新リース基準で消費税の仕入税額控除はどうなる?ファイナンス・リースの「リース期間」の違いを解説
おはようございます!代表の安田です。
新リース会計基準では、借手のリース期間について、単純な契約上の解約不能期間だけではなく、一定の延長オプションや解約オプションの期間も考慮して決定します。
法人税についても、新リース会計基準を適用する法人では、リース資産の償却限度額を計算する際の「リース期間」について、会計上の借手のリース期間と一致する取扱いが認められています。
しかし、消費税のファイナンス・リース取引に係る仕入税額控除は、この会計上の「借手のリース期間」をそのまま使うわけではありません。
消費税では、契約で定められた「賃貸借期間」中のリース料総額を資産の譲渡の対価として、原則としてリース開始時に一括して仕入税額控除を行います。
そのため、新リース基準適用後は、
会計
法人税
消費税
で「リース期間」の考え方が一致しないケースが生じます。
本日は、ファイナンス・リース取引について、新リース会計基準、法人税、消費税それぞれのリース期間と仕入税額控除の違いを解説します。
新リース会計基準の「借手のリース期間」とは
新リース会計基準では、借手のリース期間を、原資産を使用する権利を持つ解約不能期間だけで決定するわけではありません。
一定の場合には、次の期間も加えて判断します。
借手が行使することが合理的に確実な延長オプションの対象期間
借手が行使しないことが合理的に確実な解約オプションの対象期間
<イメージ>
例えば契約上、
解約不能期間:2年
その後2年間の延長オプションあり
借手が延長することが合理的に確実
という場合、新リース会計基準上の「借手のリース期間」は4年となることがあります。
つまり、「契約上の賃貸借期間=会計上のリース期間」とは限らなくなります。
使用権資産の計上額にも借手のリース期間が影響
新リース会計基準では、借手は原則として使用権資産とリース負債を計上します。
使用権資産の計上額について、リース負債を基礎として、
資産除去債務に対応する除去費用等を加算
リース・インセンティブを控除
するなどして算定します。
そして、リース負債の計算対象となる借手のリース料は、会計上の「借手のリース期間」に対応します。
したがって、延長オプションの期間が借手のリース期間に含まれれば、その期間分のリース料も会計上の使用権資産等へ影響します。
法人税では会計上のリース期間を使える
法人税では、所有権移転外リース取引のリース資産について、リース期間定額法により償却限度額を計算します。
法令上、リース期間はリース資産の「賃貸借期間」とされています。
ただし、新リース会計基準を適用する法人については、会計上採用した「借手のリース期間」を法人税上のリース期間とすることも認められるとされています。
<会計と法人税>
項目 | 新リース会計基準 | 法人税 |
リース期間 | 解約不能期間+一定のオプション期間 | 会計上の借手のリース期間を使用可能 |
資産 | 使用権資産 | リース資産 |
償却 | 会計上の償却 | リース期間定額法による償却限度額 |
取得価額 | 使用権資産の計上額 | 基本的に会計処理を踏襲 |
ここまでは、会計と法人税の考え方が比較的近くなっています。
消費税では「会計上のリース期間」を使わない
一方、消費税は考え方が異なります。
ファイナンス・リース取引については、リースの目的となる資産の引渡し時に資産の譲渡があったものとして取り扱うのが基本です。
そして、その資産の譲渡の対価となるのは、「契約上定められた賃貸借期間中に収受すべきリース料の合計額」です。
したがって、消費税では、「会計上の借手のリース期間が4年だから、4年間分のリース料を基礎に仕入税額控除する」とは限りません。
契約上の賃貸借期間が2年であれば、原則として2年間分のリース料総額を基礎とします。
ファイナンス・リースの仕入税額控除は原則「一括」
消費税では、ファイナンス・リース取引について、原則としてリース開始時にリース料総額に係る消費税を一括して仕入税額控除します。
<基本的な流れ>
リース資産の引渡しを受ける
資産の譲渡があったものとして扱う
契約上の賃貸借期間中のリース料総額を算定
