2027年4月から飲食料品の消費税1%へ|インボイス・簡易課税・通販の経過措置を税理士が解説
こんばんは!代表の安田です。
飲食料品の消費税率について、2027年4月1日から2年間、現在の8%から1%へ引き下げる案が具体化しています。
自民党の税制調査会・社会保障制度調査会合同会議では、2026年9月8日、「飲食料品消費税率の臨時的な引下げ及び就業者負担軽減支援金の導入に関する大綱(案)」について議論が行なわれました。
大綱案には、単なる税率引下げだけでなく、
インボイスの記載方法
通信販売・定期供給契約の経過措置
免税事業者・簡易課税事業者が本則課税へ移る場合の特例
簡易課税制度の特例
消費税の中間申告
総額表示義務
農林漁業者・食品事業者・外食事業者への支援
新たな「就業者負担軽減支援金」
まで盛り込まれています。
食品を扱う企業にとっては、POSレジの税率変更だけで済む話ではありません。
本記事では、大綱案の内容をもとに、2027年4月から予定される飲食料品の消費税率1%への引下げについて、実務上重要なポイントを整理します。
2027年4月1日から2029年3月31日まで「1%」
大綱案では、2027年4月1日から2029年3月31日までの2年間、現行の軽減税率対象となっている飲食料品について特例税率を適用することが示されています。
国税部分は0.78%とし、地方消費税を合わせた税率が1%となります。
税率を整理すると
対象 | 現行 | 大綱案 |
軽減税率対象の飲食料品 | 8% | 1% |
一定の新聞の定期購読 | 8% | 8%を維持 |
通常税率対象の商品・サービス | 10% | 10%を維持 |
重要なのは、現在8%のものがすべて1%になるわけではないということです。
飲食料品の対象範囲自体は現行の軽減税率制度を維持しますが、週2回以上発行される新聞の定期購読については、現行の税率が維持される案です。
インボイスには「1%」を記載
今回の大綱案では、インボイス実務についても明確な方向性が示されています。
1%の対象となる飲食料品を販売した場合、適格請求書や仕入明細書等には、
適用税率:1%
消費税額等:1%を基礎として計算した税額
を記載します。
例えば
税抜10,000円の対象飲食料品を販売した場合、単純化すると、
項目 | 金額 |
税抜金額 | 10,000円 |
適用税率 | 1% |
消費税等 | 100円 |
税込金額 | 10,100円 |
という形になります。
企業側では、
請求書発行システム
POSレジ
販売管理システム
ECサイト
会計ソフト
などが1%税率を取り扱えるか確認する必要があります。
売上返品・貸倒れ・仕入返品も1%で計算
税率1%が適用された飲食料品について、その後、
売上値引き
売上返品
貸倒れ
仕入返品
仕入値引き
などが発生した場合にも、原則として特例税率1%を基礎として消費税額を計算する案です。
そのため、単純に2027年4月以降の売上だけを1%へ変更するのではなく、過去取引に関連する返品等の税率管理にも注意が必要になります。
一定の定期供給契約は1%ではなく8%
税率変更時には、契約日と商品の引渡日が異なるケースがあります。
代表例が、
食品の定期便
旬の果物などの年間契約
定期購入サービス
です。
大綱案では、一定の定期供給契約について8%を維持する経過措置が設けられています。
具体的には、
2027年1月1日前に契約
不特定多数へ定期的・継続的に供給する契約
1%を前提とした契約ではない
2027年4月1日前までに代金を受領
といった条件を満たす場合、受領済み部分について、2027年4月1日以後の商品の引渡しであっても1%の対象から除外される案です。
<定期供給契約のイメージ>
時期 | 内容 |
2026年12月 | 1年間の食品定期便を契約 |
2027年3月 | 1年分の代金を前払い |
2027年4月以降 | 毎月商品を発送 |
消費税率 | 一定の場合、8% |
「商品を渡したのが2027年4月以降だから必ず1%」とはならない点に注意が必要です。
通信販売にも8%の経過措置
ECサイトやカタログ通販にも同様の経過措置が予定されています。
大綱案では、
2027年1月1日前に販売条件を提示
1%を前提とした販売条件ではない
2027年4月1日前までに申込みを受けている
場合、その後2027年4月1日以後に商品を引き渡しても、特例税率1%を適用しないとされています。
<通信販売で管理したい情報>
項目 | 確認内容 |
販売条件提示日 | 2027年1月1日前か |
申込日 | 2027年4月1日前か |
商品発送日 | 4月1日以後でも対象となり得る |
販売価格 | 1%を前提としていないか |
適用税率 | 1%か8%かを判定 |
食品EC事業者では、注文データに申込日や旧税率対象であることを残す仕組みが必要になる可能性があります。
本則課税への変更は「課税期間末日」まで可能に
食品の税率が1%になると、簡易課税や免税事業者の中には、本則課税へ変更した方が有利なのでは?と考える事業者も出てきます。
そこで大綱案では、飲食料品の販売を行なう事業者について届出期限を緩和します。
