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収用時の補償金は税金がかかる?5,000万円特別控除と代替資産の注意点を税理士が解説

  • 執筆者の写真: 安田亮
    安田亮
  • 7 時間前
  • 読了時間: 9分

更新日:5 時間前

おはようございます!代表の安田です。


道路工事、公共施設の整備、区画整理などにより、国や地方公共団体などから土地や建物の買取りを求められることがあります。


いわゆる「収用」や「公共事業のための譲渡」です。

このような場合、土地や建物を手放す代わりに補償金を受け取ることがありますが、ここで気になるのが税金です。

  • 公共事業のために土地を売るのだから、税金はかからないのでは?

  • 補償金だから非課税なのでは?

  • 5,000万円まで控除できると聞いたけれど、必ず使えるの?


このように考える方も少なくありません。

しかし、収用に伴う補償金は、内容によっては譲渡所得として課税対象になります。その一方で、一定の要件を満たす場合には、収用等の課税の特例を受けることができます。


本日は、収用時の補償金に関する税務上の取扱いと、5,000万円特別控除、代替資産を取得する場合の注意点について解説します。


収用時の補償金はすべて非課税ではない

公共事業のために土地や建物を譲渡した場合、受け取る補償金にはいくつかの種類があります。


たとえば、土地や建物そのものの対価として支払われる補償金、移転費用に関する補償金、営業補償、立木や工作物に関する補償金などです。


このうち、土地や建物を譲渡した対価に相当するものは、原則として譲渡所得の計算対象になります。


つまり、「補償金」という名前であっても、実質的に土地や建物を売却した対価であれば、税務上は譲渡所得として扱われます。


一方で、公共事業のために土地や建物を売却した場合には、通常の売却とは異なり、収用等に関する特例が設けられています。国税庁も、土地収用法その他の法律により収用権が認められている公共事業のために土地建物を売った場合には、収用などの課税の特例を受けられると説明しています。


収用時に使える主な2つの特例

収用等により土地や建物を譲渡した場合、代表的な特例は次の2つです。


1つ目は、対価補償金等で代替資産を取得した場合の課税の特例です。

これは、収用された土地や建物の代わりに別の土地や建物を取得した場合、一定の要件を満たせば譲渡所得への課税を将来に繰り延べることができる制度です。


2つ目は、譲渡所得から最高5,000万円までを控除できる特例です。

一般的には「収用の5,000万円特別控除」と呼ばれることがあります。


どちらも税負担を大きく軽減できる可能性がありますが、両方を自由に重ねて使えるわけではありません。公共事業のために土地建物を売った場合には、これら2つの特例のうち、どちらか一方を選択することになります。


5,000万円特別控除とは

収用等により土地や建物を譲渡した場合、一定の要件を満たすと、譲渡所得から最高5,000万円まで控除できます。


この特例が使えると、譲渡益が5,000万円以下であれば、結果として譲渡所得税がかからないケースもあります。


ただし、5,000万円という金額だけがひとり歩きしがちですが、無条件に使える制度ではありません。


国税庁は、5,000万円特別控除の主な要件として、売った土地建物が固定資産であること、その年に公共事業のために売った資産の全部について代替資産取得の特例を受けていないこと、最初に買取り等の申出があった日から6か月を経過した日までに売っていることなどを挙げています。


特に注意したいのが、「最初に買取り等の申出があった日から6か月」という期限です。

公共事業だからといって、いつ売却しても5,000万円控除が受けられるわけではありません。交渉が長引いたり、契約のタイミングが遅れたりすると、特例の適用に影響する可能性があります。


同じ公共事業で複数年に分かれる場合にも注意

収用の5,000万円特別控除では、同じ公共事業で2年以上にわたって資産を売却する場合にも注意が必要です。


国税庁は、同じ公共事業で2以上の年にまたがって資産を売るときは、5,000万円特別控除を受けられるのは最初の年だけであると説明しています。


たとえば、ある年に土地の一部を譲渡し、翌年に残りの土地や建物を譲渡するようなケースでは、後の年について同じように5,000万円控除を使えるとは限りません。


公共事業のスケジュールによっては、複数回に分けて補償金を受け取ることもあります。

そのため、契約や引渡しの前に、どの年にどの資産を譲渡するのかを整理しておくことが重要です。


代替資産を取得する場合の特例

収用された土地や建物の代わりに、別の土地や建物を取得する場合には、代替資産を取得した場合の課税の特例を検討できます。


この特例を使うと、売った金額より買い換えた金額が多い場合には、売った年について譲渡所得がなかったものとされ、課税が将来に繰り延べられます。


一方で、買い換えた金額が売った金額より少ない場合には、その差額をもとに譲渡所得を計算します。


たとえば、土地を収用されて6,000万円の補償金を受け取り、その代わりに7,000万円の土地を取得した場合には、一定の要件を満たせば課税を繰り延べられる可能性があります。


