2027年4月から飲食料品の消費税率1%へ|政府・与党決定の大綱を税理士が解説
おはようございます!代表の安田です。
政府・与党は2026年9月15日、2027年4月から2年間、飲食料品の消費税率を1%へ引き下げる大綱を決定しました。
大綱には、単なる税率引下げだけでなく、
定期購入・通信販売の経過措置
免税事業者や簡易課税事業者が本則課税へ移行する特例
簡易課税制度の特例
消費税の中間申告の特例
総額表示義務の特例
農林漁業者・食品事業者・外食事業者への支援
就業者負担軽減支援金
など、事業者実務に直結する内容が盛り込まれています。
食品メーカー、小売業、飲食業、食品EC、農林漁業者などは、今後の法案成立を確認しながら準備を進める必要があります。
2027年4月から2029年3月まで飲食料品は1%
大綱では、2027年4月1日から2029年3月31日までの2年間、現在軽減税率の対象となっている飲食料品について、国税0.78%+地方消費税0.22%相当=合計1%とする特例が設けられます。
対象 | 現行 | 大綱 |
軽減税率対象の飲食料品 | 8% | 1% |
酒類 | 10% | 10% |
外食 | 10% | 10% |
一定の新聞の定期購読 | 8% | 8%のまま |
飲食料品の対象範囲そのものは現行制度を維持します。
そのため、「現在8%のものがすべて1%になる」というわけではなく、新聞については現行の8%が維持されます。
インボイスには「1%」を記載
1%対象の飲食料品を販売した場合、インボイス等には、
適用税率:1%
消費税額等:1%に基づく金額
を記載します。
また、売上返品・値引き、貸倒れ、仕入返品などについても、元の取引が1%であれば1%を基礎として計算します。
したがって、事業者は、
POSレジ
請求書発行システム
販売管理システム
ECサイト
会計ソフト
が1%税率に対応できるか確認する必要があります。
定期購入・通信販売には8%を残す経過措置
税率変更前に契約した商品を、2027年4月以後に引き渡すケースについては経過措置が設けられます。
<定期供給契約>
例えば、1年分の代金を前払いして毎月食品が届く定期購入です。
次のような一定の契約については、4月以後の引渡しであっても1%ではなく8%を適用します。
2027年1月1日前に契約
特例税率1%を前提とした契約ではない
2027年4月1日前に代金を受領
その受領済み部分に対応する商品
<通信販売>
通信販売でも、
2027年1月1日前に販売条件を提示
1%を前提とした条件ではない
2027年4月1日前に申込みを受ける
という一定の場合には、4月以後の引渡しでも8%を適用する経過措置があります。
食品ECでは、発送日だけで税率を判定できない取引が生じる点に注意が必要です。
免税事業者が本則課税へ移行しやすくなる
飲食料品の税率が1%まで下がると、実際の仕入税額の方が売上税額より大きくなり、本則課税であれば還付となる事業者も考えられます。
そこで、飲食料品を販売する免税事業者が、2027年4月1日を含む課税期間から課税事業者を選択する場合には、その課税期間の末日までに課税事業者選択届出書を提出すれば、課税期間開始前に提出したものとして扱う特例が設けられます。
通常より届出期限を後ろ倒し
対象 | 大綱上の特例 |
免税 → 課税事業者 | 課税期間末日まで届出可 |
簡易課税 → 本則課税 | 課税期間末日まで不適用届出可 |
簡易課税の2年縛り | 解除 |
簡易課税の「2年縛り」も解除
簡易課税制度を選択すると、原則として一定期間は継続適用が必要です。
しかし今回の大綱では、飲食料品を販売する事業者が2027年4月1日を含む課税期間について本則課税へ変更する場合、簡易課税制度の2年間の継続適用要件を適用しないこととされています。
設備投資が多い食品関連事業者などでは、本則課税への切替えを検討しやすくなります。
簡易課税では1%対象食品の納税額を実質ゼロに
簡易課税制度についても特別な計算方法が設けられます。
通常は、売上税額 × みなし仕入率で仕入控除税額を計算します。
しかし、税率1%となる飲食料品については、業種区分にかかわらず、その売上税額と同額を仕入控除税額とする特例が設けられます。
<例>
飲食料品の売上税額が10万円なら、
項目 | 金額 |
売上税額 | 10万円 |
仕入控除税額 | 10万円 |
差引税額 | 0円 |
となります。
2割特例・3割特例を利用している場合も、1%対象飲食料品について同様の措置となります。
なお、食品以外の売上については、従来どおりのみなし仕入率等を用いて計算します。
中間申告も1%を前提に再計算可能
消費税の中間申告は通常、前年の納税額を基礎として計算します。
しかし前年が8%、当年が1%だと、中間納付額が実際の税負担より大きくなり過ぎる可能性があります。
そこで、2027年4月1日以後に開始する中間申告対象期間については、前年の飲食料品にも1%が適用されていたものとして税額を再計算し、その金額を基礎として中間申告できる特例が設けられます。
一方、1%特例終了後の2029年4月以降についても、逆方向の再計算ができる仕組みが設けられます。
値札変更が間に合わない場合は総額表示の特例
消費者向け価格では、税込価格を表示する「総額表示義務」があります。
今回も総額表示義務そのものは維持されますが、税率変更へ直ちに対応することが困難な場合には、一定期間の特例が設けられます。
<1%開始時>
期間 | 表示できる特例価格 |
2027年2月1日~3月31日 | 1%に基づく税込価格 |
2027年4月1日~5月31日 | 8%に基づく税込価格 |
<1%終了時>
