2027年から給与所得の源泉徴収票の提出方法が変更|税務署への提出が不要になる「みなし提出の特例」を解説
おはようございます!代表の安田です。
国税庁は2026年8月19日、「令和8年分 給与所得の源泉徴収票等の法定調書の作成と提出の手引」を公表しました。
今回の手引では、令和8年分の法定調書から適用される主な改正事項として、次の4点が案内されています。
給与所得の源泉徴収票の提出方法の変更
23歳未満の扶養親族がいる場合の生命保険料控除に伴う記載方法の変更
退職所得の源泉徴収票の提出範囲の変更
国税システム更改に伴う法定調書様式の変更
中でも、企業の年末調整実務に大きく影響するのが、2027年1月1日以後に提出する給与所得の源泉徴収票に係る「みなし提出の特例」です。
これまで税務署と市区町村へそれぞれ提出していた書類について、一定の提出事務が簡素化されます。
本日は、令和8年分の給与所得の源泉徴収票等について、2027年から何が変わるのかを整理します。
令和8年分の法定調書で4つの改正
国税庁の手引で示された主な改正事項を整理すると、次のとおりです。
改正事項 | 主な内容 |
① 給与所得の源泉徴収票 | 「みなし提出の特例」により提出方法を変更 |
② 生命保険料控除 | 23歳未満の扶養親族に係る特例創設に伴い記載方法を変更 |
③ 退職所得の源泉徴収票 | 提出省略範囲に関する規定廃止に伴い提出範囲を変更 |
④ 法定調書の様式 | 国税システム更改に伴い様式を変更 |
給与計算・年末調整を行う会社では、単に源泉徴収票の様式だけでなく、提出先や作成枚数も変更される点に注意が必要です。
2027年から始まる「源泉徴収票のみなし提出の特例」とは
今回の改正で最も重要なのが、「給与所得の源泉徴収票のみなし提出の特例」です。
2027年1月1日以後に提出すべき給与所得の源泉徴収票については、給与支払報告書を各市区町村長へ提出することで、税務署へ給与所得の源泉徴収票を提出したものとみなす仕組みが開始します。
したがって、この特例の対象となる場合には、市区町村へ給与支払報告書を提出 → 税務署へ給与所得の源泉徴収票を別途提出する必要なしという流れになります。
企業側から見ると、年末から翌年1月に集中する法定調書関連業務の一部が簡素化されます。
<改正前後のイメージ>
書類・提出先 | 従来 | 2027年1月1日以後の特例 |
給与支払報告書 | 市区町村へ提出 | 市区町村へ提出 |
給与所得の源泉徴収票 | 一定の場合、税務署へ提出 | 税務署への別途提出が不要 |
従業員への源泉徴収票 | 交付 | 引き続き交付 |
ポイントは、従業員本人へ源泉徴収票を渡さなくてよくなるわけではないということです。
変わるのは主として「税務署への提出」の部分です。
源泉徴収票の作成枚数も減る
この変更に伴って、紙で作成する場合の源泉徴収票等の枚数も変わります。
国税庁の手引では、みなし提出の特例を利用する場合、
給与所得の源泉徴収票:受給者交付用として1枚
給与支払報告書:市区町村提出用として1枚
の合計2枚を作成するとされています。
税務署提出用の「給与所得の源泉徴収票」は作成不要です。
<作成枚数>
書類 | 用途 | 枚数 |
給与所得の源泉徴収票 | 従業員への交付 | 1枚 |
給与支払報告書 | 市区町村への提出 | 1枚 |
税務署提出用源泉徴収票 | みなし提出特例の場合 | 不要 |
合計 | 2枚 |
紙で年末調整業務を行っている企業では、印刷・仕分け・提出の負担軽減につながる可能性があります。
なぜ給与支払報告書だけで税務署提出も済むのか
給与所得の源泉徴収票と給与支払報告書は、それぞれ税務署と市区町村へ提出する書類です。
今回の制度では、市区町村へ給与支払報告書を提出することで、一定の情報連携を前提として税務署へ源泉徴収票を提出したものとして取り扱います。
そのため、企業が同じ給与情報について、市区町村と税務署の双方へ重複して提出する事務を減らすことができます。
この制度は所得税法226条6項に基づく「源泉徴収票のみなし提出の特例」です。
2026年分給与から対応が必要
制度の開始日は「2027年1月1日以後に提出すべき給与所得の源泉徴収票」です。
給与計算実務でいうと、主として2026年分の給与に係る年末調整・法定調書作成から関係してきます。
したがって、
2026年中に給与計算システムを確認
年末調整時に新様式へ対応
2027年1月の提出方法を変更
というスケジュールを想定しておくとよいでしょう。
23歳未満の扶養親族がいる場合の生命保険料控除にも変更
今回の手引では、給与所得の源泉徴収票の提出方法だけでなく、生命保険料控除に関する変更も挙げられています。
23歳未満の扶養親族を有する場合の生命保険料控除の特例が創設されたことに伴い、給与所得の源泉徴収票・給与支払報告書の記載方法が変更されます。
この点について実際の年末調整処理を行う際には、国税庁の手引本体や最新の様式を確認する必要があります。
退職所得の源泉徴収票も提出範囲が変更
退職金を支給する会社についても変更があります。
退職所得の源泉徴収票について提出を省略できる範囲を定めていた規定が廃止されたことに伴い、提出範囲が変更されるとされています。
退職者がいる会社では、従来の取扱いをそのまま踏襲せず、令和8年分の手引で提出対象を確認する必要があります。
法定調書の様式も変更
さらに、国税システムの更改に伴い、法定調書の様式そのものも変更されます。
給与計算ソフト・年末調整ソフトを使用している企業では、多くの場合ベンダー側で新様式へのアップデートが行われると考えられます。
ただし、会社側でも、
ソフトウェアが最新バージョンになっているか
旧様式をExcel等で独自作成していないか
給与支払報告書の出力方法が変更されないか
などを年末前に確認しておいた方がよいでしょう。
会社の年末調整実務はどう変わる?
