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借上げ社宅の社会保険料が2026年10月から変わる?住宅の現物給与価額の改正を解説

執筆者の写真: 安田亮
安田亮
11 分前
読了時間: 10分

おはようございます!代表の安田です。


会社が賃貸マンションなどを借り、役員や従業員へ社宅として貸与する「借上げ社宅」。

住宅手当を現金で支給する場合と比べて、一定の条件のもとで所得税や社会保険料の負担を抑えられることから、福利厚生制度として利用している企業もあります。


この借上げ社宅について、2026年10月1日から社会保険料の計算に使う「住宅の現物給与価額」の算定方法が変更されます。


これまでは主として「居住用の室」を基準としていましたが、改正後は廊下、玄関、浴室、トイレなども含む住宅の床面積の合計(総面積)を基準として計算します。


その結果、住宅の現物給与価額が上昇し、標準報酬月額や社会保険料が上がるケースも想定されます。


本日は、2026年10月からの借上げ社宅に関する社会保険上の改正、所得税との違い、標準報酬月額への影響、企業が確認しておきたい実務対応について解説します。


借上げ社宅とは

借上げ社宅とは、会社が外部の賃貸住宅を借り、その住宅を役員や従業員へ貸与する仕組みです。


会社が役員・従業員の住宅費を負担すると経済的利益が生じますが、所得税では一定額以上の家賃を本人から徴収している場合、経済的利益がないものとして給与課税しない取扱いがあります。


一方、社会保険では住宅を現物で支給した場合、一定の「現物給与価額」を報酬に含めて標準報酬月額を計算します。


つまり、借上げ社宅については、

制度

主な論点

所得税

社宅貸与による経済的利益を給与課税するか

社会保険

住宅の現物給与価額を標準報酬月額へいくら算入するか

という2つのルールを別々に確認する必要があります。


所得税上の社宅ルールはどうなっている?

