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経営セーフティ共済は節税になる?加入時期・前納・解約時の注意点を税理士が解説

  • 執筆者の写真: 安田 亮
    安田 亮
  • 5 時間前
  • 読了時間: 13分

こんばんは!代表の安田です。


会社の業績が想定以上に好調となり、決算直前に法人税の負担を抑える方法を検討することがあります。


その際、中小企業で候補に挙がりやすい制度の一つが「経営セーフティ共済」です。

経営セーフティ共済は、正式には「中小企業倒産防止共済」といい、取引先の倒産によって売掛金などの回収が困難になった場合に、資金を借り入れられる制度です。


一定の要件を満たして支払った掛金は、法人では損金、個人事業主では事業所得の必要経費に算入できます。このため、取引先倒産への備えだけでなく、利益が出た年度の税負担を平準化する方法として利用されることもあります。


ただし、経営セーフティ共済は「加入を申し込めば、その年度に自由な金額を経費にできる制度」ではありません。


特に決算直前に加入する場合は、次の点に注意が必要です。

  • 決算日までに掛金を実際に支払う必要がある

  • 初回の口座振替が翌期になると、当期の損金にできない可能性がある

  • 前納の手続期限に間に合わせる必要がある

  • 法人税申告書に所定の明細書を添付する必要がある

  • 解約時には受取額が益金となる

  • 2024年10月以後の解約・再加入には新たな損金算入制限がある


本日は、経営セーフティ共済の仕組み、節税効果、期末加入時の注意点、前納方法、解約時の課税まで税理士が解説します。


経営セーフティ共済とは

経営セーフティ共済は、取引先事業者が倒産し、売掛金債権や前渡金返還請求権の回収が困難となった場合に、事業資金を借り入れられる制度です。


共済金の借入額は、原則として次のいずれか少ない金額の範囲内です。

  • 回収困難となった売掛金債権等の額

  • 納付済み掛金総額の10倍

  • 最高8,000万円


共済金は無担保・無保証人で借り入れられます。利子はありませんが、借入額の10分の1に相当する掛金の権利が消滅する仕組みです。


つまり、単なる節税商品ではなく、本来は取引先倒産による連鎖倒産や資金繰り悪化を防ぐための制度です。


加入できる会社の要件

経営セーフティ共済に加入できるのは、原則として1年以上継続して事業を行なっている一定の中小企業者です。


法人の場合、業種ごとに「資本金等の額」または「常時使用する従業員数」のいずれかの基準を満たす必要があります。代表的な基準は次のとおりです。

業種

資本金・出資金

従業員数

製造業・建設業・運輸業・その他

3億円以下

300人以下

卸売業

1億円以下

100人以下

サービス業

5,000万円以下

100人以下

小売業

5,000万円以下

50人以下

株式会社、合同会社、合名会社、合資会社、一定の士業法人などが対象となりますが、医療法人、NPO法人、外国法人などは加入できません。


また、この制度は取引先に対する売掛金等の回収不能へ備えるものです。一般消費者だけを取引相手とする事業など、対象となる売掛債権が通常発生しない業種では、加入できても共済金貸付けの対象にならない場合があります。


掛金はいくらまで支払える?

掛金月額は、5,000円から20万円までの範囲で、5,000円単位で設定できます。

掛金の積立限度額は800万円です。契約途中で掛金月額を増減することもでき、一定の手続きにより掛金を前納することもできます。


月額上限20万円を12か月支払う場合、年間掛金は最大240万円(20万円×12か月=240万円)です。


法人が所定の要件を満たして240万円を損金算入すれば、その分だけ課税所得が減少します。たとえば、法人税・地方税を合わせた実効税率を概算30%とすると、当期の税負担軽減額は次のようなイメージです。

