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グループ通算制度の注記とは?実務対応報告第42号に基づく開示ポイントを公認会計士が解説

  • 執筆者の写真: 安田 亮
    安田 亮
  • 1 日前
  • 読了時間: 11分

更新日:4 時間前

こんにちは!代表の安田です。


グループ会社を持つ企業にとって、法人税の申告・会計処理は重要な論点です。

従来、日本では一定の企業グループについて「連結納税制度」が設けられていました。しかし、制度改正により連結納税制度は見直され、現在は「グループ通算制度」へ移行しています。


グループ通算制度は、完全支配関係のある企業グループ内で損益通算を行う制度です。税務申告の仕組みだけでなく、会計処理や財務諸表の注記にも影響があります。


特に、グループ通算制度を適用する会社では、実務対応報告第42号「グループ通算制度を適用する場合の会計処理及び開示に関する取扱い」に基づき、法人税・地方法人税や税効果会計に関する会計処理・開示を行う必要があります。


本日は、グループ通算制度の概要、実務対応報告第42号に基づく注記のポイント、税効果会計の注記、連帯納付義務の取扱いについて、公認会計士の視点からわかりやすく解説します。


グループ通算制度とは

グループ通算制度とは、一定の企業グループを一体として捉え、グループ内の会社間で損益を通算できる法人税制度です。


たとえば、親会社が黒字で、子会社が赤字の場合、一定の要件を満たすことでグループ内の損益を通算し、法人税計算に反映させることができます。


グループ通算制度は、従来の連結納税制度を見直す形で導入されました。連結納税制度では、企業グループを一つの納税単位のように扱う面が強くありました。一方、グループ通算制度では、各法人がそれぞれ申告を行いながら、グループ内で損益通算等を行う仕組みになっています。


制度の詳細は税務上の論点ですが、会計上も法人税等、税効果会計、注記に影響するため、経理担当者や決算担当者は基本的な考え方を理解しておく必要があります。


実務対応報告第42号とは

グループ通算制度の会計処理や開示については、実務対応報告第42号で取扱いが定められています。


この実務対応報告は、グループ通算制度を適用する場合の法人税・地方法人税、税効果会計、表示、注記などについて、実務上の考え方を示すものです。


グループ通算制度は税務申告の制度ですが、会計上は、当期税金費用の計上、繰延税金資産・繰延税金負債の認識、通算税効果額の取扱いなどに関係します。


また、財務諸表利用者にとっては、その会社がグループ通算制度を適用しているかどうかは、税金費用や税効果会計を理解するうえで有用な情報です。そのため、実務対応報告第42号では、一定の注記事項が定められています。


グループ通算制度で必要となる主な注記

グループ通算制度を適用する会社では、主に次の3つの注記がポイントになります。

  1. 実務対応報告第42号を適用している旨の注記

  2. 税効果会計に関する注記

  3. 連帯納付義務に関する注記の取扱い


これらは、単に形式的に記載すればよいというものではありません。グループ通算制度を適用している会社の税金計算や税効果会計の内容を、財務諸表利用者に正しく伝えるための注記です。以下、それぞれのポイントを見ていきます。


実務対応報告第42号を適用している旨の注記

グループ通算制度を適用し、実務対応報告第42号に従って法人税・地方法人税や税効果会計の会計処理を行なっている場合には、その旨を注記する必要があります。


ここで重要なのは、適用初年度だけではなく、グループ通算制度を適用している期間中は継続して注記する点です。


従来の連結納税制度では、適用初年度や取りやめ時に注記する取扱いが中心でした。しかし、グループ通算制度では、その会社が制度を適用していること自体が財務諸表利用者にとって有用な情報と考えられています。


そのため、グループ通算制度を適用している場合には、毎期、税効果会計に関する注記とあわせて、実務対応報告第42号を適用している旨を記載することになります。


たとえば、注記のイメージとしては、次のような表現が考えられます。

「当社及び一部の国内連結子会社は、グループ通算制度を適用しており、法人税及び地方法人税並びに税効果会計の会計処理及び開示について、実務対応報告第42号に従っております。」


