SaaS・クラウド時代のソフトウェア会計処理とは?制作費の分類と実務上の課題を公認会計士が解説
- 安田 亮
- 24 時間前
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こんばんは!代表の安田です。
近年、ソフトウェアを取り巻くビジネスモデルは大きく変化しています。
かつては、ソフトウェアをパッケージとして販売する形や、顧客から依頼を受けて個別に開発する形が一般的でした。しかし現在では、SaaSをはじめとするクラウドサービス、スマートフォンアプリ、オンラインゲーム、サブスクリプション型のデジタルサービスなど、多様な形でソフトウェアが提供されています。
このような変化により、ソフトウェア制作費をどのように会計処理するかについて、実務上の判断が難しくなる場面が増えています。
本日は、日本基準におけるソフトウェア会計処理の基本的な考え方と、SaaS・クラウドサービス時代における実務上の課題について、会計実務の観点からわかりやすく解説します。
ソフトウェア制作費は目的別に分類される
日本の会計基準では、ソフトウェア制作費は、まず制作目的に応じて大きく分類されます。
代表的な区分は、次の2つです。
1つ目は、外部に販売することを目的として制作される「販売目的のソフトウェア」です。2つ目は、企業が自社の業務に利用するために制作する「自社利用のソフトウェア」です。
さらに、販売目的のソフトウェアは、顧客からの注文に基づいて制作する「受注制作のソフトウェア」と、不特定多数のユーザーに販売することを目的とする「市場販売目的のソフトウェア」に分けられます。
この分類は、制作費を費用処理するのか、資産計上するのかを判断するうえで非常に重要です。ソフトウェアは目に見えない無形の資産であるため、契約内容、開発目的、販売形態、利用方法などを丁寧に確認する必要があります。
市場販売目的のソフトウェアとは
市場販売目的のソフトウェアとは、一般的には、不特定多数の顧客に販売することを予定して制作されるソフトウェアをいいます。
従来型の例でいえば、パッケージソフトや市販のアプリケーションソフトなどがイメージしやすいでしょう。完成した製品を複製し、複数の顧客に販売するようなビジネスモデルです。
このような市場販売目的のソフトウェアでは、会計上、どの時点までを研究開発費として費用処理し、どの時点以降を資産計上の対象とするかが重要になります。
一般的には、最初に製品化されたマスターが完成するまでの支出については、研究開発費として処理する考え方が採られています。その後、製品として販売可能な段階に至った後の追加的な支出については、内容に応じて資産計上の可否を判断することになります。
SaaS・クラウドサービスで判断が難しくなる理由
近年、特に判断が難しくなっているのが、SaaSなどのクラウドサービスに関する会計処理です。
SaaSとは、Software as a Serviceの略で、利用者がソフトウェアを購入・インストールするのではなく、インターネット経由でサービスとして利用する形態をいいます。
このビジネスモデルでは、事業者はソフトウェアの機能を顧客に提供し、その対価として月額利用料や年額利用料を受け取ることが一般的です。
ここで問題となるのは、SaaSが従来の「市場販売目的のソフトウェア」と同じように考えられるのかという点です。
従来の市場販売目的のソフトウェアは、完成したソフトウェアを複製して販売することが想定されていました。しかしSaaSでは、顧客にソフトウェアそのものを販売するというよりも、クラウド上で機能を利用できる環境を提供する形になります。
そのため、単純に「市場販売目的のソフトウェア」として扱ってよいのか、自社利用のソフトウェアに近いものとして考えるべきなのか、実務上の判断が難しくなるケースがあります。
自社利用ソフトウェアとの違いも重要
SaaS事業者が開発するシステムは、自社のサーバーやクラウド環境上で稼働し、顧客はその機能を利用します。
この点に注目すると、ソフトウェアそのものは事業者の内部で利用されているとも考えられます。つまり、顧客にソフトウェアを販売しているというより、自社が保有・管理するシステムを使ってサービスを提供しているという見方です。
この場合、会計上は「自社利用のソフトウェア」としての検討が必要になる可能性があります。自社利用のソフトウェアでは、その利用により将来の収益獲得または費用削減が確実と認められるかどうかが、資産計上の重要な判断要素になります。
たとえば、社内業務を効率化するためのシステムや、顧客向けサービスを提供するためのプラットフォームであっても、将来の収益獲得に結びつくと合理的に説明できる場合には、資産計上を検討する余地があります。
