top of page

経営セーフティ共済の掛金はいつ損金算入できる?決算日が金融機関休業日の場合と令和6年改正を税理士が解説

執筆者の写真: 安田亮
安田亮
2 時間前
読了時間: 12分

こんにちは!代表の安田です。


経営セーフティ共済、正式には「中小企業倒産防止共済制度」は、取引先の倒産による連鎖倒産を防ぐための制度です。


中小企業や個人事業主にとって、万一の資金繰り対策として利用できるだけでなく、掛金を法人では損金、個人事業主では必要経費に算入できることから、決算対策としても活用されることがあります。


ただし、経営セーフティ共済の掛金は、税務上「いつ損金算入できるのか」が重要です。

特に、掛金の口座引落日が金融機関の休業日と重なり、実際の引落しが翌期になった場合には、「当期の損金にできるのか」という問題が生じます。


本日は、経営セーフティ共済の基本的な税務処理、2月決算法人で問題となった掛金引落日の取扱い、前納掛金、未払計上による損金算入、そして令和6年度税制改正による解約後再加入時の制限について解説します。


経営セーフティ共済とは

経営セーフティ共済は、取引先事業者が倒産した場合に、中小企業の連鎖倒産や経営難を防ぐための共済制度です。


中小機構によると、経営セーフティ共済では、取引先が倒産して売掛金債権等が回収困難となった場合に、無担保・無保証人で掛金の最高10倍、上限8,000万円まで借入れを受けることができます。


掛金は、月額5,000円から20万円までの範囲で設定でき、掛金総額800万円まで積み立てることができます。添付資料でも、掛金は月額5,000円から20万円までの範囲で自由に選択でき、総額800万円まで積立て可能であること、また前納も可能であることが紹介されています。


制度本来の目的は、あくまで取引先倒産時の資金繰り対策です。ただし、税務上の取扱いから、節税・利益平準化の手段としても検討されることが多い制度です。


掛金は原則として支払日の属する事業年度に損金算入

法人が経営セーフティ共済の掛金を支払った場合、一定の要件のもとで、その全額を損金に算入できます。


経営セーフティ共済の掛金について、「特定の基金に対する負担金等の損金算入の特例」により、支払った掛金の全額を、その支払日の属する事業年度に損金算入できるとされています。つまり、基本的な考え方は次のとおりです。

経営セーフティ共済の掛金 → 支払った日の属する事業年度で損金算入

たとえば、3月決算法人が令和7年3月中に経営セーフティ共済の掛金を支払った場合、その掛金は原則として令和7年3月期の損金に算入します。


一方、実際の支払日が翌期になれば、原則として翌期の損金になります。この「支払日」が問題になったのが、2月決算法人における金融機関休業日のケースです。


経営セーフティ共済は前納もできる

経営セーフティ共済では、毎月払いだけでなく、将来分の掛金を前もって納付する「前納」も可能です。


経営セーフティ共済は掛金の前納が可能であり、税務上は支払った掛金の全額を支払日の属する事業年度に損金算入できることから、税務メリットを目的に加入するケースも多いとされています。


中小機構の案内でも、前納を希望する場合には「掛金前納申出書」を提出する手続きが案内されています。


そのため、決算対策として、決算月までに1年分の掛金を前納するケースがあります。

たとえば、月額20万円の掛金を12か月分前納すれば、最大240万円を一括で支払うことになります。ただし、前納は資金が外に出る取引です。単に税金が減るというだけでなく、資金繰りや将来の解約時の課税まで含めて判断する必要があります。


2月決算法人で問題になった「引落日が翌期になる」ケース

経営セーフティ共済の掛金は、原則として毎月27日に口座振替されます。

しかし、27日が土日祝日など金融機関の休業日に当たる場合、実際の引落しは翌営業日になります。


令和3年2月期の2月決算法人について、2月27日が土曜日で金融機関の休業日だったため、実際の掛金引落しが翌営業日の3月1日になったことが問題となりました。


この場合、形式的に見れば、掛金の実際の引落日は3月1日です。

2月決算法人にとって、3月1日は翌事業年度です。そのため、「令和3年2月期の損金にできず、令和4年2月期の損金になるのではないか」という疑義が生じました。


特に、前納掛金を決算対策として考えていた法人にとっては、実際の引落しが1日ずれるだけで、損金算入の時期が1期ずれてしまう可能性があり、大きな影響がありました。


金融機関休業日で翌期引落しとなった場合、未払計上で当期損金算入OK

この点について、国税庁の取扱いとして、本来の引落日が金融機関の休業日と重なったことで、実際の引落日が翌期になった場合でも、未払計上により当期での損金算入を認めるとされました。


