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青色申告特別控除が最大75万円へ|令和9年分からの要件・届出書を税理士が解説

執筆者の写真: 安田亮
安田亮
23 時間前
読了時間: 11分

おはようございます!代表の安田です。


令和8年度税制改正により、個人事業者の青色申告特別控除が見直され、令和9年分の所得税から最大75万円の控除を受けられることになりました。


ただし、複式簿記で帳簿を作成し、e-Taxで確定申告を行なうだけでは、75万円控除の対象にはなりません。


75万円控除を受けるには、e-Taxによる申告に加えて、次のいずれかの対応が必要です。

  • 優良な電子帳簿保存

  • 特定電子計算機処理システムによる電子取引データの保存(デジタルシームレス保存)


さらに、適用を受ける年分の確定申告期限までに、所定の届出書を税務署へ提出しなければなりません。


本記事では、令和9年分から始まる青色申告特別控除75万円の要件、65万円控除・10万円控除との違い、必要な届出書、個人事業者が準備すべきことを税理士が分かりやすく解説します。


青色申告特別控除とは

青色申告特別控除とは、不動産所得または事業所得を生ずべき事業を営む青色申告者が、一定の帳簿作成や申告要件を満たした場合に、所得金額から一定額を控除できる制度です。


控除額が大きくなるほど課税所得が少なくなるため、所得税や住民税の負担軽減につながります。


今回の改正では、従来の最大65万円から、最大75万円へと控除額が引き上げられます。

ただし、単純にすべての青色申告者の控除額が10万円増えるわけではありません。帳簿の保存方法や確定申告の方法によって、適用できる控除額が分かれます。


令和9年分から控除額は「75万円・65万円・10万円」に

令和8年分までの青色申告特別控除は、基本的に「65万円・55万円・10万円」の3段階です。


令和9年分以後は、これが「75万円・65万円・10万円」に見直されます。


<改正前後の比較>

帳簿・申告方法

令和8年分まで

令和9年分以後

複式簿記+e-Tax申告+優良な電子帳簿保存

65万円

75万円

複式簿記+e-Tax申告+デジタルシームレス保存

65万円相当の対象となり得る制度

75万円

複式簿記+e-Tax申告

65万円

65万円

複式簿記+書面申告

55万円

10万円

簡易簿記

10万円

原則10万円。ただし収入金額要件あり

改正後は、e-Taxによる申告を行わない場合、複式簿記で帳簿を作成していても、控除額は原則として10万円になります。


これまで55万円控除を受けていた書面申告者にとっては、特に影響の大きい改正です。


【図解】令和9年分以後の控除額の判定


75万円控除は、65万円控除の要件に、電子帳簿または電子取引データに関する追加要件を上乗せした制度といえます。


75万円控除を受けるための基本要件

令和9年分以後に75万円控除を受けるためには、原則として次の要件を満たす必要があります。

  1. 青色申告者であること

  2. 不動産所得または事業所得について複式簿記で記帳していること

  3. 貸借対照表・損益計算書等を確定申告書に添付すること

  4. 確定申告期限内に申告すること

  5. e-Taxで確定申告を行うこと

  6. 「優良な電子帳簿保存」または「デジタルシームレス保存」に対応すること

  7. 確定申告期限までに所定の届出書を提出すること


特に忘れやすいのが、最後の届出書です。

会計ソフトやシステムが要件に対応していても、所定の期限までに届出書を提出していなければ、75万円控除を受けられない可能性があります。


75万円控除の方法は2つ

75万円控除を受けるための追加要件には、次の2つの方法があります。

方法

概要

優良な電子帳簿保存

仕訳帳・総勘定元帳を優良な電子帳簿の要件に従って保存する

デジタルシームレス保存

一定のシステムにより電子取引データを送受信・保存する

どちらか一方の要件を満たせばよく、両方に対応する必要はありません。

個人事業者については、優良な電子帳簿保存により対応するケースが一般的になると考えられています。


優良な電子帳簿保存とは

優良な電子帳簿保存とは、その年分の事業に係る仕訳帳および総勘定元帳について、電子帳簿保存法上の一定の要件を満たして、電子データのまま備え付け・保存することをいいます。


