改正法人税等会計基準とは?住民税均等割の表示変更と実務上の注意点を解説
- 安田 亮
- 2 時間前
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おはようございます!代表の安田です。
企業会計基準委員会(ASBJ)は、改正企業会計基準第27号「法人税等に関する会計基準」などを公表しました。
今回の改正では、損益計算書における「法人税等」にどの税金を含めるのか、反対にどの税金を法人税等に含めないのかという考え方が整理されています。
特に実務上の影響が大きいのは、住民税均等割の表示区分が変更される点です。
これまで実務上、住民税均等割を「法人税、住民税及び事業税」に含めて表示している会社も多かったと思われます。しかし、改正後は、住民税均等割は課税対象利益を基礎とする税金に該当しないため、法人税等には含めず、その内容に応じた適切な表示区分に表示することになります。
本日は、改正法人税等会計基準の概要、課税対象利益を基礎とする税金の考え方、住民税均等割の表示変更、源泉所得税等の取扱い、適用時期、企業が準備すべき実務対応について、公認会計士の視点から解説します。
改正法人税等会計基準の概要
今回の改正法人税等会計基準では、税金を大きく次の2つに区分しています。
1つ目は、課税対象利益を基礎とする税金です。
2つ目は、課税対象利益を基礎とする税金に該当しないものです。
この区分により、それぞれの会計処理や損益計算書上の表示が整理されました。
従来は、「法人税、住民税及び事業税」という表示科目の中に、どこまでの税金を含めるべきかについて、実務上やや分かりにくい部分がありました。
たとえば、法人税や事業税所得割のように所得や利益を基礎として計算される税金は、法人税等に含めることに違和感はありません。
一方、住民税均等割や事業税付加価値割、事業税資本割のように、利益そのものを基礎として計算されない税金についても、同じように法人税等に含めてよいのかという論点がありました。
今回の改正は、この点を整理し、税金の性質に応じて表示区分を明確化したものといえます。
課税対象利益を基礎とする税金とは
改正法人税等会計基準では、課税対象利益を基礎とする税金について、課税対象利益を基礎として、課税当局の定めに従って算定された税金およびその付加税と整理しています。
簡単にいえば、会社の所得や利益をベースに計算される税金が該当します。
代表的なものとしては、次のような税金があります。
法人税
地方法人税
住民税法人税割
事業税所得割
特別法人事業税のうち所得割に関連するもの
防衛特別法人税など法人税に対する付加税
これらは、基本的に企業の課税所得や法人税額など、利益に関連する金額を基礎として計算されます。
そのため、損益計算書上は、税引前当期純利益または税引前当期純損失の次に、「法人税等」などの適切な科目で表示することになります。
従来の「法人税、住民税及び事業税」という表示科目が完全に使えなくなるというより、改正基準では「法人税等」などの適切な科目で表示する考え方が示されています。会社の表示方針や財務諸表利用者にとっての分かりやすさを踏まえ、適切な科目名を検討することになります。
住民税均等割は法人税等に含めない
今回の改正で最も分かりやすい変更点は、住民税均等割の表示区分です。
住民税均等割は、法人の所得や利益の金額に応じて課される税金ではありません。資本金等の額や従業者数などに応じて一定額が課される税金です。
そのため、改正法人税等会計基準では、住民税均等割は「課税対象利益を基礎とする税金」に該当しないものとされています。
これにより、住民税均等割は、損益計算書上の「法人税等」には含めず、その内容に応じた適切な表示区分に表示することになります。
実務上は、販売費及び一般管理費の「租税公課」などに含めて表示することが考えられます。ただし、具体的な表示科目は会社の事業内容や重要性、財務諸表の表示方針を踏まえて判断する必要があります。
事業税付加価値割・資本割も法人税等に含めない
住民税均等割と同様に、事業税付加価値割や事業税資本割も、課税対象利益を基礎とする税金には該当しないものとして整理されています。