実際の文言は、会社の状況や監査人との協議により調整が必要です。


税効果会計の注記のポイント

グループ通算制度を適用する場合、税効果会計の注記にも注意が必要です。


繰延税金資産および繰延税金負債については、発生原因別の主な内訳を注記します。この点は通常の税効果会計と同様です。


ただし、グループ通算制度を適用する場合には、法人税・地方法人税と住民税・事業税を税金の種類ごとに細かく区分して注記する必要はありません。税金全体として、繰延税金資産および繰延税金負債の主な内訳を注記する取扱いになります。


これは、連結納税制度における実務を踏襲した考え方です。

たとえば、税務上の繰越欠損金、減価償却超過額、賞与引当金、退職給付に係る負債、未払事業税、その他有価証券評価差額金など、繰延税金資産・負債の発生原因別の主な内訳を示す場合でも、税目ごとに分解して表示する必要はありません。


実務上は、通常の税効果注記の作成に加えて、グループ通算制度を適用していることが注記文言に反映されているかを確認することが大切です。


連帯納付義務は偶発債務として注記するのか

グループ通算制度では、通算グループ内の法人について、法人税の連帯納付義務が問題になります。


連帯納付義務とは、グループ内の他の法人が法人税を滞納した場合に、一定の範囲で他の通算法人も納付責任を負う仕組みです。通算子会社だけでなく、通算親会社にも責任が及ぶ点に注意が必要です。


このように聞くと、「偶発債務として注記が必要なのではないか」と思われるかもしれません。しかし、実務対応報告第42号では、グループ通算制度を適用する会社が負う連帯納付義務について、偶発債務としての注記は不要とされています。


その理由は、連帯納付義務がグループ通算制度に内在する制度上の義務であり、グループ通算制度を適用している旨を注記すれば、財務諸表利用者にとって必要な情報は一定程度提供されると考えられるためです。


したがって、グループ通算制度を適用しているからといって、連帯納付義務を個別に偶発債務として注記する必要はありません。


ただし、これはあくまで制度上の一般的な連帯納付義務に関する取扱いです。個別に重要な不確実性や特別な事情がある場合には、別途検討が必要になる可能性があります。


連結納税制度との違いを意識する

グループ通算制度は、従来の連結納税制度を見直す形で導入された制度です。そのため、会計処理や注記の考え方には、連結納税制度を踏襲している部分があります。


一方で、連結納税制度とグループ通算制度は同じ制度ではありません。

連結納税制度では、親法人がグループ全体の申告を行なう仕組みでした。これに対して、グループ通算制度では、各法人が個別に申告を行いながら、損益通算や税額調整を行います。


この違いにより、税務申告の実務、社内での税金費用の配分、通算税効果額の授受、個別財務諸表での表示などに影響が生じます。


そのため、連結納税制度の経験がある会社であっても、グループ通算制度への移行後は、会計処理や注記の見直しが必要です。


通算税効果額の表示にも注意

グループ通算制度では、通算税効果額という考え方が出てきます。


通算税効果額とは、グループ通算制度の適用により、グループ内の法人間で生じる税金費用の調整額のようなものです。たとえば、ある会社の欠損金がグループ内の他社の所得と通算されることで、グループ全体の税額に影響が生じる場合があります。


実務対応報告第42号では、通算税効果額について、法人税および地方法人税に準ずるものとして取り扱う考え方が採られています。


そのため、個別財務諸表の損益計算書では、法人税及び地方法人税を示す科目に含めて表示することになります。また、通算税効果額に係る債権・債務については、未収入金や未払金などに含めて貸借対照表に表示されます。