今回の改正を企業実務の観点から整理すると、次のようになります。
<従来のイメージ>
年末調整を実施
給与所得の源泉徴収票を作成
従業員へ交付
一定の源泉徴収票を税務署へ提出
給与支払報告書を市区町村へ提出
<2027年1月以後>
年末調整を実施
給与所得の源泉徴収票を従業員用に作成
従業員へ交付
給与支払報告書を市区町村へ提出
みなし提出特例により税務署への源泉徴収票の別途提出が不要
年末調整そのものがなくなるわけではありませんが、提出事務の一部が簡素化されます。
経理・給与担当者が確認しておきたいポイント
チェック項目 | 確認内容 |
対象年 | 令和8年分給与か |
提出日 | 2027年1月1日以後か |
給与支払報告書 | 市区町村へ適切に提出するか |
税務署提出 | みなし提出特例の対象か確認 |
従業員用源泉徴収票 | 引き続き作成・交付 |
生命保険料控除 | 新しい記載方法を確認 |
退職者 | 退職所得の源泉徴収票の提出範囲を確認 |
法定調書 | 新様式へ対応 |
給与ソフト | 令和8年分対応版へ更新 |
源泉徴収票を「作らなくてよくなる」わけではない
今回の制度について、「2027年から源泉徴収票が不要になる」と理解するのは正確ではありません。不要になるのは、みなし提出の特例を利用する場合の税務署提出用の源泉徴収票です。
従業員本人へ交付する給与所得の源泉徴収票については引き続き作成します。
<間違いやすいポイント>
誤解 | 正しい取扱い |
源泉徴収票自体がなくなる | × |
従業員へ源泉徴収票を渡さなくてよい | × |
税務署提出用が一定の場合に不要 | ○ |
給与支払報告書は引き続き市区町村へ提出 | ○ |
この違いを社内の給与担当者間で共有しておくとよいでしょう。
紙提出の会社ほどメリットを感じやすい
電子申告・電子提出を既に活用している企業では、今回の改正による事務負担軽減をそれほど大きく感じない場合もあるでしょう。
一方、紙で、
源泉徴収票を印刷
税務署提出分を仕分け
給与支払報告書を自治体ごとに仕分け
している企業では、税務署提出用の作成が不要になることで、一定の事務削減が期待できます。
特に従業員数が多い企業では、印刷や確認作業の削減効果も大きくなります。
2026年の年末調整前に確認しておきたいこと
今回の変更に備え、給与担当者は2026年秋頃までに次の事項を確認しておくとよいでしょう。
1.給与計算ソフトを更新する
新しい源泉徴収票・給与支払報告書の様式に対応しているか確認します。
2.提出フローを見直す
税務署提出用の源泉徴収票を前提とした社内チェックリスト等があれば更新します。
3.生命保険料控除の変更を確認する
23歳未満の扶養親族がいる場合の特例について、年末調整ソフト・申告書類の対応を確認します。
4.退職者がいる場合は提出範囲を再確認する
退職所得の源泉徴収票について従来の提出ルールをそのまま適用しないよう注意します。
よくある疑問
Q. 2027年から源泉徴収票を税務署へ提出しなくてよくなりますか?
A. 2027年1月1日以後に提出すべき給与所得の源泉徴収票について、給与支払報告書を各市区町村長へ提出することで、源泉徴収票を税務署へ提出したものとみなす特例が開始します。
Q. 従業員へ渡す源泉徴収票も不要になりますか?
A. 不要にはなりません。みなし提出特例の場合でも、給与所得の源泉徴収票を受給者交付用として1枚作成するとされています。
Q. 給与支払報告書も提出しなくてよくなりますか?
A. いいえ。今回の特例は、給与支払報告書を市区町村へ提出することによって税務署への源泉徴収票提出を不要とする仕組みです。
Q. 退職所得の源泉徴収票も変更がありますか?
A. あります。提出省略範囲に関する規定の廃止に伴って提出範囲が変更されることが、令和8年分の主な改正事項として挙げられています。
まとめ
国税庁は、令和8年分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書について、新しい作成・提出方法を公表しました。
今回の主な改正は、
給与所得の源泉徴収票のみなし提出特例
23歳未満の扶養親族に係る生命保険料控除の特例に伴う記載変更
退職所得の源泉徴収票の提出範囲変更
国税システム更改に伴う法定調書の様式変更
の4点です。
特に重要なのが、2027年1月1日以後に提出すべき給与所得の源泉徴収票について、市区町村へ給与支払報告書を提出すれば、税務署へ源泉徴収票を別途提出しなくてよくなることです。
みなし提出特例を利用する場合、紙の作成枚数も、従業員用の源泉徴収票1枚+市区町村用の給与支払報告書1枚=計2枚となり、税務署提出用の源泉徴収票は不要です。
2026年分の年末調整を行なう企業では、年末になってから対応するのではなく、給与計算システム、社内の提出フロー、新様式への対応状況を早めに確認しておきましょう。
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【この記事の執筆者】
安田 亮(公認会計士・税理士)
安田亮公認会計士・税理士事務所 代表
京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。
現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。
事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。






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