外国法人が絡む100%グループ内取引は要注意|グループ法人税制の適用関係を税理士が解説
- 安田亮
- 7 時間前
- 読了時間: 11分
こんばんは!代表の安田です。
100%グループ内の会社間で資産を移転する場合、「グループ内の取引だから、譲渡益や譲渡損は繰り延べられる」と考えてしまうことがあります。
たしかに、グループ法人税制では、一定の100%グループ内法人間で譲渡損益調整資産を譲渡した場合、譲渡損益をいったん繰り延べる制度があります。
しかし、ここで注意したいのが、グループ内に外国法人が含まれるケースです。
完全支配関係の判定には外国法人が関係することがありますが、実際に譲渡損益の繰延べの対象となる取引相手は、原則として「内国法人」に限られます。
つまり、100%グループ内であっても、外国法人との直接取引については、譲渡損益の繰延べが使えない場合があります。
本日は、外国法人が絡むグループ法人税制の注意点について、税理士の視点から解説します。
グループ法人税制とは
グループ法人税制とは、完全支配関係がある法人間の取引について、通常の第三者間取引とは異なる税務処理を行なう制度です。
代表的なものに、100%グループ内法人間の資産譲渡取引に係る譲渡損益の繰延べがあります。これは、内国法人が、完全支配関係のある他の内国法人に一定の資産を譲渡した場合、譲渡法人側で発生した譲渡利益額または譲渡損失額を、その時点では益金または損金に算入せず、一定の事由が生じるまで繰り延べる制度です。
国税庁の質疑応答事例でも、100%グループ内の法人間の資産譲渡取引等、いわゆる譲渡損益の繰延べについては、譲渡法人が内国法人、譲受法人が完全支配関係のある他の内国法人であることが示されています。
この制度は、グループ内で資産を移転しただけでは、経済的にはグループ外へ資産が流出していないという考え方に基づくものです。
ただし、適用対象となる法人、取引相手、資産の種類には制限があります。
譲渡損益調整資産とは
グループ法人税制で譲渡損益の繰延べが問題になるのは、「譲渡損益調整資産」に該当する資産を譲渡した場合です。
譲渡損益調整資産には、固定資産、土地、有価証券、金銭債権、繰延資産などが含まれます。
ただし、すべての資産が対象になるわけではありません。
たとえば、一定の帳簿価額に満たない資産など、制度の対象外となるものもあります。
実務では、機械装置、不動産、株式、貸付金などをグループ内で移転する場面で、譲渡損益調整資産に該当するかどうかを確認する必要があります。
また、譲渡損益を繰り延べた後も、それで終わりではありません。
譲受法人側で対象資産を外部へ売却したり、償却・除却・評価換えなど一定の事由が生じたりした場合には、繰り延べていた譲渡損益を戻し入れることになります。国税庁の法人税基本通達でも、譲渡損益調整資産について譲渡利益額や譲渡損失額の調整を行う取扱いが示されています。
外国法人が100%親会社でも完全支配関係の判定には影響する
グループ法人税制でまず確認すべきなのは、完全支配関係があるかどうかです。
完全支配関係とは、一方の法人が他方の法人の発行済株式等の全部を直接または間接に保有している関係などをいいます。
この判定では、外国法人が間に入っている場合でも注意が必要です。
たとえば、外国法人が日本法人A社の株式を100%保有し、同じ外国法人が日本法人B社の株式も100%保有している場合、A社とB社は同じ外国法人に完全支配される兄弟会社の関係になります。
このような場合、A社とB社の間には、完全支配関係があるものとして扱われる可能性があります。「親会社が外国法人だから、日本のグループ法人税制は関係ない」とは限りません。
ここが実務上の落とし穴です。
外国法人を頂点とするグループであっても、日本国内の兄弟会社同士の取引では、グループ法人税制の適用を検討しなければならない場面があります。
ただし、外国法人との直接取引には原則として譲渡損益の繰延べは使えない
一方で、完全支配関係の判定に外国法人が関係することと、外国法人との直接取引に譲渡損益の繰延べが適用されることは別問題です。
譲渡損益の繰延べの対象となる取引は、原則として、完全支配関係のある「内国法人」間の取引です。