240万円×30%=72万円

ただし、これは税金が永久に72万円なくなるという意味ではありません。


解約手当金を受け取った年度には原則として益金となるため、基本的には課税時期を将来へ繰り延べる効果と考えるべきです。


掛金は法人の損金にできる

法人が支払った経営セーフティ共済の掛金は、租税特別措置法上の要件を満たせば、支払った事業年度の損金に算入できます。

税務上の損金算入時期は、原則として掛金を現実に支払った日を含む事業年度です。単に加入申込みをしただけでは足りません。

会計処理の例

20万円の掛金を支払った場合、会計上は次のような仕訳が考えられます。


保険料 200,000円/普通預金 200,000円


勘定科目は「保険料」「支払掛金」「租税公課以外の共済掛金」など、会社の会計方針に応じて設定できます。中小機構も、損金算入時の勘定科目は特に指定していません。


ただし、会計上どの科目を使ったかだけで損金算入が決まるわけではなく、実際の支払いと申告書への添付が重要です。


決算直前の加入で最大240万円を損金にできる?

決算月に新規加入し、1年分の掛金をまとめて前納できれば、最大240万円をその期の損金に算入できる可能性があります。しかし、次の条件を満たす必要があります。

  1. 決算日までに加入手続きを完了する

  2. 決算日までに掛金を実際に支払う

  3. 前納期間が1年以内である

  4. 法人税申告時に所定の明細書を添付する


決算前に申込みをしても、実際の引落しが決算日の翌日以後になれば、その掛金は原則として翌期の損金です。


口座振替になった日が重要

経営セーフティ共済の掛金は、原則として毎月27日に口座振替されます。


たとえば、3月31日決算の会社が3月中に加入申込みをしても、初回口座振替が4月以後になれば、3月期の損金に算入できない可能性があります。


決算月に加入する場合は、通常の口座振替を待つのではなく、登録取扱機関と相談のうえ、当期中に支払いを完了できる方法を確認する必要があります。


前納による損金算入

掛金を前払いする「前納」を行った場合、前納期間が1年以内であれば、原則として支払った事業年度に全額を損金算入できます。


一方、1年を超える期間分を前納した場合は、全額を支払年度の損金にはできず、期間の経過に応じて各事業年度へ配分します。


前納手続きの期限

前納手続きは、原則として前納を希望する月の5日までに、掛金前納申出書が中小機構へ到着する必要があります。土日祝日に当たる場合は翌営業日です。


したがって、月末決算の会社が決算月に入ってから前納を検討しても、すでに手続期限を過ぎていることがあります。


「利益が確定してから月末に申し込めばよい」と考えていると、間に合わない可能性が高いため、決算見込みは早めに確認しておきましょう。


新規加入時の支払方法に注意

期末加入では、初回掛金の支払い方法が特に重要です。

金融機関の口座振替登録が間に合わない場合、登録取扱機関の窓口で支払う方法を案内されることがあります。


一方、金融機関や手続方法によっては、当月中の支払いに対応できないこともあります。

加入を検討する場合は、次の点を登録取扱機関へ確認しましょう。

