大胆な投資促進税制とは?7%税額控除・即時償却の要件と申請手続きを解説
おはようございます!代表の安田です。
令和8年度税制改正で、新たに「特定生産性向上設備等投資促進税制」、いわゆる大胆な投資促進税制が創設されました。
一定の要件を満たす大規模な設備投資について、7%の税額控除(建物・建物附属設備・構築物は4%)または即時償却を選択できる制度です。
ただし、単に多額の設備投資をすれば適用できるわけではありません。
一定の投資規模や投資利益率を満たした投資計画を作成し、公認会計士または税理士による事前確認を受けたうえで、経済産業局への申請などを行なう必要があります。
また、投資計画は原則として、2025年(令和7年)12月26日以後の取締役会等による意思決定に基づくことが求められます。一方、それ以前に意思決定した投資についても、一定の条件を満たして計画を拡充する場合には対象となる例外があります。
本日は、大胆な投資促進税制の優遇内容、投資計画の要件、公認会計士・税理士による事前確認、2025年12月25日以前に決定した投資の取扱い、申請手続について解説します。
大胆な投資促進税制とは
「大胆な投資促進税制」とは、正式には特定生産性向上設備等投資促進税制と呼ばれる制度です。
青色申告法人が、一定の要件を満たす投資計画に基づいて「特定生産性向上設備等」を取得等し、事業の用に供した場合に税制優遇を受けることができます。
2026年7月31日から経済産業省が投資計画の申請受付を開始しています。
税制優遇の概要
対象設備 | 税額控除 | 即時償却 |
機械装置等 | 7% | 選択可能 |
建物 | 4% | 選択可能 |
建物附属設備 | 4% | 選択可能 |
構築物 | 4% | 選択可能 |
税額控除を選択した場合、法人税額の20%が上限となります。
つまり、対象となる設備投資について、通常の減価償却を行なうだけでなく、
税額控除によって法人税を直接減額するか、即時償却によって早期に費用化するか
を選択できる制度です。
大胆な投資促進税制の主な要件
本税制を適用するには、一定の投資計画を作成し、経済産業大臣の確認を受ける必要があります。主な要件は、次の5つです。
要件 | 内容 |
投資規模 | 対象設備の取得価額合計が35億円以上 |
中小企業者等の投資規模 | 5億円以上 |
投資利益率 | 年平均15%以上が見込まれること |
資金調達 | 投資実現に必要な資金調達手段を計画に記載 |
意思決定 | 取締役会等の適切な機関の意思決定に基づくこと |
その他 | 設備投資を増加させるものであること等 |
特に重要なのは、単に「設備投資額が大きい」というだけでは足りず、投資によって十分な収益性が見込まれることまで要件になっている点です。
対象設備の取得価額は原則35億円以上ですが、中小企業者または農業協同組合等については5億円以上とされています。
年平均の投資利益率15%以上が必要
本税制では、投資計画における年平均の投資利益率が15%以上となることが見込まれる必要があります。
設備を導入することで、
売上高がどの程度増加するのか
製造原価がどの程度低下するのか
人件費や外注費をどの程度削減できるのか
生産能力がどの程度向上するのか
などを踏まえて、投資効果を定量的に示すことが重要になります。
【図解】税制適用までの基本的な考え方
大規模な設備投資を計画
↓
投資額の要件を確認
35億円以上
(中小企業者等は5億円以上)
↓
年平均投資利益率を計算
↓
15%以上
↓
資金調達方法等を含む
投資計画を作成
↓
公認会計士・税理士の事前確認
↓
経済産業局へ申請したがって、税制適用を前提に設備投資を進めるのであれば、設備を取得した後ではなく、投資計画を策定する初期段階から税務上の要件を確認することが重要です。
公認会計士または税理士による事前確認が必須
大胆な投資促進税制の大きな特徴の一つが、公認会計士または税理士による事前確認です。
少なくとも次の2つの要件については、申請前に公認会計士または税理士による確認を受ける必要があります。
生産性向上設備等の取得価額の合計額が35億円以上であること※中小企業者等は5億円以上
年平均の投資利益率が15%以上であること
確認後、公認会計士または税理士が「事前確認書」を発行し、企業は経済産業局への申請時にこれを提出します。
<公認会計士・税理士の事前確認が入るポイント>
企業
投資計画を作成
│
▼
公認会計士・税理士
投資額・投資利益率等を確認
│
▼
「事前確認書」を発行
│
▼
企業
経済産業局へ申請そのため、本税制の利用を検討する企業は、申請直前になって専門家へ相談するのではなく、投資計画策定の早い段階から公認会計士・税理士と連携することが重要と考えられます。
原則は2025年12月26日以後の意思決定が対象
