非営利法人の「収益事業」とは?マンション管理組合・宗教法人・NPO法人の法人税課税を税理士が解説
更新日:8月30日
おはようございます!代表の安田です。
公益法人、NPO法人、宗教法人、学校法人、社会福祉法人、マンション管理組合など、いわゆる非営利の組織であっても、法人税がまったく関係ないわけではありません。
非営利だから税金はかからない
利益を分配していないから法人税は不要
団体の目的に沿った活動だから課税されない
このように考えていると、思わぬ税務リスクにつながることがあります。
非営利法人等については、一定の「収益事業」から生じた所得に法人税が課税される場合があります。国税庁も、公益法人等や人格のない社団等が法人税法施行令に掲げられた収益事業に該当する事業を行う場合、本来目的の事業であっても、その事業から生じる所得には法人税が課されると説明しています。
本日は、非営利法人等における収益事業の基本、マンション管理組合の駐車場収入、宗教法人のペット葬儀など、実務で迷いやすいポイントを税理士の視点からわかりやすく解説します。
収益事業とは何か
収益事業とは、公益法人等や人格のない社団等が行う事業のうち、法人税法上、課税対象とされる一定の事業をいいます。
ここでいう「収益事業」は、単に利益が出ている事業という意味ではありません。
法人税法上は、物品販売業、不動産販売業、金銭貸付業、物品貸付業、不動産貸付業、製造業、通信業、運送業、請負業、印刷業、出版業、旅館業、料理店業、駐車場業、興行業、遊技所業、技芸教授業など、政令で定められた事業が対象になります。
つまり、非営利法人等が何らかの収入を得ていたとしても、直ちに法人税が課税されるわけではありません。
一方で、団体の本来目的に沿った活動であっても、法令上の収益事業に該当すれば課税対象になることがあります。
たとえば、宗教法人が宗教活動の一環として行っていると考えていた活動でも、実態として物品販売業、請負業、料理店業などに該当する場合には、法人税の課税対象になる可能性があります。
この点が、非営利法人の税務で非常にわかりにくいところです。
非営利法人でも課税される法人とされない法人がある
「非営利法人」とひとくくりにいっても、法人税の取扱いは法人の種類によって異なります。
たとえば、公益社団法人・公益財団法人や、非営利型法人に該当する一般社団法人・一般財団法人は、原則として収益事業から生じた所得が課税対象になります。一方、非営利型法人以外の一般社団法人・一般財団法人は、普通法人として扱われ、すべての所得が課税対象になります。
国税庁も、公益認定を受けていない一般社団法人・一般財団法人について、非営利型法人は収益事業課税、非営利型法人以外の法人は全所得課税と整理しています。
NPO法人、宗教法人、学校法人、社会福祉法人、マンション管理組合法人なども、それぞれ法人税法上の位置付けを確認する必要があります。
また、法人格のない団体であっても、人格のない社団等に該当する場合には、収益事業から生じた所得について法人税の申告が必要になることがあります。
そのため、まずは次の点を確認することが重要です。
自団体が法人税法上どの区分に該当するのか
行っている活動が収益事業に該当するのか
収益事業と非収益事業を区分経理しているのか
収益事業に該当する場合、法人税・消費税・地方税の申告が必要になるのか
「非営利だから申告不要」と決めつけるのではなく、法人の種類と活動内容の両方から判断する必要があります。
収益事業に該当するための基本的な考え方
収益事業に該当するかどうかを判断する際には、いくつかのポイントがあります。
まず、法人税法施行令に掲げられている事業に該当するかどうかです。
次に、その事業が継続して行なわれているかどうかです。
国税庁の法人税基本通達では、「継続して行なわれるもの」には、全期間を通じて継続して行なわれるものだけでなく、通常相当期間にわたって継続して行われるものや、定期的・不定期に反復して行われるものも含まれるとされています。
さらに、「事業場を設けて行われるもの」に該当するかどうかも確認します。
この点についても、常時店舗や事務所を設けている場合だけでなく、必要に応じて随時その事業活動のための場所を設ける場合や、既存の施設を利用して事業活動を行う場合も含まれるとされています。
つまり、固定店舗がないから収益事業ではない、年に数回だけだから収益事業ではない、と単純には言えません。
活動内容、反復継続性、対価性、外部への提供状況などを総合的に確認する必要があります。
本来目的の事業でも収益事業になることがある
非営利法人等では、「これは団体の本来目的に沿った活動だから課税されない」と考えがちです。
しかし、法人税の収益事業課税では、本来目的かどうかだけで判断するわけではありません。
国税庁は、公益法人等が法人税法施行令に掲げる事業のいずれかに該当する事業を行う場合、その事業が公益法人等の本来目的たる事業であっても、その事業から生じる所得については法人税が課されるとしています。
たとえば、ある団体が会員向けの教育研修を本来事業として行っている場合でも、その内容が法令上の技芸教授業などに該当するかどうかを確認する必要があります。
また、宗教法人が行う葬儀や供養、学校法人が行う施設貸出、NPO法人が行う物品販売なども、活動の目的だけでなく、事業の実態を見て判断します。
「社会貢献」「公益目的」「会員サービス」という言葉だけでは、法人税の課税関係は決まりません。
マンション管理組合の駐車場収入はどうなるか