つまり、令和3年2月期の2月決算法人では、2月27日が土曜日で、実際の引落しが3月1日になったとしても、未払計上することで令和3年2月期の損金算入が認められる取扱いとなりました。


仕訳イメージは次のとおりです。

【2月決算時】
保険料・共済掛金等 ×××円 / 未払金 ×××円
【3月1日引落時】
未払金      ×××円 / 普通預金 ×××円

ただし、この取扱いは、あくまで本来の引落日が当期中であり、金融機関休業日の関係で実際の引落しが翌営業日になったケースです。


最初から手続きが遅れて引落しが翌期になった場合や、残高不足で引落しできなかった場合まで、当然に同じように扱えるわけではありません。


実務上は、金融機関休業日の関係で「本来の引落日」と「実際の引落日」が事業年度をまたぐ場合、未払計上で対応できるかを検討することになります。


ただし、税務上の取扱いは個別事情によって異なる可能性があります。同じようなケースが発生した場合には、引落予定日、休業日、実際の引落日、前納手続きの有無、残高不足の有無を確認しておくことが重要です。


未払計上する場合に確認したいポイント

経営セーフティ共済の掛金を未払計上して当期損金にする場合には、次の点を確認しておくとよいでしょう。


1. 本来の引落日が当期中か

本来の口座振替日が当期中であることが前提です。

たとえば、2月決算法人で本来の引落日が2月27日であれば、当期中です。これが金融機関休業日のため翌営業日の3月1日になった場合に、未払計上の検討対象になります。


2. 翌営業日に実際に引き落とされているか

残高不足などで引落しができなかった場合は、金融機関休業日の問題とは別です。

中小機構の案内でも、前納申出後に残高不足などで振替できなかった場合には、翌々月に3か月分の請求が行われ、その後は毎月払いになるとされています。

残高不足による引落不能は、単なる休業日による翌営業日引落しとは区別して考える必要があります。


3. 決算時に未払計上しているか

当期の損金にするためには、決算で未払金として計上しておく必要があります。

決算書作成時に引落予定額を確認し、未払金として処理しているかをチェックしましょう。


4. 証拠資料を保存しているか

次のような資料を保存しておくと、後日説明しやすくなります。

  • 共済契約に関する書類

  • 掛金額の通知

  • 前納申出書の控え

  • 口座振替予定日が分かる資料

  • 金融機関休業日であることが分かるカレンダー

  • 実際の引落日が分かる通帳・入出金明細

  • 決算整理仕訳の資料


税務調査で確認された場合、「本来当期中に引き落とされる予定だったが、金融機関休業日のため翌営業日に引き落とされた」ことを説明できるようにしておくことが大切です。


令和6年度税制改正で「解約後2年以内の再加入」に制限

経営セーフティ共済については、令和6年度税制改正にも注意が必要です。


中小機構の公表によると、令和6年10月1日以後に共済契約を解除し、再度共済契約を締結した場合には、その解除の日から2年を経過する日までの間に支出する掛金について、必要経費または損金の額に算入できないこととされました。


これは、法人だけでなく個人事業主にも関係する改正です。

従来は、解約して解約手当金を受け取り、その後すぐ再加入して掛金を損金・必要経費にするという利用も見られました。


しかし、令和6年10月1日以後に解約した場合には、解約後2年以内に再加入して支出する掛金について、損金・必要経費算入が制限されます。


したがって、今後は次のような利用には注意が必要です。

経営セーフティ共済を解約 → 解約手当金を受け取る
        → すぐに再加入 → 掛金を再び損金算入

この流れは、改正後は従来どおりの税務メリットを受けられない可能性があります。


解約手当金は益金・収入になる

経営セーフティ共済は、掛金を支払ったときに損金・必要経費になりますが、解約して解約手当金を受け取ったときは、法人では益金、個人事業主では事業所得等の収入になります。


