top of page

在宅勤務者が一時出社する交通費は給与課税される?通勤手当と出張旅費の違いを税理士が解説

  • 執筆者の写真: 安田 亮
    安田 亮
  • 6 分前
  • 読了時間: 14分

こんばんは!代表の安田です。


テレワークや在宅勤務が広がり、会社に毎日出社しない働き方は珍しくなくなりました。

最近では、会社の方針として原則リモート勤務を認め、従業員が地方へ移住したうえで、必要なときだけ本社へ出社するケースもあります。


このような働き方で実務上悩みやすいのが、在宅勤務者が一時的に出社する場合の交通費です。たとえば、従業員が大阪の自宅で在宅勤務をしており、月に数回、東京本社へ出社するとします。


新幹線代や宿泊費が発生すれば、1か月の交通費が15万円を超えることもあります。

この場合、会社が負担する交通費は「通勤手当」として15万円を超える部分が給与課税されるのでしょうか。それとも「出張旅費」として全額非課税にできるのでしょうか。


結論から言うと、ポイントは、従業員の労務の提供地がどこにあるかです。

労務の提供地が本社等であれば、自宅と本社等の移動は通勤と考えられます。


一方、労務の提供地が自宅であり、業務命令により一時的に本社等へ出社する場合には、出張旅費として全額非課税にできる可能性があります。


本日は、在宅勤務者が一時出社する場合の交通費について、所得税上の通勤手当と出張旅費の違い、15万円を超える交通費の取扱い、社内規程の整備ポイント、社会保険料との関係を解説します。


通勤手当は原則として月15万円まで非課税

会社が従業員に支給する通勤手当は、一定の範囲で非課税とされています。


交通機関を利用して通勤する従業員については、通勤のために通常必要と認められる運賃等のうち、最も経済的かつ合理的な経路・方法による金額が非課税の対象です。


ただし、非課税限度額があります。

交通機関を利用する通勤手当については、1か月当たり15万円が非課税限度額です。

そのため、通常の通勤手当として支給する場合、1か月の交通費が20万円であれば、15万円までは非課税、残り5万円は給与として課税されることになります。


在宅勤務者が遠方から本社へ出社する場合でも、その移動が通勤と判断されるのであれば、この15万円の非課税限度額が問題になります。


出張旅費は通常必要な範囲で全額非課税

一方、出張旅費は通勤手当とは取扱いが異なります。


従業員が勤務する場所を離れて、その職務を遂行するために旅行した場合に、通常必要と認められる旅費を会社が支給する場合、その旅費は原則として給与課税されません。


出張旅費には、交通費、宿泊費、日当などが含まれることがあります。

出張旅費として認められる場合、通勤手当のような月15万円の非課税限度額はありません。


つまり、通常必要と認められる範囲であれば、15万円を超える交通費であっても給与課税されない可能性があります。


在宅勤務者が一時出社する交通費を考えるうえでは、その移動が「通勤」なのか、「勤務する場所を離れて職務を遂行するための旅行」なのかが重要になります。


判断のポイントは労務の提供地

在宅勤務者の一時出社交通費について、最も重要なのは、従業員の労務の提供地がどこにあるかです。


労務の提供地とは、従業員が労務を提供する場所をいいます。

通常は、労働契約書や雇用契約書、就業規則、在宅勤務規程、勤務地を定める通知書などで確認します。


たとえば、労働契約上の勤務地が東京本社であり、在宅勤務はあくまで一時的・補助的に認められているにすぎない場合、労務の提供地は本社等と判断される可能性があります。


一方、会社が原則在宅勤務を制度として認め、労働契約や勤務規程上も自宅を労務の提供地として位置付けている場合には、労務の提供地は自宅と判断される可能性があります。


この違いによって、自宅と本社等の移動に係る交通費の税務上の取扱いが変わります。


労務の提供地が本社等の場合

労務の提供地が本社等である場合、自宅から本社等への移動は、基本的には通勤と考えられます。


この場合、従業員が在宅勤務をしていたとしても、本来の勤務場所は本社等です。

したがって、自宅から本社へ出社する移動は、「勤務する場所を離れて職務を遂行するための旅行」ではありません。


そのため、会社が交通費を実費精算したとしても、税務上は通勤手当として取り扱うことになります。


通勤手当として非課税になるのは、最も経済的かつ合理的な経路・方法による交通費のうち、月15万円までです。


15万円を超える部分は給与として課税されます。

たとえば、大阪の自宅から東京本社へ月5回出社し、電車と新幹線の往復交通費が月20万円となった場合、労務の提供地が本社であれば、15万円を超える5万円が給与課税の対象になります。