  • 新規加入手続きの締切日

  • 初回掛金をいつ支払えるか

  • 前納を同時に申し込めるか

  • 当期中に口座振替が完了するか

  • 窓口での払い込みが可能か

  • 利用予定の金融機関が取扱機関になっているか


ネット銀行の口座しかない会社などは、取扱い可能な金融機関を早めに確認しておく必要があります。


法人税申告書への添付が必要

掛金を支払っただけで、税務上自動的に損金算入されるわけではありません。

法人が特例を適用するには、法人税申告書に次の書類を添付します。

  • 特定の基金に対する負担金等の損金算入に関する明細書

  • 適用額明細書


中小機構も、掛金を法人の損金に算入する場合には、これらの書類を法人税申告書へ添付するよう案内しています。


添付を失念すると、損金算入が認められない可能性があるため注意しましょう。

また、会計ソフトで「保険料」として仕訳を入力しただけでは、申告書の添付書類は自動的に完成しないことがあります。


解約手当金は40か月で100%戻る

経営セーフティ共済は任意に解約できます。

任意解約時の解約手当金は、掛金の納付月数に応じて次の割合で支給されます。

掛金納付月数

任意解約の支給率

1~11か月

0%

12~23か月

80%

24~29か月

85%

30~35か月

90%

36~39か月

95%

40か月以上

100%

40か月以上納付すれば、任意解約でも原則として掛金総額の100%が戻ります。反対に、12か月未満で任意解約すると解約手当金はありません。

したがって、短期間での解約を予定して加入する制度ではありません。


解約時には課税される

法人が掛金を支払った際に損金算入していた場合、解約手当金は受取時に益金となります。

たとえば、過去に800万円の掛金を全額損金算入し、その後800万円の解約手当金を受け取った場合、原則として800万円がその年度の益金に算入されます。


普通預金 8,000,000円/雑収入 8,000,000円


そのため、解約年度に他の利益も多い場合、かえって多額の法人税が発生する可能性があります。


経営セーフティ共済を節税目的で利用する場合は、加入時だけでなく、解約時の出口戦略も考えておくことが重要です。


解約時期の活用例

解約手当金を受け取る年度に、次のような支出が予定されていれば、益金と損金を相殺できる可能性があります。

  • 役員や従業員の退職金

  • 大規模修繕

  • 設備投資に伴う減価償却費

  • 店舗移転費用

  • 広告宣伝費

  • 人材採用費

  • 赤字事業年度の運転資金


ただし、解約手当金と支出の金額や計上時期が必ず一致するとは限りません。解約前に納税額を試算しましょう。


2024年10月以後は「解約してすぐ再加入」に制限

以前は、40か月以上経過した後に解約し、解約手当金を受け取ったうえで、すぐに再加入して掛金を再び損金算入する運用が見られました。


しかし、2024年10月1日以後に共済契約を解約し、再加入した場合、解約日から2年を経過する日までに支払った掛金は、法人の損金または個人事業主の必要経費に算入できません。