期間 | 表示できる特例価格 |
2029年2月1日~3月31日 | 8%に基づく税込価格 |
2029年4月1日~5月31日 | 1%に基づく税込価格 |
ただし、実際に支払う価格と誤認されないための表示など、誤認防止措置を講じることが条件です。
農林漁業者・食品事業者・外食事業者も支援
税率引下げにより食品関連事業者の経営や資金繰りに影響が出ることも想定されています。
そこで大綱では、
農林漁業者への資金繰り支援
一定の簡易課税・免税の農林漁業者への給付
食品事業者・外食事業者への資金繰り支援
省力化・生産性向上への支援
外食事業者のテイクアウト等への多角化支援
などが盛り込まれています。
本則課税への切替えに伴う「税理士費用」も支援
税理士事務所として注目したいのがこの点です。
簡易課税・免税事業者である、
農林漁業者
食品事業者
外食事業者
が本則課税へ移行するときには、相談対応や税理士費用等の経費についても支援する方針が示されています。
具体的な支援額や申請方法は、今回の資料では示されていません。
2027年4月から「就業者負担軽減支援金」も導入
大綱には、消費税減税と合わせて新しい給付制度も盛り込まれています。
2027年4月から、「就業者負担軽減支援金」を導入する方針です。
支援金は、
前年の勤労所得
合計所得金額
扶養児童の有無・人数
住民税と社会保険料の負担
配偶者の所得
などを基に判定する仕組みが検討されています。
ただし、所得下限額・所得上限額などの具体的金額はまだ決まっていません。
食品関連事業者が今から確認したいこと
法案成立前ではありますが、影響が大きい会社では事前に確認しておくとよいでしょう。
チェック項目 | 確認内容 |
食品売上 | 1%対象額を把握できるか |
酒類・外食 | 10%と正しく区分できるか |
インボイス | 1%を表示できるか |
EC・通販 | 条件提示日・申込日を管理できるか |
定期販売 | 契約日・前受金を管理できるか |
簡易課税 | 本則課税と比較したか |
中間申告 | 特例の影響を確認したか |
POS・会計ソフト | 1%へ対応可能か |
値札・メニュー | 総額表示の変更計画があるか |
資金繰り | 税率変更による影響を試算したか |
簡易課税か本則課税かは会社ごとに試算が必要
1%への引下げを聞くと、「本則課税へ変更した方が還付を受けられて有利なのでは?」と考えるかもしれません。
しかし、今回の大綱では簡易課税についても、1%対象食品の売上税額と同額を仕入税額控除する特例があります。
そのため、
飲食料品売上の割合
10%対象売上
実際の課税仕入れ
設備投資額
事務負担
などによって、有利な課税方式は異なります。
制度成立後は、本則課税と簡易課税を実際の数字で比較することが重要です。
よくある疑問
Q. 飲食料品の1%はもう法律として決まっていますか?
A. まだ法案成立前です。政府・与党は2026年9月15日に大綱を決定し、政府は10月召集予定の臨時国会に関連法案を提出する方針です。
Q. 1%になる期間はいつですか?
A. 大綱では、2027年4月1日から2029年3月31日までの2年間です。
Q. 簡易課税だと食品について1%分を納税しますか?
A. 大綱では、1%対象飲食料品について、売上税額と同額を仕入控除税額とするため、その部分については基本的に納税額が生じない仕組みです。
Q. 簡易課税から本則課税へ変更できますか?
A. 一定の飲食料品事業者について、課税期間の末日までに不適用届出書を提出でき、簡易課税の2年継続要件も解除される特例が設けられます。
Q. 税理士費用の補助もありますか?
A. 大綱では、本則課税へ移行する一定の農林漁業者・食品事業者・外食事業者について、相談対応や税理士費用等の経費を支援するとされています。具体額等は今回の資料では示されていません。
まとめ
政府・与党は、2027年4月1日から2年間、飲食料品の消費税率を1%とする大綱を決定しました。
今回の大綱で特に押さえておきたいのは次の点です。
飲食料品の消費税率を2年間1%へ
新聞の8%、酒類・外食の10%は維持
インボイスには1%を記載
定期供給契約・通販には8%を維持する経過措置
課税事業者選択届出書等の期限を課税期間末日まで延長
簡易課税の2年縛りを解除
簡易課税では食品の売上税額と同額を仕入税額控除
中間申告にも再計算特例
総額表示義務には税率変更前後の特例
食品関連事業者の本則課税移行に伴う税理士費用等を支援
就業者負担軽減支援金を2027年4月から導入予定
食品関連事業者にとって今回の制度は、単なる「8%から1%への税率変更」ではなく、課税方式・契約・請求書・レジ・通販・価格表示まで広範囲に影響する改正です。
現時点では法案成立前ですので、システム改修等を直ちに確定する段階ではありませんが、売上構成や契約形態、現在の課税方式を整理し、制度成立後すぐに影響額を試算できるよう準備しておくとよいでしょう。
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【この記事の執筆者】
安田 亮(公認会計士・税理士)
安田亮公認会計士・税理士事務所 代表
京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。
現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。
事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。






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