実務で相談が多いのが、マンション管理組合の駐車場収入です。
マンション管理組合は、区分所有者から管理費や修繕積立金を集め、建物や共用部分を維持管理する組織です。
この管理組合が駐車場収入を得ている場合、収益事業に該当するのでしょうか。
国税庁の質疑応答事例では、団地管理組合等が区分所有者を対象として行う駐車場業について、一定の事実関係を前提に、収益事業に該当しないとされています。
その理由として、管理組合という地域自治会が構成員を対象として行う共済的な事業であること、駐車料金が共有物である駐車場敷地の特別利用に伴う管理費の割増金と考えられること、収入が区分所有者に分配されず運営費や修繕積立金に充当されていることなどが挙げられています。
つまり、区分所有者だけを対象に、管理費の延長のような形で駐車場を利用させている場合には、収益事業に該当しないと判断される余地があります。
一方で、区分所有者以外の外部の人に駐車場を貸している場合は注意が必要です。
外部利用者を広く募集し、近隣の月極駐車場のように駐車料金を得ている場合には、駐車場業として収益事業に該当する可能性が高くなります。
国税庁も、マンション管理組合が区分所有者以外の者へのマンション駐車場の使用を認めた場合について、個別の事実関係を前提に判断する文書回答事例を公表しています。
したがって、マンション管理組合の駐車場収入については、少なくとも次の点を確認する必要があります。
利用者は区分所有者・入居者だけか、それとも外部者を含むか
外部者を広く募集しているか
料金は近隣相場と比べてどうか
収入は管理費・修繕積立金に充当されているか
空き区画の一時利用なのか、継続的な外部貸付なのか
管理規約や総会決議でどのように位置付けられているか
同じ駐車場収入でも、実態によって税務上の取扱いが変わる点に注意が必要です。
カーシェアや民泊にも注意
近年は、マンション管理組合や非営利団体が、駐車場や空きスペースを有効活用するケースも増えています。
たとえば、空き駐車場をカーシェアリング事業者に貸す、空きスペースを外部事業者に貸す、会館や集会所を一般利用者に有料で貸す、といったケースです。
これらは、団体内部の共済的な利用ではなく、外部者への継続的な貸付やサービス提供と評価される可能性があります。
特に、外部事業者と契約し、継続的に利用料を受け取る場合には、収益事業に該当するかどうかを慎重に確認する必要があります。
「空きスペースの有効活用だから課税されない」「管理組合の収入になるだけだから問題ない」という判断は危険です。
外部に対して、対価を得て、反復継続して貸し付けている場合には、不動産貸付業、駐車場業、席貸業などに該当する可能性があります。
宗教法人のペット葬儀は収益事業になるのか
宗教法人でも、収益事業の判定が問題になることがあります。
近年はペット葬儀が収益事業に該当するかどうかが注目されています。
人の葬儀や法要、祈祷、お布施などは、宗教活動として非課税と整理される場面が多いです。しかし、ペット葬儀については、人の葬儀とは異なり、一般事業者も同様のサービスを提供していること、価格表が設けられていること、依頼者から受け取る金銭が喜捨金というより対価性を有していることなどから、請負業等として収益事業に該当すると判断される可能性があります。
このようなケースでは、名称が「供養料」「お布施」「志」であっても、実態としてサービスの対価であれば、収益事業に該当する可能性があります。
税務上は、名目よりも実態が重視されます。
宗教法人の場合でも、次のような活動は慎重に確認が必要です。
ペット葬儀、ペット供養、納骨サービス
霊園・墓地の管理に関連する付随サービス
物品販売
飲食提供
宿泊施設の運営
会館やホールの外部貸出
宗教法人だからすべて非課税というわけではありません。
特に、一般事業者と競合するようなサービスを、価格表に基づいて提供している場合には、収益事業該当性を確認する必要があります。
NPO法人や公益法人の物品販売・イベント収入
NPO法人や公益法人でも、物品販売やイベント収入が問題になることがあります。
たとえば、チャリティイベントでグッズを販売する、会報誌に広告を掲載する、研修会や講座を有料で開催する、施設を外部に貸すといったケースです。
これらの活動が一時的・偶発的なものであれば、直ちに収益事業とまでは言えない場合もあります。
しかし、継続的・反復的に行なっている場合や、一般事業者と同じような内容・価格でサービスを提供している場合には、収益事業に該当する可能性があります。
また、公益目的事業として認定されている活動であっても、付随する物品販売や広告収入などについては、個別に確認が必要です。
特に注意したいのは、「利益が出ていないから申告不要」と考えることです。
収益事業に該当する場合には、たとえ赤字であっても、申告や区分経理が必要になることがあります。
また、赤字が出ている収益事業でも、将来黒字化する可能性がある場合には、帳簿を整備しておくことが大切です。
収益事業と非収益事業は区分経理が必要
非営利法人等が収益事業を行っている場合、収益事業と非収益事業を区分して経理する必要があります。
たとえば、宗教法人が宗教活動とペット葬儀を行っている場合、宗教活動に関する収入・支出と、ペット葬儀に関する収入・支出を分けて管理する必要があります。
マンション管理組合が内部利用の駐車場と外部貸しの駐車場を併せて運営している場合も、外部貸し部分の収入や必要経費を区分する必要があります。
区分経理をしていないと、収益事業の所得を正しく計算できません。