その金額に係る消費税について仕入税額控除
なお、少額リース・短期リースなどで賃貸借処理をしている場合には、分割控除が可能なケースもあります。
会計・法人税・消費税の違いを整理
今回の論点を整理すると、次のようになります。
項目 | 会計 | 法人税 | 消費税 |
基準となる期間 | 借手のリース期間 | 会計上の借手のリース期間を使用可能 | 契約上の賃貸借期間 |
延長オプション | 一定の場合含む | 会計処理を踏襲可能 | 原則、契約上の賃貸借期間で判断 |
資産価額等 | 使用権資産 | リース資産の取得価額 | 資産の譲渡の対価 |
税務処理 | ― | 減価償却 | 原則一括仕入税額控除 |
新リース基準適用後は、法人税と消費税で同じ「リース期間」という言葉を使っていても、その中身が異なることに注意が必要です。
具体例|契約2年、会計上は4年の場合
具体例で考えてみましょう。次の機械装置をリースしたとします。
項目 | 内容 |
契約上の賃貸借期間 | 2年 |
2年間のリース料総額 | 2,400万円 |
新リース基準上の借手のリース期間 | 4年 |
借手のリース料・使用権資産の計上額 | 4,800万円 |
税務区分 | 所有権移転外リース取引 |
ここで、会計・法人税・消費税の処理が分かれます。
法人税は「4年・4,800万円」
法人税では、新リース会計基準の取扱いを踏まえて、
リース期間:4年
取得価額:4,800万円
のリース資産として、リース期間定額法によって償却限度額を計算します。
消費税は「2年・2,400万円」
一方、消費税では、
賃貸借期間:2年
リース料総額:2,400万円
を資産の譲渡の対価として、原則として一括仕入税額控除を行ないます。
<比較>
項目 | 法人税 | 消費税 |
リース期間 | 4年 | 2年 |
基礎となる金額 | 4,800万円 | 2,400万円 |
主な処理 | 減価償却 | 一括仕入税額控除 |
この違いが今回の最大のポイントです。
延長オプション分まで仕入税額控除しない
この具体例では、会計上は延長オプションを含めた4年間分のリース料4,800万円が使用権資産等の計算に反映されています。
しかし消費税では、契約上の賃貸借期間2年間に対応する2,400万円が資産の譲渡対価です。
したがって、会計上4,800万円の使用権資産を計上したからといって、4,800万円を基礎に消費税の仕入税額控除を行なうことはできないという整理になります。
なぜ消費税だけ違うのか
理由は、それぞれの制度で何を基準にしているかが異なるためです。
<会計>
企業が実際に原資産を使用すると見込まれる期間を重視します。
<法人税>
新リース会計基準との整合性も踏まえ、一定の場合に会計上のリース期間を利用できます。
<消費税>
ファイナンス・リース取引について、資産の引渡し時に資産の譲渡があったものとして捉え、契約上の賃貸借期間のリース料総額を対価とします。
そのため、同じ契約でも税目によって基礎となる期間・金額が異なる場合があります。
新リース基準対応では税区分を別管理したい
新リース基準への対応では、リース管理システムを導入し、
契約開始日
解約不能期間
延長オプション
会計上の借手のリース期間
リース負債
使用権資産
などを管理する企業が増えるでしょう。
しかし消費税申告のためには、これとは別に、契約上の賃貸借期間と、その期間に対応するリース料総額を把握できる必要があります。
<リース台帳に持たせたい情報>
管理項目 | 主な用途 |
契約上の賃貸借期間 | 消費税 |
解約不能期間 | 会計 |
延長オプション | 会計・法人税 |
会計上の借手のリース期間 | 会計・法人税 |
賃貸借期間中のリース料総額 | 消費税 |
使用権資産計上額 | 会計 |
税務上の取得価額 | 法人税 |
仕入税額控除額 | 消費税 |
「会計システムの使用権資産残高だけを見れば税務処理もできる」という運用には注意が必要です。
消費税申告で間違いやすいポイント
1.使用権資産の金額をそのまま課税仕入れにする
新リース基準上の使用権資産には、消費税上の資産の譲渡対価と一致しない金額が含まれる可能性があります。
消費税では契約上の賃貸借期間を確認します。
2.会計上のリース期間を消費税でも使う
