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2027年4月から飲食料品の消費税1%へ?簡易課税・総額表示・経過措置の具体案を解説

執筆者の写真: 安田亮
安田亮
4 時間前
読了時間: 11分

おはようございます!代表の安田です。


飲食料品の消費税率について、2027年4月1日から2年間、現在の軽減税率8%を1%へ引き下げる方向で具体的な制度設計が進められています。


今回、自民党税制調査会では、税率引下げに伴う事業者の負担を軽減するため、

  • 免税事業者・簡易課税事業者が本則課税へ移行する場合の特例

  • 簡易課税制度における仕入税額控除の特例

  • 総額表示義務の特例

  • 消費税の中間申告の特例

  • 予約販売・通信販売の経過措置

  • 農林漁業者・食品事業者・外食事業者への支援

などについて具体案が示されました。


食品を扱う企業にとっては、単にレジや請求書の税率を8%から1%へ変更すればよいという話ではありません。消費税の計算方法そのものや、課税方式の選択、価格表示、前受取引などにも影響する可能性があります。


本日は、今回明らかになった具体案を税理士が整理します。


2027年4月1日から2年間、飲食料品を1%へ引下げる方向

2027年4月1日から2年間、飲食料品の消費税率を1%へ引き下げることを前提として、税制上の措置が検討されています。


今回のポイントは、税率そのものよりも、税率変更に伴って生じる実務上の不都合をどう解消するかという点です。


例えば、簡易課税を利用している食品事業者の場合、売上げにかかる税率が1%まで下がる一方、仕入れには10%などの税率が残るケースがあります。


その結果、本則課税であれば還付となる事業者でも、簡易課税では納税額が発生するという問題が生じ得ます。


そこで今回、複数の特例が具体化されました。


本則課税へ切り替えるための届出期限に特例

通常、免税事業者が本則課税を選択する場合には「課税事業者選択届出書」、簡易課税事業者が本則課税へ移行する場合には「簡易課税制度選択不適用届出書」を、原則として課税期間開始前までに提出する必要があります。


しかし、2027年4月を含む課税期間がすでに始まっている法人では、税率引下げが決まった時点ですでに届出期限を過ぎている可能性があります。


そこで今回の案では、これらの届出書を、2027年4月1日を含む課税期間の末日までに提出すれば、その課税期間から本則課税へ移行できる特例を設ける方向が示されました。


<通常ルールと特例案>

項目

通常

特例案

課税事業者選択届出書

原則、課税期間開始前

2027年4月1日を含む課税期間末日まで

簡易課税制度選択不適用届出書

原則、課税期間開始前

同上

適用開始

翌課税期間等

2027年4月1日を含む課税期間から可能

食品関連事業者にとっては非常に重要な特例です。


簡易課税の「2年縛り」も解除へ

簡易課税制度には、一度選択すると一定期間は本則課税へ戻せない、いわゆる「2年縛り」があります。


今回の案では、2027年4月1日を含む課税期間から本則課税へ移行する場合には、この制限も解除する方向です。

つまり、「簡易課税を選んでからまだ2年経っていないから本則課税に変えられない」という事業者についても、税率引下げへの対応として本則課税へ移行できる可能性があります。


