ふるさと納税のワンストップ特例と確定申告|医療費控除をすると無効になる?税理士が解説
こんにちは!代表の安田です。
ふるさと納税を利用する際、「ワンストップ特例」を使えば、原則として確定申告をしなくても寄附金控除を受けることができます。
しかし、ワンストップ特例の申請を済ませていても、その後に医療費控除や住宅ローン控除などのために確定申告をすると、注意が必要です。
確定申告を行う場合、ワンストップ特例による控除はそのまま併用できず、ふるさと納税についても確定申告に含める必要があります。
また、「5回までしか寄附できない」と誤解されることがありますが、制限されているのは寄附の回数ではなく自治体数です。
5自治体以内であれば、同じ自治体へ複数回寄附しても、他の要件を満たす限りワンストップ特例の対象となり得ます。添付資料でも、ワンストップ特例の主な要件として「確定申告を要しないこと」と「寄附先が5自治体以下であること」が示されています。
本日は、ふるさと納税のワンストップ特例と確定申告の関係、医療費控除や住宅ローン控除を受ける場合の注意点、5自治体ルールについて税理士が解説します。
ふるさと納税のワンストップ特例とは
ふるさと納税は、自治体へ寄附を行った場合に、一定の上限まで自己負担2,000円を除いた部分について所得税・住民税の控除を受けられる制度です。
本来、寄附金控除を受けるためには確定申告が必要ですが、一定の要件を満たす人については「ワンストップ特例」を利用できます。
ワンストップ特例を利用すると、確定申告を行なわなくても、寄附先の自治体へ所定の申請を行うことで控除を受けることができます。
ワンストップ特例の主な要件
要件 | 内容 |
確定申告が不要であること | ふるさと納税以外の理由で確定申告書を提出する必要がない |
寄附先が5自治体以下 | 1年間にふるさと納税を行なう自治体数が5以下 |
これらの要件を満たしたうえで、寄附先自治体へワンストップ特例の申請を行います。
「5回まで」ではなく「5自治体まで」
ワンストップ特例で特に誤解されやすいのが、寄附回数です。
制度上の基準は、「寄附回数5回以下」ではなく、「寄附先の自治体が5自治体以下」です。
例えば次のようなケースを考えてみましょう。
寄附先 | 寄附回数 |
神戸市 | 3回 |
高松市 | 2回 |
京都市 | 1回 |
合計 | 6回 |
寄附回数は合計6回ですが、寄附先は3自治体です。
したがって、他の要件を満たしていれば、寄附回数が6回以上であってもワンストップ特例の対象となり得ます。
6自治体へ1回ずつ寄附した場合は?
反対に、
自治体 | 寄附回数 |
A市 | 1回 |
B市 | 1回 |
C市 | 1回 |
D市 | 1回 |
E市 | 1回 |
F市 | 1回 |
という場合、寄附回数は6回、寄附先も6自治体となります。
この場合は「5自治体以下」という要件を満たさないため、ワンストップ特例ではなく、確定申告によって寄附金控除を受けることになります。
整理すると
ケース | ワンストップ特例 |
3自治体へ合計10回寄附 | 対象になり得る |
5自治体へ各1回寄附 | 対象になり得る |
6自治体へ各1回寄附 | 原則対象外 |
医療費控除をするとワンストップ特例は使えない
ワンストップ特例の重要な要件は、ふるさと納税以外の理由で確定申告をする必要がないことです。
そのため、ワンストップ特例の申請を済ませた後に、医療費控除のため確定申告をする場合には、ワンストップ特例だけを残すことはできません。
例えば会社員が、
ふるさと納税を4自治体へ行なった
ワンストップ特例申請済み
年末になって医療費控除を受けることにした
というケースです。
この場合、医療費控除だけを確定申告し、ふるさと納税はワンストップ特例のままとはできません。確定申告書に、ふるさと納税の寄附金控除も含める必要があります。
住宅ローン控除の初年度も注意
住宅ローン控除についても、適用初年度は原則として確定申告を行ないます。
そのため、
住宅を購入した
住宅ローン控除の初年度
同じ年にふるさと納税をした
という場合には、ワンストップ特例ではなく、住宅ローン控除とふるさと納税をまとめて確定申告することになります。
ワンストップ申請済みでも確定申告できる
「もうワンストップ特例を申請したから、確定申告できないのでは」と心配する必要はありません。
後から確定申告が必要になった場合には、確定申告を行ないます。ただし、その際にはその年に行ったふるさと納税を確定申告へ反映することが重要です。
<流れ>
ふるさと納税をする
ワンストップ特例を申請する
後日、医療費控除などで確定申告することになる
ワンストップ特例ではなく確定申告で寄附金控除を申告する
ワンストップ特例では控除のされ方が違う
通常の確定申告によるふるさと納税では、
所得税
住民税
の双方に控除が反映されます。
一方、ワンストップ特例を利用する場合には、添付資料上、所得税相当分を含めて翌年度の住民税からまとめて控除される仕組みと説明されています。