まず、今回の社会保険改正とは別に、所得税上の基本的な取扱いを確認しておきましょう。

会社が通常より低い家賃で役員や従業員へ社宅を貸すと、本来は「賃貸料相当額」と実際に徴収した家賃との差額が経済的利益として給与課税の対象になります。


ただし、次の取扱いが示されています。

対象者

本人から徴収する金額

所得税上の取扱い

役員

賃貸料相当額

一定の場合、経済的利益なし

従業員

賃貸料相当額の50%以上

一定の場合、経済的利益なし

したがって、2026年10月から所得税の社宅ルールそのものがこの改正で変わるわけではありません。


今回変更されるのは、社会保険料を計算する際に使用する住宅の現物給与価額です。


社会保険では住宅も「報酬」に含まれる

健康保険・厚生年金保険の標準報酬月額では、会社から受け取る報酬は現金だけに限定されません。食事や住宅など、現物で支給されるものについても報酬に含まれます。


ただし、住宅そのものを金額評価する必要があるため、厚生労働大臣が定める「現物給与の価額」を用いて金銭に換算します。


借上げ社宅を利用すると、現金の住宅手当を支給する場合より標準報酬月額を低くできるケースがあるため、社会保険料の負担軽減につながることがあります。


2026年10月1日から算定方法が変更

2026年3月17日付の厚生労働省告示により、住宅の現物給与価額の計算方法が2026年10月1日から改正されます。


最大の変更点は、評価対象となる住宅面積の範囲です。


<改正前後の比較>

項目

2026年9月30日まで

2026年10月1日から

面積の基準

居住用の室

住宅の総床面積

単位

居住面積1畳当たり

総面積1㎡当たり

廊下・玄関等

原則として対象外

対象

浴室・トイレ等

原則として対象外

対象

現物給与価額

従来方式

増加する可能性

改正後は、「実際に生活する部屋」だけではなく、住宅全体の面積を見ることになります。


廊下・玄関・浴室・トイレも計算対象に

今回の改正を具体的に考えると分かりやすいでしょう。


マンションの場合、

  • 洋室

  • 和室

  • リビング・ダイニング

などだけでなく、

  • 玄関

  • 廊下

  • 浴室

  • 洗面所

  • トイレ

なども住宅の総面積に含まれます。


そのため、同じ社宅を同じ従業員へ貸していても、2026年10月以降は社会保険上の現物給与価額が高くなることがあります。


具体例:東京都の住宅では45,280円から53,200円へ

東京都に所在する住宅を例に考えてみましょう。

条件は、居住室部分16畳(26.4㎡)、住宅全体の総面積40㎡です。


このケースでは、次のようになります。

時期

計算対象

住宅の現物給与価額

2026年9月30日まで

居住室26.4㎡相当

45,280円

2026年10月1日から

総面積40㎡

53,200円


増加額

7,920円

現物給与価額が月額7,920円増加する計算です。


つまり、実際に会社が大家へ支払う家賃や、従業員から徴収する社宅家賃が変わっていなくても、社会保険上の報酬額だけが増えるケースがあります。


なぜ社会保険料が上がる可能性がある?

健康保険・厚生年金の保険料は、原則として標準報酬月額を基礎として計算します。

住宅の現物給与価額が増えれば、従業員の報酬月額も増えることがあります。


例えば概念的には、

項目

改正前

改正後

金銭給与

400,000円

400,000円

住宅の現物給与価額

45,280円

53,200円

合計報酬

445,280円

453,200円

となります。


この増加によって標準報酬月額の等級が一つ上がれば、会社・従業員双方の社会保険料が増加する可能性があります。


ただし、現物給与価額が増えたからといって、必ず標準報酬月額の等級が上がるわけではありません。実際の影響は、各従業員の給与額、本人負担額、現在の標準報酬月額などによって異なります。


