top of page

NPO法人の補助金収入は課税される?固定資産取得時の圧縮記帳と消費税の注意点

  • 執筆者の写真: 安田亮
    安田亮
  • 12 時間前
  • 読了時間: 10分

おはようございます!代表の安田です。


NPO法人では、自治体、財団、公益法人、企業などから補助金や助成金を受けることがあります。


介護、福祉、子育て支援、地域活動、まちづくりなど、公益性の高い活動を行うNPO法人にとって、補助金や助成金は重要な資金源です。

一方で、会計や税務の処理では注意が必要です。

  • 補助金だから税金はかからないのでは?

  • 車両や設備を買った場合は圧縮記帳できるのでは?

  • NPO法人だから法人税は関係ないのでは?


このように考えがちですが、実際には、補助金の交付元、補助金の目的、取得した資産の使途、NPO法人が行っている事業の内容によって取扱いが変わります。


本日は、NPO法人が補助金を受けて固定資産を取得した場合の法人税・消費税の注意点を、税理士の視点から解説します。


NPO法人でも法人税がかかる場合がある

まず確認しておきたいのは、NPO法人だからといって、すべての収入が法人税の対象外になるわけではないという点です。


NPO法人は、法人税法上は公益法人等とみなされます。そのため、収益事業を行っている場合には、その収益事業から生じた所得について法人税の申告が必要になります。国税庁も、NPO法人は収益事業を行う場合には法人税の申告を要すると説明しています。


ここでいう収益事業とは、法人税法施行令で定められた一定の事業を、継続して、事業場を設けて行うものをいいます。


たとえば、物品販売業、不動産貸付業、請負業、旅館業、医療保健業などが該当します。

注意したいのは、NPO法人の本来の目的に沿った活動であっても、それが法人税法上の収益事業に該当する場合には、法人税の課税対象になり得るということです。国税庁の法人税基本通達でも、公益法人等の本来の目的事業であっても、収益事業に該当する事業を行う場合には、その事業から生じる所得に法人税が課されるとされています。


介護事業を行なうNPO法人は収益事業に該当することがある

今回の事例では、介護事業を行なうNPO法人が、外部の財団から補助金を受け、自己負担分と合わせて福祉車両を購入しています。


介護事業の場合、法人税法上の「医療保健業」などに該当し、収益事業として取り扱われるケースがあります。


そのため、NPO法人が介護事業に使う車両を取得するために補助金を受けた場合、その補助金をどの事業に関係する収入として処理するのかを確認する必要があります。


単に「NPO法人だから非課税」「福祉目的だから法人税は関係ない」と判断するのは危険です。補助金の交付目的が、収益事業に属する固定資産の取得にある場合、その補助金は収益事業に関係する収入として整理することになります。


補助金で固定資産を取得した場合の圧縮記帳とは

法人が補助金を受けて固定資産を取得した場合、一定の要件を満たすと、圧縮記帳を適用できることがあります。


圧縮記帳とは、補助金などを受けて固定資産を取得した場合に、補助金相当額を収益として課税する一方で、取得した固定資産の帳簿価額を一定額減額し、その減額分を損金算入する制度です。


簡単にいうと、補助金収入に対する課税負担を、固定資産の取得時に一気に生じさせないようにする制度です。


ただし、圧縮記帳が使える補助金は限定されています。

国や地方公共団体から交付を受ける国庫補助金等であれば、一定の要件のもとで圧縮記帳の対象になります。国税庁の法人税基本通達でも、国又は地方公共団体から交付を受けた一定の補助金が、法人税法42条の国庫補助金等に該当する場合があることが示されています。


財団や民間団体からの補助金は圧縮記帳できない場合がある

実務で特に注意したいのは、補助金の交付元です。


国や地方公共団体からの補助金であれば、圧縮記帳を検討できるケースが多いです。

一方で、財団、公益法人、民間団体、企業などから受け取る助成金・補助金については、必ずしも法人税法上の国庫補助金等に該当するとは限りません。


今回のように、NPO法人が財団から助成金を受けて福祉車両を購入した場合、交付元が国や地方公共団体ではないため、圧縮記帳の対象外となる可能性があります。


「補助金で固定資産を買ったから圧縮記帳できる」と一律に考えるのではなく、まず交付元と根拠制度を確認することが大切です。


補助金の課税関係は「使途」も重要

補助金の税務処理では、交付元だけでなく、その補助金が何のために交付されたのかも重要です。


たとえば、次のような違いがあります。

収益事業で使用する車両や設備を取得するための補助金であれば、収益事業に関係する収入として整理する必要があります。


一方で、非収益事業の活動に使うための補助金であれば、法人税の課税対象外となる可能性があります。


また、同じ車両であっても、収益事業と非収益事業の両方で使う場合には、使用実態に応じた区分や按分が必要になることがあります。


NPO法人では、会計上の事業区分、法人税法上の収益事業区分、消費税上の課税・非課税・不課税の区分がそれぞれ異なるため、混同しないように注意が必要です。


補助金収入と消費税の関係

補助金収入については、消費税の取扱いも重要です。


消費税は、原則として、国内で事業者が対価を得て行なう資産の譲渡、貸付け、役務の提供などに課税されます。


補助金や助成金は、通常、特定の商品やサービスの対価として受け取るものではありません。そのため、一般的には消費税の課税対象外、つまり不課税取引として処理されることが多いです。


