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2027年3月期の会計方針変更注記とは?対象となる会計基準と実務上の注意点

  • 執筆者の写真: 安田亮
    安田亮
  • 12 時間前
  • 読了時間: 12分

こんばんは!代表の安田です。


2027年3月期は、複数の新しい会計基準や実務指針が適用される年度です。


そのため、決算担当者の中には、「新しい会計基準を適用した以上、会計方針の変更に関する注記が必要になるのではないか」と考える方もいるかもしれません。


しかし、新しい会計基準が適用されたからといって、必ずしもすべての会社で会計方針変更の注記が必要になるわけではありません。


2027年3月期に適用される会計基準等の中には、従来の会計処理を変更する会社だけが注記対象となるものや、特定の取引を行っている会社にしか影響しないものがあります。


本日は、2027年3月期において会計方針の変更に関する注記が必要となる可能性がある主なケースと、経理・決算実務で確認すべきポイントを公認会計士の視点から解説します。


会計方針の変更に関する注記とは

会計方針とは、財務諸表を作成するために会社が採用している会計処理の原則や手続をいいます。たとえば、棚卸資産の評価方法、減価償却方法、収益認識の方法、金融商品の評価方法などが該当します。


会計基準の新設・改正により、従来採用していた会計処理を変更した場合には、その内容を財務諸表の注記で説明することがあります。一般的には、次のような事項を記載します。

  • 会計方針を変更した理由

  • 変更した会計方針の内容

  • 財務諸表に与える影響額

  • 遡及適用の方法

  • 比較情報への影響


ただし、新しい会計基準を適用しても、従来と会計処理が変わらない場合や、自社に該当する取引がない場合には、会計方針の変更に関する注記が不要となることがあります。


2027年3月期は注記対象がそれほど多くない可能性

2027年3月期の期首から適用される会計基準等はいくつかあります。


もっとも、それらの適用によって会計方針変更の注記が必要になるケースは、全体としては限定的と考えられます。主な理由は次のとおりです。

  • 適用対象となる取引を行なっている会社が限られている

  • 会計基準の適用によっても従来の処理が変わらない会社が多い

  • 複数の処理方法から選択でき、従来の処理を継続することも可能

  • 原則適用が将来年度であり、2027年3月期は早期適用した会社だけが対象となる基準がある


したがって、決算時には「新基準があるかどうか」だけを見るのではなく、「自社の会計処理が実際に変わったか」を確認することが重要です。


期中財務諸表に関する会計基準

2025年10月16日に公表された「期中財務諸表に関する会計基準」は、2027年3月期の期首から適用される会計基準の一つです。

ただし、この会計基準の適用により、会計方針変更の注記が必要となるケースは限定的です。


従来、期中財務諸表において次の処理を行なっていた会社が対象になる可能性があります。

  • 有価証券の減損処理に切放し法を適用していた

  • 棚卸資産の簿価切下げに切放し法を適用していた

  • 新基準の適用に伴い、期中洗替え法へ変更する


このように、従来の処理方法から別の方法へ変更する場合には、会計方針の変更に関する注記が必要となる可能性があります。


一方、もともと期中洗替え法を採用していた会社や、該当する有価証券・棚卸資産がない会社では、注記が必要となる可能性は低いと考えられます。


切放し法と洗替え法の違い

有価証券の減損や棚卸資産の簿価切下げでは、「切放し法」と「洗替え法」という処理方法があります。

  • 切放し法

切放し法では、期中に認識した評価損や簿価切下げ額を、期末までそのまま維持します。

その後、価格や収益性が回復しても、原則として期中に認識した評価損等を戻し入れません。


  • 洗替え法

洗替え法では、期中に認識した評価損等を次の期中決算でいったん戻し入れ、その時点の状況に基づいて改めて評価します。

そのため、期中の評価損が期末まで固定されず、各決算日時点の状況に応じた金額が反映されます。


新しい期中財務諸表会計基準の適用により、この処理方法を変更する会社では、会計方針変更の注記を検討する必要があります。


ベンチャーキャピタルファンドへの出資に関する改正

2025年3月11日に公表された改正「金融商品会計に関する実務指針」では、上場企業等が保有するベンチャーキャピタルファンドの出資持分に関する会計上の取扱いが定められました。


