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「資本金の額等」と「資本金等の額」の違いとは?法人税・地方税で間違えやすい判定ポイントを税理士が解説

  • 執筆者の写真: 安田 亮
    安田 亮
  • 10 時間前
  • 読了時間: 11分

おはようございます!代表の安田です。


法人税や地方税の実務では、会社の規模を判定するために「資本金」という言葉がよく出てきます。たとえば、次のような場面です。

  • 中小法人に該当するか

  • 法人税の軽減税率を使えるか

  • 欠損金の繰越控除に制限があるか

  • 交際費の定額控除限度額を使えるか

  • 電子申告義務化の対象か

  • 外形標準課税の対象か

  • 寄附金の損金算入限度額の計算


ここで注意したいのが、税法上の用語には、よく似たものとして「資本金の額等」と「資本金等の額」があるという点です。文字の並びが少し違うだけなので、実務では混同しやすい用語です。


しかし、両者は意味が異なります。

結論から言うと、「資本金の額等」は資本金の額または出資金の額を意味します。


一方、「資本金等の額」は、資本金の額等に、株主等から拠出された金額のうち資本金に組み入れられていない金額などを加減算した税務上の金額です。


法人税法における「資本金の額等」とは「資本金の額又は出資金の額」のことであり、「資本金等の額」とは「資本金の額等」と株主等から拠出された金額のうち資本金に組み入れられずに留保されている額の合計額で、政令で定められた項目を加減調整するです。


本日は、「資本金の額等」と「資本金等の額」の違い、法人税で使われる場面、地方税で使われる場面、実務で間違えやすいポイントを税理士の視点から解説します。


「資本金の額等」とは

法人税法における「資本金の額等」とは、基本的に資本金の額または出資金の額をいいます。株式会社であれば、貸借対照表や登記簿に記載される資本金の額をイメージすると分かりやすいです。


たとえば、資本金1,000万円の株式会社であれば、原則として「資本金の額等」は1,000万円です。


この「資本金の額等」は、法人税法上の中小法人判定など、多くの制度で使われます。

法人税法上の制度の対象法人を判定するときは、「資本金の額等」を用いることがほとんどです。


「資本金等の額」とは

一方、「資本金等の額」は、単なる登記上の資本金とは異なります。


法人税法上の「資本金等の額」は、株主等から法人に拠出された金額を基礎として、一定の加算・減算を行って計算する税務上の概念です。


「資本金等の額」は「資本金の額等」と、株主等から拠出された金額のうち資本金には組み入れられずに留保されている額の合計額で、政令で定められた項目を加減調整するものと説明されます。代表的には、次のような項目が関係します。

  • 資本金の額

  • 資本準備金に相当する金額

  • 株式発行により払い込まれた金額のうち資本金に組み入れなかった金額

  • 自己株式の取得により減算される金額

  • 資本の払戻しに伴う調整額

  • 組織再編に伴う資本等取引の調整額


つまり、「資本金等の額」は、会社法上の資本金だけでなく、税務上の資本取引を反映した金額です。


国税庁の解説でも、資本金または出資金の増加は課税関係に影響するため、資本金や資本金等の額に関する取扱いが定められています。


両者の違いを簡単に整理

「資本金の額等」と「資本金等の額」は、名前がよく似ていますが、見ている範囲が違います。

資本金の額等= 資本金の額 または 出資金の額
資本金等の額= 資本金の額等+ 資本金に組み入れられていない株主拠出額など- 自己株式取得等に伴う減算額など

たとえば、会社設立時に1,000万円を払い込み、そのうち500万円を資本金、500万円を資本準備金とした場合を考えます。


この場合、一般的なイメージでは次のようになります。

資本金の額等:500万円
資本金等の額:1,000万円

資本金の額等は、資本金に組み入れた500万円を見ます。

一方、資本金等の額は、株主から拠出された1,000万円を基礎として考えるため、資本準備金部分も含めて把握します。もちろん、実際の税務計算では、別表五(一)や過去の資本等取引を確認する必要があります。


「資本金の額等」が使われる主な場面

「資本金の額等」は、法人税法上の中小法人向け制度や大法人判定で多く使われます。

代表的には、次のような場面です。

  • 中小法人の判定

  • 法人税の軽減税率の適用判定

  • 交際費等の定額控除限度額の適用判定

  • 欠損金の繰越控除の控除限度額判定

  • 貸倒引当金制度の適用判定

  • 電子申告義務化の対象判定

  • 地方税の外形標準課税の対象判定


法人税法には欠損金の繰越控除や法人税の軽減税率など中小法人向けの優遇措置があり、大法人については令和2年4月1日以後開始事業年度から法人税等の電子申告が義務化されています。そのうえで、これらの制度の対象法人を判定するときは「資本金の額等」を用いることがほとんどとされています。


