top of page

被災した取引先への見舞金・売掛金免除は寄附金?法人税・消費税の取扱いを解説

執筆者の写真: 安田亮
安田亮
2 日前
読了時間: 10分

こんばんは!代表の安田です。


地震、豪雨、台風などの災害により取引先が被災した場合、企業として支援を検討することがあります。


例えば、

  • 売掛金を免除する

  • 災害見舞金を支給する

  • 被災地域へ自社製品を提供する

  • 支援物資を購入して無償提供する

といった方法です。


しかし、会社が無償で金銭や物品を提供すると、

  • 寄附金になるのでは?

  • 取引先への支払いなので交際費では?

と税務上の処理に迷うことがあります。


結論からいうと、被災した取引先の復旧支援を目的として一定の条件のもとで行う売掛金の免除や災害見舞金については、寄附金や交際費等に該当しない取扱いがあります。


一方、取引先企業ではなく、その従業員個人へ直接見舞金を支給する場合には、原則として交際費等になる点に注意が必要です。


本日は、被災した取引先への支援について、法人税・消費税の取扱いを税理士が解説します。


被災した取引先への売掛金免除は寄附金になる?

通常、取引先に対する売掛金を理由なく免除すれば、税務上は寄附金等の問題が生じる可能性があります。


しかし、災害時には特別な取扱いがあります。

被災した取引先の復旧支援を目的として、災害発生後相当の期間内に売掛金等を免除した場合、その免除による損失は寄附金や交際費等に該当しないとされています。


基本的な考え方

支援内容

税務上の取扱い

通常時に単純に売掛金を免除

寄附金等の問題が生じる可能性

被災取引先の復旧支援として売掛金を免除

一定の場合、寄附金・交際費等に該当しない

災害と無関係な債権免除

通常の税務判断が必要

ポイントは、単なる利益供与ではなく、被災した取引先の復旧支援を目的としていることです。


すべての被災取引先を平等に支援する必要はない

会社によっては、「一社だけ支援すると恣意的とみられるのでは?」と心配するかもしれません。ただ、被災したすべての取引先に平等に支援しなければならないという要件はないとされています。


したがって、例えば、

  • 重要な仕入先

  • 継続的な得意先

  • 特に被害が大きい取引先

など、特定の取引先のみを支援対象とすることも可能とされています。


被災した取引先への災害見舞金も交際費にならない場合がある

売掛金の免除だけでなく、被災した取引先へ現金で災害見舞金を支給するケースもあります。


この場合も一定の要件のもとで、交際費等に該当しない取扱いがあります。

被災前の取引関係の維持・回復を目的として、災害発生後相当の期間内に取引先へ支出する災害見舞金について、交際費等に該当しないとされています。


<判断上のポイント>

ポイント

内容

支援先

被災した取引先

目的

取引関係の維持・回復

時期

災害発生後相当の期間内

税務

一定の場合、交際費等に該当しない

単なる取引先への贈答ではなく、取引先の復旧を通じて自社の取引関係を維持・回復するための支出という性質がポイントです。


取引先の「従業員個人」への見舞金は扱いが違う

ここは実務上特に注意したいところです。

取引先である法人へ見舞金を支給するのではなく、その会社で働く被災従業員へ自社から直接見舞金を渡す場合です。


この場合は原則として交際費等に該当するとされています。


理由として、

  • 取引先法人への支援 → 取引先の救済を通じて自社の損失回避につながる

  • 取引先従業員個人への支援 → 今後の取引を円滑にする目的が強い

という違いが示されています。


<支援先による違い>

見舞金の支給先

原則的な取扱い

被災した取引先法人

一定の場合、交際費等に該当しない

取引先の従業員個人

原則として交際費等

取引先法人を通じて従業員へ給付

一定の場合、交際費等以外として取扱い可能


取引先法人を通じて従業員を支援する方法

取引先の従業員を支援したい場合でも、「自社 → 取引先法人 → 被災した従業員」という形を取ることで取扱いが異なる場合があります。


自社から取引先法人へ災害見舞金を支給し、その取引先が福利厚生の一環として被災従業員へ給付する場合には、取引先の復旧支援を目的とするものとして、交際費以外の費用として取り扱えるとされています。


したがって、被災した取引先の従業員を支援したいという場合には、直接従業員へ現金を渡すのか、取引先法人を通じて支援するのかによって税務上の取扱いが変わる可能性があります。


被災地域へ自社製品を無償提供した場合

災害時には、企業が被災地域へ、

  • 飲料

  • 食品

  • 衣料品

  • 日用品

  • 衛生用品

などを無償提供することがあります。


不特定多数の被災者を救援するため、緊急に自社製品等を提供する費用は寄附金に該当しないとされています。


企業にとって一定の広告宣伝効果があることも、この取扱いの背景として示されています。


自社製品でなければ寄附金になる?

必ずしもそうではありません。

例えば、食品メーカーではない会社が、

  • ミネラルウォーター

  • 毛布

  • 簡易トイレ

などを購入して被災地域へ提供するケースがあります。


自社製品以外であっても、企業イメージの向上につながるなど、結果として広告宣伝効果が生じるものであれば、自社製品と同様の取扱いとなり得るとされています。


<支援物資のイメージ>

内容

寄附金の取扱い

不特定多数の被災者へ自社製品を緊急提供

原則として寄附金に該当しない

支援用物資を購入して提供

一定の場合、同様の取扱い

特定の個人への単純な贈与

別途検討が必要


災害見舞金そのものに消費税はかからない

次に消費税です。

被災取引先へ金銭で災害見舞金を支出しても、その支払いによって商品やサービスを受けるわけではありません。


災害見舞金について無償による資産の贈与として整理されています。

したがって、見舞金そのものを支払ったことについて、自社で消費税の課税仕入れが生じるということではありません。


支援物資を購入した場合は仕入税額控除できる?