外形標準課税の対象となる法人では、事業税が次のような要素に分かれます。
所得割
付加価値割
資本割
このうち、所得割は所得を基礎とするため、課税対象利益を基礎とする税金に該当します。
一方、付加価値割は報酬給与額、純支払利子、純支払賃借料、単年度損益などを基礎として計算されます。資本割は資本金等の額を基礎として計算されます。
そのため、付加価値割と資本割は、法人税等には含めず、その内容に応じた適切な表示区分に表示することになります。
この取り扱いについては、これまでの実務を踏襲した形となっていると言えます。
源泉所得税等の取扱い
今回の改正では、受取利息や受取配当金等に課される源泉所得税等の取扱いも整理されています。
受取利息や受取配当金に対して源泉徴収される所得税等は、会社の課税対象利益そのものを基礎として計算される税金ではありません。
そのため、原則として、課税対象利益を基礎とする税金には該当しません。
ただし、税額控除の対象となるかどうか、また会社が税額控除を選択するかどうかによって、損益計算書上の表示が変わります。
税額控除を選択する場合
源泉所得税等が税額控除の対象となり、会社が税額控除を選択する場合には、その税額は法人税等に含めて表示します。税額控除により法人税等の計算に組み込まれるため、法人税等の一部として表示することになります。
税額控除を選択しない場合
一方、税額控除の対象となる税額であっても、会社が税額控除を選択しない場合には、法人税等には含めず、その内容に応じた適切な表示区分に表示します。
たとえば、受取利息や受取配当金に対応する源泉税であれば、営業外収益に関連する費用として表示することなどが考えられます。
税額控除の対象とならない場合
税額控除の対象とならない税額についても、原則として法人税等には含めず、その内容に応じた適切な表示区分に表示することになります。
ただし、外国子会社配当益金不算入制度の適用を受ける外国子会社から受ける配当に係る外国源泉所得税については、法人税等に含めて表示する取扱いが示されています。
外国税金の取扱いにも注意
親会社や国内子会社が外国の法令に従って納付する税金についても、その税金が課税対象利益を基礎とする税金に該当するかどうかを判断する必要があります。
海外展開している企業では、外国子会社からの配当、外国源泉税、海外支店に係る税金、外国税額控除など、税金の種類が複雑になりがちです。
今回の改正では、課税対象利益を基礎とする税金に該当しない外国税金について、法人税等に含めるかどうかが整理されています。
特に、外国源泉所得税については、税額控除の対象となるか、税額控除を選択するか、外国子会社配当益金不算入制度との関係があるかによって表示が変わるため、決算時に個別の確認が必要です。
適用時期
改正法人税等会計基準の適用時期は、原則として、2028年4月1日以後開始する事業年度または連結会計年度の期首からです。
3月決算法人であれば、2029年3月期からの適用になります。
また、早期適用も認められています。具体的には、公表日以後開始する事業年度または連結会計年度の期首から適用することができます。
適用初年度の経過措置として、新たな会計方針の遡及適用は不要とされています。また、比較情報の組替えも不要とされています。
この点は実務上重要です。表示区分の変更がある場合でも、過年度の損益計算書を遡って組み替える必要がないため、適用初年度の負担は一定程度軽減されています。
実務上影響が大きい会社
今回の改正は、すべての会社に関係しますが、特に影響が大きいのは次のような会社です。
住民税均等割を法人税等に含めて表示している会社
外形標準課税の対象法人
事業税を所得割、付加価値割、資本割に分けずに処理している会社
受取利息、受取配当金、外国源泉税が多い会社
海外子会社や海外支店がある会社
連結財務諸表を作成している会社
決算短信や有価証券報告書を作成している上場会社
税金計算シートをExcelで独自管理している会社
特に、外形標準課税の対象法人では、事業税の表示区分が論点になりやすいです。
所得割は法人税等に含める一方、付加価値割・資本割は法人税等に含めないという整理が必要になります。
また、上場会社では、連結パッケージや開示チェックリスト、決算短信、有価証券報告書の表示科目にも影響するため、早めの準備が必要です。