国税庁のグループ法人税制の比較資料でも、100%グループ内の法人間の資産の譲渡取引等について、資産の譲渡法人は内国法人、資産の譲受法人は完全支配関係のある他の内国法人とされています。
したがって、日本法人が外国親会社や外国子会社に資産を譲渡する場合には、100%グループ内であっても、譲渡損益の繰延べは適用されないのが原則です。
この場合は、通常どおり時価で譲渡したものとして、譲渡益または譲渡損を認識することになります。
たとえば、日本法人が外国子会社へ機械装置を譲渡する場合、その機械装置について譲渡益が出れば、日本法人側で課税所得が発生する可能性があります。
反対に譲渡損が出る場合でも、時価の妥当性や移転価格税制、寄附金課税など別の論点が生じることがあります。
典型例1:外国法人が親会社、日本法人同士で資産を譲渡するケース
まず、外国法人が100%親会社で、その下に日本法人A社と日本法人B社があるケースを考えます。
外国法人X社が、日本法人A社と日本法人B社の株式をそれぞれ100%保有しているとします。この場合、A社とB社は同じ外国法人に完全支配されているため、A社・B社間には完全支配関係があると考えられます。
そのため、A社がB社に譲渡損益調整資産を譲渡する場合には、グループ法人税制による譲渡損益の繰延べの対象となる可能性があります。
ここで重要なのは、取引当事者がいずれも内国法人である点です。
親会社が外国法人であっても、資産を譲渡する法人と譲り受ける法人がいずれも日本法人であれば、グループ法人税制の適用を検討する必要があります。
典型例2:日本法人が外国法人へ資産を譲渡するケース
次に、日本法人A社が、100%グループ内の外国法人B社へ資産を譲渡するケースです。
この場合、A社とB社には資本関係があるとしても、譲受法人であるB社は内国法人ではありません。そのため、譲渡損益の繰延べの対象にはならないのが原則です。
A社は、B社への譲渡について通常どおり譲渡損益を認識します。
この点を誤ると、「グループ内だから譲渡益は繰延べ」と考えて申告処理をしてしまい、税務調査で指摘を受ける可能性があります。
また、外国法人との取引では、法人税のグループ法人税制だけでなく、移転価格税制や国外関連者寄附金、源泉税、関税、消費税など、別の税務論点も絡みます。
単純に国内グループ会社間の取引と同じ感覚で処理しないことが重要です。
典型例3:外国法人から日本法人へ資産を譲渡するケース
外国法人から日本法人へ資産を譲渡するケースもあります。
たとえば、外国親会社が保有する機械装置や知的財産を、日本子会社へ譲渡する場合です。
この場合も、譲渡法人が内国法人ではないため、日本のグループ法人税制における譲渡損益の繰延べの対象にはなりません。
ただし、日本法人側では取得価額の妥当性を確認する必要があります。
時価より高い価額で資産を取得していないか
時価より低い価額で資産を取得していないか
国外関連者との取引として移転価格税制の検討が必要か
無形資産の場合、使用料やロイヤリティとの区分は適切か
消費税や関税の処理はどうなるか
外国法人からの資産取得では、日本法人側の取得価額が将来の減価償却費や譲渡損益に影響します。契約時点で価格算定根拠を残しておくことが大切です。
「100%グループ内=繰延べ」と短絡的に判断しない
外国法人が絡む場合に最も危険なのは、「100%グループ内だから繰延べ」と短絡することです。
グループ法人税制は、制度ごとに適用対象法人や取引相手の範囲が異なります。
受取配当等の益金不算入
寄附金・受贈益の取扱い
譲渡損益調整資産の譲渡損益繰延べ
現物分配
残余財産の分配
これらはすべて同じルールで判定するわけではありません。
国税庁の質疑応答事例でも、グループ法人税制の各制度について、適用対象法人、取引相手の制限、完全支配関係に関する制限が制度ごとに異なることが整理されています。
つまり、ある制度では外国法人が関係しても適用される一方、別の制度では内国法人間に限られるということがあります。
そのため、グループ法人税制を検討するときは、「どの制度を使うのか」を最初に明確にする必要があります。
実務で確認すべきポイント
外国法人が絡む100%グループ内取引では、次の点を確認しましょう。