簡易課税では「飲食料品の売上税額=仕入税額」に

今回特に大きな変更案が、簡易課税制度の特例です。


通常の簡易課税では、「売上税額 × みなし仕入率」によって仕入税額控除を計算します。

しかし飲食料品の税率が1%まで下がると、簡易課税事業者では不合理な納税額が発生する可能性があります。


そこで、1%が適用される飲食料品の販売については、事業の種類を問わず、売上税額と同額を仕入税額控除する特例が設けられる方向です。


<計算イメージ>

項目

通常の簡易課税

特例案

飲食料品の売上税額

10

10

仕入税額控除

みなし仕入率による

10

飲食料品販売に対応する納税額

発生し得る

0

つまり、1%対象となる飲食料品については、「売上税額 = 仕入税額控除」となり、その売上げに対応する消費税の納税額は生じない計算になります。


10%対象売上は従来どおり

この特例は、あくまで税率1%となる飲食料品の販売部分です。

10%課税の売上げなどについては、従来どおり、売上税額 × みなし仕入率によって仕入税額控除を計算します。


したがって、1社の中でも、

  • 1%対象売上

  • 10%対象売上

を分けて計算する必要があります。


2割特例・3割特例にも同様の措置

インボイス制度に伴う2割特例・3割特例についても、飲食料品の1%対象部分について同様の措置を講じる方向とされています。


一方、飲食業については事務負担などを考慮し、みなし仕入率自体は変更しない案となっています。


総額表示義務は税率変更前後2か月に特例

消費者向けの商品価格については、原則として税込価格を表示する「総額表示義務」があります。


しかし、税率が8%から1%へ変更されると、

  • 商品棚の値札

  • POP

  • カタログ

  • ECサイト

  • メニュー表

などを一斉に変更する必要が生じます。


そこで、税率変更へすぐ対応することが困難な事業者については、税率変更前後の2か月間、一定の特例を設ける案が示されています。


税率変更前・変更後の税込価格を表示できる

特例期間中は、実際の支払金額と誤認されないような措置を講じることを条件として、

  • 税率変更前の税込価格

  • 税率変更後の税込価格

を表示できる方向です。


例えば、「この棚の商品は旧税率8%に基づく税込価格で表示しています。精算時に新税率で計算します。」といった表示により、レジで実際の価格を精算するイメージです。


「税抜価格だけ」の表示は引き続き不可

注意したいのは、この特例によって総額表示義務そのものがなくなるわけではないことです。


  • 税抜価格のみ

  • 「税抜価格+税」

という表示は、引き続き認めない方向とされています。


<総額表示の整理>

表示

特例期間

旧税率による税込価格+誤認防止措置

新税率による税込価格+誤認防止措置

税抜価格のみ

×

「1,000円+税」

×


中間申告も新税率を前提に計算可能へ

消費税の中間申告は、通常、前年の納税実績を基礎として計算します。

しかし前年は飲食料品が8%、当年は1%となると、前年実績をそのまま使った場合、中間納付額が実際の納税額に比べて過大になる可能性があります。


そこで、2027年4月以降の中間申告について、

前年の確定申告に新税率1%が適用されていたものとして計算し直した納付税額

を基礎に中間申告額を計算できる特例を設ける方向です。


簡易課税についても、先ほどの「売上税額と同額の仕入税額を控除する特例」を適用したものとして計算します。


予約販売・通信販売には8%を適用する経過措置

税率変更前に契約・申込みが行なわれ、商品の引渡しが税率変更後となるケースもあります。


例えば、

  • 旬の果物を1年間届ける定期購入

  • おせち料理

  • お中元

  • お歳暮

  • 食品の通信販売

などです。


こうした取引については、一定の条件を満たせば、2027年4月以後の引渡しであっても旧税率8%を適用する経過措置を設ける方向です。


「税率変更の3か月前」を指定日

今回の案では、税率変更日の3か月前を指定日とします。

そのうえで、

  • 定期供給契約による予約販売

  • あらかじめ提示した条件に基づく通信販売

について、一定の場合に8%を適用する考え方です。


<基本イメージ>

取引

一定条件を満たす場合

指定日前に条件を設定した予約販売

8%

指定日前に条件提示した通信販売

8%

新税率1%を前提に契約変更

1%

新税率を前提とした契約と確認できる

1%

したがって、「商品を渡した日が4月以降だから全部1%」とはならない可能性があります。


契約を1%前提に変更した場合は新税率

経過措置の対象となる取引でも、

  • 税率引下げ後の税率に契約を変更した

  • もともと1%を前提として価格設定・契約したことが確認できる

といった場合には、新税率1%を適用する方向です。


食品ECや予約販売を行っている企業では、契約日・申込日・条件提示日・税率変更の有無を記録できる体制が重要になります。


農林漁業者には給付措置も

今回の対策は税制だけではありません。

農林漁業者については、飲食料品の消費税率引下げによって売上税額が減少することなどを踏まえ、資金繰り支援を行なう方向です。


特に、本則課税へ移行することが難しい、

  • 簡易課税事業者

  • 免税事業者

である農林漁業者については、個々の売上高を踏まえた給付制度を設ける案が示されています。


