交際費はどこまで経費にできる?飲食費1万円基準・中小法人800万円枠を税理士が解説
- 安田亮
- 19 時間前
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こんばんは!代表の安田です。
会社経営をしていると、取引先との会食、得意先への贈答、営業活動に伴う接待など、いわゆる「交際費」が発生します。
交際費は、営業活動や取引関係の維持・拡大のために必要な支出である一方、税務上は損金算入に制限が設けられています。
領収書があるから全額経費になる
取引先との飲食だから交際費で処理しておけばよい
中小企業なら年間800万円まで何でも損金にできる
1人1万円以下の飲食なら交際費にしなくてよい
このように考えていると、税務調査で指摘を受ける可能性があります。
この記事では、交際費等の基本的な考え方、飲食費の1万円基準、中小法人の800万円定額控除、大法人の取扱い、帳簿・書類の保存要件について、税理士の視点からわかりやすく解説します。
交際費等とは何か
法人税法上の交際費等とは、法人が得意先、仕入先、その他事業に関係のある者等に対して行う接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出する費用をいいます。
たとえば、次のような支出が交際費等に該当する可能性があります。
取引先との会食費
得意先への贈答品代
接待ゴルフの費用
取引先を招待するイベント費用
得意先への慶弔見舞金
一方で、事業に関係する支出であっても、すべてが交際費になるわけではありません。
会議に通常必要な茶菓や弁当、カレンダー・手帳など少額の広告宣伝的な贈答品、一定の要件を満たす少額飲食費などは、交際費等から除かれる場合があります。国税庁も、交際費等の範囲から除かれる費用として、会議に関連して通常要する茶菓・弁当等の費用や、一定の飲食費などを挙げています。
つまり、まずは「交際費等に該当するのか」「交際費等から除外できるのか」を区分して考えることが重要です。
交際費は原則として損金不算入
法人税では、交際費等は原則として全額損金不算入です。
ただし、法人の規模に応じて、一定の損金算入措置が設けられています。
特に中小法人については、年間800万円までの定額控除限度額を使える制度があります。また、飲食費については、一定の要件を満たせば50%相当額を損金算入できる制度もあります。
ここでいう「中小法人」とは、原則として期末の資本金の額または出資金の額が1億円以下である法人などをいいます。ただし、資本金5億円以上の大法人による100%子法人など、一定の法人はこの中小法人向けの取扱いから除かれる点に注意が必要です。
一方、資本金100億円を超える法人などについては、交際費等の損金算入がより厳しく制限されます。
したがって、交際費の処理では、支出内容だけでなく、会社の資本金規模や親会社との関係も確認する必要があります。
令和6年4月1日以後は「1人当たり1万円以下」の飲食費に注目
交際費の実務で特に重要なのが、少額飲食費の取扱いです。
以前は、一定の飲食費について「1人当たり5,000円以下」であれば交際費等から除外できる制度がよく知られていました。
この基準は、令和6年4月1日以後に支出する飲食費について、1人当たり10,000円以下に引き上げられています。令和6年3月31日以前に支出された飲食費については、従来どおり5,000円以下が基準です。
つまり、現在は次のように整理できます。
令和6年3月31日以前の飲食費は、1人当たり5,000円以下が基準
令和6年4月1日以後の飲食費は、1人当たり10,000円以下が基準
ただし、1人当たり1万円以下であれば無条件に交際費から除外できるわけではありません。一定の事項を記載した書類を保存していることが必要です。
1万円以下飲食費で保存すべき事項
1人当たり1万円以下の飲食費を交際費等から除外するには、次の事項を記載した書類を保存しておく必要があります。
飲食等があった年月日:飲食等に参加した得意先、仕入先その他事業に関係のある者等の氏名または名称、その関係
飲食等に参加した者の数:飲食等に要した費用の額、飲食店等の名称および所在地。
その他、飲食等に要した費用であることを明らかにするために必要な事項。
国税庁は、1人当たり10,000円以下の飲食費を交際費等から除くためには、これらの事項を記載した書類の保存が必要であると説明しています。
実務上は、領収書だけでは不足することがあります。