一方、被災者へ無償提供するために物品を購入した場合には話が異なります。

例えば、会社が100万円分の飲料水を購入し、被災地へ無償提供したというケースです。

無償で物資を贈与する行為そのものは、対価を得て行う取引ではありません。


しかし、支援物資を販売業者から購入する行為は別の取引です。

その購入が消費税上の課税仕入れに該当するのであれば、購入に係る消費税は仕入税額控除の対象になります。


<消費税の整理>

取引

消費税

被災者へ物資を無償贈与

資産の譲渡等には該当しない

支援物資を業者から購入

課税仕入れなら仕入税額控除の対象

災害見舞金を現金支給

課税仕入れではない

「無償で配るものだから、購入時の消費税も控除できない」とは限らない点が重要です。


個別対応方式の場合は「共通対応」

課税売上割合に応じて仕入税額控除を個別対応方式で計算している会社では、被災者へ無償提供する支援物資の購入は、

  • 課税売上対応

  • 非課税売上対応

  • 共通対応

のどれになるのかという問題も生じます。


物資の贈与には対価性がなく、課税売上げにも非課税売上げにも直接対応しないため、個別対応方式では共通対応として取り扱います。


法人税・消費税をまとめて整理

今回のポイントを一覧にすると次のようになります。

支援方法

法人税上の主な取扱い

消費税上のポイント

被災取引先の売掛金免除

一定の場合、寄附金・交際費等に該当しない

個別取引の確認が必要

取引先法人への災害見舞金

一定の場合、交際費等に該当しない

見舞金自体は課税仕入れではない

取引先従業員へ直接見舞金

原則、交際費等

見舞金自体は課税仕入れではない

取引先法人を通じた従業員支援

一定の場合、交際費等以外

支出内容に応じて確認

不特定多数の被災者へ物資提供

一定の場合、寄附金に該当しない

購入時の課税仕入れは控除対象になり得る

「災害発生後相当の期間内」とは?

売掛金の免除や災害見舞金について、「災害発生後相当の期間内」という表現が使われています。ただし、「災害後〇か月以内」といった一律の具体的期間までは示されていません。


したがって、実務では、

  • 災害発生日

  • 取引先の被害状況

  • 復旧状況

  • 支援を決定した時期

  • 支出時期

  • 支援目的

などを整理し、災害復旧支援として合理的なタイミングで行われたことを説明できるようにしておくことが重要です。


支援時に残しておきたい資料

税務調査時に単なる寄附や贈答ではなく、災害復旧支援であったことを説明できるよう、社内資料を残しておくとよいでしょう。

資料

確認できる内容

役員会・稟議書

支援の目的・意思決定

被災状況資料

取引先の被害状況

売掛金台帳

免除した債権

支援通知書

取引先への支援内容

振込記録

見舞金の支払

購入請求書

支援物資の購入

配布記録

支援物資の提供先

今回の資料自体では具体的な保存書類までは示されていませんが、実務上は被災取引先の復旧支援という事業目的を明確にしておくことが有用です。


よくある疑問

Q. 被災した取引先の売掛金を免除すると寄附金になりますか?

A. 必ずしもなりません。被災した取引先の復旧支援を目的として、災害発生後相当の期間内に売掛金等を免除した場合には、その損失は寄附金・交際費等に該当しないとされています。


Q. 被災したすべての取引先へ同じ支援をする必要がありますか?

A. そのような要件はないとされており、特定の取引先のみを支援することも可能とされています。


Q. 取引先の従業員へ直接見舞金を渡しても交際費になりませんか?

A.取引先従業員個人への直接の災害見舞金は、原則として交際費等に該当するとされています。


Q. 被災地へ配るために購入した物資の消費税は控除できますか?

A. その支援物資の購入が課税仕入れに該当する場合には、仕入税額控除の対象になります。個別対応方式の場合は共通対応として扱うとされています。


まとめ

災害により取引先が被災した場合、企業が行う支援には税務上の特別な取扱いがあります。


今回のポイントは次のとおりです。

  • 被災取引先の復旧支援を目的とした売掛金等の免除は、一定の場合に寄附金・交際費等に該当しない

  • すべての被災取引先へ一律に支援する必要はない

  • 被災前の取引関係の維持・回復を目的とした取引先法人への災害見舞金も、一定の場合に交際費等に該当しない

  • 取引先の従業員個人へ直接支出する見舞金は原則として交際費等

  • 取引先法人を通じて福利厚生として従業員へ給付する場合は取扱いが異なる

  • 不特定多数の被災者への緊急の支援物資提供は一定の場合に寄附金に該当しない

  • 支援物資の購入が課税仕入れなら、その消費税は仕入税額控除の対象になり得る

  • 個別対応方式の場合、支援物資購入は共通対応として扱う


災害支援は緊急性が高いため、税務処理を後から検討することも少なくありません。

しかし、誰を支援するのか、何の目的で支出するのか、金銭なのか物品なのかによって法人税・消費税の取扱いが変わります。


被災取引先への支援を行なう際には、支援目的や被災状況、意思決定の経緯などを記録したうえで処理することが重要です。



神戸での起業や開業に関するご相談、確定申告にお困りの方、顧問税理士をお探しの方は安田亮公認会計士・税理士事務所までお問い合わせください


<あわせて読みたい>


【この記事の執筆者】

安田 亮(公認会計士・税理士)

安田亮公認会計士・税理士事務所 代表

京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。

現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。

事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。


神戸の税理士事務所ロゴ

コメント


bottom of page