グループ法人税制の「寄附修正」とは?100%グループ内寄附と子会社株式の簿価調整を解説
こんばんは!代表の安田です。
企業グループ内では、親会社・子会社間や兄弟会社間でさまざまな取引が行なわれます。
通常の事業取引として処理していたものでも、税務調査などで、「取引価格の一部が実質的に寄附金に当たるのではないか」と判断されるケースがあります。
このとき、法人による完全支配関係がある国内法人間の寄附であれば、グループ法人税制により、
寄附をした法人:寄附金を全額損金不算入
寄附を受けた法人:受贈益を全額益金不算入
とされ、グループ全体では基本的に課税関係が生じない仕組みになっています。
しかし、ここで処理を終えてはいけません。
その法人の株主である親会社では、保有する子会社株式の税務上の帳簿価額について、いわゆる「寄附修正」を行なう必要があります。
本日は、グループ法人税制における寄附金の取扱いと、見落としやすい寄附修正について税理士が解説します。
グループ法人税制とは?
グループ法人税制は、完全支配関係がある法人間の一定の取引について、グループ全体で不必要な課税が生じないよう調整する仕組みです。
今回のテーマである寄附金についても特別な取扱いがあります。
<完全支配関係にある国内法人間の寄附>
法人 | 税務処理 |
寄附をした法人 | 寄附金の全額を損金不算入 |
寄附を受けた法人 | 受贈益の全額を益金不算入 |
グループ全体 | 基本的に寄附そのものによる課税関係を生じさせない |
法人税法25条の2、37条2項により、このような調整が行なわれます。
例えば、グループ会社A社がグループ会社B社へ経済的利益を無償で供与し、その利益が税務上の寄附金に該当したとしても、一定の完全支配関係があれば、「A社では損金にしない+B社でも益金にしない」という形になります。
税務調査で寄附金と認定された場合も対象
グループ内取引では、当初から「寄附金」として処理しているとは限りません。
例えば、
資産の売買
業務委託
経営指導料
その他の関連者間取引
について、税務調査で取引対価の妥当性が問題になることがあります。
契約書や領収書などに記載された対価の明細や計算方法等をもとに、関連者間取引について寄附金課税を受けたケースも想定されています。
この場合でも、完全支配関係にある内国法人間の寄附としてグループ法人税制の対象になるのであれば、寄附法人・受贈法人間では前述の調整が行なわれます。
しかし、それとは別に確認しなければならないのが親会社の寄附修正です。
寄附修正とは?
寄附修正とは、グループ法人税制の対象となる寄附金が発生した場合に、親会社が保有する子会社株式について、税務上の帳簿価額を調整する仕組みです。
寄附をした法人や寄附を受けた法人の株主である親会社について、法人税法施行令9条1項7号により子会社株式の帳簿価額を修正する必要があるとされています。
<全体像>
例えば、親会社P社がA社とB社を保有しているケースを考えてみます。
A社とB社の間で税務上の寄附取引が生じた場合、
会社 | 主な税務処理 |
A社 | 寄附金についてグループ法人税制を適用 |
B社 | 受贈益についてグループ法人税制を適用 |
P社 | 保有する子会社株式について寄附修正の要否を確認 |
重要なのは、P社自身がA社・B社間の寄附取引の当事者ではなくても処理が必要になる点です。
なぜ子会社株式の帳簿価額を修正するのか?
グループ法人税制では、寄附をする会社と寄附を受ける会社の間では課税関係を生じさせない仕組みになっています。
しかし、この仕組みだけでは、グループ内で経済的価値を移転したうえで、その後の株式取引等を通じて税負担を不当に軽減する余地が生じる可能性があります。
そこで、親会社側で子会社株式の税務上の帳簿価額を調整します。
寄附修正は、グループ内で課税を生じさせない仕組みを利用して株式価値を移転するなどの租税回避行為を防止するためと説明されています。
最も注意したいのは「親会社での処理漏れ」
実務上特に問題になりやすいのが、親会社側での処理漏れです。
寄附取引そのものは子会社同士で行なわれているため、
A社では寄附金を処理したB社では受贈益を処理したこれで税務処理は終了
と考えてしまう可能性があります。
しかし親会社では、子会社株式の税務上の帳簿価額について別途確認が必要です。
親会社自身は寄附行為の当事者ではないため、寄附修正が漏れやすい言えます。
グループ会社間取引を親会社にも共有する
寄附修正漏れを防ぐためには、個々の子会社だけで税務処理を完結させないことが重要です。
特に、
税務調査で寄附金認定を受けた
グループ内で無償取引を行った
通常より有利・不利な条件でグループ内取引を行った
関連者間取引について税務修正を行った
場合には、親会社やグループ税務担当者にも情報を共有した方がよいでしょう。
<管理イメージ>
ステップ | 確認内容 |
1 | グループ内取引を把握 |
2 | 寄附金に該当する取引がないか確認 |
3 | 寄附法人・受贈法人の税務処理を確認 |
4 | 親会社へ寄附取引を共有 |
5 | 子会社株式の寄附修正を確認 |
6 | 将来の株式譲渡等に備え税務簿価を管理 |
グループ全体で寄附取引を共有し、寄附修正の要否や適切な簿価修正を行なう管理体制を整備することが重要と言えます。
通算法人は寄附修正の対象外
寄附修正についてもう一つ注意したいのが、グループ通算制度との関係です。
通算法人については寄附修正の対象から除かれるとされています。
したがって、