反対に、6,000万円の補償金を受け取り、3,000万円の土地しか取得しなかった場合には、差額部分について譲渡所得の計算が必要になります。


代替資産の取得期限にも注意

代替資産の特例では、いつ代わりの資産を取得するかも重要です。


国税庁は、原則として、収用等のあった年、収用等のあった年の前年の一定期間、または収用等のあった年の翌年1月1日から収用等のあった日以後2年を経過した日までの期間に、代替資産を取得する必要があると説明しています。


つまり、収用後にゆっくり代わりの土地を探せばよい、というわけではありません。

特例を受けるためには、期限を意識して代替資産の取得計画を立てる必要があります。


また、原則として、売った資産と同じ種類の資産を買い換える必要があります。土地を売った場合は土地、建物を売った場合は建物という考え方が基本です。


ただし、実務では、土地と建物が一体となっているケースや、事業用資産として買い換えるケースなど、判断が簡単ではないこともあります。


5,000万円控除と代替資産の特例はどちらが有利か

収用時には、5,000万円特別控除を使うべきか、代替資産の特例を使うべきかで迷うことがあります。


ざっくりいうと、譲渡益が5,000万円以内で、代替資産を取得する予定がない、または取得額が少ない場合には、5,000万円特別控除が有利になりやすいです。


一方で、受け取った補償金を使って、同じような土地や建物を取得する予定がある場合には、代替資産の特例を検討する価値があります。


ただし、代替資産の特例は、税金が完全になくなる制度ではなく、課税を将来に繰り延べる制度です。将来、その代替資産を売却したときには、繰り延べられた課税関係が影響します。


そのため、目先の税額だけでなく、将来の売却予定、相続、事業承継、不動産の利用計画なども含めて判断することが大切です。


収用時に確認すべき資料

収用に関する税務判断では、補償金の総額だけを見ても正しい判断はできません。

次のような資料を確認する必要があります。


まず、公共事業の施行者からの買取り等の申出書や証明書です。

5,000万円特別控除では、最初に買取り等の申出があった日が重要になるため、この日付を確認する必要があります。


次に、公共事業用資産の買取り等の証明書や収用等の証明書です。

これらは確定申告時の添付書類として必要になることがあります。


また、補償金の明細書も重要です。

補償金の中身が、土地の対価なのか、建物の対価なのか、移転補償なのか、営業補償なのかによって、所得区分や課税関係が変わることがあります。


さらに、代替資産を取得する場合には、取得する資産の契約書、登記事項証明書、取得価額の明細なども確認します。


国税庁も、これらの特例を受けるためには、一定の書類を添えて確定申告をする必要があるとしています。


実務上の落とし穴

収用時の税務でよくある落とし穴は、「補償金だから税金は関係ない」と考えてしまうことです。

実際には、土地や建物の対価部分については譲渡所得として申告が必要になることがあります。


また、「5,000万円控除があるから大丈夫」と思っていても、買取り等の申出から6か月を超えていたり、同じ公共事業で前年にすでに特例を使っていたりすると、適用できない可能性があります。


代替資産の特例についても、期限や資産の種類を誤ると、想定していた税負担の軽減が受けられないことがあります。


収用は、通常の不動産売却と異なり、本人の意思だけでスケジュールを決められないこともあります。だからこそ、公共事業の話が出た段階で、早めに税務上の取扱いを確認しておくことが大切です。


まとめ

収用時に受け取る補償金は、すべてが非課税になるわけではありません。


土地や建物の対価に相当する補償金は、原則として譲渡所得の対象になります。

ただし、公共事業のために土地や建物を譲渡した場合には、5,000万円特別控除や代替資産を取得した場合の課税の特例を受けられる可能性があります。


重要なのは、どちらの特例を使うのか、要件を満たしているのか、期限を過ぎていないかを早めに確認することです。


特に、最初の買取り等の申出日、譲渡日、補償金の内訳、代替資産の取得予定は、税額に大きく影響します。


公共事業による土地や建物の譲渡は、一生に何度も経験するものではありません。

補償金の金額だけで判断せず、税引き後にどれだけ手元に残るのか、代替資産を取得するのか、将来の相続や事業計画にどう影響するのかまで含めて検討しましょう。


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【この記事の執筆者】

安田 亮(公認会計士・税理士)

安田亮公認会計士・税理士事務所 代表

京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。

現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。

事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。

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