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大胆な投資促進税制は計画確認前に設備を発注しても大丈夫?「発注」と「取得」の違いを解説

執筆者の写真: 安田亮
安田亮
23 時間前
読了時間: 9分

おはようございます!代表の安田です。


令和8年度税制改正で創設された「特定生産性向上設備等投資促進税制」、いわゆる大胆な投資促進税制では、投資計画について所定の確認を受ける前に設備を取得してしまうと、その設備は税制の対象外となります。


一方で、投資計画の確認前に設備の契約を締結し、発注しておくこと自体は問題ないとされています。


ここで重要なのが、「設備を発注した日」と「設備を取得した日」は必ずしも同じではないという点です。


例えば、納期が長い大型設備について、経営計画上のスケジュールを優先して先に注文しておき、その後に投資計画の確認を受け、確認後に設備の引渡しを受けるケースがあります。


この場合、契約締結・発注だけでは設備を取得したことにはならないため、所定の要件を満たせば大胆な投資促進税制を適用できるとされています。


本日は、計画確認前の設備発注が認められる理由、「発注」と「取得」の違い、企業が設備投資のスケジュールを管理する際の注意点について、公認会計士が解説します。


大胆な投資促進税制とは

大胆な投資促進税制の正式名称は「特定生産性向上設備等投資促進税制」です。


青色申告法人が一定の要件を満たす投資計画に基づいて対象設備を取得等した場合に、税額控除等の税制優遇を受けられる制度です。


要件の一例として投資下限額35億円以上が挙げられています。

また、この制度における「取得等」には、単純な設備購入だけでなく、

  • 取得

  • 製作

  • 建設

  • 建物について一定の改修工事による取得・建設

なども含まれます。


大型の機械装置や工場、建物などへの投資を行う企業にとって、重要な設備投資税制の一つです。


計画確認前の「先行取得」は対象外

この制度で特に注意したいのが、設備を取得するタイミングです。

投資計画の確認を受ける前に対象設備を先行取得した場合、その設備については税制の対象外となります。


したがって、基本的には次の順序を守る必要があります。

順序

手続

1

投資計画を作成

2

投資計画の確認を受ける

3

対象設備を取得

4

対象設備を事業の用に供する

5

税制適用

問題となるのは、製造設備などでは発注から納品まで長期間を要することがある点です。

「計画確認が終わるまで発注そのものもできない」となると、設備投資のスケジュールに大きな影響が出ます。


しかし、今回の資料では、発注と取得は区別して考えることが示されています。


計画確認前の「発注」は問題ない

結論として、大胆な投資促進税制では、計画確認前に契約を締結して設備を発注すること自体は問題ありません。


重要なのは、計画確認前に「取得」まで完了していないことです。

整理すると次のとおりです。

行為

投資計画の確認前に行なった場合

見積りを取得

問題となる旨の記載なし

契約を締結

可能

設備を発注

可能

設備の引渡しを受ける

取得に当たる可能性があり注意

設備を取得

税制対象外

確認後に設備の引渡しを受ける

適用可能となり得る

つまり、「注文したか」ではなく、「いつ設備を取得したか」が重要になります。


なぜ発注しても「取得」にならないのか

固定資産の取得時期について、個別事情にもよるものの、一般的には、固定資産の引渡しを受けるなど、所有権が移転した日とされています。


そのため、

設備の売買契約を締結
        ↓
設備をメーカーへ発注
        ↓
まだ設備の引渡しを受けていない
        ↓
通常、発注しただけでは「取得」したことにはならない