この点は、注記だけでなく表示の実務にも関係するため、グループ内での精算方法や会計処理ルールを整理しておくことが重要です。


グループ通算制度の注記で実務上確認すべきこと

決算時にグループ通算制度の注記を作成する際には、次のような点を確認するとよいでしょう。

  • 当期にグループ通算制度を適用しているか

  • 実務対応報告第42号に従って会計処理している旨を注記しているか

  • 税効果会計の注記と整合しているか

  • 繰延税金資産・負債の内訳を税目ごとに不要に細分化していないか

  • 連帯納付義務を偶発債務として重複して注記していないか

  • 通算税効果額の表示科目が適切か

  • 個別財務諸表と連結財務諸表の注記内容に不整合がないか

  • グループ内の税金精算ルールと会計処理が整合しているか


グループ通算制度は税務部門だけで完結する論点ではありません。経理部門、連結決算担当、税務担当、子会社管理部門、監査人が連携して対応する必要があります。


中小企業にも関係するのか

グループ通算制度は、主に企業グループを持つ会社に関係する制度です。そのため、すべての中小企業に直接関係するわけではありません。


しかし、複数の法人を持つオーナー企業や、持株会社体制を採っている企業グループ、M&Aにより子会社が増えた会社では、グループ通算制度の適用を検討することがあります。


また、グループ通算制度を適用しない場合でも、グループ法人税制や子会社株式、繰越欠損金、税効果会計など、関連する論点は多くあります。


特に、将来的にIPOを目指す会社や、監査法人による監査を受ける会社では、税務上の制度選択が会計処理や開示に与える影響を早めに確認しておくことが大切です。


グループ通算制度を適用する会社が注意すべき実務対応

グループ通算制度を適用する場合、注記だけを決算時に整えればよいわけではありません。

制度適用にあたっては、日常的な税務・会計管理も重要です。


まず、グループ内各社の課税所得や欠損金の状況を正確に把握する必要があります。損益通算や欠損金の利用は、グループ全体の税負担に影響します。


次に、通算税効果額の授受に関するルールを整備することが重要です。グループ内で税金費用をどのように配分し、どの会社がどの金額を負担・受領するのかを明確にしておく必要があります。


さらに、税効果会計における繰延税金資産の回収可能性の判断も重要です。グループ通算制度では、個社単位だけでなく、通算グループ内の損益通算の影響を踏まえた検討が必要になることがあります。


また、グループ内で決算スケジュールや税務情報の収集体制を整えることも欠かせません。子会社からの情報収集が遅れると、法人税等や税効果会計の見積り、注記作成に影響が出る可能性があります。


まとめ

グループ通算制度は、従来の連結納税制度を見直す形で導入された制度であり、一定の企業グループ内で損益通算を行なうことができる仕組みです。


グループ通算制度を適用する会社では、実務対応報告第42号に基づき、法人税・地方法人税や税効果会計の会計処理・開示を行う必要があります。


注記のポイントは、主に3つです。


1つ目は、実務対応報告第42号に従って会計処理している旨を注記することです。この注記は適用初年度だけでなく、グループ通算制度を適用している期間中は継続して記載します。


2つ目は、税効果会計の注記です。繰延税金資産および繰延税金負債の発生原因別内訳について、法人税・地方法人税と住民税・事業税を税目ごとに区分して注記する必要はありません。


3つ目は、連帯納付義務の取扱いです。グループ通算制度に基づく連帯納付義務については、制度上の義務であるため、偶発債務としての注記は不要とされています。


グループ通算制度は、税務申告だけでなく、会計処理、税効果会計、表示、注記に影響します。制度を適用している会社では、決算時に注記を形式的に作成するだけでなく、グループ内の税金精算、通算税効果額、繰延税金資産の回収可能性、連結・個別財務諸表の整合性を含めて確認することが重要です。


グループ通算制度の適用や注記に迷う場合には、早い段階で公認会計士や税理士に相談し、自社グループに合った会計処理・開示方針を整理しておくことをおすすめします。


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【この記事の執筆者】

安田 亮(公認会計士・税理士)

安田亮公認会計士・税理士事務所 代表

京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。

現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。

事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。


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