ただし、補助金の名目であっても、実質的に役務提供の対価である場合には、消費税の課税対象となる可能性があります。


たとえば、委託事業として業務を行い、その対価として受け取る金銭であれば、補助金という名称であっても消費税の課税売上になることがあります。


したがって、補助金収入については、名称ではなく、契約内容や交付要綱、実際の役務提供の有無を確認することが重要です。


固定資産を取得した場合の消費税にも注意

補助金そのものが不課税であっても、その補助金を使って購入した固定資産については、消費税の仕入税額控除の問題が生じます。


たとえば、NPO法人が福祉車両を購入した場合、車両購入時に消費税を支払っていることがあります。


この車両が課税売上に対応する業務に使われるのであれば、一定の要件のもとで仕入税額控除の対象になります。


一方で、非課税売上や不課税活動に対応する資産として使用する場合には、仕入税額控除が制限されることがあります。


特にNPO法人の場合、課税売上、非課税売上、不課税収入、補助金収入が混在しやすいため、課税売上割合や個別対応方式、一括比例配分方式などの検討が必要になることがあります。


「補助金で買ったから消費税も関係ない」と考えてしまうと、申告誤りにつながる可能性があります。


会計処理では「収益計上」と「固定資産計上」を分けて考える

補助金で固定資産を取得した場合、会計処理上は、補助金収入の計上と固定資産の計上を分けて考える必要があります。


たとえば、100万円の福祉車両を購入し、そのうち80万円を財団からの助成金、20万円を自己負担でまかなったとします。


この場合、車両そのものは100万円の固定資産として取得したことになります。

一方で、助成金80万円については、交付決定や確定通知、返還義務の有無などを確認しながら、助成金収入として処理します。


圧縮記帳が適用できる場合には、補助金収入と圧縮損の処理を検討します。

しかし、圧縮記帳が適用できない場合には、補助金収入はそのまま益金となり、車両は通常どおり減価償却していくことになります。


この場合、補助金を受けた年度には利益が大きく出る一方で、車両の減価償却費は複数年度にわたって計上されるため、税務上の利益と資金繰りの感覚がずれることがあります。


NPO法人の補助金処理で確認すべき資料

補助金収入の処理では、次の資料を確認することが重要です。

まず、補助金の交付要綱、交付決定通知書、実績報告書、確定通知書です。

これらを確認することで、補助金の交付目的、交付元、返還義務の有無、対象経費、対象資産などが分かります。


次に、購入した固定資産の契約書、請求書、領収書、納品書、車検証や登録書類などです。

固定資産として計上すべき金額や取得日、減価償却の開始時期を判断するために必要です。

さらに、取得した資産の使用実態も確認します。


収益事業に使っているのか、非収益事業に使っているのか、両方で使っているのかによって、法人税や消費税の取扱いが変わるためです。


補助金処理では、「お金をもらった事実」だけではなく、「何のためにもらったのか」「何に使ったのか」「どの事業に関係するのか」をセットで確認する必要があります。


よくある誤解

NPO法人の補助金処理では、次のような誤解がよくあります。


  • NPO法人だから法人税はかからない

実際には、収益事業を行っている場合、その収益事業から生じた所得には法人税がかかります。


  • 補助金だからすべて非課税

補助金の内容によっては、法人税上の益金になることがあります。


  • 補助金で固定資産を買えば必ず圧縮記帳できる

圧縮記帳の対象となるかどうかは、補助金の交付元や根拠制度によって判断します。財団や民間団体からの助成金は、国庫補助金等としての圧縮記帳の対象外となることがあるため注意が必要です。


  • 補助金は消費税がかからないから、消費税申告では見なくてよい

補助金自体が不課税であっても、補助金で取得した資産の仕入税額控除や、課税売上割合への影響を検討する必要があります。


まとめ

NPO法人が補助金や助成金を受け取った場合、税務上の取扱いは一律ではありません。

特に、補助金で固定資産を取得した場合には、次の点を確認することが大切です。


まず、そのNPO法人が法人税法上の収益事業を行っているかどうか。


次に、補助金の交付元が国・地方公共団体なのか、財団・民間団体なのか。


さらに、補助金の使途が収益事業に関係するものか、非収益事業に関係するものか。


そして、取得した固定資産について圧縮記帳が適用できるのか、消費税の仕入税額控除にどのような影響があるのかを確認する必要があります。


NPO法人の補助金処理は、法人税、消費税、会計処理、事業区分が絡み合うため、意外と判断が難しい分野です。


補助金の交付決定を受けた段階、または固定資産を購入する前の段階で、早めに税理士へ相談することをおすすめします。


神戸での起業や開業に関するご相談、確定申告にお困りの方、顧問税理士をお探しの方は安田亮公認会計士・税理士事務所までお問い合わせください



<あわせて読みたい>


【この記事の執筆者】

安田 亮(公認会計士・税理士)

安田亮公認会計士・税理士事務所 代表

京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。

現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。

事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。

神戸の税理士事務所ロゴ

コメント


bottom of page