そのため、経営セーフティ共済は「税金が消える」制度ではなく、基本的には課税の繰延べ効果を持つ制度です。


たとえば、利益が大きい年度に掛金を支払って損金算入し、将来、赤字や大きな設備投資がある年度に解約手当金を受け取ることで、利益を平準化する効果が期待できます。


一方で、何も対策せずに解約すると、解約手当金がその年度の課税所得を押し上げることがあります。


令和6年度改正により、解約後すぐの再加入による掛金損金算入が制限されるため、今後は解約時期の検討がより重要になります。


決算対策として使う場合の注意点

経営セーフティ共済は、決算対策としてよく検討される制度ですが、使い方を誤ると資金繰りや税務処理で困ることがあります。


特に、次の点に注意しましょう。

1. 掛金は資金流出を伴う

損金算入できるとはいえ、掛金を支払えば現金は外に出ます。

節税額よりも支払額の方が当然大きいため、資金繰りに余裕があるかを確認する必要があります。


2. 前納手続きには期限がある

前納を希望する場合には、所定の手続きが必要です。

決算直前に慌てて手続きしても、希望する事業年度に引落しが間に合わない可能性があります。特に金融機関休業日が絡む場合には、早めの確認が必要です。


3. 解約時に課税される

解約手当金は、法人では益金、個人事業主では収入になります。

解約年度の利益や所得が大きい場合、かえって税負担が増えることもあります。


4. 令和6年10月以後の解約は再加入制限に注意

令和6年10月1日以後に解約した場合、2年以内に再加入して支払う掛金は損金・必要経費に算入できません。

今後は、解約と再加入を短期間で繰り返すような使い方は慎重に検討する必要があります。


5. 本来目的は取引先倒産への備え

経営セーフティ共済は、節税商品ではなく、取引先倒産に備えるための制度です。

万一の資金繰り対策として本当に必要か、掛金額は過大でないかを確認しましょう。


2月決算法人・月末決算法人が確認すべきこと

問題となった2月決算法人のように、決算日と口座振替日、金融機関休業日が重なる場合には、次の点を確認しておくと安心です。

  • 経営セーフティ共済の掛金引落日はいつか

  • その日が金融機関休業日に当たるか

  • 実際の引落日は翌期になるか

  • 前納掛金があるか

  • 残高不足による引落不能ではないか

  • 決算で未払計上しているか

  • 翌営業日に実際に引き落とされているか


特に、2月決算法人、4月決算法人、12月決算法人などは、土日祝日や大型連休の影響で、口座振替日が翌期にずれることがあります。


経営セーフティ共済に限らず、口座振替で支払う経費については、決算日前後の引落日を確認しておきましょう。


仕訳例

<通常の掛金支払時>

共済掛金 200,000円 / 普通預金 200,000円

<金融機関休業日により翌期引落しとなる場合>

たとえば、2月決算法人で、本来の引落日が2月27日、実際の引落日が3月1日となる場合。

【2月末決算整理】共済掛金 200,000円 / 未払金 200,000円
【3月1日引落時】未払金 200,000円 / 普通預金 200,000円

この処理は、金融機関休業日の関係で引落しが翌営業日にずれたケースを前提とします。


よくある誤解

  • 経営セーフティ共済は支払えば必ず節税になる

掛金は損金・必要経費になりますが、現金支出を伴います。また、解約手当金は課税対象です。税負担の繰延べや利益平準化として考えるべき制度です。


  • 引落日が翌期なら絶対に翌期の損金になる

原則は支払日の属する事業年度ですが、本来の引落日が当期中で、金融機関休業日の関係で翌営業日引落しとなったケースでは、未払計上により当期損金算入が認められる取扱いが示されています。


  • 残高不足で引落しできなかった場合も未払計上できる

金融機関休業日による翌営業日引落しと、残高不足による引落不能は別です。残高不足の場合には同じ取扱いができるとは限りません。


  • 解約してすぐ再加入すればまた損金にできる

令和6年10月1日以後に解約した場合、解約後2年以内に再加入して支出する掛金は、損金・必要経費に算入できません。


まとめ

経営セーフティ共済の掛金は、税務上、原則として支払日の属する事業年度に全額損金算入できます。また、前納も可能であるため、中小企業の決算対策として活用されることがあります。


一方で、掛金の口座引落日が金融機関の休業日と重なり、実際の引落しが翌期になる場合には注意が必要です。令和3年2月期の2月決算法人で問題となったケースでは、本来の引落日が当期中であり、金融機関休業日の関係で翌営業日の3月1日に引き落とされた場合、未払計上により当期での損金算入が認められる取扱いが示されました。


ただし、これは残高不足や手続き遅れによる翌期支払いとは異なります。未払計上する場合には、本来の引落日、金融機関休業日、実際の引落日、決算整理仕訳の資料を保存しておきましょう。


また、令和6年度税制改正により、令和6年10月1日以後に共済契約を解除し、2年以内に再加入した場合、その間に支出する掛金は損金・必要経費に算入できなくなりました。


経営セーフティ共済は、取引先倒産に備える有用な制度ですが、税務メリットだけで判断すると、解約時の課税や再加入制限で想定外の負担が生じることがあります。加入・前納・解約を検討する際は、決算日、資金繰り、利益予測、将来の出口戦略まで含めて確認しておきましょう。



神戸での起業や開業に関するご相談、確定申告にお困りの方、顧問税理士をお探しの方は安田亮公認会計士・税理士事務所までお問い合わせください


<あわせて読みたい>


【この記事の執筆者】

安田 亮(公認会計士・税理士)

安田亮公認会計士・税理士事務所 代表

京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。

現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。

事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。

神戸の税理士事務所ロゴ

コメント


bottom of page