延長オプション等を含めて会計上4年となっていても、消費税の基礎となる賃貸借期間が2年ということがあります。
3.法人税と消費税を同じ調整表で処理する
法人税では会計上の借手のリース期間を使える一方、消費税では別の考え方になります。
税目ごとに区分した管理が必要です。
経理担当者向けチェックリスト
チェック項目 | 確認内容 |
リース区分 | ファイナンス・リース取引か |
賃貸借期間 | 契約書で確認したか |
会計リース期間 | 延長・解約オプションを反映しているか |
法人税 | 使用するリース期間を確認したか |
リース料総額 | 契約期間分を確認したか |
消費税 | 賃貸借期間ベースで計算したか |
一括控除 | 原則処理を確認したか |
分割控除 | 少額・短期等の例外を確認したか |
システム | 会計と消費税の期間を別々に保持できるか |
新リース基準対応で「税務まで一緒」と考えない
新リース会計基準への対応では、使用権資産やリース負債の計算が複雑になるため、会計処理の整備が中心になりがちです。
しかし、税務上は会計処理と異なる部分があります。
今回のファイナンス・リース取引に係る消費税は、その典型例です。
会計・法人税では4年、消費税では2年という処理も起こり得ます。
そのため、新リース基準対応プロジェクトでは、会計仕訳だけでなく、
法人税
消費税
外形標準課税
など税務申告への影響も併せて確認することが重要です。
よくある疑問
Q. 新リース基準の「借手のリース期間」で消費税の仕入税額控除を計算できますか?
A. 必ずしもできません。ファイナンス・リース取引の消費税については、新リース会計基準上の借手のリース期間ではなく、契約上の賃貸借期間を基礎にするとされています。
Q. ファイナンス・リースの消費税は毎月控除しますか?
A. 原則として、リース開始時に賃貸借期間中のリース料総額に係る消費税を一括して仕入税額控除します。少額リース・短期リースなどで賃貸借処理している場合には分割控除が認められるケースがあります。
Q. 法人税と消費税でリース期間が違うことがありますか?
A. あります。記載の具体例では、法人税は4年間・4,800万円を基礎とする一方、消費税は契約上の2年間・2,400万円を基礎にしています。
Q. 使用権資産4,800万円なら、消費税も4,800万円が課税仕入れですか?
A. 今回の資料の例ではそうではありません。消費税上は契約上の賃貸借期間2年間のリース料総額2,400万円が資産の譲渡の対価とされています。
まとめ
新リース会計基準では、借手のリース期間について、解約不能期間だけでなく一定の延長・解約オプションの期間を含める場合があります。
法人税についても、新リース基準適用法人では、この会計上の借手のリース期間をリース資産の償却計算に利用できる取扱いがあります。
一方、消費税のファイナンス・リース取引は別です。
消費税では、契約上定められた賃貸借期間中のリース料総額を資産の譲渡の対価として、原則としてリース開始時に一括仕入税額控除します。
したがって、
契約上の賃貸借期間:2年
会計上の借手のリース期間:4年
という場合には、
法人税:4年を基礎消費税:2年を基礎
という違いが生じ得ます。
新リース基準を導入する企業では、会計上のリース期間・使用権資産だけを基礎に税務処理を行わず、消費税申告用に契約上の賃貸借期間とリース料総額を別途管理することが重要です。
神戸での起業や開業に関するご相談、確定申告にお困りの方、顧問税理士をお探しの方は安田亮公認会計士・税理士事務所までお問い合わせください!
【この記事の執筆者】
安田 亮(公認会計士・税理士)
安田亮公認会計士・税理士事務所 代表
京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。
現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。
事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。






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