という整理になります。契約締結日や注文日と、税務上の取得日は必ずしも一致しません。


具体例|確認前に発注、確認後に納品された場合

例えば、次のようなケースを考えてみます。


ある青色申告法人が、大型製造設備を導入することになりました。

設備の納期を考えると、投資計画の確認を待ってから注文すると、中期経営計画で予定している工場稼働日に間に合いません。


そこで、次のスケジュールで手続を行ないました。

時期

内容

2026年10月

設備の売買契約を締結・発注

2026年12月

投資計画の確認を取得

2027年3月

設備の引渡しを受ける

2027年4月

設備を事業供用

この場合、契約締結と発注は計画確認前ですが、設備の引渡しは計画確認後です。

資料では、このように計画確認後に発注済み設備の引渡しを受け、事業供用する場合には、税制の適用を受けることが可能とされています。


逆に適用できないケース

一方、次のような場合には注意が必要です。

時期

内容

2026年10月

設備を発注

2026年11月

設備の引渡しを受ける

2026年12月

投資計画の確認

この場合、計画確認を受ける前に設備を取得しています。

したがって、その設備は大胆な投資促進税制の対象外となります。


<2つのケースを比較>


ケースA

ケースB

発注

確認前

確認前

計画確認

引渡し前

引渡し後

設備引渡し

確認後

確認前

税制適用

○となり得る

×

発注日が同じでも、引渡しと計画確認の前後関係によって結論が変わるのがポイントです。


大型設備ほどこのルールは重要

大胆な投資促進税制は大規模投資を対象とするため、対象設備には納期の長いものも想定されます。


例えば、

  • 大型製造装置

  • 半導体製造設備

  • 工作機械

  • 生産ライン

  • 工場設備

  • 建物・建物附属設備

などでは、契約から完成・納品まで数カ月から数年かかるケースもあります。


税制の申請が終わるまで設備発注を止めると、会社の投資計画自体に支障が出る可能性があります。


今回示された取扱いにより、契約・発注は先行して進めつつ、設備取得は投資計画確認後とするというスケジュールを組めることになります。


「契約日」だけで取得判定をしないことが重要

経理・税務担当者が注意したいのは、設備契約の締結日だけを見て税制適用可否を判断しないことです。固定資産の取得は個々の事情にもよるとされています。


そのため実務では、少なくとも次の情報を確認しておくことが重要でしょう。

確認項目

内容

契約締結日

いつ売買契約を結んだか

発注日

いつ正式発注したか

納品日

いつ設備が納品されたか

引渡日

いつ引渡しを受けたか

所有権移転条件

契約上いつ所有権が移るか

検収日

検収条件がどうなっているか

事業供用日

いつ実際に事業で使用開始したか

計画確認日

いつ投資計画の確認を受けたか

特に契約によって所有権移転の条件が特殊な場合には、一般論だけで取得日を判断しないことが重要です。


経理部門は購買・設備部門と早めに連携を

設備投資税制でありがちな問題の一つが、設備部門が発注・納入まで進めた後で、経理部門が税制の存在を知るというケースです。


大胆な投資促進税制では、計画確認前に取得してしまうと、その設備は対象外です。

そのため大型投資を検討する段階から、

  • 経営企画

  • 設備・生産部門

  • 購買部門

  • 財務部門

  • 経理・税務部門

で情報共有しておくことが重要です。


<社内の理想的な流れ>

段階

対応

設備投資を検討

税制適用可能性を確認

稟議・取締役会

税制スケジュールも共有

契約・発注

取得時期を確認

投資計画確認

設備引渡し前に完了

納品・引渡し

確認後に実施

事業供用

記録を保存

税務申告

税制を適用


「発注したからもう間に合わない」と諦める必要はない

実務上、今回特に重要なのはこの点でしょう。

税制の利用を検討する前に設備をすでに発注していたとしても、それだけを理由に大胆な投資促進税制を利用できなくなるわけではありません。


設備がまだ引き渡されておらず、投資計画確認後に取得するのであれば、適用できる可能性があります。したがって、「もうメーカーに発注してしまったから対象外だろう」と即断するのではなく、「実際の設備取得日がいつになるのか」を確認することが重要です。


企業が確認しておきたいチェックリスト

確認項目

チェック

大胆な投資促進税制の対象となり得る設備か確認した

□

投資計画の確認時期を把握している

□

設備の契約締結日を把握している

□

設備の発注日を把握している

□

引渡予定日を確認している

□

所有権移転条件を契約書で確認した

□

計画確認前に設備を取得しないスケジュールになっている

□

購買部門と税務部門でスケジュールを共有している

□

引渡日・検収日等の証拠を保存する体制がある

□

個別事情がある場合は取得日の判定を検討した

□


まとめ

大胆な投資促進税制では、投資計画の確認前に取得した設備は税制の対象外となります。

しかし、計画確認前に設備の契約を締結し、発注しておくことは問題ありません。


今回のポイントは次のとおりです。

  • 計画確認前の設備取得は対象外

  • 計画確認前の契約締結は可能

  • 計画確認前の設備発注も可能

  • 発注しただけでは通常、固定資産を取得したことにはならない

  • 固定資産の取得は一般に引渡しや所有権移転の時点で判断する

  • 確認前に発注していても、確認後に引渡しを受ければ適用可能となり得る

  • 設備の納期を優先して発注を先行させることも可能

  • 個々の契約条件によって取得日の判定が異なる場合があるため注意が必要


大型設備では発注から納入まで長期間を要するため、「税制申請が終わるまで発注できない」と考える必要はありません。


一方で、発注した設備が予定より早く納品され、投資計画確認前に取得してしまえば税制適用に影響します。


そのため、設備投資を進める企業では、契約締結日や発注日だけでなく、引渡日・所有権移転日と投資計画確認日の前後関係を管理することが重要です。



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【この記事の執筆者】

安田 亮(公認会計士・税理士)

安田亮公認会計士・税理士事務所 代表

京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。

現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。

事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。


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