単に会計ソフトを利用していればよいわけではありません。

その年の最初の記録段階から一貫して、過少申告加算税の軽減措置の対象となる「優良な電子帳簿」の保存要件を満たす必要があります。


対象となる帳簿

主な対象は次の2つです。

  • 仕訳帳

  • 総勘定元帳


<実務上確認したい事項>

確認項目

主な内容

訂正・削除履歴

記録を訂正・削除した事実や内容を確認できるか

相互関連性

仕訳帳と総勘定元帳、証憑等の関係を追跡できるか

検索機能

日付・金額・取引先等で検索できるか

画面・書面出力

税務調査時に明瞭な状態で表示・出力できるか

保存の継続性

年の途中からではなく、最初の記録段階から対応しているか

利用している会計ソフトが法的要件に対応しているかは、国税庁ホームページに掲載される「JIIMA認証情報リスト」などで確認できます。


もっとも、対応ソフトを導入するだけでなく、実際の記帳・保存方法も要件に沿って運用することが重要です。


デジタルシームレス保存とは

もう一つの方法が、「特定電子計算機処理システムによる電子取引データの保存」です。

一般に、デジタルシームレス保存と呼ばれています。


これは、不動産所得または事業所得に関係する電子取引データについて、国税庁長官が定める基準に適合するシステムを使用し、データの送受信から帳簿への記帳、保存までを一貫して行う仕組みです。


<主な要件>

  • 電子取引データの改ざん防止が確保されている

  • 記帳の適正性が確保されている

  • 電子取引データと電子帳簿の相互関連性が確保されている

  • 国税庁長官が定める基準に適合したシステムを使用している


対象となるシステムとして、次の電子取引データを保存できる仕組みが挙げられています。

  • デジタル庁が管理する仕様に従ったデジタルインボイス

  • 預貯金口座における決済データ



手作業による入力やデータ加工をできるだけ介さず、取引データと帳簿を連続的につなぐ仕組みです。


75万円控除には届出書の提出が必要

75万円控除を受ける場合には、適用を受ける年分の確定申告期限までに、所定の届出書を所轄税務署長へ提出しなければなりません。


提出する届出書は、どちらの方法で75万円控除の要件を満たすかによって異なります。

優良な電子帳簿保存で対応する場合


次のいずれかの届出書を提出します。

  • 「国税関係帳簿の電磁的記録等による保存等に係る65万円の青色申告特別控除・過少申告加算税の特例の適用を受ける旨の届出書」

  • 「国税関係帳簿の電磁的記録等による保存等に係る過少申告加算税の特例の適用を受ける旨の届出書」


届出書名にある「65万円」の部分は、令和9年3月頃に「75万円」へ変更される予定とされています。


デジタルシームレス保存で対応する場合

次の届出書を提出します。

「電子取引の取引情報に係る電磁的記録に係る重加算税の加重措置の不適用の特例及び75万円の青色申告特別控除(個人事業者)の適用を受ける旨の届出書」


<届出書の整理>

対応方法

提出する届出書

優良な電子帳簿保存

電子帳簿保存に係る過少申告加算税の特例等の届出書

デジタルシームレス保存

電子取引データの保存に係る重加算税の加重措置の不適用・75万円控除の届出書


届出書は毎年提出する必要がある?