また、税務調査で説明できない場合、本来非課税と考えていた部分まで課税上問題になるおそれがあります。
区分経理では、次のような点を整理しておきましょう。
収益事業の売上を区分する
収益事業に直接対応する経費を区分する
共通経費は合理的な基準で按分する
収益事業に使う資産を把握する
契約書、請求書、領収書、利用申込書などを保存する
会計ソフト上で部門を分ける
非営利法人の税務では、収益事業に該当するかどうかだけでなく、該当した後にきちんと区分経理できるかが非常に重要です。
収益事業の非該当判断は慎重に行なう
収益事業に該当するかどうかは、個別判断が必要です。
似たような事業でも、利用者、料金設定、募集方法、実施頻度、収益の使途、契約形態、団体の目的などによって結論が変わることがあります。
国税庁の質疑応答事例でも、団地管理組合等の駐車場について、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、具体的な取引等に適用する場合には異なる課税関係が生じることがあると注意書きされています。
したがって、他団体の事例だけを見て「うちも同じ」と判断するのは危険です。
たとえば、同じ駐車場収入でも、次のように結論が分かれる可能性があります。
区分所有者だけが利用している
外部者にも貸している
外部者を広く募集している
利用料が近隣相場と同程度である
一時的な空き区画の利用である
継続的に事業として貸し出している
収入を管理費に充てている
収入を別会計で管理している
これらの事情を確認したうえで、総合的に判断する必要があります。
収益事業に該当した場合に必要な対応
収益事業に該当する場合には、法人税の申告が必要になります。
また、法人住民税、法人事業税、消費税の判定も確認する必要があります。
消費税については、収益事業に該当するかどうかとは別に、課税売上高や取引内容に応じて判定します。
たとえば、駐車場収入や物品販売収入は消費税の課税売上になる可能性があります。一方、住宅の貸付けなどは消費税非課税となる場合があります。
また、インボイス登録の必要性も確認が必要です。
外部事業者との取引がある場合、相手先から適格請求書の発行を求められることがあります。
非営利法人であっても、インボイス登録をすれば消費税の課税事業者になります。
収益事業を開始する場合には、法人税だけでなく、消費税・地方税・インボイス制度まで含めて確認しましょう。
実務で確認すべきチェックポイント
非営利法人等が収入を得る活動を行う場合には、次の点を確認しておくと安心です。
その活動は、法人税法上の収益事業に掲げられている業種に該当するか
継続的・反復的に行われているか
事業場を設けて行われているといえるか
団体の構成員だけを対象にしているか、外部者も対象にしているか
料金表や価格表があるか
一般事業者と競合する内容か
収入は構成員に分配されていないか
収益事業と非収益事業を区分経理できているか
消費税の課税売上に該当するか
インボイス登録の必要があるか
契約書や利用規約、申込書、請求書、領収書を保存しているか
このような確認をしておくことで、税務調査時にも説明しやすくなります。
まとめ:非営利でも「収益事業」は法人税の対象になる
非営利法人やマンション管理組合であっても、法人税がまったく関係ないわけではありません。
公益法人等や人格のない社団等が、法人税法上の収益事業に該当する事業を行う場合、その事業から生じた所得には法人税が課税されます。
重要なのは、「非営利だから」「本来目的だから」「利益を分配していないから」という理由だけで、課税対象外と判断しないことです。
マンション管理組合の駐車場収入でも、区分所有者だけを対象に共済的に運営している場合と、外部者へ継続的に貸している場合では、取扱いが変わる可能性があります。
宗教法人のペット葬儀についても、名称が「供養料」や「お布施」であっても、実態として一般事業者と競合するサービスの対価であれば、収益事業に該当する可能性があります。
NPO法人や公益法人の物品販売、施設貸出、広告収入、講座収入なども同様です。
非営利法人等で収入を得る活動を始める場合には、次の点を意識しましょう。
法人税法上の収益事業に該当するか
外部者向けの事業になっていないか
継続的・反復的に行われていないか
一般事業者と競合していないか
収益事業と非収益事業を区分経理できているか
法人税だけでなく消費税・地方税も確認しているか
非営利法人の税務は、通常の株式会社とは違う難しさがあります。
活動を始めてから慌てるのではなく、契約書や料金表を作る段階で、税務上の取扱いを確認しておくことをおすすめします。
神戸での起業や開業に関するご相談、確定申告にお困りの方、顧問税理士をお探しの方は安田亮公認会計士・税理士事務所までお問い合わせください!
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【この記事の執筆者】
安田 亮(公認会計士・税理士)
安田亮公認会計士・税理士事務所 代表
京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。
現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。
事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。






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