決算実務で確認すべきポイント
改正法人税等会計基準への対応として、企業の経理担当者は次の点を確認しておくとよいでしょう。
1. 現在の表示区分を確認する
まず、自社が現在、どの税金を「法人税、住民税及び事業税」または「法人税等」に含めているかを確認します。特に、次の項目をチェックする必要があります。
住民税均等割
事業税付加価値割
事業税資本割
受取利息に係る源泉所得税
受取配当金に係る源泉所得税
外国源泉所得税
海外で納付する税金
これらが現在どの勘定科目・表示科目で処理されているかを把握することが第一歩です。
2. 税金の性質ごとに区分する
次に、それぞれの税金が「課税対象利益を基礎とする税金」に該当するかを判定します。
法人税、地方法人税、住民税法人税割、事業税所得割などは、課税対象利益を基礎とする税金に該当します。
一方、住民税均等割、事業税付加価値割、事業税資本割は該当しません。
源泉所得税等については、税額控除の対象となるか、税額控除を選択するかによって表示が変わります。
このように、税金の名称だけで機械的に判断するのではなく、税金が何を基礎として課されているかを確認することが重要です。
3. 勘定科目と表示科目を見直す
表示区分が変更される場合、会計システムや勘定科目の設定を見直す必要があります。
たとえば、住民税均等割をこれまで「法人税、住民税及び事業税」の中で処理していた場合、改正後は租税公課などの別科目で処理することが考えられます。
また、事業税についても、所得割、付加価値割、資本割を区分して集計できるようにしておく必要があります。
決算時に税額計算書から手作業で分けることも可能ですが、金額的重要性がある会社では、会計システムや税金計算シートの段階で区分できるようにしておく方が効率的です。
4. 連結パッケージを見直す
連結財務諸表を作成している会社では、子会社から収集する連結パッケージの様式にも影響します。
子会社が住民税均等割や事業税付加価値割・資本割を法人税等に含めて報告している場合、親会社側で組替えが必要になります。
海外子会社がある場合には、現地税金のうち課税対象利益を基礎とする税金に該当するものと、該当しないものを区分する必要があります。
改正基準の適用に向けて、連結パッケージ上の税金区分、入力項目、注記情報、チェックリストを見直しておくことが望まれます。
5. 比較情報の取扱いを確認する
適用初年度には、新たな会計方針の遡及適用や比較情報の組替えは不要とされています。
そのため、適用初年度の財務諸表では、前期比較との見え方に影響が出る可能性があります。
たとえば、住民税均等割を法人税等から租税公課等に変更した場合、法人税等の金額や税引前当期純利益以下の表示に変化が生じます。
財務諸表利用者に誤解を与えないよう、必要に応じて表示変更の内容を説明することが考えられます。
税効果会計への影響
今回の改正は、法人税等の表示区分を整理するものですが、税効果会計との関係も確認しておく必要があります。
税効果会計では、将来の法人税等の額を調整する効果を反映するため、法定実効税率を用いて繰延税金資産・繰延税金負債を計算します。
課税対象利益を基礎としない税金は、通常、法定実効税率の計算に含める性質のものではありません。
住民税均等割や事業税資本割のように、利益にかかわらず課される税金は、税効果会計上の一時差異に対応する税金とは性質が異なります。
実務上は、改正基準への対応とあわせて、自社の法定実効税率計算、税金費用の表示、税効果注記の整合性を確認しておくことが重要です。
中小企業にも影響はあるか
今回の改正は、上場会社や大企業だけの話ではありません。
中小企業であっても、会社法計算書類を作成する場合や、金融機関・親会社・投資家に財務諸表を提出する場合には、表示区分の考え方を理解しておくことが望ましいです。
特に、多くの中小企業でも住民税均等割は発生します。これを法人税等に含めるのか、租税公課などで処理するのかは、損益計算書の表示に影響します。
もっとも、中小企業では重要性が限定的な場合もあります。実務上は、会計基準への準拠性、財務諸表の利用目的、金額的重要性を踏まえて、顧問税理士や会計士と相談しながら対応を検討することが現実的です。
