永年勤続表彰で旅行券を支給すると給与課税される?非課税にするための要件を税理士が解説
- 安田亮
- 11 分前
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おはようございます!代表の安田です。
従業員が長く会社に貢献してくれたことへの感謝として、永年勤続表彰を行う会社は少なくありません。
勤続10年、20年、30年などの節目に、記念品を贈ったり、旅行へ招待したり、旅行券を支給したりする制度です。
こうした制度は、従業員のモチベーション向上や定着率の向上にもつながります。一方で、税務上は「給与として課税されるのか」「福利厚生費として処理できるのか」が問題になります。
特に旅行券は、現金に近い性質を持つため、何も条件を付けずに支給すると、原則として給与課税の対象になります。
本日は、永年勤続表彰の記念品や旅行券を支給した場合の所得税の取扱い、給与課税されないための要件、旅行券を支給する際の実務上の注意点、コロナ禍のような特殊事情により報告期間を延長する場合の考え方について解説します。
永年勤続表彰の記念品は一定要件で給与課税されない
会社が永年勤続者を表彰し、記念品を支給したり、旅行や観劇に招待したりする場合、一定の要件を満たせば、従業員に対する給与として課税しなくてよい取扱いがあります。
国税庁は、永年勤続者に支給する記念品や旅行・観劇への招待費用について、次の要件を満たす場合には給与として課税しなくてもよいと案内しています。
勤続年数や地位などに照らして、社会一般的にみて相当な金額以内であること
勤続年数がおおむね10年以上の人を対象としていること
同じ人を2回以上表彰する場合は、前回の表彰からおおむね5年以上の間隔があること
つまり、永年勤続表彰だから必ず非課税というわけではありません。
対象者、表彰間隔、金額水準、支給内容が、社会通念上相当なものかを確認する必要があります。
現金や商品券は原則として給与課税
永年勤続表彰で注意したいのが、現金や商品券の支給です。
国税庁は、記念品の支給や旅行・観劇への招待に代えて、現金や商品券などを支給する場合、その全額が給与として課税されるとしています。また、本人が自由に記念品を選べる場合も、その記念品の価額が給与として課税されると説明しています。
現金はもちろん、商品券やギフトカードのように自由に使えるものは、実質的に金銭を支給したのと同じと考えられるためです。
たとえば、次のような支給は給与課税のリスクが高いといえます。
永年勤続表彰として現金10万円を支給する
百貨店の商品券を支給する
使途を限定しないギフトカードを支給する
従業員が自由に商品を選べるカタログギフトを支給する
この場合、会社側では給与として源泉徴収の対象にし、従業員側では給与所得として課税されることになります。
旅行券は原則として給与課税される
旅行券は、旅行に使う目的で支給されるため、現金とは違うようにも見えます。
しかし、税務上は注意が必要です。
旅行への招待ではなく旅行券を支給した場合、一般的には有効期限がなく換金性があり、実質的に金銭を支給したことと同様となるため、原則として給与課税されます。
つまり、会社が単に旅行券を渡すだけでは、従業員が本当に旅行に使ったか分かりません。旅行券を換金したり、旅行以外の目的に使ったりできる場合には、現金を支給したのと同じように扱われる可能性があります。
したがって、旅行券を非課税として扱いたい場合には、「実質的に金銭を支給したのと同じではない」と説明できる運用が必要です。
旅行券が給与課税されないための要件
旅行券であっても、一定の条件を満たし、実質的に旅行への招待と同じと認められる場合には、給与課税しなくて差し支えないとされています。
永年勤続記念旅行券について、次のような要件を満たす場合には、給与課税しなくて差し支えないと整理されています。
支給後1年以内に旅行を実施すること
旅行の範囲が支給した旅行券の額からみて相当なものであること
旅行日、旅行先などの必要事項を記載した報告書を会社へ提出すること
旅行先等を確認できる資料を報告書に添付すること
この取扱いは、昭和60年の個別通達「永年勤続記念旅行券の支給に伴う課税上の取扱いについて」に基づくものです。
要するに、旅行券を渡して終わりにするのではなく、会社が旅行の実施状況を確認し、旅行券が旅行目的で使われたことを記録として残す必要があります。
旅行実施後の報告書が重要
旅行券を給与課税しない取扱いにするためには、旅行後の報告書が非常に重要です。