投資計画には、取締役会等の適切な機関による意思決定が必要です。
その意思決定の時期について、添付資料では、原則として2025年(令和7年)12月26日以後の意思決定が対象になるとされています。
12月26日は、政府の税制改正大綱が閣議決定された日です。
<原則的な取扱い>
2025年12月25日
│
──────┼──────
│
▼
2025年12月26日
│
政府大綱の閣議決定
│
▼
これ以後の取締役会等の意思決定
│
▼
原則として制度の対象これから大型設備投資を検討する企業にとっては、取締役会決議等の日付も重要な確認事項となります。
2025年12月25日以前の意思決定でも適用できる場合がある
一方、2025年12月25日以前にすでに取締役会等で設備投資を決定していた場合でも、直ちに本税制の対象外になるわけではありません。
国内投資を後押しする観点から、一定の要件をすべて満たす場合には、例外的に適用対象となります。
<例外適用の4つの要件>
要件 | 内容 |
A | 2025年12月26日を起点として5年以内に従来の投資計画を変更する意思決定を行う |
B | 変更後の対象設備の取得価額合計が、変更前の1.5倍以上 |
C | 変更後の年平均投資利益率が、変更前を上回る見込み |
D | 変更前と変更後の投資目的が同一 |
E※ | 同種設備の場合、質的・構造的な向上があり、その向上が投資利益率向上に寄与する |
特に重要なのが、単に従来の投資計画をそのまま実行するだけでは足りない点です。
設備投資額を大幅に増やし、投資利益率も改善させるなど、従来計画を実質的に拡充する必要があります。
【図解】2025年12月25日以前の投資計画はどうなる?
2025年12月25日以前に
すでに設備投資を決定
↓
通常なら原則対象外
↓
ただし投資計画を変更
↓
設備取得価額を
変更前の1.5倍以上へ
+
投資利益率も改善
+
投資目的は同一
↓
一定の要件をすべて満たせば
例外的に税制対象となる可能性
すでに大型設備投資を決定している企業にとっては、非常に重要な経過的取扱いです。
申請から税額控除・即時償却までの流れ
申請手続のフローを実務向けに整理すると、次の流れになります。
<STEP1 投資計画を作成する>
まず、一定の要件を満たす投資計画を作成します。
対象設備、取得価額、投資利益率、資金調達方法、取締役会等による意思決定などを整理します。
<STEP2 公認会計士・税理士の事前確認>
公認会計士または税理士に投資計画の内容を確認してもらい、「事前確認書」の発行を受けます。
<STEP3 経済産業局へ申請>
企業自身が、所在地を管轄する経済産業局に「確認申請書」を提出します。
添付資料によれば、申請はGビズフォームから行います。
<STEP4 経済産業局から確認書を取得>
申請後、概ね1か月を目安として審査が行なわれ、要件を満たせば所轄の経済産業局から「確認書」が発行されます。
申請時には、取締役会等による意思決定を確認できる書類や、資金調達方法の内訳なども必要です。
<STEP5 5年以内に対象設備を取得・事業供用>
確認を受けた日から5年以内に、投資計画に基づいて対象設備を取得等し、事業の用に供します。
<STEP6 事後照合を申請>
設備を事業供用した後、投資計画どおりに設備が導入されたことについて確認を受けるため、改めて経済産業局へGビズフォームから事後照合を申請します。
<STEP7 確定申告で税制を適用>
必要な証明書等がそろった後、対象設備を事業供用した事業年度の法人税申告において、税額控除または即時償却を適用します。
【図解】大胆な投資促進税制の手続
① 投資計画を作成
↓
② 公認会計士・税理士
による事前確認
↓
③ 経済産業局へ
確認申請
↓
④ 経済産業局から
「確認書」を取得
↓
⑤ 5年以内に
設備を取得・事業供用
↓
⑥ 事後照合を申請し
「証明書」を取得
↓
⑦ 法人税の確定申告
↓
税額控除 または 即時償却ポイントは、設備を取得して確定申告するだけでは制度を利用できないことです。
投資前から事前確認と経済産業局への申請を組み込んだスケジュール管理が必要です。
税額控除と即時償却は設備ごとに選べる
本税制では、税額控除と即時償却を投資計画全体で一律に選択する必要はありません。
対象資産ごとに税額控除または即時償却を選択できるとされています。
例えば、工場を新設し、同時に機械装置とソフトウェアを導入するケースを考えます。
対象設備 | 選択例 |
工場建物 | 即時償却 |
機械装置 | 7%税額控除 |
ソフトウェア | 即時償却 |
このように、会社の利益状況や法人税額、将来の収益予測などを踏まえ、設備ごとに最適な方法を選択できます。
税額控除と即時償却はどちらを選ぶべきか
制度上、どちらが有利かは企業の状況によって異なります。