10月の改正で「随時改定」が必要になる場合も

今回の改正でもう一つ重要なのが、月額変更届(随時改定)です。

通常、標準報酬月額は4月・5月・6月に支払われた報酬の平均額等をもとに決定し、その年の9月から翌年8月まで使用します。


しかし、固定的賃金に変動があり、その後3か月間の報酬によって一定の要件を満たした場合には、標準報酬月額を途中で変更する「随時改定」が行われます。


今回の住宅の現物給与価額の変更についても、資料では固定的賃金の変動に当たるとされています。


10月・11月・12月の報酬を確認する必要がある可能性

2026年10月から住宅の現物給与価額が変わるため、社宅を利用している役員・従業員については、その後の報酬状況によって随時改定の対象になる可能性があります。


<実務イメージ>

時期

対応

2026年9月まで

旧方式で現物給与価額を計算

2026年10月

新方式へ変更

10月以降

報酬月額への影響を確認

その後

随時改定の要件を満たすか判定

該当する場合

月額変更届等を検討

したがって、単に10月分の社会保険料計算マスターを変更して終わりではなく、その後の標準報酬月額への影響まで確認する必要があります。


「借上げ社宅なら社会保険料が必ず安くなる」とは限らない

借上げ社宅は、住宅手当を現金支給するより社会保険上有利になるケースがあります。

しかし今回の改正により住宅の現物給与価額が上がれば、そのメリットは従来より小さくなる可能性があります。


そのため、社宅制度を導入している企業は、借上げ社宅だから社会保険料は必ず有利と固定的に考えず、改正後の数字で再計算した方がよいでしょう。


所得税と社会保険で「住宅価額」が違う点に注意

今回の改正で混乱しやすいのが、税務上の賃貸料相当額と社会保険上の現物給与価額です。

両者は別制度です。

項目

所得税

社会保険

目的

給与課税する経済的利益を算定

標準報酬月額へ算入する現物給与を算定

基準

税法上の賃貸料相当額

厚生労働大臣が定める現物給与価額

2026年10月改正

今回資料では変更なし

算定方法変更

主な影響

源泉所得税

健康保険・厚生年金保険料

社宅制度の実務では、税務用と社会保険用で別々に計算する必要があります。


役員社宅を利用している会社も対象

今回の社会保険上の現物給与価額は、従業員だけでなく、社会保険の被保険者となっている役員についても関係します。


また所得税については、役員と従業員で社宅家賃の取扱いが異なります。

特に役員社宅については、

  • 小規模住宅等か

  • 借上げ社宅か

  • 会社が支払う家賃はいくらか

などによって所得税上の賃貸料相当額も変わります。


社宅制度を経営者本人が利用している中小企業でも、2026年10月改正の影響を確認しておく必要があります。


会社が9月までに確認しておきたいこと

借上げ社宅を利用している会社では、次の情報を事前に整理しておくとよいでしょう。

確認項目

内容

社宅利用者

役員・従業員の一覧

物件所在地

都道府県を確認

現在の住宅価額

旧方式での現物給与価額

総床面積

賃貸借契約書等で㎡数を確認

10月以降の価額

新方式で再計算

本人負担額

社宅家賃としていくら徴収しているか

標準報酬月額

現在の等級を確認

随時改定

改正による変更が該当するか

給与システム

10月から新価額を設定できるか

特に重要なのは、住宅の総床面積を把握することです。


従来の「居住室の畳数」だけを管理していた会社では、賃貸借契約書などから総床面積を改めて確認する必要があります。


給与計算・社会保険システムの設定にも注意

複数の借上げ社宅を運用している会社では、Excelで個別計算するだけでなく、給与システム等へ住宅の現物給与価額を登録していることがあります。


その場合は、2026年10月から、

  • 面積情報

  • 都道府県ごとの現物給与単価

  • 現物給与額

  • 本人負担額

などの設定変更が必要になる可能性があります。


9月末直前ではなく、早めに社宅一覧と物件面積を確認しておくとよいでしょう。


よくある疑問

Q. 2026年10月から借上げ社宅の所得税も増えますか?

A. 今回改正されるのは、社会保険料の標準報酬月額に含める住宅の現物給与価額です。所得税上の社宅の賃貸料相当額については、今回資料では同時改正として示されていません。


Q. 何が一番大きく変わりますか?

A. 2026年9月30日までは主として「居住用の室」を基礎としていたのに対し、10月1日からは廊下、玄関、浴室、トイレ等を含めた住宅の総床面積で算定する点です。


Q. 借上げ社宅の社会保険料は必ず上がりますか?

A. 現物給与価額自体は上昇するケースが想定されていますが、必ず標準報酬月額の等級が上がるとは限りません。本人の給与額などを含めて個別に確認する必要があります。


Q. 今回の変更で月額変更届が必要になりますか?

A. 住宅の現物給与価額の変動は固定的賃金の変動として扱われるため、一定の随時改定要件を満たす場合には標準報酬月額の変更対象となります。


まとめ

2026年10月1日から、社会保険における住宅の現物給与価額の算定方法が変更されます。

これまで主として「居住用の室」の面積を基礎としていたものが、改正後は、玄関・廊下・浴室・トイレなどを含めた住宅の総床面積を基礎として算定する仕組みに変わります。


そのため、借上げ社宅を利用している役員・従業員では住宅の現物給与価額が増加する可能性があります。


特に確認しておきたいのは、

  • 2026年10月から総床面積ベースへ変更

  • 現物給与価額が上昇する可能性

  • 標準報酬月額の等級が上がれば社会保険料も増える可能性

  • 現物給与価額の変更は随時改定の対象となり得る

  • 所得税上の社宅賃貸料相当額とは別の制度

という点です。


借上げ社宅制度を導入している会社では、2026年9月までに各社宅の総床面積を確認し、10月以降の現物給与価額と標準報酬月額への影響を試算しておくことをおすすめします。



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【この記事の執筆者】

安田 亮(公認会計士・税理士)

安田亮公認会計士・税理士事務所 代表

京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。

現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。

事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。


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