労務の提供地が自宅の場合

一方、労務の提供地が自宅である場合は、結論が変わります。

自宅が勤務する場所であり、会社の業務命令により一時的に本社等へ出社するのであれば、自宅から本社等への移動は、勤務する場所を離れて職務を遂行するための旅行と考えられます。


この場合、会社が旅費規程等に基づき交通費を実費精算し、別途通勤手当や定期代を支給していないのであれば、その交通費は出張旅費として全額非課税にできる可能性があります。


たとえば、大阪の自宅を労務の提供地とする従業員が、東京本社へ月5回、一時的に出社し、交通費が月20万円発生したとします。


この交通費を旅費規程に基づき実費精算し、別途通勤手当を支給していない場合には、20万円全額が出張旅費として給与課税されない取扱いが考えられます。


このように、同じ大阪・東京間の移動であっても、労務の提供地が本社なのか自宅なのかにより、課税関係が変わります。


労働契約書や在宅勤務規程の整備が重要

在宅勤務者の一時出社交通費を出張旅費として取り扱うには、単に「会社としては出張扱いにしたい」というだけでは不十分です。


実態として、自宅が労務の提供地であることを説明できる必要があります。

そのためには、次のような書類や規程の整備が重要です。

  • 労働契約書

  • 雇用契約書

  • 勤務地変更通知書

  • 在宅勤務規程

  • テレワーク規程

  • 旅費規程

  • 交通費精算規程

  • 業務命令書

  • 出社指示の記録

  • 勤務実績の記録


特に、労働契約書上の勤務地が本社のままになっていると、自宅を労務の提供地と説明するのが難しくなる場合があります。


在宅勤務を原則とする従業員については、労働契約や社内規程上、自宅勤務をどのように位置付けているかを確認しましょう。


旅費規程に基づく実費精算が必要

在宅勤務者の一時出社交通費を出張旅費として非課税にするには、旅費規程等に基づいて支給することが重要です。


出張旅費は、職務遂行のため通常必要と認められる範囲で非課税とされます。

そのため、会社の規程に基づかず、恣意的に高額な交通費や日当を支給している場合には、給与課税のリスクがあります。


実務上は、次の点を確認しておくべきです。

  • 旅費規程に在宅勤務者の一時出社交通費を定めているか

  • 実費精算を原則としているか

  • 最も経済的かつ合理的な経路を基準にしているか

  • 出社目的や業務命令の記録があるか

  • 領収書や乗車履歴を保存しているか

  • 宿泊が必要な場合の基準を定めているか

  • 日当を支給する場合、金額が合理的か


在宅勤務者の一時出社は、通常の出張とは少し性質が異なるため、旅費規程に明記しておくと実務が安定します。


別途通勤手当を支給している場合は注意

労務の提供地が自宅であっても、別途通勤手当や定期代を支給している場合には注意が必要です。


出張旅費として扱うには、通勤手当とは別の実費弁償であることが重要です。

たとえば、自宅勤務を原則とする従業員に対して、毎月定額の通勤手当や定期代を支給しつつ、一時出社のたびに交通費も出張旅費として精算している場合、二重支給と見られる可能性があります。


このような場合、支給内容の一部が給与課税の対象になることも考えられます。

在宅勤務者については、通常の通勤手当を廃止し、一時出社の都度、旅費規程に基づき実費精算する方法が実務上分かりやすいでしょう。


労務の提供地が本社でも例外的に出張扱いできる場合

労働契約上の労務の提供地が本社等であっても、実態として自宅が労務の提供地といえる場合があります。


たとえば、会社の制度として原則テレワークが定着しており、従業員が実際にはほとんど自宅で勤務している場合です。


このような場合、労働契約書上は本社と記載されていても、実態としては自宅を労務の提供地と説明できる可能性があります。


ただし、これはあくまで例外的な取扱いです。

実態として自宅が労務提供の中心であること、会社の規程や運用がそれに合っていること、支給方法や金額が旅費規程に基づく支給と変わらないことなどを説明できる必要があります。