つまり、会社規模を判定する場面では、多くの場合「資本金の額等」を確認します。


「資本金等の額」が使われる主な場面

一方、「資本金等の額」が使われる場面もあります。代表的なのは、次のような場面です。

  • 寄附金の損金算入限度額の計算

  • 資本の払戻しにおけるみなし配当の計算

  • 地方税の法人事業税資本割の課税標準


法人税法で「資本金等の額」が用いられる場面として、寄附金の損金算入限度額の計算や、資本の払戻しにおけるみなし配当の計算が挙げられます。


国税庁も、法人が寄附金を支出した場合には一定額を超える部分が損金不算入になると案内しており、一般寄附金の損金算入限度額の計算では、所得金額だけでなく資本金等の額を用いる場面があります。


このように、「会社規模の判定」では資本金の額等、「資本取引や限度額計算」では資本金等の額が登場しやすい、と整理すると理解しやすくなります。


別表五(一)で管理される

「資本金等の額」は、法人税申告書の別表五(一)で管理します。

株式の発行や自己株式の取得などに伴う資本金等の額の調整は、法人税申告書の別表五(一)で行ないます。


別表五(一)は、利益積立金額や資本金等の額など、税務上の純資産項目を管理する重要な別表です。


会計上の貸借対照表だけを見ていても、税務上の資本金等の額を正しく把握できない場合があります。特に、過去に次のような取引がある会社は注意が必要です。

  • 増資

  • 減資

  • 資本準備金の計上

  • 自己株式の取得

  • 自己株式の処分

  • 資本剰余金の配当

  • 資本の払戻し

  • 合併、分割、株式交換などの組織再編


このような取引がある場合、別表五(一)の資本金等の額の管理がずれていると、寄附金限度額やみなし配当計算などに影響する可能性があります。


増資をした場合の注意点

増資をした場合、「資本金の額等」と「資本金等の額」は同じように増えるとは限りません。


たとえば、1,000万円を払い込み、その全額を資本金に組み入れた場合は、資本金の額等も資本金等の額も1,000万円増加します。


一方、1,000万円を払い込み、そのうち500万円だけを資本金に組み入れ、残り500万円を資本準備金にした場合、資本金の額等の増加は500万円です。


しかし、資本金等の額は、株主からの拠出額全体を基礎とするため、1,000万円増加することになります。この違いを理解していないと、法人税の中小法人判定や寄附金限度額の計算で誤りが生じる可能性があります。


自己株式を取得した場合の注意点

自己株式を取得した場合にも、「資本金等の額」は調整されます。


資本金等の額の減算項目として、自己株式の取得等の対価相当額が挙げられます。

自己株式の取得は、会社法上の純資産にも影響しますが、税務上も資本金等の額や利益積立金額の調整が必要になります。


自己株式を取得した場合、単に会計仕訳を行なうだけでなく、法人税申告書の別表五(一)の記載も確認する必要があります。


資本の払戻しとみなし配当

資本金等の額が重要になる代表例が、資本の払戻しにおけるみなし配当の計算です。


会社が資本剰余金を原資として株主に払戻しを行なう場合、その全額が単純な資本の返還になるとは限りません。税務上は、資本金等の額に対応する部分を超える金額について、みなし配当が生じることがあります。


資本剰余金からの配当や減資を行なう場合には、株主側の課税にも影響するため、事前に税務上の資本金等の額を確認することが重要です。


寄附金の損金算入限度額にも影響する

法人が寄附金を支出した場合、一定額を超える部分は損金不算入となります。


一般寄附金の損金算入限度額の計算では、所得金額に基づく部分と、資本金等の額に基づく部分が関係します。


そのため、資本金等の額を誤ると、寄附金の損金算入限度額を誤る可能性があります。

国税庁も、法人が寄附金を支出したときは、原則として一定額を超える部分は損金の額に算入されないと説明しています。


寄附金が少額であれば大きな問題にならないこともありますが、企業版ふるさと納税、協賛金、寄附金、関係団体への拠出金などが多い会社では、資本金等の額の確認が必要です。


