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免税事業者に戻る前に確認すべき消費税の注意点|棚卸資産・届出・インボイス対応を税理士が解説

  • 執筆者の写真: 安田亮
    安田亮
  • 3 分前
  • 読了時間: 10分

こんにちは!代表の安田です。


消費税の課税事業者である会社や個人事業主でも、売上規模が小さくなると、翌々期や翌々年から免税事業者に戻れる場合があります。


  • 売上が1,000万円以下になったから、次は消費税を納めなくてよい

  • 免税事業者になれるなら、その方が得だろう

  • 課税事業者をやめれば、消費税の申告も不要になる


このように考える方も多いかもしれません。

しかし、免税事業者になる前には、必ず確認しておきたいポイントがあります。


特に、期末に商品や材料などの棚卸資産を多く持っている事業者は注意が必要です。課税事業者だった期間中に仕入れた棚卸資産について、仕入税額控除を受けていた場合、翌期に免税事業者になることで消費税の調整が必要になることがあります。


本日は、免税事業者になる前に確認すべき消費税の注意点について、税理士の視点からわかりやすく解説します。


免税事業者とは

消費税では、原則として、基準期間の課税売上高が1,000万円以下である事業者は、その課税期間について消費税の納税義務が免除されます。個人事業者の場合の基準期間はその年の前々年、法人の場合は原則としてその事業年度の前々事業年度です。


たとえば、個人事業主で2024年の課税売上高が1,000万円以下であれば、原則として2026年は免税事業者となります。法人の場合も、2期前の課税売上高が1,000万円以下であれば、原則としてその期は免税事業者となります。


ただし、基準期間の課税売上高が1,000万円以下でも、必ず免税事業者になれるわけではありません。


たとえば、

  • 特定期間の課税売上高が1,000万円を超える場合

  • 課税事業者選択届出書を提出している場合

  • 資本金1,000万円以上の新設法人に該当する場合

  • インボイス登録をしている場合

などは、消費税の納税義務が免除されないことがあります。


つまり、「2期前の売上が1,000万円以下だから免税」と単純に判断するのではなく、他の要件も含めて確認する必要があります。


課税事業者から免税事業者になるときの落とし穴

課税事業者から免税事業者になると、翌期以降は消費税の申告・納税が不要になるため、一見すると有利に思えます。


しかし、課税事業者だった期間中に仕入れた商品や材料を、免税事業者になった後に販売する場合には注意が必要です。


課税事業者である間に仕入れた商品については、原則として、その仕入れに係る消費税について仕入税額控除を受けています。


ところが、その商品が期末時点でまだ在庫として残っており、翌期に免税事業者となった後に販売される場合、その販売に係る消費税は納税されません。


そのままにすると、課税事業者だった期間中に仕入税額控除だけを受け、販売時には消費税を納めないという状態になります。


そこで、消費税法では、課税事業者が免税事業者になる場合に、期末棚卸資産に係る消費税額を調整する規定が設けられています。国税庁の通達でも、免税事業者となる課税期間の前課税期間において、期末棚卸資産に関する調整が問題となることが示されています。


棚卸資産が多い事業者は特に注意

この論点が特に重要になるのは、期末に在庫を多く持つ事業者です。

たとえば、次のような事業者は注意が必要です。

  • 小売業

  • 卸売業

  • 製造業

  • 建設業

  • 飲食業

  • ネットショップ運営

  • 物販事業


これらの業種では、期末時点で商品、材料、仕掛品、未成工事支出金などを保有していることがあります。


課税事業者である期間中に仕入れた在庫が期末に残っている場合、翌期に免税事業者になると、その在庫に対応する消費税額を調整しなければならない可能性があります。


たとえば、課税事業者である第2期に商品を大量に仕入れ、その仕入れについて消費税の仕入税額控除を受けたとします。その商品が第2期末にまだ在庫として残っており、第3期から免税事業者になる場合には、第2期の消費税申告で棚卸資産に係る調整が必要になる可能性があります。


つまり、「第3期から免税事業者になるから消費税はもう関係ない」と考えるのではなく、「免税事業者になる直前の課税期間の申告」で調整が必要になる点に注意が必要です。


簡易課税制度を使っている場合は取扱いが異なる

ここで重要なのが、前期に一般課税で申告していたのか、簡易課税制度で申告していたのかという点です。


棚卸資産に係る調整は、課税事業者だった期間中に仕入税額控除を受けていたこととのバランスを取るための制度です。


一方、簡易課税制度では、実際の仕入れに係る消費税を個別に積み上げて控除するのではなく、売上に一定のみなし仕入率を乗じて消費税額を計算します。


そのため、免税事業者となる前課税期間に簡易課税制度の適用を受けている場合には、棚卸資産に係る消費税額の調整規定は適用されないとされています。


これは実務上かなり重要です。

同じように翌期から免税事業者になる場合でも、直前の課税期間に一般課税で申告していたか、簡易課税で申告していたかによって、棚卸資産の調整が必要かどうかが変わることがあります。