報告書には、少なくとも次のような事項を記載してもらうとよいでしょう。
従業員の氏名
表彰年度
勤続年数
旅行券の支給日
旅行券の金額
旅行実施日
旅行先
同行者の有無
旅行券の使用額
宿泊先や交通機関
旅行の事実を確認できる資料の添付
添付資料としては、次のようなものが考えられます。
旅行会社の領収書
宿泊施設の領収書
交通機関の領収書
旅行日程表
予約確認メール
旅行券の利用明細
会社側では、旅行券の支給台帳、従業員からの報告書、添付資料をセットで保存しておくとよいでしょう。
支給額は社会通念上相当な範囲にする
旅行券を支給する場合、金額が大きすぎると給与課税のリスクが高まります。
国税庁は、永年勤続表彰の旅行・観劇への招待費用について、勤続年数や地位などに照らして社会一般的にみて相当な金額以内であることを要件としています。
たとえば、勤続10年の従業員に数万円相当の旅行券を支給する制度であれば、社会通念上相当と説明しやすいかもしれません。
一方で、勤続10年の従業員に数十万円、役員にだけ高額な旅行券を支給するような場合には、福利厚生としての相当性が問題になる可能性があります。
実務上は、勤続年数ごとに支給額を明確に定め、社内規程に基づいて公平に運用することが重要です。
たとえば、次のような形です。
勤続10年:旅行券5万円
勤続20年:旅行券10万円
勤続30年:旅行券15万円
金額水準は会社の規模、業種、従業員の地位、過去の運用、一般的な福利厚生水準を踏まえて設定しましょう。
勤続年数はおおむね10年以上が目安
永年勤続表彰として給与課税しないためには、対象者がおおむね10年以上の勤続年数の者であることが必要です。
国税庁も、永年勤続者に対する記念品や旅行・観劇への招待について、勤続年数がおおむね10年以上の人を対象としていることを要件としています。
そのため、勤続3年や5年などの短期間の従業員に対して、同じように旅行券を支給する場合には、永年勤続表彰として非課税扱いにできるか慎重に判断する必要があります。
同じ人を複数回表彰する場合は5年以上の間隔を空ける
永年勤続表彰は、同じ従業員に複数回行われることがあります。
たとえば、勤続10年、20年、30年の節目で表彰するケースです。
この場合、同じ人を2回以上表彰するなら、前回の表彰からおおむね5年以上の間隔が空いていることが必要です。
毎年のように同じ従業員へ旅行券や記念品を支給している場合、それは永年勤続表彰ではなく、通常の給与や賞与に近いものと見られる可能性があります。
社内規程では、対象勤続年数と表彰間隔を明確にしておきましょう。
会社が整備しておきたい社内規程
旅行券を永年勤続表彰として非課税扱いにしたい場合、社内規程の整備が重要です。
規程には、少なくとも次のような事項を定めておくとよいでしょう。
1. 表彰の目的
従業員の長年の貢献に感謝し、勤労意欲の向上を図るための制度であることを明記します。
2. 対象者
勤続10年、20年、30年など、対象となる勤続年数を定めます。
役員だけ、特定部署だけ、特定の従業員だけに恣意的に支給する制度にならないよう注意しましょう。
3. 支給内容
旅行券、旅行への招待、記念品など、支給内容を明確にします。
旅行券を支給する場合には、旅行目的に限定する旨を定めます。
4. 支給額
勤続年数ごとの支給額を定めます。
社会通念上相当な金額であることを説明できる水準にしましょう。
5. 使用期限
旅行券支給後、原則として1年以内に旅行を実施することを定めます。
やむを得ない事情がある場合の延長手続も定めておくと実務上便利です。
6. 報告義務
旅行実施後、旅行日、旅行先、使用額などを記載した報告書を提出することを定めます。
旅行先等を確認できる資料の添付も求めましょう。
7. 未使用・換金・譲渡の禁止
旅行券を旅行以外に使用すること、換金すること、第三者に譲渡することを禁止します。
未使用の場合の返還や給与課税の取扱いも明確にしておくと安心です。
経理処理の考え方
永年勤続表彰として旅行券を支給し、給与課税しない要件を満たす場合、会社側では福利厚生費や表彰費などとして処理することが考えられます。
一方、要件を満たさない場合には、従業員に対する給与として取り扱い、源泉徴収の対象になります。たとえば、次のように整理できます。
非課税扱いできる場合:
福利厚生費 / 普通預金
給与課税が必要な場合:
給与手当 / 普通預金源泉所得税の徴収・納付が必要
旅行券を支給した時点で非課税として処理する場合でも、後日、旅行実施報告が提出されない、旅行以外に使用された、換金された、といった事実が判明すれば、給与課税の検討が必要になります。
