SSBJ基準の適用義務と「平均時価総額」
更新日:9月1日
こんばんは!代表の安田です。
2025年11月、公表会社向けの開示制度に大きな影響を与える改正案が示されました。有価証券報告書において、SSBJ(サステナビリティ基準委員会)基準の適用を一定の上場会社に義務付ける内容が盛り込まれたものです。
義務適用かどうかの判定は、「平均時価総額」が1兆円以上であるかどうかで判断される方向ですが、特に注意が必要なのが、過去の期間に吸収合併や株式移転などの組織再編があるケースです。
本日は、SSBJ基準の適用判定の枠組みと、組織再編を行なった上場会社が押さえておきたいポイントを整理します。
1. SSBJ基準の適用義務判定の基本ルール
改正案では、上場会社ごとに次のようなステップで「平均時価総額」を算定し、その金額が1兆円以上かどうかでSSBJ基準の適用義務を判定する仕組みが示されています。
<対象期間>
有価証券報告書の対象事業年度の前事業年度
そこからさかのぼった過去4事業年度→ 合計「過去5事業年度分」の各期末時点の時価総額を対象とします。
<平均時価総額のイメージ>
対象期間に含まれる各事業年度末ごとの時価総額を把握
それらを合計し、事業年度数で割る
算出した金額が1兆円以上なら、SSBJ基準の適用義務あり
一見するとシンプルですが、期間中に組織再編を行なっている場合は、単純に自社の時価総額だけを平均すればよいわけではありません。
2. 吸収合併を行なった場合の「合算」の考え方
たとえば、ある有報提出会社が吸収合併の存続会社となった場合を考えます。
対象期間のうち、合併の効力発生日が属する事業年度より前の各期末については存続会社+消滅会社の時価総額を合算して平均時価総額を計算するという考え方が示されています。
つまり、「今の会社の単独時価総額」ではなく、過去に組織再編で取り込んだ会社の規模も含めて判定する仕組みになっている点が重要です。
これは、単なる合併だけでなく、以下のようなケースにも広く及ぶとされています。
他の上場会社を完全子会社化した場合
新設合併により設立された会社である場合
株式移転により設立された完全親会社である場合 等
上場会社である消滅会社・完全子会社が複数ある場合には、それぞれの時価総額をすべて合計する必要があるとされており、実務上の集計負担は決して小さくありません。
3. 上場して間もない会社はどう扱われるか
対象期間として想定されているのは「過去5事業年度」ですが、上場から日が浅い会社や、組織再編を経て設立された会社の中には、5年分のデータがそろわないケースもあります。
この場合でも、
取得可能な期間の時価総額
組織再編前の消滅会社・完全子会社の時価総額
などを踏まえたうえで、存在する期間の平均時価総額で判定する方向性が示されています。
したがって、
上場後の時価総額だけを見て「まだ規模が小さいから関係ない」と判断してしまう
再編前の法人のデータを把握しておらず、判定に漏れが生じる
といったミスには注意が必要です。
4. 実務担当者がいま準備しておきたいこと
(1)過去5期の資本市場データの整理
対象会社自身の上場来の時価総額推移
吸収合併・株式移転・新設合併等で取り込んだ上場会社の過去の時価総額
を一覧化しておくことが第一歩です。
IR・経営企画・経理・法務など複数部門が関わる情報であるため、どの部署が、どのシステムから、どの時点の情報を取得するかを明確にしておくと、将来の制度対応がスムーズになります。
(2)組織再編の履歴と範囲の把握
過去5事業年度内に行った組織再編の一覧
吸収合併・会社分割・株式移転・株式交換などのスキーム
それぞれについて「上場会社を対象としていたかどうか」
を整理しておくことで、どの会社を平均時価総額計算の対象に含めるべきかが明確になります。
(3)SSBJ基準適用を前提とした開示体制の検討
平均時価総額が1兆円に近い企業や、再編の影響で閾値を超える可能性がある企業は、
サステナビリティ情報の収集・内部統制
監査人との役割分担やスケジュール
グループ各社からのデータ集約体制
などを、SSBJ基準の適用を前提にした形で準備しておくことが望まれます。
5. まとめ:組織再編のある企業ほど「時価総額の合算」に要注意
SSBJ基準の適用義務判定は、一見すると「平均時価総額が1兆円以上かどうか」という単純な基準に見えますが、組織再編を行った上場会社にとっては、
自社単体ではなく、消滅会社・完全子会社も含めた時価総額を用いる
上場からの期間が短くても、取得可能な期間のデータで判定される
といった点で、判断が難しくなりやすい制度です。
「まだうちは関係ない」と考えてしまう前に、一度、自社グループの上場来の時価総額推移と組織再編の履歴を整理しておくことをお勧めします。
神戸での起業や開業に関するご相談、確定申告にお困りの方、顧問税理士をお探しの方は安田亮公認会計士・税理士事務所までお問い合わせください!
<あわせて読みたい>
【この記事の執筆者】
安田 亮(公認会計士・税理士)
安田亮公認会計士・税理士事務所 代表
京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。
現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。
事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。






コメント