領収書には、日付、金額、店名は記載されていても、参加者の氏名、相手先との関係、参加人数までは記載されていないことが多いためです。
そのため、会計ソフトの摘要欄や経費精算システムに、参加者、人数、相手先、目的を記録しておくことが大切です。
社内飲食は1万円基準の対象外になることがある
1人当たり1万円以下の飲食費であっても、注意すべき点があります。
この制度は、得意先、仕入先その他事業に関係のある者等との飲食費を想定しています。
専らその法人の役員、従業員、またはこれらの親族に対する接待等のために支出する飲食費は、1万円以下であってもこの除外規定の対象にはなりません。
たとえば、社長と社員だけで行った飲食、役員だけの懇親会、従業員の家族を含む社内的な飲食会などは、1万円基準で交際費等から除外できない可能性があります。
ただし、従業員の慰安のために通常要する費用、たとえば社員旅行、運動会、忘年会などは、福利厚生費として処理できる場合があります。
このあたりは、交際費、会議費、福利厚生費、給与課税のいずれに該当するかを慎重に判断する必要があります。
会議費と交際費の違い
交際費と似た支出に「会議費」があります。
会議費とは、会議や打ち合わせに通常必要とされる費用です。
たとえば、会議中に提供するお茶、コーヒー、軽食、弁当などが典型例です。
国税庁も、会議に関連して、茶菓、弁当その他これらに類する飲食物を供与するために通常要する費用は、交際費等から除かれるものとして整理しています。
ただし、会議費として処理できるのは、あくまで会議としての実態がある場合です。
高級レストランでの長時間の会食、飲酒を伴う懇親目的の飲食、接待色の強い支出などは、会議費ではなく交際費等と判断される可能性があります。
「仕事の話をしたから会議費」という整理は危険です。
会議費として処理する場合には、会議の目的、参加者、議題、時間帯、金額、飲食内容などから、通常の会議に必要な支出と説明できることが重要です。
中小法人の800万円定額控除
中小法人については、交際費等について年間800万円まで損金算入できる定額控除制度があります。
正確には、定額控除限度額は「800万円 × その事業年度の月数 ÷ 12」で計算します。
たとえば、12か月決算であれば800万円です。
設立初年度や決算期変更などで事業年度が12か月未満の場合は、月数按分が必要になります。中小法人は、次のいずれかを選択することになります。
交際費等のうち、年800万円までを損金算入する方法
接待飲食費の50%相当額を損金算入する方法
多くの中小企業では、交際費の総額が800万円以内であれば、定額控除を使う方が有利になることが多いです。
一方、接待飲食費が非常に多く、800万円を大きく超える場合には、50%損金算入との比較が必要になります。
大法人は飲食費50%損金算入が中心
資本金1億円超の法人など、中小法人に該当しない法人については、800万円の定額控除を使えません。
この場合、原則として、接待飲食費の50%相当額について損金算入できる制度を検討することになります。
ただし、期末資本金の額または出資金の額が100億円を超える法人については、接待飲食費の50%損金算入も認められず、交際費等の額は全額損金不算入となります。
この点は大法人では非常に重要です。
資本金100億円以下の大法人では、接待飲食費の50%損金算入が使える可能性がありますが、100億円超の法人では使えません。
また、通算法人については、グループ内に資本金100億円超の法人がある場合の取扱いにも注意が必要です。
消費税の経理方式で1万円判定が変わる
1人当たり1万円以下の飲食費の判定では、消費税の経理方式にも注意が必要です。
国税庁は、1万円基準の判定や交際費等の額の計算について、法人が適用している消費税等の経理処理、つまり税抜経理方式または税込経理方式により算定した価額で行なうと説明しています。
たとえば、税抜経理を採用している法人では税抜金額で判定し、税込経理を採用している法人では税込金額で判定します。
この違いにより、同じ飲食費でも、1人当たり1万円以下に該当するかどうかが変わることがあります。
特に、1人当たり税込11,000円前後の飲食費では、税抜経理か税込経理かで判断が分かれる可能性があります。
経理方式を確認せずに機械的に判定しないようにしましょう。
交際費は科目名ではなく実態で判断する
交際費の税務でよくある誤解が、「交際費勘定に入っているものだけを見ればよい」という考え方です。