<控除方法の比較>
方法 | 控除の反映 |
確定申告 | 所得税+住民税 |
ワンストップ特例 | 原則として翌年度の住民税から控除 |
最終的な控除額の考え方は同じでも、控除が反映される税金・タイミングが異なります。
ワンストップ特例が向いている人
ワンストップ特例を利用しやすいのは、例えば次のような人です。
給与所得のみの会社員
年末調整で所得税の手続が完了する
医療費控除を申告しない
住宅ローン控除の初年度ではない
寄附先が5自治体以下
一方、もともと確定申告が必要な人は、ふるさと納税についても確定申告で処理することになります。
個人事業主は原則として確定申告で処理
個人事業主は通常、事業所得等について確定申告を行います。
そのため、個人事業主だけれど、ふるさと納税だけワンストップ特例を使いたいという使い方は基本的にできません。
確定申告をする人は、確定申告書にふるさと納税の寄附金控除を含めて申告します。
確定申告をする場合に忘れやすいポイント
ワンストップ申請済みの人が確定申告を行う場合、最も注意したいのが、「ふるさと納税を申告書に入れ忘れること」です。
「ワンストップ申請をしたから自動的に処理される」と思い込み、医療費控除だけを申告してしまうと、寄附金控除が正しく反映されない可能性があります。
<確定申告時のチェック>
確認項目 | 内容 |
ワンストップ申請 | していたか |
確定申告 | 今回行うか |
医療費控除 | 適用するか |
住宅ローン控除 | 初年度か |
ふるさと納税 | 全件を申告へ反映したか |
寄附先自治体 | 漏れがないか |
寄附回数より「自治体数」を管理する
年末に慌てないためには、ふるさと納税を行った時点で寄附先を一覧化しておくと便利です。
例えば、
自治体 | 寄附日 | 寄附額 |
A市 | 5月10日 | 20,000円 |
A市 | 8月15日 | 10,000円 |
B町 | 9月2日 | 30,000円 |
C市 | 11月20日 | 20,000円 |
と管理すれば、
寄附先自治体数
年間寄附額
ワンストップ申請状況
を確認しやすくなります。
こんな場合は確定申告が必要になる可能性
ワンストップ特例を申請していても、その後の状況によって確定申告が必要になることがあります。
代表的な例を整理すると次のとおりです。
ケース | ふるさと納税の処理 |
医療費控除を受ける | 確定申告 |
住宅ローン控除初年度 | 確定申告 |
6自治体以上へ寄附 | 確定申告 |
もともと確定申告義務がある | 確定申告 |
5自治体以下・他に申告不要 | ワンストップ特例を利用可能 |
よくある疑問
Q. 5自治体へ合計8回寄附しました。ワンストップ特例を使えますか?
A. 寄附回数ではなく自治体数で判定するため、寄附先が5自治体以下であり、その他の要件も満たしていれば利用可能です。6回以上寄附しても自治体数が5以下なら特例を利用できます。
Q. ワンストップ特例を申請後、医療費控除をすることになりました。
A. 確定申告を行い、医療費控除だけでなく、その年のふるさと納税についても寄附金控除として申告します。
Q. 住宅ローン控除の初年度でもワンストップ特例を使えますか?
A. 住宅ローン控除の初年度は原則として確定申告を行なうため、ふるさと納税も確定申告に含めて処理することになります。
まとめ
ふるさと納税のワンストップ特例は、確定申告を行わない給与所得者などにとって便利な制度です。ただし、利用する際には次のポイントを押さえておきましょう。
ワンストップ特例は、原則として確定申告を必要としない人が対象
寄附先は5自治体以下である必要がある
5回以下ではなく「5自治体以下」で判定する
同じ自治体へ複数回寄附しても、自治体数は1として考える
医療費控除で確定申告すると、ふるさと納税も確定申告に含める
住宅ローン控除の初年度も同様に注意
個人事業主など、もともと確定申告する人は確定申告で寄附金控除を処理する
特に重要なのは、「ワンストップ特例を申請済みだから、確定申告ではふるさと納税を書かなくてよい」わけではないという点です。
年末から確定申告時期にかけて医療費控除などを利用することになった場合には、ふるさと納税の申告漏れがないか必ず確認しましょう。
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【この記事の執筆者】
安田 亮(公認会計士・税理士)
安田亮公認会計士・税理士事務所 代表
京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。
現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。
事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。






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