この改正は、すべての会社に影響するものではありません。対象となる可能性があるのは、たとえば次のような会社です。

  • 投資事業有限責任組合などへ出資している

  • ベンチャーキャピタルファンドへ投資している

  • 組合の構成資産に市場価格のない株式が含まれている

  • その市場価格のない株式について時価評価を選択する


このような場合、従来の会計処理から評価方法が変わる可能性があるため、会計方針変更の注記を検討する必要があります。


一方、組合等への投資がない会社や、時価評価を選択しない会社では、直接的な影響は限定的と考えられます。


組合等への投資で確認すべきポイント

ベンチャーキャピタルファンドや投資事業有限責任組合への出資がある会社では、次の点を確認する必要があります。

  • 出資先がどのような組合形態であるか

  • 組合の構成資産に未上場株式が含まれているか

  • 未上場株式の評価方法を変更するか

  • 新しい会計処理を選択適用するか

  • 変更に伴う評価差額や損益への影響

  • 連結財務諸表と個別財務諸表での取扱い

ファンド投資は、保有する有価証券を直接評価する場合と異なり、組合財産を通じた間接投資となります。


そのため、経理担当者は出資契約書、ファンドの決算報告書、構成資産の明細、評価方針などを確認し、自社に改正実務指針が適用されるかを判断する必要があります。


リース会計基準を早期適用する場合

2024年9月13日に公表された「リースに関する会計基準」についても、早期適用する場合には、会計方針の変更に関する注記が必要となる可能性があります。


新しいリース会計基準では、借手のリースについて、原則として使用権資産とリース負債を貸借対照表に計上する方向で会計処理が大きく変わります。


従来、賃貸借処理をしていたオペレーティング・リースの一部が貸借対照表に計上されるため、次の項目に影響する可能性があります。

  • 総資産

  • 有利子負債

  • 減価償却費

  • 支払利息

  • 営業利益

  • EBITDA

  • 自己資本比率

  • 財務制限条項


ただし、多くの会社では2028年3月期の期首から原則適用するものとみられており、2027年3月期から適用するのは早期適用を選択した会社に限られます。


そのため、2027年3月期の会計方針変更注記としては、早期適用会社が主な対象となります。


改正金融商品会計基準を早期適用する場合

2026年6月2日に公表された改正「金融商品に関する会計基準」についても、早期適用する場合には会計方針変更の注記が必要となる可能性があります。


この改正では、譲受人が特別目的会社、いわゆるSPCである場合の金融資産の消滅範囲が明確化されています。


主に、債権流動化、証券化、信託受益権化などを行っている会社に影響する可能性があります。ただし、一般的な事業会社のすべてに影響するものではなく、対象となる取引を行なっている会社は限定的です。具体的には、次のような会社で確認が必要です。