完全支配関係にある法人間の寄附なら必ず親会社で寄附修正
と一律に判断するのではなく、通算法人に該当するかどうかも含めて適用関係を確認する必要があります。
<整理>
法人 | 寄附修正 |
通算法人以外 | 要否を確認 |
通算法人 | 対象外 |
具体的なグループ通算制度との調整については今回の添付資料では詳細まで示されていないため、実際の適用では個別確認が必要です。
子会社株式を売却するときにも影響する
寄附修正は、単なる申告書上の調整ではありません。
寄附修正を行なうと、親会社が保有する子会社株式の税務上の帳簿価額そのものが変動する可能性があります。
その後、その子会社株式を譲渡すれば、譲渡損益の計算にも影響します。
寄附修正の結果、税務上の子会社株式の帳簿価額が大きく変動し、その株式を低額で譲渡した場合でも課税関係が生じることがあるとされています。
「会計上の簿価」だけを見ない
実務では子会社株式について、
会計上の帳簿価額
税務上の帳簿価額
が一致しているとは限りません。
寄附修正が行なわれれば、その差が生じる可能性があります。
そのため、将来、
子会社株式をグループ外へ売却する
組織再編を行なう
子会社を清算する
などの場合には、過去の寄附修正を含めて税務簿価を確認することが重要です。
具体例|兄弟会社間の取引が寄附金と認定された場合
例えば、次のようなグループを考えます。
P社:親会社
A社:P社の子会社
B社:P社の子会社
A社とB社の関連者間取引について、税務調査で取引条件が問題となり、一部が税務上の寄附と認定されたとします。
この場合、完全支配関係にある内国法人間の寄附としてグループ法人税制が適用されるのであれば、
<A社・B社>
寄附金・受贈益について、グループ法人税制の処理を行います。
<P社>
A社・B社で処理が完了したからといって終了ではありません。
保有する子会社株式について寄附修正の要否を確認する必要があります。
このように、税務調査の対象となっていない親会社にまで処理が波及する可能性がある点が、この制度の実務上の注意点です。

令和8年度税制改正との関係
令和8年度税制改正で関連者間取引に係る書類保存の特例が創設されたことを受け、グループ法人税制における寄附金制度も改めて注目されているとされています。
ただし、この書類保存特例そのものの具体的な適用要件や保存書類の内容までは説明されていません。
グループ会社の税務担当者向けチェック項目
完全支配関係にある法人間の取引か
グループ内に寄附金認定された取引がないか
寄附法人で損金不算入処理を確認したか
受贈法人で益金不算入処理を確認したか
親会社へ取引内容を共有したか
親会社で寄附修正の要否を確認したか
通算法人に該当しないか確認したか
子会社株式の税務簿価を更新したか
将来の株式譲渡への影響を確認したか
よくある疑問
Q. 100%グループ内の寄附金は損金になりますか?
A. 完全支配関係にある内国法人間の寄附について、寄附をした法人では全額損金不算入となります。一方、寄附を受けた法人の受贈益は全額益金不算入となります。
Q. グループ全体で税金が発生しないなら、それで処理は終了ですか?
A. 必ずしもそうではありません。親会社では、保有する子会社株式の税務上の帳簿価額について寄附修正が必要になる場合があります。
Q. なぜ寄附修正を忘れやすいのですか?
A. 親会社自身が寄附行為の当事者ではないため、子会社株式の帳簿価額の修正が漏れやすいためです。
Q. 通算法人も寄附修正が必要ですか?
A. 通算法人は寄附修正の対象から除かれています。
Q. 寄附修正は将来の子会社株式売却にも影響しますか?
A. 影響する可能性があります。寄附修正によって税務上の帳簿価額が大きく変われば、その後の子会社株式の譲渡時の課税関係にも影響します。
まとめ
完全支配関係にある内国法人間で寄附金の授受があった場合、グループ法人税制により、
寄附法人:全額損金不算入
受贈法人:全額益金不算入
となり、グループ全体として寄附取引そのものに課税関係を生じさせない仕組みになっています。
しかし、ここで税務処理は終わりません。
その法人の株主である親会社では、子会社株式の税務上の帳簿価額を調整する「寄附修正」が必要になる場合があります。
特に注意したいのは、
親会社自身は寄附取引の当事者ではない
そのため寄附修正が漏れやすい
税務調査で後から寄附金認定された取引でも確認が必要
通算法人は寄附修正の対象外
寄附修正後の税務簿価は将来の株式譲渡にも影響する
という点です。
グループ会社が多い企業では、各法人が個別に税務処理を行うだけでなく、グループ内で発生した寄附取引を親会社へ共有し、子会社株式の税務簿価まで一元的に管理する仕組みを整えておくことが重要です。
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【この記事の執筆者】
安田 亮(公認会計士・税理士)
安田亮公認会計士・税理士事務所 代表
京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。
現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。
事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。






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