大胆な投資促進税制は研究開発設備に使える?「試験研究の用」は対象外なので注意
おはようございます!代表の安田です。
2026年7月31日から、大胆な投資促進税制の申請受付がスタートしています。
一定の大規模な設備投資を行なう企業について、要件を満たせば、
即時償却
取得価額の一定割合の税額控除
を選択できる制度です。
設備投資額が非常に大きい企業にとっては、法人税負担に大きな影響を与える可能性があります。
しかし、投資額やROIなどの数値要件を満たせば、すべての設備が対象になるわけではありません。
特に注意したいのが、「試験研究の用に供する設備」は対象外とされている点です。
例えば、大規模な研究開発センターを建設し、その中で研究開発に使用する機械装置や器具備品を新たに取得しても、その設備が試験研究用であれば、経済産業大臣の確認要件を満たせないことになります。
本記事では、大胆な投資促進税制の概要と、試験研究用設備・貸付用設備に関する注意点を整理します。
大胆な投資促進税制とは?
大胆な投資促進税制は、一定の大規模な設備投資を行う法人を対象とした税制優遇措置です。
2026年7月31日から2029年3月31日までに対象設備について経済産業大臣の確認を受けることが要件とされています。
そして、その確認を受けた日から5年を経過する日までの間に設備を新たに取得等し、事業の用に供する必要があります。
<制度の主な内容>
項目 | 内容 |
経済産業大臣の確認期間 | 2026年7月31日~2029年3月31日 |
設備取得・事業供用 | 確認日から5年以内 |
優遇① | 即時償却 |
優遇② | 取得価額の7%税額控除 |
建物・建物附属設備・構築物 | 4%税額控除 |
税額控除上限 | 法人税額の20% |
即時償却と税額控除のどちらを選ぶかによって、税効果が現れるタイミングも異なります。
投資額は35億円以上、中小企業者等は5億円以上
経済産業大臣の確認を受けるためには、設備投資の規模にも要件があります。
投資額35億円以上が原則とされ、中小企業者等については、5億円以上とされています。
<投資額要件>
企業区分 | 投資額 |
原則 | 35億円以上 |
中小企業者等 | 5億円以上 |
非常に大型の設備投資を対象とした制度であることが分かります。
ROIは年平均15%以上が必要
投資額だけではなく、投資計画の収益性も確認されます。
投資計画のROIが年平均15%以上見込まれることが要件の一つとされています。
したがって、大規模な設備を購入すれば自動的に適用できるという制度ではありません。
投資額・収益性・設備の用途など、複数の条件を満たす必要があります。
最も注意したいのが「試験研究の用」の設備
今回の特に注意したいのが設備の用途です。
経済産業大臣の確認を受けるためには、取得等を予定している設備について、試験研究の用に供するものではないことが必要とされています。
そのため、
投資額35億円以上
ROI年平均15%以上
をクリアしていたとしても、対象設備そのものが研究開発用であれば税制の対象にはなりません。
研究開発センターの設備は対象外となる例
具体例として、大規模な研究開発センターを新設するケースを考えてみましょう。
センター内で行なう試験研究のため、
機械装置
器具備品
などを新たに取得したとしても、それらが試験研究の用に供される設備であれば、経済産業大臣の確認要件を満たせません。
<イメージ>
設備の用途 | 大胆な投資促進税制 |
通常の事業用設備 | その他の要件を満たすか確認 |
研究開発センターの試験研究用設備 | 対象外 |
貸付用設備 | 原則対象外 |
一定の委託先への貸与設備 | 条件により貸付用に該当しない場合あり |
この区分は、投資計画を策定する段階で確認しておくことが重要です。
なぜ「設備の用途」を先に確認した方がよいのか
大型投資では、
建物
生産設備
研究設備
試験装置
器具備品
など複数種類の資産を一体的に取得することがあります。
そのため、「プロジェクト全体の投資額が要件を超えている」というだけでは判断できません。
今回の資料からは、取得しようとする設備そのものが試験研究用に該当するかを確認する必要があることが分かります。
特に、工場と研究開発施設を同時に新設するようなプロジェクトでは、資産ごとの用途整理が重要になると考えられます。
「貸付の用」に供する設備も原則対象外
試験研究用設備だけでなく、貸付の用に供する設備についても、大胆な投資促進税制から除外されています。
したがって、設備を取得後、自社で使用せず他社へ貸し付ける場合には注意が必要です。
ただし、すべての「他社に使用させる設備」が貸付用として除外されるわけではありません。
委託先への設備貸与には例外あり
国税庁が公表した改正租税特別措置法関係通達では、一定の委託先への設備貸与について取扱いが明確化されています。
取得した設備を委託先へ貸与した場合でも、その設備が、専ら適用法人のために製品の加工等を行なうために使用されるものである場合には、「貸付の用に供するもの」には該当しないとされています。
<貸与設備の整理>
ケース | 貸付用設備の判定 |
一般的な他社への貸付 | 原則として対象外 |
委託先へ設備を貸与 | 個別確認が必要 |
専ら自社のための製品加工等に使用 | 貸付用に該当しない場合あり |
製造業では、自社所有の金型や機械を外注先へ貸与するケースもあるため、実務上重要なポイントです。
「試験研究」と「委託加工」は分けて考える
試験研究の用と貸付の用がそれぞれ適用除外として示されています。
一方で、委託先への設備貸与については、一定の場合に「貸付用」に当たらないという整理があります。
したがって、設備投資を検討する際には、誰が使うかだけではなく、「何のために使う設備なのか」を整理しておく必要があります。
例えば、委託先へ貸していても自社製品の加工専用設備であれば一定の取扱いがありますが、試験研究そのものに使用する設備については、今回の資料では対象外と明示されています。
税額控除と即時償却はどちらが有利?