たとえば、2026年7月に解約し、同年中に再加入した場合、原則として2028年7月の解約日応当日までに支払う掛金は、損金算入できません。


制度改正後は、短期間で解約と再加入を繰り返して課税を繰り延べる方法は使いにくくなっています。


倒産がなくても資金を借りられる

経営セーフティ共済には、取引先が倒産していない場合でも、臨時の事業資金を借りられる「一時貸付金制度」があります。


一時貸付金は、機構解約時に受け取れる解約手当金の95%を上限として利用できます。借入期間は1年間で、返済は原則として期限一括です。


ただし、一時貸付金には利息があり、加入後12か月を経過し、掛金納付月数も12か月以上であることなどの条件があります。


「掛金を支払うと資金が完全に固定される」というわけではありませんが、預金のように自由に引き出せる制度でもありません。


経営セーフティ共済のメリット

1.取引先倒産への備えになる

取引先の倒産により売掛金等を回収できなくなった場合、無担保・無保証人で共済金を借りられます。

特定の取引先への依存度が高い会社では、資金繰り対策として大きな意味があります。


2.掛金を損金算入できる

法人では支払掛金を損金に算入できるため、利益が多い年度の課税所得を圧縮できます。


3.掛金額を調整できる

月額5,000円から20万円までの範囲で増額・減額が可能です。業績や資金繰りに応じて調整できます。


4.40か月以上なら任意解約で100%戻る

一定期間継続すれば、解約時に掛金総額が戻るため、将来の資金需要に備えられます。


経営セーフティ共済のデメリット

1.節税ではなく課税の繰延べになる

掛金支払時は損金になりますが、解約手当金は益金になります。

解約年度の利益が多ければ、加入時に減った税金以上の負担感が生じることもあります。


2.短期解約では元本割れする

任意解約の場合、40か月未満では支給率が100%に達しません。特に12か月未満では解約手当金がありません。


3.掛金を自由に引き出せない

掛金は普通預金ではありません。資金が必要になった場合は、解約または貸付制度を利用する必要があります。


4.共済金は完全な無利息融資ではない

共済金そのものに利子はありませんが、借入額の10分の1相当額の掛金が控除され、その権利が消滅します。


5.再加入後2年間は損金算入できないことがある

2024年10月以後の解約・再加入には、2年間の損金算入制限があります。


経営セーフティ共済が向いている会社

次のような会社は、制度を検討する余地があります。

  • 法人向けの売掛取引が多い

  • 特定の大口取引先への依存度が高い

  • 当期に安定した利益が出ている

  • 当面使用しない余裕資金がある

  • 40か月以上継続できる

  • 将来、退職金や大規模投資などの支出予定がある

  • 金融機関からの借入れ以外にも資金調達手段を確保したい


一方、手元資金に余裕がなく、納税後の運転資金も不足しそうな会社が、税金を減らすためだけに多額の掛金を支払うのはおすすめできません。

税金を30万円減らすために100万円の現金を支出して、資金繰りが苦しくなっては本末転倒です。


決算前のチェックリスト

経営セーフティ共済への加入や前納を検討するときは、次の事項を確認しましょう。


<加入資格>

  • 1年以上事業を継続しているか

  • 資本金または従業員数の要件を満たすか

  • 加入対象となる法人形態か

  • 法人税を滞納していないか

  • 売掛金債権等が発生する事業か


<税務・会計>

  • 当期の利益見込みはいくらか

  • 掛金を支払っても資金繰りに問題はないか

  • 決算日までに実際の支払いが完了するか

  • 前納期間は1年以内か

  • 申告書へ必要な明細書を添付できるか

  • 解約時の益金計上を見込んでいるか

  • 過去2年以内に解約していないか


<手続き>

  • 登録取扱機関を確認したか

  • 前納申出書の期限に間に合うか

  • 初回掛金の支払日を確認したか

  • 利用できる金融機関口座があるか

  • 口座残高を確保しているか


よくある誤り

1.加入申込みをした年度に全額経費にする

損金算入の原則は、掛金を実際に支払った事業年度です。申込日だけでは判断しません。


2.月末に申し込めば当期に前納できると思う

前納申出書には毎月5日という締切りがあります。


3.掛金240万円を支払えば税金が240万円減ると思う

減少するのは課税所得です。実際の税負担軽減額は、掛金額に実効税率を掛けた程度です。


4.40か月後に非課税で全額戻ると思う

掛金は100%戻る可能性がありますが、法人では解約手当金が益金になります。


5.解約後すぐ再加入すれば再び経費にできると思う

2024年10月以後の解約については、再加入後2年間の掛金が損金算入できない場合があります。


6.申告書への添付を忘れる

掛金の損金算入には、所定の明細書と適用額明細書の添付が必要です。


まとめ

経営セーフティ共済は、取引先の倒産による資金繰り悪化に備えながら、支払った掛金を法人の損金に算入できる制度です。


主なポイントは次のとおりです。

  • 掛金月額は5,000円から20万円

  • 掛金総額は800万円まで

  • 年間最大240万円を支払える

  • 1年以内の前納掛金は支払年度に損金算入できる

  • 損金算入には実際の支払いと申告書への添付が必要

  • 前納手続きは原則として希望月の5日まで

  • 任意解約は40か月以上で支給率100%

  • 解約手当金は法人の益金となる

  • 2024年10月以後の解約・再加入には2年間の損金算入制限がある

  • 税負担をなくす制度ではなく、課税時期を繰り延べる性格が強い

決算直前に加入を検討する場合、最大の注意点は「当期中に実際の支払いを完了できるか」です。


手続きが数日遅れるだけで、最大240万円の損金算入時期が翌期へずれる可能性があります。利益が出そうだと分かった段階で、資金繰りと解約時の課税まで含めて早めに検討しましょう。


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【この記事の執筆者】

安田 亮(公認会計士・税理士)

安田亮公認会計士・税理士事務所 代表

京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。

現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。

事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。

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