  • 売掛債権や貸付金の流動化を行なっている

  • SPCを用いた証券化取引を行なっている

  • 信託を利用した金融資産の譲渡がある

  • 金融資産の消滅認識について複雑な契約がある


該当する場合には、金融資産の認識中止の範囲が変わるか、従来の会計処理に影響があるかを確認する必要があります。


会計方針変更の注記が必要か判断する手順

2027年3月期の決算では、次の順序で確認すると実務上整理しやすくなります。


1. 適用される会計基準等を一覧化する

まず、自社に関係する新設・改正会計基準を一覧にします。

代表的には、次の基準等が候補になります。

  • 期中財務諸表に関する会計基準

  • 改正金融商品会計に関する実務指針

  • リースに関する会計基準

  • 改正金融商品に関する会計基準


2. 自社に対象取引があるか確認する

次に、それぞれの基準について、自社に対象となる取引があるかを確認します。

たとえば、ファンド投資がない会社では、ベンチャーキャピタルファンドに関する改正の影響はありません。

SPCを用いた金融資産の譲渡がなければ、金融資産の消滅範囲の改正による影響も限定的です。


3. 従来の会計処理が変わるか確認する

対象取引があっても、従来の会計処理が変わらない場合には、会計方針変更の注記が不要となる可能性があります。

重要なのは、新基準の適用そのものではなく、採用する会計処理が実際に変更されたかどうかです。


4. 早期適用を選択しているか確認する

リース会計基準などは、原則適用年度より前に早期適用することができます。

早期適用を選択した場合には、会計方針変更の注記だけでなく、財務諸表や業績指標への影響も検討する必要があります。


5. 重要性を検討する

会計方針を変更した場合でも、財務諸表への影響が極めて限定的なことがあります。

注記の要否や記載内容を検討する際には、金額的重要性と質的重要性の双方を考慮します。


注記文案を作成する際のポイント

会計方針の変更に関する注記を作成する場合には、単に基準名を書くのではなく、財務諸表利用者が変更内容を理解できるように記載する必要があります。

一般的には、次のような構成が考えられます。


  • 適用した会計基準等

どの会計基準や実務指針を適用したかを記載します。

  • 適用日

いつから適用したかを記載します。

  • 変更内容

従来の会計処理と変更後の会計処理を簡潔に説明します。

  • 変更理由

会計基準の適用による変更であることや、早期適用を選択した理由などを記載します。

  • 財務諸表への影響

総資産、負債、純資産、売上高、営業利益、税引前利益、当期純利益などへの影響額を記載します。影響が軽微な場合には、その旨を記載することも考えられます。


上場会社が特に注意すべき点

上場会社では、会計方針変更の注記が有価証券報告書だけでなく、決算短信や半期報告書にも影響する可能性があります。


特に、期中財務諸表に関する会計基準を適用する場合には、第1四半期や半期の段階から注記の要否を確認する必要があります。


また、会計方針変更によってKPIや経営指標が変化する場合には、IR資料での説明も検討すべきです。たとえば、新リース会計基準を早期適用すると、次のような指標が変化する可能性があります。

  • EBITDA

  • 営業利益

  • 総資産回転率

  • 自己資本比率

  • ROA

  • 有利子負債倍率


会計上の利益やキャッシュ・フローの実態が大きく変わらなくても、表示方法の変更により指標が動くことがあります。そのため、投資家や金融機関に誤解を与えないよう説明することが重要です。


監査法人との早期協議が重要

会計方針変更の注記は、決算直前に初めて検討すると対応が遅れることがあります。

特に、次のような場合には、早めに監査法人と協議しておくことが望まれます。

  • 早期適用を検討している

  • 会計処理の選択肢が複数ある

  • 適用範囲の判断が難しい

  • 影響額が大きい

  • 比較情報への影響がある

  • 期中財務諸表にも影響する

  • 注記文案の作成に判断を要する


監査法人との協議では、適用範囲、経過措置、会計処理、影響額、注記内容をまとめて確認すると効率的です。


実務上よくある見落とし

2027年3月期の会計方針変更注記では、次のような見落としに注意が必要です。

  • 新基準を適用しただけで必ず注記が必要と考えてしまう

  • 対象取引の有無を確認していない

  • 早期適用の意思決定が社内で共有されていない

  • 期中決算での処理変更を年度末まで把握していない

  • ファンド投資の構成資産を確認していない

  • SPC取引の有無を経理部門だけで判断している

  • 会計方針変更と会計上の見積り変更を混同している

  • 影響額の算定を決算直前まで行っていない

  • 決算短信と有価証券報告書の記載が不整合になっている


特に、ファンド投資や金融資産の流動化は、経理部門以外の財務部門・投資部門が管理している場合があります。


そのため、会計基準の適用確認は、経理部門だけで完結させず、関係部署へ照会することが重要です。


まとめ

2027年3月期には、期中財務諸表に関する会計基準、改正金融商品会計に関する実務指針など、複数の会計基準等が適用されます。


ただし、新しい基準が適用されるからといって、すべての会社で会計方針の変更に関する注記が必要になるわけではありません。


実際に注記が必要となる可能性があるのは、主に次のようなケースです。

  • 有価証券の減損や棚卸資産の簿価切下げについて、切放し法から期中洗替え法へ変更する

  • ベンチャーキャピタルファンド等の構成資産に含まれる市場価格のない株式を時価評価する

  • 新リース会計基準を早期適用する

  • 改正金融商品会計基準を早期適用し、金融資産の消滅認識に影響がある


決算実務では、適用基準を一覧化したうえで、自社に対象取引があるか、従来の会計処理が変わるか、早期適用を選択しているかを確認することが重要です。


会計方針変更の注記は、新基準の名称を並べるためのものではありません。財務諸表利用者に対して、どのような会計処理が変わり、財務数値にどのような影響があるかを説明するためのものです。


2027年3月期の決算に向けて、早い段階から対象取引と会計処理を整理し、必要に応じて監査法人と協議しておくことをおすすめします。


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【この記事の執筆者】

安田 亮(公認会計士・税理士)

安田亮公認会計士・税理士事務所 代表

京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。

現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。

事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。

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