例えば、2027年4月1日を含む課税期間から課税事業者になる場合、その課税期間の末日までに課税事業者選択届出書を提出すれば、課税期間開始前に提出したものとみなす案です。
簡易課税から本則課税への変更も期限を延長
簡易課税制度を利用している事業者についても同様です。
2027年4月1日を含む課税期間について簡易課税をやめたい場合、課税期間末日までに簡易課税制度選択不適用届出書を提出すれば、課税期間開始前に提出したものとみなす案となっています。
<届出特例>
届出 | 大綱案 |
課税事業者選択届出書 | 課税期間末日まで提出可能 |
簡易課税制度選択不適用届出書 | 課税期間末日まで提出可能 |
簡易課税の2年縛り | 適用しない |
特に大きいのが、「簡易課税を選択したら原則2年間継続」という、いわゆる2年縛りを解除する点です。
簡易課税では1%対象飲食料品の納税額を実質ゼロに
今回の大綱案の中でも特に特徴的なのが、簡易課税制度の特例です。
簡易課税では通常、「売上税額 × みなし仕入率」によって仕入控除税額を計算します。
しかし1%対象となる飲食料品については、業種区分にかかわらず、「売上税額と同額を仕入控除税額とする」特例を設ける案です。
<例>
1%対象飲食料品に係る売上税額が100万円だった場合、
項目 | 金額 |
売上税額 | 100万円 |
仕入控除税額 | 100万円 |
差引税額 | 0円 |
したがって、この部分については簡易課税事業者でも実質的に消費税負担が生じない仕組みです。
食品以外の売上は通常どおり簡易課税
例えば食品スーパーで、
飲食料品:1%
日用品:10%
の両方を販売している場合、食品以外についてまで納税額がゼロになるわけではありません。
1%対象飲食料品以外の課税売上げについては、通常の簡易課税制度を適用します。
つまり、食品とそれ以外の売上をより明確に区分することが重要になります。
2割特例・3割特例にも同様の措置
インボイス制度に関する、
2割特例
3割特例
を利用する場合についても、1%対象の飲食料品について同様の特例を設ける方向が示されています。
具体的な申告書の計算方法については今後の詳細な制度設計を確認する必要があります。
中間申告の納税額が大きくなりすぎないよう特例
2027年4月から食品税率が8%から1%へ下がると、前年実績を基礎にした中間申告では、実際の年間納税額に比べて中間納付が過大になる可能性があります。
そこで大綱案では、前年の飲食料品についても1%だったものとして税額を再計算し、その金額を基礎に中間申告できる特例が設けられる予定です。
また、1%特例が終了する2029年4月以降についても、前年に1%だった取引を通常税率だったものとして再計算できる逆方向の調整措置が盛り込まれています。
総額表示義務は税率変更前後の各2か月間に特例
小売店にとって大きな実務負担となるのが値札の変更です。
8%から1%へ税率が変わると、
棚札
商品ラベル
メニュー
カタログ
ECサイト
などを変更する必要があります。
そこで、大綱案では総額表示義務へ直ちに対応することが困難な事情がある場合に限り、一定期間、旧税率または新税率による税込価格を表示できる特例を設けています。
<1%開始時>
期間 | 表示可能な特例価格 |
2027年2月1日~3月31日 | 1%に基づく税込価格 |
2027年4月1日~5月31日 | 8%に基づく税込価格 |
1%終了時
期間 | 表示可能な特例価格 |
2029年2月1日~3月31日 | 8%に基づく税込価格 |
2029年4月1日~5月31日 | 1%に基づく税込価格 |
ただし、消費者が「本来支払う税込価格」と誤解しないよう、誤認防止措置を講じることが前提です。
農林漁業者・食品事業者・外食事業者への支援も
税率引下げは、食品関連事業者に必ずしもプラスに働くとは限りません。
特に、
売上税額の減少
資金繰りへの影響
システム変更費用
課税方式変更に伴う経理負担
などが問題になります。
そこで大綱案では、農林漁業者について資金繰り支援を行い、食品事業者・外食事業者についても、資金繰りや生産性向上、省力化等を支援する方向が示されています。
本則課税への切替えに伴う「税理士費用」も支援対象へ
税理士事務所として特に注目したいのがこの部分です。
簡易課税事業者や免税事業者である、
農林漁業者
食品事業者
外食事業者
が本則課税事業者へ移行する場合に、相談対応や税理士費用等の経費を支援する方針が盛り込まれています。
具体的な補助額・対象要件・申請方法については、今後の予算編成過程で具体化されます。
2027年4月から「就業者負担軽減支援金」も導入へ
今回の大綱案には、消費税率引下げと合わせて新たな給付制度も盛り込まれています。
制度名は、「就業者負担軽減支援金」です。
2027年4月から、所得に応じた給付を行う制度として導入する案となっています。
支援金は、
前年の給与収入等を基礎とした勤労所得
合計所得金額
扶養児童の有無・人数
住民税・社会保険料等による負担
一定の場合の配偶者所得
などを基準に支給対象を判定します。
具体的な所得基準や支援額はまだ確定していません。
公金受取口座を登録していれば職権認定も可能