税務上のリスクを下げるには、労働契約書や在宅勤務規程を実態に合わせて見直すことが望ましいです。


出社頻度が多い場合は慎重に判断する

在宅勤務者の一時出社交通費を出張旅費として扱う場合、出社頻度にも注意が必要です。

たとえば、月に1回や数回の会議、研修、打合せのために本社へ出社する場合は、一時的な出社と説明しやすいでしょう。


一方で、毎週何日も本社へ出社している、実質的には本社勤務と変わらない、定期的・継続的に本社へ通っているという場合には、通勤と判断される可能性があります。

出張旅費として処理するには、その出社が一時的・臨時的なものであり、通常の勤務場所が自宅であることが重要です。


実務上は、在宅勤務者の出社頻度や出社目的を管理しておきましょう。


定額支給ではなく実費精算が望ましい

在宅勤務者の一時出社交通費について、毎月一定額を支給する方法は注意が必要です。


実際に出社したかどうか、交通費がいくらかかったかにかかわらず、一定額を渡し切りで支給する場合、その金額は給与として課税される可能性があります。


出張旅費として非課税にするためには、実際に業務上必要な移動があり、その通常必要な交通費を会社が実費弁償していることが重要です。


そのため、次のような実費精算の運用が望ましいです。

  • 出社日ごとに交通費を申請する

  • 経路と金額を確認する

  • 領収書や乗車履歴を保存する

  • 会社が承認した出社に限り精算する

  • 定期代や通勤手当と重複しないようにする


渡し切りの手当と実費精算では、税務上の印象が大きく異なります。


宿泊費や日当を支給する場合

遠方から本社へ一時出社する場合、交通費だけでなく宿泊費が発生することもあります。

労務の提供地が自宅であり、本社への出社が出張と認められる場合には、通常必要な宿泊費についても出張旅費として非課税にできる可能性があります。


ただし、宿泊費についても、旅費規程に基づく合理的な支給であることが必要です。

また、日当を支給する場合には、金額が社会通念上相当であることが求められます。


高額な日当や、実態のない宿泊費を支給している場合には、給与課税のリスクがあります。

在宅勤務者の一時出社に宿泊が伴う場合は、出張旅費として処理する根拠を残しておきましょう。


社会保険料では労働契約上の労務提供地が重要

在宅勤務者の一時出社交通費は、所得税だけでなく社会保険料の算定でも問題になります。

社会保険料では、支給する交通費が標準報酬月額の算定基礎となる「報酬」に該当するかを確認します。


社会保険の取扱いでは、労働契約上の労務の提供地が重要です。

労働契約上の労務提供地が自宅であり、業務命令により一時的に事業所等へ出社する場合、その移動にかかる実費を会社が負担する費用は、原則として実費弁償と考えられ、報酬に含まれない取扱いが示されています。