改正対応で見落としやすいポイント
今回の改正対応では、次のような点を見落としやすいため注意が必要です。
住民税均等割を従来どおり法人税等に含めてしまう
事業税の所得割、付加価値割、資本割を区分していない
外国源泉税の税額控除の選択状況を確認していない
会計システムの勘定科目設定を見直していない
連結パッケージ上の税金区分を変更していない
決算短信や有価証券報告書の表示科目チェックを更新していない
税効果会計で使用する税率との整合性を確認していない
比較情報の組替え不要という経過措置を把握していない
特に、税金計算そのものは税務申告ソフトで対応できても、会計上の表示区分は会社側で判断・設定しなければならないケースがあります。
税額計算と財務諸表表示は別の論点であるため、決算プロセスの中で両方を確認することが重要です。
公認会計士の視点から見た実務対応
公認会計士の視点から見ると、今回の改正は、単なる表示科目の変更ではなく、税金の性質を踏まえた損益計算書表示の整理といえます。
実務対応としては、次の3点が重要です。
1. 税金を一括りにしない
これまで「法人税等」「租税公課」「源泉税」などとして処理していた税金について、何を基礎に課されている税金なのかを確認する必要があります。
税金の名称ではなく、課税の対象や計算方法に着目することが重要です。
2. 表示区分と税務処理を混同しない
今回の改正は、主に会計上の表示に関するものです。
税務申告上の納付額や税額計算そのものが変わるわけではありません。
ただし、会計上の表示科目が変わることで、損益計算書の見え方、法人税等の負担率、税効果会計の説明、決算短信や有価証券報告書の表示に影響します。
3. 適用前にシステム・資料・チェックリストを更新する
適用時期は2028年4月1日以後開始事業年度の期首からですが、早期適用も可能です。
適用直前に慌てないためには、会計システム、税金計算シート、連結パッケージ、決算チェックリスト、開示チェックリストを早めに見直しておくことが望まれます。
特に、上場会社や連結財務諸表作成会社では、子会社への周知やパッケージ改訂にも時間がかかります。早めの準備が実務負担の軽減につながります。
まとめ
ASBJが公表した改正法人税等会計基準では、課税対象利益を基礎とする税金と、課税対象利益を基礎としない税金の取扱いが整理されました。
法人税、住民税法人税割、事業税所得割などは、課税対象利益を基礎とする税金として、損益計算書上「法人税等」などに表示されます。
一方、住民税均等割、事業税付加価値割、事業税資本割は、課税対象利益を基礎とする税金に該当しないため、法人税等には含めず、その内容に応じた適切な表示区分に表示することになります。
また、受取利息や受取配当金等に係る源泉所得税等については、税額控除の対象となるか、税額控除を選択するかによって表示区分が変わります。
適用時期は、原則として2028年4月1日以後開始する事業年度または連結会計年度の期首からです。早期適用も可能であり、適用初年度は遡及適用や比較情報の組替えは不要とされています。
企業は、現在の税金表示を確認し、住民税均等割や事業税付加価値割・資本割、源泉所得税、外国税金の表示区分を見直す必要があります。
改正対応にあたっては、税金計算だけでなく、会計システム、連結パッケージ、決算短信、有価証券報告書、税効果会計との整合性まで含めて、早めに準備しておくことが重要です。
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【この記事の執筆者】
安田 亮(公認会計士・税理士)
安田亮公認会計士・税理士事務所 代表
京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。
現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。
事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。





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