分の確認資料
インボイスチェックリスト
取引先との基本契約書
特に、買手が仕入明細書等で対応している場合は、売手の確認を受けていることを示す証跡が重要です。
「修正内容は取引先に電話で確認した」というだけでは、後から説明が難しくなることがあります。
よくある誤解
記載誤りがあるインボイスでも、取引が本当にあれば仕入税額控除できる
インボイス制度では、一定の記載事項を満たす請求書等の保存が必要です。記載誤りがあるインボイスを保存しているだけでは、原則として仕入税額控除は認められません。
買手が手書きで修正すればよい
買手が一方的に追記・修正することは原則として認められません。売手に修正インボイスを交付してもらうか、買手が作成した仕入明細書等について売手の確認を受ける必要があります。
修正インボイスは必ず売手だけが作成する
原則は売手による修正インボイスの交付ですが、買手が正しい内容を記載した仕入明細書等を作成し、売手の確認を受ける方法も認められています。
電話で確認して、売手と買手がそれぞれ手元の請求書を直せばよい
そのような対応は認められない点に注意が必要です。修正インボイスの交付や、売手確認済みの仕入明細書等として保存できる形にする必要があります。
売手が仕入明細書を確認したら、売手側は何も保存しなくてよい
買手が仕入明細書等で対応した場合でも、売手は当初交付したインボイスの写しを保存する必要があります。売上税額の積上げ計算を行う場合には、確認した仕入明細書等の保存も必要になります。
まとめ
インボイス制度では、仕入税額控除を受けるために、原則として、一定の記載事項を満たす適格請求書等の保存が必要です。
そのため、記載事項に誤りがあるインボイスを保存しているだけでは、仕入税額控除を適用できない可能性があります。
インボイスに記載誤りがある場合、原則として、売手である適格請求書発行事業者に修正したインボイスの交付を求め、その交付を受けて保存します。
売手には、交付したインボイスに不備や誤りがあった場合、買手に対して修正インボイスを交付する義務があります。
ただし、修正対応は売手だけに限られるわけではありません。
買手側で正しい内容を記載した仕入明細書等を作成し、売手の確認を受けることで、その仕入明細書等を仕入税額控除のための請求書等として保存することもできます。
また、現行の国税庁Q&Aでは、買手が受領したインボイスに修正を加え、その修正事項について売手の確認を受けることで、その書類を適格請求書であると同時に修正事項を明示した仕入明細書等として保存し、仕入税額控除を受けることも差し支えないとされています。
一方、買手が売手に確認せず一方的に追記・修正することはできません。
また、電話で修正内容を確認しただけで、売手と買手がそれぞれ手元のインボイスを修正するような対応も認められない点に注意が必要です。
インボイスの記載誤りを見つけた場合は、売手に修正インボイスを依頼する、または買手側で仕入明細書等を作成して売手確認を受けるなど、後から確認できる証跡を残したうえで対応しましょう。
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【この記事の執筆者】
安田 亮(公認会計士・税理士)
安田亮公認会計士・税理士事務所 代表
京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。
現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。
事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。





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