一方、労働契約上の労務提供地が本社等である場合、自宅から事業所へ出社する費用は、原則として通勤手当として報酬に含まれます。


所得税と社会保険で似たような論点ですが、判断資料や実務上の取扱いに違いが出ることもあるため、人事労務担当者とも連携して確認しましょう。


在宅勤務規程に入れておきたい内容

在宅勤務者の一時出社交通費については、社内規程を整備しておくことが重要です。


在宅勤務規程や旅費規程には、次のような内容を入れておくとよいでしょう。

  • 在宅勤務を原則とする従業員の範囲

  • 労務の提供地の考え方

  • 一時出社を命じる場合の手続

  • 一時出社時の交通費精算方法

  • 交通費は実費精算とすること

  • 合理的な経路

  • 方法によること

  • 通勤手当や定期代との重複支給をしないこと

  • 宿泊費や日当の取扱い

  • 領収書や証拠資料の保存

  • 出社頻度が変わった場合の取扱い


規程が曖昧なままだと、税務調査や社会保険調査で説明が難しくなることがあります。

働き方の実態に合わせて、規程を見直しましょう。


経費精算で保存したい資料

会社が在宅勤務者の一時出社交通費を出張旅費として処理する場合、次の資料を保存しておくと安心です。

  • 出社命令や出社依頼の記録

  • 出社目的が分かる資料

  • 会議案内や研修案内

  • 交通費精算書

  • 領収書

  • 乗車履歴

  • 経路検索結果

  • 旅費規程

  • 在宅勤務規程

  • 労働契約書や勤務地通知書

  • 通勤手当を別途支給していないことが分かる資料


特に、遠方からの出社で交通費が高額になる場合には、なぜその出社が必要だったのか、なぜその経路・金額が合理的なのかを説明できるようにしておくことが大切です。


よくある誤解

在宅勤務者の一時出社交通費について、実務上よくある誤解を整理します。


  • 在宅勤務者の交通費はすべて出張旅費になる

労務の提供地が本社等であれば、自宅から本社への移動は通勤と判断される可能性があります。


  • 月15万円を超えたら必ず給与課税される

通勤手当であれば15万円を超える部分は給与課税されますが、出張旅費に該当する場合には、通常必要な範囲で全額非課税にできる可能性があります。


  • 労働契約書に本社と書いてあっても、会社が出張扱いにすればよい

税務上は実態も考慮されますが、労働契約書や社内規程の記載は重要な判断材料です。

実態と書類が一致していない場合には、見直しを検討すべきです。


  • 実費精算でなくても非課税になる

渡し切りの手当は給与課税のリスクがあります。

出張旅費として扱うなら、旅費規程に基づく合理的な実費精算が基本です。


実務上のチェックポイント

在宅勤務者が一時出社する場合の交通費については、次の点を確認しましょう。

  • 労務の提供地は本社等か自宅か

  • 労働契約書や勤務地通知書に記載されている勤務地はどこか

  • 在宅勤務規程で自宅勤務の位置付けを明確にしているか

  • 一時出社が業務命令に基づくものか

  • 出社目的や出社頻度を記録しているか

  • 交通費は旅費規程に基づく実費精算か

  • 別途通勤手当や定期代を支給していないか

  • 合理的な経路・方法による交通費か

  • 領収書や乗車履歴を保存しているか

  • 社会保険料の報酬該当性も確認しているか


在宅勤務者の交通費は、働き方の多様化に伴って今後も問題になりやすい論点です。

所得税、社会保険、社内規程をセットで確認しましょう。


まとめ

在宅勤務者が一時的に本社等へ出社する場合の交通費は、労務の提供地によって税務上の取扱いが変わります。


労務の提供地が本社等である場合、自宅と本社等の移動は原則として通勤と考えられます。

この場合、会社が交通費を実費精算していても、通勤手当として扱われ、交通機関利用の場合は月15万円までが非課税、15万円を超える部分は給与課税されます。


一方、労務の提供地が自宅であり、業務命令により一時的に本社等へ出社する場合には、自宅から本社等への移動は「勤務する場所を離れて職務を遂行するための旅行」と考えられます。


この場合、旅費規程等に基づき実費精算し、別途通勤手当や定期代を支給していなければ、交通費の全額を出張旅費として給与課税しない取扱いが可能です。


ただし、出張旅費として処理するには、労働契約書や在宅勤務規程、旅費規程、出社命令、交通費精算書などの整備が重要です。


また、社会保険料では、労働契約上の労務提供地が自宅か本社等かにより、交通費が報酬に含まれるかどうかの判断が変わります。


原則テレワークや地方居住を認める会社では、在宅勤務者の一時出社交通費について、所得税・社会保険・社内規程の取扱いを早めに整理しておきましょう。


在宅勤務者の交通費精算や旅費規程の整備で迷う場合は、税理士や社会保険労務士へ相談することをおすすめします。


神戸での起業や開業に関するご相談、確定申告にお困りの方、顧問税理士をお探しの方は安田亮公認会計士・税理士事務所までお問い合わせください!

神戸の税理士事務所ロゴ


【この記事の執筆者】

安田 亮(公認会計士・税理士)

安田亮公認会計士・税理士事務所 代表

京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。

現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。

事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。

コメント


bottom of page