まず、資本関係図を作成します。
直接保有だけでなく、間接保有も含めて、どの法人がどの法人を何%保有しているかを整理します。
次に、取引当事者が内国法人か外国法人かを確認します。
譲渡法人と譲受法人がいずれも内国法人であれば、譲渡損益の繰延べを検討する余地があります。他方、どちらか一方が外国法人であれば、譲渡損益の繰延べは原則として使えません。
さらに、対象資産が譲渡損益調整資産に該当するかを確認します。
資産の種類、帳簿価額、譲渡損益の金額、棚卸資産か固定資産かなどを確認します。
また、譲渡価額が時価であるかも重要です。
特に外国法人との取引では、移転価格税制や寄附金課税の論点が生じやすいため、価格算定資料を残しておく必要があります。
通知義務にも注意
譲渡損益調整資産の譲渡損益繰延べが適用される場合には、譲渡法人と譲受法人の間で通知義務が生じます。
国税庁の質疑応答事例では、譲渡損益調整資産の譲渡損益の繰延制度について、譲渡法人と譲受法人には一定の通知義務があると説明されています。
通知の方法について、法令上特に決められた形式があるわけではありません。
しかし、実務上は、対象資産、譲渡日、譲渡価額、帳簿価額、譲渡損益、戻入事由が生じた場合の連絡方法などを文書で整理しておくべきです。
グループ会社間だからといって、口頭やメールだけで済ませると、将来、譲受法人側で売却や除却があったときに、譲渡法人側で戻入処理を漏らす可能性があります。
特に、外国法人が親会社となるグループでは、日本法人同士の情報共有が親会社経由になることもあります。
国内法人間の取引であっても、制度の適用後に必要な情報が確実に共有される体制を作っておきましょう。
外国法人が絡む場合のチェックリスト
外国法人を含むグループ内取引では、少なくとも次の項目を確認しましょう。
グループ全体の資本関係図
直接保有割合
間接保有割合
議決権・株式保有の状況
頂点となる法人が内国法人か外国法人か
取引当事者が内国法人か外国法人か
取引対象資産の種類
譲渡損益調整資産に該当するか
資産の帳簿価額
資産の時価
譲渡価額の算定根拠
譲渡益または譲渡損の金額
グループ法人税制の適用可否
移転価格税制の検討要否
国外関連者寄附金の検討要否
源泉税の有無
消費税・関税の有無
契約書の作成状況
譲渡法人・譲受法人間の通知体制
将来の売却・償却・除却時の戻入管理
このように整理しておくことで、「グループ内だから大丈夫」という思い込みによる申告ミスを防ぎやすくなります。
まとめ:外国法人が絡むグループ法人税制は、制度ごとに適用範囲を確認する
外国法人が絡む100%グループ内取引では、完全支配関係の判定と、各制度の適用対象を分けて考える必要があります。
外国法人が親会社であっても、日本法人同士の取引であれば、グループ法人税制による譲渡損益の繰延べが適用される可能性があります。
一方、日本法人と外国法人との直接取引については、100%グループ内であっても、譲渡損益の繰延べは原則として適用されません。
この違いを見落とすと、譲渡益の計上漏れや譲渡損の処理誤りにつながります。
また、外国法人との取引では、グループ法人税制だけでなく、移転価格税制、国外関連者寄附金、源泉税、消費税、関税などの論点も確認が必要です。
「100%グループ内だから同じ処理でよい」と考えるのではなく、誰から誰へ、何を、いくらで譲渡するのかを整理し、制度ごとに適用可否を確認しましょう。
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【この記事の執筆者】
安田 亮(公認会計士・税理士)
安田亮公認会計士・税理士事務所 代表
京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。
現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。
事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。





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