マイナポータル連携で年末調整・確定申告はどう変わる?控除証明書の電子化を税理士が解説
- 安田亮
- 7 時間前
- 読了時間: 13分
おはようございます!代表の安田です。
年末が近づくと、生命保険会社や損害保険会社などから控除証明書が届き始めます。
生命保険料控除証明書、地震保険料控除証明書、国民年金保険料の控除証明書、住宅ローン控除関係書類など、年末調整や確定申告ではさまざまな書類を確認しなければなりません。
従来は、紙で届いた控除証明書を従業員が見ながら申告書に記入し、会社へ提出する方法が一般的でした。
しかし、紙の控除証明書を使った手続きでは、記入ミス、添付漏れ、紛失、会社側の確認作業など、従業員・勤務先の双方に負担がかかります。
そこで活用したいのが「マイナポータル連携」です。
マイナポータル連携を使うと、年末調整や確定申告で必要な控除証明書等のデータを一括取得し、申告書の該当項目へ自動入力することができます。
本日は、マイナポータル連携の仕組み、対象となる控除証明書、利用するメリット、事前準備、会社側が確認しておきたいポイントについて解説します。
マイナポータル連携とは
マイナポータル連携とは、年末調整や確定申告の手続きにおいて、マイナポータルを通じて控除証明書等のデータを取得し、申告書へ自動入力できる仕組みです。
たとえば、生命保険料控除証明書や地震保険料控除証明書の内容を、保険会社から電子データとして取得し、年末調整ソフトや確定申告書等作成コーナーに反映できます。
これにより、紙の証明書を見ながら金額を入力したり、控除区分を選んだりする手間を減らせます。
また、複数の保険会社や証明書発行機関のデータをまとめて取得できるため、書類の整理や入力作業が効率化されます。
従業員にとっては申告書作成の負担が減り、会社にとっては証明書の確認や保管にかかる事務コストを抑えられる点が大きなメリットです。
年末調整で紙の控除証明書を使う場合の課題
年末調整では、従業員が各種控除申告書を作成し、勤務先へ提出します。
紙の控除証明書を使う場合、次のようなミスや手間が発生しやすくなります。
控除証明書を紛失してしまう
申告書に記入する金額を間違える
一般生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料の区分を誤る
旧制度、新制度の区分を誤る
証明書の添付を忘れる
会社の担当者が証明書と申告書の内容を照合する必要がある
紙の書類を回収、保管、返却する手間がかかる
年末調整は短期間に多くの従業員分を処理するため、1件ごとの小さなミスでも、会社全体では大きな事務負担になります。
マイナポータル連携を活用すれば、控除証明書データを自動取得し、申告書へ反映できるため、こうしたミスや確認作業を減らしやすくなります。
マイナポータル連携で取得できる主な控除証明書等
マイナポータル連携の対象は年々拡大しています。
年末調整や確定申告で利用できる主なデータには、次のようなものがあります。
生命保険料控除証明書
地震保険料控除証明書
社会保険料控除証明書、国民年金保険料
社会保険料控除証明書、国民年金基金掛金
小規模企業共済等掛金控除証明書
住宅ローン控除に関する年末残高等証明書
住宅借入金等特別控除証明書
ふるさと納税に係る寄附金受領証明書
医療費通知情報
公的年金等の源泉徴収票
株式の特定口座年間取引報告書
ただし、すべての保険会社、金融機関、証明書発行主体がマイナポータル連携に対応しているわけではありません。
利用するには、自分が契約している保険会社や金融機関、ふるさと納税ポータルサイトなどが、マイナポータル連携に対応している必要があります。
対応状況は随時変わるため、実際に利用する際は国税庁が公表している発行主体一覧や、各発行主体の案内を確認しましょう。
マイナポータル連携を使うメリット
マイナポータル連携のメリットは、単に「紙が減る」ことだけではありません。
従業員側、会社側の双方に実務上のメリットがあります。
従業員側のメリットとしては、次のような点があります。
控除証明書の金額を手入力する手間が減る
入力ミスや転記ミスを防ぎやすい
紙の証明書を紛失するリスクを減らせる
複数の証明書をまとめて取得できる
確定申告でもデータを利用しやすい
会社側のメリットとしては、次のような点があります。
従業員から紙の証明書を回収する手間を減らせる
申告書と証明書の照合作業を効率化できる
記載誤りや添付漏れの差戻しを減らせる
書類の保管コストを削減できる
年末調整業務の電子化を進めやすい
特に、従業員数が多い会社では、年末調整時期の事務負担が大きくなります。
マイナポータル連携と年末調整システムを組み合わせることで、紙中心の運用から電子化へ移行しやすくなります。
利用にはマイナンバーカードが必要
マイナポータル連携を利用するには、従業員本人がマイナンバーカードを取得している必要があります。
また、マイナポータルを利用するための設定や、証明書発行主体との連携設定も必要です。
主な準備としては、次のようなものがあります。
マイナンバーカード
利用者証明用電子証明書のパスワード
署名用電子証明書のパスワード
マイナンバーカードを読み取れるスマートフォンまたはICカードリーダライタ
マイナポータルの利用登録