ただし、企画段階、調査段階、技術的な実現可能性を検討している段階の支出まで安易に資産計上することは適切ではありません。開発フェーズごとの支出内容を整理し、会計処理の根拠を残しておくことが重要です。
デジタルゲーム業界における課題
ソフトウェア会計処理の課題は、SaaSだけに限られません。デジタルゲーム業界でも、会計処理の判断が難しい場面があります。
ゲーム開発では、プログラムだけでなく、キャラクター、映像、音楽、シナリオ、デザイン、追加コンテンツなど、多くの要素が組み合わされます。
これらの支出を、ソフトウェア制作費として考えるのか、コンテンツ制作費として考えるのか、研究開発費として処理するのか、あるいは一定の条件のもとで資産計上するのかについては、個別判断が必要です。
特に、オンラインゲームやスマートフォンゲームでは、リリース後も継続的にアップデートが行われます。新機能の追加、イベント開催、キャラクター追加、不具合修正など、支出の内容は多岐にわたります。
このような支出については、単なる保守費用なのか、将来の収益獲得に貢献する追加開発なのかを整理することが求められます。
実務で確認すべきポイント
ソフトウェア制作費の会計処理を検討する際には、次のような点を確認することが大切です。
そのソフトウェアが何を目的として制作されているのかを明確にする
外部販売目的なのか、自社利用目的なのか、顧客向けサービス提供のための基盤なのかによって、検討すべき会計処理が変わります。
開発フェーズを整理する
企画・調査段階、研究開発段階、製品化・サービス化に向けた開発段階、リリース後の改良・保守段階では、支出の性質が異なります。
将来の収益獲得や費用削減との関係も確認する
資産計上を行なう場合には、その支出が将来の経済的便益につながることを合理的に説明できなければなりません。
契約書、開発計画書、要件定義書、リリース計画、社内稟議資料など、判断の根拠となる資料を整備しておく
後から会計監査や税務調査で説明を求められた場合に、当時の判断過程を示せるようにしておく必要があります。
税務上の取扱いにも注意
ソフトウェア制作費は、会計上の処理だけでなく、税務上の取扱いにも注意が必要です。
会計上は費用処理した支出であっても、税務上は資産計上が必要になる場合があります。反対に、会計上資産計上した場合でも、税務上の償却方法や耐用年数を確認する必要があります。
特に、ソフトウェアを無形固定資産として計上する場合には、償却期間や償却開始時期の判断が重要です。また、研究開発税制の適用可能性がある場合には、対象となる試験研究費の範囲についても確認が必要です。ソフトウェア開発を行う企業では、会計処理、法人税、税額控除の3つをあわせて検討することが望ましいでしょう。
まとめ
ソフトウェア会計処理は、従来から制作目的に応じて分類されてきました。販売目的のソフトウェア、自社利用のソフトウェア、受注制作のソフトウェア、市場販売目的のソフトウェアといった区分は、現在でも会計処理を判断するうえで基本となります。
しかし、SaaS、クラウドサービス、オンラインゲーム、サブスクリプション型サービスなど、現在のビジネスモデルは、会計基準が設定された当時よりも大きく進化しています。
そのため、形式的な分類だけで判断するのではなく、実際のサービス内容、収益獲得の仕組み、開発フェーズ、将来の経済的便益、契約関係などを総合的に検討することが重要です。
ソフトウェア開発に関する支出は金額が大きくなりやすく、会計処理の違いによって利益や資産額に大きな影響を与えることがあります。
SaaSやクラウドサービスを提供している企業、アプリ・ゲーム開発を行なっている企業、社内システム開発に多額の投資を行っている企業では、早い段階から会計処理の方針を整理し、必要に応じて公認会計士や税理士に相談することをおすすめします。
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【この記事の執筆者】
安田 亮(公認会計士・税理士)
安田亮公認会計士・税理士事務所 代表
京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。
現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。
事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。






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