食品事業者・外食事業者にも支援

支援対象は農林漁業だけではありません。


  • 食品事業者

  • 外食事業者

についても、

  • 資金繰り支援

  • テイクアウト等への多角化支援

を行なう方向が示されています。


本則課税への移行に伴う「税理士費用」も支援へ

今回、税理士として特に注目したいのがこの点です。

簡易課税事業者や免税事業者が本則課税へ移行すると、

  • 消費税区分の精緻な管理

  • インボイスの確認

  • 仕入税額控除の計算

  • 消費税申告

などの事務負担が増えます。


そのため、農林漁業者・食品事業者・外食事業者が本則課税へ移行する際について、相談対応や税理士費用等の経費を支援する方向が明らかにされています。


具体的な支援額や申請方法については、今後の予算編成過程で決定する予定です。


食品関連事業者が今から確認したいこと

現段階では制度案ですので、直ちに本則課税へ変更する必要はありません。

一方、自社への影響は事前に試算しておいた方がよいでしょう。

確認項目

内容

現在の課税方式

本則・簡易・免税のどれか

食品売上

1%対象となる金額

仕入れ

10%仕入れ等がどれだけあるか

簡易課税

本則へ変えた場合の還付可能性

届出

特例利用の必要性

POS

1%税率へ対応可能か

総額表示

値札・EC・メニュー等

予約販売

前受・定期購入があるか

通信販売

申込日・条件提示日を管理できるか

中間申告

前年実績との差が大きいか

税理士費用

支援制度の対象となり得るか


簡易課税と本則課税、どちらが有利か再計算が必要

飲食料品の税率が1%となれば、これまで簡易課税が有利だった会社でも結果が変わる可能性があります。


特に、

  • 食品売上が多い

  • 10%課税の仕入れが多い

  • 設備投資がある

といった会社では、本則課税による還付が生じる可能性があります。


一方、今回の簡易課税特例によって、1%対象の食品販売については納税額をゼロとする仕組みも予定されています。


したがって、「税率が下がるから本則課税にすれば必ず有利」というわけでもありません。

制度確定後にシミュレーションすることが重要です。


よくある疑問

Q. 2027年4月から食品の消費税率1%は確定していますか?

A. 2027年4月1日から2年間の1%への引下げを前提に、自民党税調が税制上の具体措置を議論している段階です。したがって、この記事執筆時点では今後の法制化を確認する必要があります。


Q. 今、簡易課税でも2027年から本則課税へ変更できますか?

A. 特例案では、2027年4月1日を含む課税期間の末日までに所定の届出書を提出することで、その課税期間から本則課税へ移行できる方向です。また、簡易課税の2年継続制限も解除する案です。


Q. 簡易課税のままだと食品売上に消費税が残りますか?

A. 特例案では、1%対象となる飲食料品の販売について、売上税額と同額を仕入税額控除できるため、その部分の納税額は発生しない仕組みが示されています。


Q. 税率変更時にすぐ値札を全部変更しなければなりませんか?

A. 税率変更へ直ちに対応することが難しい場合、変更前後の2か月間について、誤認防止措置を条件とした総額表示の特例を設ける案です。


Q. 税理士に本則課税への切替えを相談する費用も支援されますか?

A. 簡易課税・免税事業者である農林漁業者、食品事業者、外食事業者が本則課税へ移行する場合の相談対応や、税理士費用等の経費を支援する方向が示されています。具体的内容は今後の予算編成で決まる予定です。


まとめ

飲食料品の消費税率を2027年4月1日から2年間1%へ引き下げることを前提として、事業者向けの税制措置がかなり具体化してきました。


今回明らかになった主な内容は次のとおりです。

  • 本則課税への切替届出を課税期間末日まで可能とする特例

  • 簡易課税の2年継続制限を解除

  • 簡易課税では1%対象食品について売上税額と同額を仕入税額控除

  • 2割特例・3割特例にも同様の措置

  • 総額表示義務について税率変更前後2か月の特例

  • 中間申告を1%税率で再計算した前年税額を基礎にできる特例

  • 定期供給契約・通信販売に8%を適用する経過措置

  • 農林漁業者、食品事業者、外食事業者への資金繰り支援

  • 本則課税への移行に伴う相談・税理士費用等も支援


特に食品関連事業者にとって重要なのは、簡易課税を継続するのか、本則課税へ変更するのかという判断です。


制度が確定した段階で、現在の売上・仕入構成を使って本則課税と簡易課税を比較し、どちらが有利かを試算することが重要になるでしょう。



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【この記事の執筆者】

安田 亮(公認会計士・税理士)

安田亮公認会計士・税理士事務所 代表

京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。

現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。

事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。


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