民間送達サービスとの連携設定
保険会社等の証明書発行主体との連携設定
マイナポータル連携は便利ですが、年末調整の直前に初めて設定しようとすると、思ったより時間がかかることがあります。
保険会社等の連携設定やデータ取得には、事前準備が必要な場合がありますので、利用する場合は早めに準備しておきましょう。
民間送達サービスとは
控除証明書データを受け取る際には、保険会社などの発行主体が対応している民間送達サービスを利用することがあります。
民間送達サービスとは、インターネット上で電子データを受け取るための専用ポストのような仕組みです。
利用者は、マイナポータルと民間送達サービスを連携し、そのうえで保険会社等の利用設定を行います。
紙の証明書が郵送で届くのと同じように、電子データとして証明書を受け取るための受け皿を準備するイメージです。
ただし、どの民間送達サービスに対応しているかは、保険会社や発行主体によって異なります。そのため、利用前に、自分が契約している保険会社等がどのサービスに対応しているか確認しておく必要があります。
年末調整で利用する場合は会社側のシステム対応も必要
従業員がマイナポータル連携で控除証明書データを取得できても、勤務先側の年末調整システムが対応していなければ、会社の年末調整業務で十分に活用できないことがあります。
年末調整でマイナポータル連携を活用するには、会社側でも次のような準備が必要です。
年末調整システムが電子データに対応しているか確認する
国税庁の年末調整控除申告書作成用ソフトを利用するか検討する
給与計算システムとの連携方法を確認する
従業員から電子データをどのように受け取るか決める
紙提出と電子提出が混在する場合の運用を整理する
社内マニュアルを作成する・従業員へ事前案内を行なう
会社側の準備が不十分なまま電子化を進めると、紙とデータが混在し、かえって確認作業が増えることがあります。
導入初年度は、対象者を限定して試験的に運用する、紙提出との併用ルールを明確にするなど、段階的に進める方法も考えられます。
確定申告でもマイナポータル連携は便利
マイナポータル連携は、年末調整だけでなく、所得税の確定申告でも活用できます。
確定申告では、医療費控除、寄附金控除、住宅ローン控除、生命保険料控除、地震保険料控除、株式の特定口座年間取引報告書など、さまざまな情報を入力する必要があります。
マイナポータル連携を使えば、対応しているデータを取得し、確定申告書等作成コーナーへ自動入力できます。特に、次のような方にはメリットが大きいです。
医療費控除を受ける方
ふるさと納税を複数の自治体にしている方
生命保険料控除や地震保険料控除が複数ある方
住宅ローン控除を受ける方
株式投資で特定口座年間取引報告書を利用する方
公的年金等の源泉徴収票を使って申告する方
紙の証明書や各サイトのPDFを一つずつ確認しながら入力するよりも、申告作業の負担を減らせます。
医療費控除での活用
確定申告でマイナポータル連携のメリットが大きいものの一つが、医療費控除です。
医療費控除では、1年間に支払った医療費を集計する必要があります。
従来は、病院や薬局の領収書を集め、医療費控除の明細書に入力する作業が必要でした。
マイナポータル連携を利用すると、医療費通知情報を取得し、確定申告書に反映することができます。
ただし、医療費通知情報に反映される時期や範囲には注意が必要です。
自由診療、保険適用外の費用、交通費、市販薬の購入費など、マイナポータル連携だけでは取得できないものもあります。
そのため、医療費控除を受ける場合は、マイナポータル連携で取得した情報だけでなく、領収書や明細書を確認し、必要に応じて追加入力することが大切です。
ふるさと納税での活用
ふるさと納税についても、マイナポータル連携を利用できる場合があります。
対応しているふるさと納税ポータルサイトや証明書発行主体を利用している場合、寄附金受領証明書データを取得し、確定申告書へ自動入力できます。
複数の自治体に寄附している場合、紙の受領証明書を一枚ずつ確認して入力するのは手間がかかります。
マイナポータル連携によりデータ取得できれば、寄附先や金額の入力ミスを減らしやすくなります。
ただし、すべてのポータルサイトや自治体が対応しているわけではありません。
また、ワンストップ特例を利用している場合でも、医療費控除などで確定申告を行なうと、ワンストップ特例が無効になるため、ふるさと納税分も確定申告に含める必要があります。
家族分の控除証明書を取得する場合
年末調整や確定申告では、本人だけでなく、家族分の控除証明書が必要になることがあります。
たとえば、配偶者や子どもの国民年金保険料を本人が支払っている場合や、家族名義の保険料を本人が負担している場合などです。
マイナポータル連携では、一定の手続により、家族の控除証明書等を取得できる場合があります。
ただし、そのためには、マイナポータルで代理人登録などの事前手続が必要になります。
また、本人と家族それぞれのマイナンバーカードが必要になる場合があります。
家族分の控除を申告する予定がある場合は、年末調整や確定申告の直前ではなく、早めに設定しておくことをおすすめします。
マイナポータル連携を利用する際の注意点
マイナポータル連携は便利な仕組みですが、万能ではありません。