<税額控除が有力になりやすいケース>
例えば、
十分な課税所得がある
法人税額が多い
直接的に法人税負担を減らしたい
将来の所得も安定している
といった会社では、税額控除が選択肢になり得ます。
一方、税額控除には法人税額の20%という上限があります。
<即時償却が有力になりやすいケース>
例えば、
設備投資額が大きい
投資初年度の所得を圧縮したい
キャッシュ・フローを早期に改善したい
といった場合には、即時償却を検討する余地があります。
ただし、即時償却は減価償却費を前倒しする制度です。
将来計上する予定だった減価償却費を初年度に計上するため、長期的な税負担総額と資金繰りへの影響をシミュレーションしたうえで選択することが重要です。
子会社が設備を導入する場合は「子会社」が申請する
グループ会社で設備投資を行う場合にも注意が必要です。
申請手続を行なうのは、グループの親会社ではなく、実際に対象設備を取得等する会社です。
子会社が設備を導入する場合、子会社自身が申請主体となり、子会社の所在地を管轄する経済産業局に申請するとされています。
<グループ企業の場合>
親会社
│
└─設備を取得しない
→ 原則として申請主体ではない
子会社
│
└─対象設備を取得・事業供用
↓
子会社が申請
↓
子会社所在地を管轄する
経済産業局へ提出大規模な設備投資をグループ単位で計画している会社では、どの法人が設備を取得するかについても、早期に整理しておく必要があります。
企業が早めに準備しておきたいこと
大胆な投資促進税制は、適用できれば大きな税務メリットが期待できます。
一方、事前の投資計画作成や専門家確認、経済産業局への申請などが必要であり、通常の設備投資税制と比べても準備事項が多い制度です。
特に次の事項を早期に確認することが重要です。
確認事項 | 主な内容 |
投資額 | 35億円以上か。中小企業者等は5億円以上か |
投資利益率 | 年平均15%以上となるか |
意思決定日 | 原則2025年12月26日以後か |
過去の投資計画 | 12月25日以前の場合、例外要件を満たせるか |
資金調達 | 投資計画に具体的に記載できるか |
専門家 | 公認会計士・税理士の事前確認を依頼できるか |
申請スケジュール | 設備取得前に必要な手続を完了できるか |
取得主体 | グループ内のどの法人が設備を取得するか |
優遇措置 | 税額控除と即時償却のどちらを選ぶか |
特に大型設備投資では、経営企画部門、財務部門、税務部門、設備投資を担当する事業部門などが連携して進める必要があります。
まとめ
令和8年度税制改正で創設された「特定生産性向上設備等投資促進税制(大胆な投資促進税制)」では、一定の大規模設備投資について、7%の税額控除(建物等は4%)または即時償却を選択できます。
主なポイントは次のとおりです。
原則として設備投資額35億円以上
中小企業者等は5億円以上
年平均投資利益率15%以上が必要
資金調達手段を投資計画に記載
取締役会等による意思決定が必要
原則2025年12月26日以後の意思決定が対象
12月25日以前の意思決定でも一定の例外要件を満たせば対象になり得る
投資額と投資利益率について公認会計士または税理士の事前確認が必要
経済産業局への事前申請と、事業供用後の事後照合が必要
確認後5年以内に対象設備を取得等する
税額控除と即時償却は対象設備ごとに選択可能
子会社が設備を取得する場合は子会社自身が申請する
税制上のメリットが大きい一方、取締役会での意思決定、投資計画、公認会計士・税理士による事前確認、経済産業局への申請、設備取得、事後照合、確定申告という一連の手続を適切な順序で進めることが重要です。
特に、すでに大型設備投資を検討・決定している企業は、2025年12月26日前後の意思決定時期を確認するとともに、過去の計画が例外要件を満たし得るか早めに確認することが望まれます。
なお、経済産業省は今後、特設サイトの更新やQ&Aの公表も検討しています。
神戸での起業や開業に関するご相談、確定申告にお困りの方、顧問税理士をお探しの方は安田亮公認会計士・税理士事務所までお問い合わせください!
【この記事の執筆者】
安田 亮(公認会計士・税理士)
安田亮公認会計士・税理士事務所 代表
京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。
現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。
事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。






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