期末在庫が多い事業者は、免税事業者になる前の申告方法についても慎重に検討する必要があります。


課税事業者選択届出書を出している場合は、すぐに免税に戻れないことがある

消費税の課税事業者になる理由は、売上が1,000万円を超えた場合だけではありません。

設備投資による消費税還付を受けるためなどの理由で、自ら「消費税課税事業者選択届出書」を提出して課税事業者になっているケースもあります。


この場合、売上が1,000万円以下になったからといって、自動的に免税事業者へ戻れるわけではありません。


課税事業者を選択していた事業者が免税事業者に戻ろうとする場合には、「消費税課税事業者選択不適用届出書」を提出する必要があります。提出時期は、免税事業者に戻ろうとする課税期間の初日の前日までです。


また、課税事業者選択届出書を提出した場合、原則として、課税事業者となった日から2年間は免税事業者に戻ることができません。さらに、調整対象固定資産を購入している場合などには、免税事業者に戻ることが制限されるケースもあります。


設備投資による消費税還付を受けた会社では、この制限が問題になりやすいです。

「還付を受けたから、翌期からすぐ免税に戻る」ということはできない場合があります。


免税事業者になるとインボイスを発行できない

インボイス制度が始まった現在では、免税事業者になるかどうかの判断には、取引先との関係も大きく影響します。


適格請求書発行事業者、いわゆるインボイス登録事業者は、消費税の課税事業者であることが前提です。基準期間の課税売上高が1,000万円以下であっても、インボイス登録を受けている場合には、消費税の納税義務は免除されません。


逆にいうと、免税事業者に戻る場合には、インボイス登録をどうするかも検討する必要があります。


BtoC取引が中心で、顧客が一般消費者であれば、インボイス登録の必要性は比較的小さいかもしれません。


一方、法人取引が中心の場合、取引先は仕入税額控除を受けるためにインボイスを求めることがあります。免税事業者になることでインボイスを発行できなくなると、価格交渉や取引継続に影響する可能性があります。


免税事業者になるかどうかは、単に消費税の納税額だけでなく、売上先との関係も含めて判断する必要があります。


免税事業者からの仕入れに関する経過措置も確認する

インボイス制度では、原則として、インボイス登録をしていない免税事業者からの仕入れについて、買い手側は仕入税額控除を受けられません。


ただし、制度開始後しばらくの間は経過措置があります。

一定の要件を満たす場合、免税事業者などインボイス発行事業者以外からの課税仕入れについても、制度開始後の一定期間は仕入税額相当額の一定割合を控除できる経過措置が設けられています。国税庁のインボイス制度に関する資料でも、免税事業者等からの仕入れに係る経過措置について説明されています。


ただし、この経過措置は段階的に縮小されます。

そのため、免税事業者になる場合には、取引先がどの程度その影響を受けるのか、将来的に取引条件が変わる可能性があるのかを考えておく必要があります。

特に、法人向けのサービス業、建設業、外注取引が多い業種、フリーランスとの取引が多い業種では、インボイス対応が取引条件に影響することがあります。


免税事業者になる前に確認すべきチェックポイント

課税事業者から免税事業者になる前には、少なくとも次の点を確認しておきましょう。

まず、基準期間の課税売上高が1,000万円以下かどうかを確認します。

次に、特定期間の課税売上高または給与等支払額によって課税事業者にならないかを確認します。


また、課税事業者選択届出書を提出していないか、提出している場合には不適用届出書を期限までに提出できるかを確認する必要があります。


さらに、調整対象固定資産や高額特定資産を取得していないかも確認が必要です。これらに該当する場合、免税事業者に戻ることが制限される可能性があります。


そして、期末棚卸資産の有無も重要です。商品、材料、仕掛品などを多く持っている場合には、免税事業者になる直前の課税期間で消費税の調整が必要になる可能性があります。

最後に、インボイス登録を継続するかどうか、取引先との関係に影響がないかも検討しましょう。


免税事業者になることは、税負担の面では有利に見えることがあります。しかし、在庫調整、届出、設備投資、インボイス対応を見落とすと、思わぬ不利益が生じることがあります。


まとめ:免税事業者になる前に、消費税の調整と届出を確認する

消費税では、基準期間の課税売上高が1,000万円以下であれば、原則として免税事業者になることができます。


しかし、課税事業者から免税事業者に変わる場面では、単に「売上が1,000万円以下だから大丈夫」と考えるのは危険です。


特に、課税事業者だった期間中に仕入れた棚卸資産が期末に残っている場合には、免税事業者になる直前の課税期間で消費税の調整が必要になることがあります。


また、課税事業者選択届出書を提出している場合には、不適用届出書の提出や2年縛り、調整対象固定資産の取得による制限にも注意が必要です。


さらに、インボイス制度のもとでは、免税事業者になることで取引先との関係に影響が出る可能性もあります。


免税事業者になるかどうかは、消費税の納税額だけで判断するのではなく、期末在庫、過去の届出、設備投資、取引先との関係を含めて総合的に検討することが大切です。


免税事業者への変更を検討している方は、決算前に税理士へ相談し、消費税の申告方法や届出期限を確認しておくことをおすすめします。


神戸での起業や開業に関するご相談、確定申告にお困りの方、顧問税理士をお探しの方は安田亮公認会計士・税理士事務所までお問い合わせください



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【この記事の執筆者】

安田 亮(公認会計士・税理士)

安田亮公認会計士・税理士事務所 代表

京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。

現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。

事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。

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