地方税ではさらに注意が必要

地方税でも、「資本金の額等」と「資本金等の額」が登場します。


法人事業税の外形標準課税の対象法人判定では「資本金の額等」が用いられ、「資本金の額等」が1億円超の法人が対象になります。


一方、資本割では「資本金等の額」が課税標準となるものの、地方税法上の「資本金等の額」は法人税法上のものと範囲が異なる場合があるため留意が必要とされています。


ここが実務で特にややこしいところです。

地方税では、外形標準課税の対象判定では「資本金の額等」を見ます。

しかし、実際に外形標準課税の資本割を計算するときには「資本金等の額」を用います。

さらに、その「資本金等の額」は、法人税法上の資本金等の額と完全に同じとは限りません。


外形標準課税の対象会社や、資本金1億円前後の会社では、地方税の取扱いを必ず確認しましょう。


「等」の位置が違うだけで意味が変わる

この2つの用語を覚えるうえで重要なのは、「等」の位置です。

資本金の額等
 → 「資本金の額」等
 → 資本金または出資金を見る

資本金等の額
 → 「資本金等」の額
 → 税務上の資本等取引を反映した金額を見る

実務上は、「資本金の額等」は比較的シンプルです。

登記上・会計上の資本金を見れば判断できるケースが多いです。


一方、「資本金等の額」は、別表五(一)や資本等取引の履歴を確認しないと正確に把握できません。


実務で誤りやすいポイント

「資本金の額等」と「資本金等の額」では、次のような誤りが起こりやすいです。


  • 中小法人判定で資本金等の額を見てしまう

中小法人判定など、多くの制度では「資本金の額等」を見ます。

資本準備金を含めた「資本金等の額」を見てしまうと、判定を誤る可能性があります。


  • 寄附金限度額で資本金の額だけを見てしまう

寄附金の損金算入限度額では、資本金等の額を使う場面があります。

資本金の額だけで計算すると、限度額を誤る可能性があります。


  • 別表五(一)を確認していない

資本金等の額は、会計上の貸借対照表だけでは分からないことがあります。

増資、自己株式、資本剰余金配当などがある会社では、別表五(一)の確認が必要です。


  • 地方税と法人税の資本金等の額を同じものとして扱う

地方税法上の資本金等の額は、法人税法上の資本金等の額と範囲が異なる場合があります。

外形標準課税や資本割の計算では注意が必要です。


  • 資本金1億円前後の会社で判定を軽視する

資本金1億円は、中小法人の優遇措置や外形標準課税などの判定で重要なラインです。

増資、減資、組織再編を行う場合には、税務上の影響を事前に確認しましょう。


確認すべきチェックリスト

「資本金の額等」と「資本金等の額」を確認する際は、次の点をチェックしましょう。

  • 判定したい制度は何か

  • その制度で使うのは「資本金の額等」か「資本金等の額」か

  • 登記上の資本金の額を確認したか

  • 出資金の額を確認したか

  • 資本準備金の有無を確認したか

  • 過去に増資・減資があるか

  • 自己株式の取得・処分があるか

  • 資本剰余金の配当や資本の払戻しがあるか

  • 組織再編があるか

  • 別表五(一)の資本金等の額を確認したか

  • 地方税で別の取扱いがないか確認したか


まとめ:「資本金の額等」と「資本金等の額」は似ているが別物

「資本金の額等」と「資本金等の額」は、名前が非常によく似ています。


しかし、税務上の意味は異なります。


「資本金の額等」は、資本金の額または出資金の額をいいます。


一方、「資本金等の額」は、資本金の額等に加えて、株主等から拠出された金額のうち資本金に組み入れられていない金額などを加減算した税務上の金額です。


法人税では、多くの中小法人判定や優遇措置の判定に「資本金の額等」が使われます。

一方、寄附金の損金算入限度額や、資本の払戻しにおけるみなし配当の計算では「資本金等の額」が使われます。


また、地方税では、外形標準課税の対象判定に「資本金の額等」が使われ、資本割の課税標準には「資本金等の額」が使われます。

ポイントを整理すると、次のとおりです。

  • 「資本金の額等」は、資本金の額または出資金の額

  • 「資本金等の額」は、株主等からの拠出額を基礎に加減算した税務上の金額

  • 法人税の制度判定では「資本金の額等」を使う場面が多い

  • 寄附金限度額やみなし配当の計算では「資本金等の額」を使う

  • 資本金等の額は、法人税申告書の別表五(一)で管理する

  • 増資、減資、自己株式取得、資本剰余金配当、組織再編がある会社は要注意

  • 地方税法上の資本金等の額は、法人税法上のものと範囲が異なる場合がある


「資本金の額等」と「資本金等の額」は、一文字違いならぬ「等」の位置違いで、税務上の結論が変わる重要な用語です。


特に、資本金1億円前後の会社、増資・減資を予定している会社、寄附金や資本の払戻しがある会社、外形標準課税の対象となる会社では、どちらの金額を使う制度なのかを必ず確認しておきましょう。


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