この制度では、
即時償却
税額控除
の選択肢があります。
実際には、
法人の所得見込み
法人税額
投資金額
キャッシュ・フロー
将来の減価償却費
などによって結果が異なるため、個別に試算する必要があります。
特に税額控除には、法人税額の20%という上限があります。
投資計画段階で確認したいチェックポイント
大型投資を検討している企業では、設備発注後ではなく、計画段階で適用可能性を確認した方がよいでしょう。
チェック項目 | 確認内容 |
投資額 | 35億円以上か |
中小企業者等 | 5億円以上か |
ROI | 年平均15%以上か |
設備用途 | 試験研究用ではないか |
貸付 | 他社への貸付用ではないか |
委託先貸与 | 専ら自社のための加工等に使うか |
確認時期 | 2029年3月31日までか |
取得時期 | 確認後5年以内か |
税制選択 | 即時償却か税額控除か |
研究開発投資が大きい会社は特に注意
大胆な投資促進税制は、大規模な投資を促進する制度であるため、大型の研究開発拠点も当然対象になるのでは?と考えたくなるかもしれません。
しかし、試験研究の用に供する設備は確認要件を満たさないとされています。
そのため、研究開発型企業では、
生産用設備
研究開発用設備
共用設備
などを区分して整理する必要性が高いと考えられます。
なお、共用設備や試験研究と生産の双方に使用する設備についての詳細な判定基準は、今回の添付資料には示されていません。
個別案件では関係法令・通達等による確認が必要です。
よくある疑問
Q. 大胆な投資促進税制ではどのような優遇を受けられますか?
A. 一定の要件を満たす場合、即時償却または取得価額の7%の税額控除を受けることができます。建物、建物附属設備、構築物の税額控除率は4%で、税額控除額は法人税額の20%が上限です。
Q. 投資額はいくら必要ですか?
A. 原則として35億円以上、中小企業者等については5億円以上とされています。
Q. 研究開発センターの設備も対象になりますか?
A. 試験研究のために使用する機械装置や器具備品等は「試験研究の用に供するもの」に該当するため、今回の資料では対象外とされています。
Q. 外注先に貸している設備は対象外ですか?
A. 原則として貸付用設備は対象外ですが、委託先へ貸与した設備が専ら適用法人のための製品加工等に利用される場合には、「貸付の用」に該当しないことが通達で明確化されています。
Q. ROI要件はありますか?
A. 投資計画のROIについて年平均15%以上が見込まれることが確認要件の一つとされています。
まとめ
大胆な投資促進税制は、大規模な設備投資に対して、
即時償却
取得価額7%の税額控除
建物等について4%の税額控除
を認める強力な投資促進策です。
一方で、適用には投資金額やROIだけでなく、設備の用途も重要になります。
押さえておきたい点は、
2026年7月31日から申請受付開始
2029年3月31日までに経済産業大臣の確認が必要
確認後5年以内に設備を取得等・事業供用
投資額は原則35億円以上、中小企業者等は5億円以上
ROIは年平均15%以上
試験研究の用に供する設備は対象外
貸付用設備も原則対象外
ただし一定の委託先貸与設備は貸付用に該当しない
という点です。
大型投資では、数値要件を満たすかだけでなく、取得予定設備を「生産用」「研究開発用」「貸与用」など用途ごとに整理し、税制対象となる設備を事前に確認することが重要です。
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【この記事の執筆者】
安田 亮(公認会計士・税理士)
安田亮公認会計士・税理士事務所 代表
京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。
現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。
事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。






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