実際には、税務上の交際費等は、会計上の勘定科目だけで決まるものではありません。
たとえば、次のような科目に交際費性のある支出が含まれていることがあります。
会議費
販売促進費
広告宣伝費
福利厚生費
旅費交通費
諸会費
雑費
支払手数料
逆に、交際費勘定に入っていても、1人当たり1万円以下の飲食費として除外できるものや、会議費・福利厚生費として整理できるものが含まれていることもあります。
そのため、決算時には「交際費」という勘定科目だけを見るのではなく、関連する科目も含めて確認することが重要です。
税務調査で確認されやすいポイント
交際費は、税務調査で確認されやすい項目です。
特に、次のような点が見られます。
領収書が保存されているか
参加者、人数、相手先、目的が記録されているか
1人当たり1万円以下の飲食費の判定が正しいか
社内飲食を1万円基準で除外していないか
会議費として処理している支出に接待性がないか
福利厚生費として処理している支出が特定の役員や従業員だけを対象にしていないか
贈答品や手土産が広告宣伝費として処理されていないか
大法人・中小法人の区分が正しいか
グループ法人や通算法人の取扱いを確認しているか
交際費の処理は、後から説明しようとしても難しいことがあります。
飲食の都度、参加者や目的を記録しておくことが、税務調査対策として非常に有効です。
実務でおすすめの管理方法
交際費の処理を正しく行うためには、日々の記録が大切です。
実務では、次のような運用をおすすめします。
飲食費の精算時に、参加者名、会社名、人数、目的を必ず入力してもらう
社内飲食と社外飲食を区分する
1人当たり1万円以下かどうかを自動判定できるようにする
会議費として処理する場合は、会議の内容を記録する
福利厚生費として処理する場合は、対象者が全従業員かどうかを確認する
交際費、会議費、福利厚生費、広告宣伝費の判断基準を社内で共有する
決算前に、交際費だけでなく関連科目も確認する
特に、営業担当者が多い会社や、接待飲食が多い会社では、経理担当者だけで判断するのは限界があります。
経費精算時点で必要情報を集める仕組みを作ることが重要です。
まとめ:交際費は「区分」と「記録」が重要
交際費等は、法人が得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対して行う接待、供応、慰安、贈答などのために支出する費用です。
法人税では、交際費等は原則として全額損金不算入ですが、法人の規模や支出内容に応じて一定の損金算入措置があります。
令和6年4月1日以後に支出する飲食費については、一定の要件を満たせば、1人当たり10,000円以下の飲食費を交際費等から除外できます。
ただし、参加者、人数、相手先、飲食店名、所在地などを記載した書類の保存が必要です。
また、中小法人については、年間800万円までの定額控除制度があります。
一方、大法人では800万円の定額控除は使えず、接待飲食費の50%損金算入が中心になります。さらに、資本金100億円超の法人では、交際費等の全額が損金不算入となります。
交際費の処理で重要なのは、次の3点です。
まず、交際費、会議費、福利厚生費、広告宣伝費などを実態に応じて区分すること。
次に、1人当たり1万円以下の飲食費について、必要事項を記録・保存すること。
そして、会社の資本金規模やグループ関係に応じて、損金算入限度額を正しく判定することです。
交際費はどの会社にも出てくる身近な経費ですが、税務上は細かなルールが多い項目です。
「領収書があるから大丈夫」と考えるのではなく、支出時点で必要情報を残し、決算時に正しく区分できる体制を整えておきましょう。
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【この記事の執筆者】
安田 亮(公認会計士・税理士)
安田亮公認会計士・税理士事務所 代表
京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。
現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。
事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。





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