届出書は、毎年提出する必要はありません。


一度提出すると、「取りやめの届出書」を提出するまで効力が継続します。

したがって、原則として75万円控除の適用を開始する最初の年分について提出すれば足ります。


ただし、届出書の提出後も、各年において次の要件を継続して満たさなければなりません。

  • e-Taxで期限内申告を行なう

  • 複式簿記で記帳する

  • 優良な電子帳簿保存またはデジタルシームレス保存の要件を満たす


届出を提出しただけで、以後自動的に75万円控除が保証されるわけではありません。


65万円控除を受けるための要件

75万円控除の追加要件を満たさない場合でも、複式簿記による記帳を行い、e-Taxで期限内申告をすれば、65万円控除を受けられます。

要件

65万円控除

複式簿記

必要

貸借対照表・損益計算書の添付

必要

期限内申告

必要

e-Tax申告

必要

優良な電子帳簿保存

不要

デジタルシームレス保存

不要

75万円控除に係る届出書

不要

「75万円控除のためにシステム対応を行う費用や手間」と「控除額が10万円増える効果」を比較し、65万円控除を選択することも考えられます。


10万円控除の要件も厳しくなる

今回の改正では、最大控除額の引上げだけでなく、10万円控除の要件も見直されます。


複式簿記でも書面申告なら10万円

令和8年分までは、複式簿記で記帳していてもe-Taxを利用しない場合、55万円控除を受けられました。

令和9年分以後は、複式簿記であっても書面で確定申告を行う場合、原則として10万円控除になります。

書面申告を続けている個人事業者は、控除額が45万円減少する可能性があります。


簡易簿記には収入金額要件を追加

簡易簿記による10万円控除については、前々年分の事業所得または不動産所得に係る収入金額が1,000万円以下であることが要件となります。

簡易簿記による10万円控除

令和9年分以後

前々年分の収入金額が1,000万円以下

適用可能

前々年分の収入金額が1,000万円超

適用できない可能性

ここで判定するのは、所得金額ではなく「収入金額」である点に注意が必要です。


75万円控除による節税効果

75万円控除は、65万円控除と比べて所得控除額が10万円増えます。

仮に所得税率が20%、住民税率が10%である場合、単純計算では次のような負担軽減が考えられます。

税目

概算の軽減額

所得税

10万円×20%=2万円

住民税

10万円×10%=1万円

合計

約3万円

実際の節税額は、所得税率、所得控除、事業税や国民健康保険料への影響などによって異なります。


75万円控除のために新しいシステムを導入する場合は、導入費用や運用負担と節税効果を比較することが大切です。


個人事業者が今から準備したいこと

75万円控除の適用は令和9年分からですが、優良な電子帳簿保存は、その年の最初の記録段階から一貫して要件を満たす必要があります。


年末や確定申告時期になってから準備を始めても、間に合わない可能性があります。


<事前準備のチェックリスト>

確認項目

対応内容

現在の控除額

65万円・55万円・10万円のどれを適用しているか確認

申告方法

e-Taxで期限内申告できる体制を整える

記帳方法

複式簿記で記帳しているか確認

会計ソフト

優良な電子帳簿保存に対応しているか確認

帳簿保存

仕訳帳・総勘定元帳の保存方法を確認

電子取引

請求書・領収書・決済データの保存方法を確認

届出書

適用初年度の確定申告期限までに提出

社内・事業所ルール

訂正、削除、証憑添付等の運用を決める

特に、令和9年の年初から75万円控除を見据える場合は、それ以前に会計ソフトや記帳方法を決めておく必要があります。


75万円控除を選ぶべき人

75万円控除への対応を検討しやすいのは、次のような個人事業者です。

  • すでにe-Taxで確定申告をしている

  • クラウド会計ソフトを利用している

  • 仕訳帳・総勘定元帳を電子保存している

  • 請求書や領収書を電子的に管理している

  • 今後も継続して青色申告を行う予定である

  • 電子帳簿保存の体制整備を進めたい


一方、事業規模が小さく、システム導入費用や運用負担が大きい場合には、65万円控除を継続する選択肢もあります。


控除額だけでなく、記帳体制や事業規模に合わせて判断することが重要です。


まとめ

令和8年度税制改正により、令和9年分以後の青色申告特別控除は、「75万円・65万円・10万円」の3段階に見直されます。


75万円控除を受けるには、複式簿記とe-Taxによる期限内申告に加えて、次のいずれかが必要です。

  • 優良な電子帳簿保存

  • デジタルシームレス保存


さらに、適用を受ける年分の確定申告期限までに、対応方法に応じた届出書を所轄税務署へ提出しなければなりません。


届出書は適用初年度に提出すればよく、取りやめの届出を行うまで効力が継続します。

一方、複式簿記であっても書面申告の場合は、従来の55万円控除から10万円控除へ縮小されます。また、簡易簿記による10万円控除には、前々年分の収入金額1,000万円以下という要件が設けられます。


75万円控除を検討する個人事業者は、適用開始年の途中ではなく、年初から要件を満たせるように、会計ソフトや帳簿保存方法、届出スケジュールを早めに確認しておきましょう。



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【この記事の執筆者】

安田 亮(公認会計士・税理士)

安田亮公認会計士・税理士事務所 代表

京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。

現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。

事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。


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