支援金は原則として市町村長の認定を受けて支給されます。
ただし、公金受取口座を登録しており、受給資格や金額が明らかな人については、市町村長が職権で認定できる仕組みとする案です。
認定後、原則として2か月以内に支給し、基本的には年1回の支給となります。
また、この支援金については租税その他の公課を課さない案となっています。
確定申告書・源泉徴収票などの様式も変更予定
支援金制度では、市町村が、
社会保険料控除額
扶養児童数
配偶者情報
などを把握する必要があります。
そのため、
確定申告書
源泉徴収票
住民税申告書
給与支払報告書
などの様式も変更する方向です。
企業の給与計算担当者にも将来的な影響がある可能性があります。
食品事業者が今から確認しておきたい事項
大綱案の段階でシステム改修を確定する必要はありませんが、自社への影響は整理しておいた方がよいでしょう。
確認項目 | 主なポイント |
1%対象売上 | 現在の軽減税率対象額はいくらか |
8%対象 | 新聞・経過措置取引等を区分できるか |
10%対象 | 日用品・外食等との区分 |
インボイス | 1%を出力できるか |
簡易課税 | 本則課税との比較が必要か |
EC・通販 | 申込日、条件提示日を管理できるか |
定期販売 | 契約日・前受金を把握できるか |
中間申告 | 特例の利用が必要か |
総額表示 | 値札等を一斉変更できるか |
税理士費用支援 | 対象になり得るか |
簡易課税か本則課税かは会社ごとに試算が必要
今回の大綱案では、簡易課税を続けても1%対象食品の売上税額と同額を仕入税額控除できる特例が予定されています。
一方、本則課税へ変更すれば、実際の課税仕入れに基づいて仕入税額控除を計算します。
そのため、「食品税率が1%になるから本則課税へ変えた方が必ず有利」とはいえません。
特に、
10%課税仕入れが多い
設備投資を予定している
1%対象売上の割合が高い
食品以外の売上も多い
事業者では、本則課税と簡易課税を実際の数字で比較した方がよいでしょう。
よくある疑問
Q. 2027年4月から飲食料品の消費税率は1%で確定ですか?
A. 現時点では「大綱案」の段階です。2026年9月10日時点では、自民党と日本維新の会が近く与党税制改正大綱として決定する見通しとされています。したがって、最終的な法令成立前の内容として確認する必要があります。
Q. 現在8%の新聞も1%になりますか?
A. 飲食料品の範囲は現行の軽減税率制度を維持する一方、一定の新聞の定期購読は現在の税率を維持するとされています。
Q. インボイスには8%と書けばよいですか?
A. 1%対象の飲食料品については、インボイス等の「適用税率」に特例税率1%を記載し、「消費税額等」も1%で計算する案です。
Q. 簡易課税の食品売上には消費税負担が残りますか?
A. 大綱案では、1%対象飲食料品の売上税額と同額を仕入控除税額とするため、その部分の差引税額は基本的にゼロとなる仕組みです。
Q. 2026年中に申し込んだ食品通販も1%ですか?
A. 一定の要件を満たす場合は1%の対象外となります。2027年1月1日前に販売条件を提示し、2027年4月1日前に申込みを受けた通信販売などについて経過措置が予定されています。
まとめ
今回明らかになった大綱案では、2027年4月1日から2029年3月31日までの2年間、現行の軽減税率対象の飲食料品について、消費税率を1%とする方向が具体化しています。
特に事業者が押さえておきたいのは、
飲食料品は1%、一定の新聞は8%を維持
インボイスにも1%を記載
売上返品・貸倒れ等も1%で計算
2027年1月1日前の一定の定期供給契約・通信販売には8%の経過措置
課税事業者選択届出書等の期限を課税期間末日まで延長
簡易課税の2年縛りを解除
簡易課税の1%対象食品は売上税額と同額を仕入税額控除
中間申告にも税率変更対応の特例
税率変更前後2か月間に総額表示の特例
食品関連事業者の本則課税への移行に伴う税理士費用等も支援
2027年4月から就業者負担軽減支援金も導入予定
という点です。
特に食品関連事業者では、「1%・8%・10%の3税率を取引内容によって使い分ける場面が生じる可能性がある」ことに注意が必要です。
制度が正式に決まった後は、税率設定だけでなく、インボイス、契約管理、通販システム、簡易課税・本則課税の選択まで含めて対応を進める必要があります。
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【この記事の執筆者】
安田 亮(公認会計士・税理士)
安田亮公認会計士・税理士事務所 代表
京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。
現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。
事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。






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