そのため、支給時だけでなく、支給後の管理が重要です。
旅行券支給時の実務チェックリスト
永年勤続表彰で旅行券を支給する場合には、次の点を確認しましょう。
1. 対象者は勤続おおむね10年以上か
勤続年数の要件を満たしているかを確認します。
2. 前回表彰からおおむね5年以上空いているか
同じ従業員を複数回表彰する場合、前回からの間隔を確認します。
3. 金額は社会通念上相当か
勤続年数、役職、会社規模、一般的な福利厚生水準に照らして、過大でないかを確認します。
4. 現金・商品券ではないか
現金や商品券は原則として給与課税です。旅行券も運用を誤ると給与課税されます。
5. 旅行券の使用期限を定めているか
原則として支給後1年以内に旅行を実施する運用にします。
6. 旅行実施報告を求めているか
旅行日、旅行先、利用内容を記載した報告書と確認資料を提出させます。
7. 未使用・換金・譲渡のルールを定めているか
旅行券が実質的に現金と同じ扱いにならないよう、規程や通知で明確にします。
8. 延長する場合は理由と期間が妥当か
感染症、災害、渡航制限など、やむを得ない事情で延長する場合には、理由、対象者、延長期間、報告義務を文書化します。
よくある誤解
永年勤続表彰なら何を渡しても非課税
誤りです。現金や商品券の支給は原則として給与課税です。記念品や旅行招待も、金額や対象者などの要件を満たす必要があります。
旅行券なら旅行目的なので必ず非課税
旅行券は換金性があり、実質的に金銭支給と同じと見られることがあります。支給後1年以内の旅行実施、報告書の提出、旅行先資料の添付などの運用が重要です。
報告書を提出させなくても大丈夫
報告書がなければ、旅行券が実際に旅行に使われたか確認できません。給与課税されない取扱いを維持するには、旅行実施報告と確認資料の保存が重要です。
コロナ禍のような事情があっても1年を超えたら必ず課税
添付資料の文書回答では、新型コロナの影響で報告期間を1年延長した場合でも、一定の事実関係を前提に給与課税しなくて差し支えないとされています。再延長も、状況と期間が妥当であれば同様に取り扱える可能性があります。
役員だけ高額に支給しても福利厚生費になる
役員だけを対象にした高額な旅行券支給は、給与課税や役員給与の損金不算入の問題が生じる可能性があります。対象者や金額の公平性・相当性が重要です。
まとめ
永年勤続表彰として従業員に記念品を支給したり、旅行・観劇に招待したりする場合、一定の要件を満たせば給与課税しなくてよい取扱いがあります。
主な要件は、勤続年数や地位に照らして社会通念上相当な金額であること、勤続年数がおおむね10年以上の人を対象としていること、同じ人を複数回表彰する場合には前回からおおむね5年以上の間隔があることです。
一方、現金や商品券の支給は原則として給与課税されます。旅行券についても、一般的には換金性があり、実質的に金銭を支給したのと同じと見られるため、原則として給与課税の対象になります。
旅行券を給与課税しない取扱いにするためには、支給後1年以内に旅行を実施し、旅行日・旅行先などを記載した報告書と確認資料を会社へ提出させるなど、実質的に旅行招待と同じであることを示す運用が必要です。
また、コロナ禍のような特殊事情で旅行実施や報告が難しい場合には、報告期間を延長しても給与課税しなくて差し支えないとされた文書回答があります。ただし、延長理由や延長期間の妥当性、旅行実施報告の仕組みを明確にしておくことが重要です。
永年勤続表彰は、従業員の貢献に報いる大切な制度です。税務上のリスクを避けるためにも、社内規程、支給額、対象者、旅行券の使用期限、報告書の提出、未使用時の取扱いを整備し、福利厚生制度として説明できる形で運用しましょう。
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【この記事の執筆者】
安田 亮(公認会計士・税理士)
安田亮公認会計士・税理士事務所 代表
京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。
現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。
事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。





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