利用する際には、次の点に注意しましょう。
すべての保険会社や金融機関が対応しているわけではない
証明書データの取得可能時期は発行主体によって異なる
事前設定に時間がかかる場合がある
マイナンバーカードとパスワードが必要
会社の年末調整システムが対応していない場合がある
紙と電子データが混在する場合の管理が必要
取得したデータの内容に誤りがないか最終確認が必要
医療費控除などでは追加入力が必要な場合がある
電子データを取得できたとしても、申告内容の確認責任がなくなるわけではありません。
自動入力された金額や控除区分が正しいか、対象外の支出が含まれていないか、必要な情報が不足していないかを確認することが大切です。
会社が導入する際の実務ポイント
会社が年末調整でマイナポータル連携を活用する場合には、事前準備が重要です。
特に、次の点を確認しましょう。
給与計算システムや年末調整システムが電子データに対応しているか
従業員が利用する手順を案内できるか
マイナンバーカードを持っていない従業員への対応をどうするか
紙の控除証明書と電子データが混在する場合のルールを決めているか
提出期限を早めに設定しているか
人事労務担当者、経理担当者、給与担当者の役割分担を明確にしているか
電子データの保存方法を確認しているか
従業員からの問い合わせ対応を想定しているか
年末調整の電子化は、うまく運用できれば大きな効率化につながります。
一方で、導入初年度は従業員からの質問が増えたり、設定に時間がかかったりすることがあります。
余裕を持って準備し、必要に応じて紙提出との併用期間を設けるとよいでしょう。
個人事業主や副業申告者にもメリットがある
マイナポータル連携は、会社員の年末調整だけでなく、個人事業主や副業をしている方の確定申告にも役立ちます。
個人事業主は、事業所得の申告に加えて、生命保険料控除、地震保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、医療費控除、ふるさと納税などを申告することがあります。
これらの証明書を電子データで取得できれば、確定申告書の作成作業を効率化できます。
また、副業収入があり確定申告をする会社員も、年末調整で反映されていない控除や、医療費控除、寄附金控除などを申告する際に便利です。
確定申告の時期に慌てないよう、年内からマイナポータル連携の準備をしておくとスムーズです。
実務上のチェックポイント
マイナポータル連携を利用する場合は、次の点を確認しましょう。
マイナンバーカードを取得しているか
マイナンバーカードのパスワードを把握しているか
マイナポータルへログインできるか
利用したい保険会社や金融機関が連携に対応しているか
必要な民間送達サービスの設定が済んでいるか
年末調整システムや確定申告書等作成コーナーで利用できるか
家族分の証明書を取得する場合、代理人設定が必要か
取得可能時期を確認しているか
自動入力された内容を確認しているか
電子データで取得できない控除証明書を紙で保管しているか
マイナポータル連携は、事前準備さえ済ませておけば、年末調整や確定申告をかなり効率化できます。
ただし、すべてが自動で完結するわけではないため、対応していない証明書や追加入力が必要な項目がないかを確認しましょう。
まとめ
マイナポータル連携を活用すると、年末調整や確定申告で必要となる控除証明書等のデータを一括取得し、申告書へ自動入力できます。
生命保険料控除証明書、地震保険料控除証明書、国民年金保険料の社会保険料控除証明書、住宅ローン控除関係書類、ふるさと納税の寄附金受領証明書、医療費通知情報など、対応範囲は年々広がっています。
紙の控除証明書を使う場合に比べて、入力ミス、添付漏れ、紛失、会社側の確認作業を減らせる点が大きなメリットです。
一方で、利用するにはマイナンバーカードの取得、マイナポータルの設定、民間送達サービスとの連携、保険会社等の利用設定が必要になります。
また、年末調整で活用する場合には、勤務先の給与システムや年末調整システムが電子データに対応しているかも確認する必要があります。
マイナポータル連携は、年末調整や確定申告の電子化を進めるうえで有効な仕組みです。
会社で導入を検討する場合は、従業員への案内、システム対応、紙と電子データが混在する場合の運用ルールを早めに整理しておきましょう。
個人で確定申告をする方も、申告時期に慌てないよう、年内からマイナポータル連携の準備を進めておくことをおすすめします。
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【この記事の執筆者】
安田 亮(公認会計士・税理士)
安田亮公認会計士・税理士事務所 代表
京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。
現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。
事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。





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